『第2章』海常高校と練習試合
テツヤくんが並んでいるのに気付いてもらえず、少しざわついていた。
彼のこと影薄いとかしょぼいとか、舐めてかかると痛い目みることを思い知らしめてほしい。
「雫ちゃん、さっきバ火神に…」
『…あそこのゴール、ボルト一本錆びてるんですよ。だから、お願いしておきました』
“試合開始!”
審判がそう合図するとボールが上へ投げられた。ジャンパーが同時にジャンプするが若干高さが勝った海常にボールを取られてしまった。
「んじゃ..まずキッチリ一本いくぞ」
ボールを拾った…おそらく相手のキャプテンだろう。ボールをつきながら人指しを立ててそういった。
その瞬間、テツヤくんは得意のスティールで反撃、火神くんに見事なパス捌きでボールを渡した。
そのまま火神くんはペイントエリア内でパスをもらうとそのまま跳躍し、ダンクを決めた。
バギィィ...!!
そのダンクに耐えられずリングはボードから外れ火神がそのリングを握っていた。
「あいつやべぇ!ゴールぶっ壊したぞ!!」
「ありえねぇ...」
火神くんがリングを壊したことでその場にいた全員が驚いていた。
「あ、ほんとに雫の言う通り壊れちまったな...」
『すいません。ゴール壊れてしまったんで全面側のコート使わせてもらえませんか』
私は相手の監督へ満面の笑みを浮かべて伝えた。
「雫ちゃん…あなたよくわかったわね…ボルトが錆びてるって…」
『人より聴覚がいいんですよ、アップの際、リングにボールがかすって揺れた時に、異変に気づきました』
(…まさか、これが彼女のマネージャーとしての異質の才能…?)
「黄瀬....!!」
海常の監督が黄瀬くんを呼んだ。
ほら、そんな余裕なかったでしょ?
「雫っち怒らせると、ほんと怖いんすよ…?これでわかったと思うんスけど」
“海常メンバーチェンジです!”
「改めて見ると化け物ね。黄瀬涼太」
リコさんはアナライザー眼で黄瀬くんを見ていて、その数値がすごく高過ぎて驚愕していた。
「やっぱキセキの世代は伊達じゃねぇようだな」
そして向き合った日向先輩は黄瀬くんの雰囲気に少し圧倒されていた。
「まさか、あんな形で度肝を抜くとは思わなかったスよ。まぁ大方雫っちが企んだと思うっスけど…監督のあんな顔初めて見たっスよ」
「舐めてる方がわりぃんだろ」
「じゃあ...俺は全力であんたを潰すよ。あれは宣戦布告って捉えていいんスよね?」
「そうとらえてもらっていいぜ...勝負だ黄瀬!」
そしてやっと海常対誠凛の試合が仕切り直して遂に始まった。
相手のキャプテン(笠松さんというらしい)から黄瀬くんにパスが渡り、一人で駆け上がっていた。
「いかせねぇ!」
駆け上がってきた黄瀬くんを火神くんが止めに入った。黄瀬くんは一旦進むのをやめて火神くんの前でボールをつきながら様子を伺っていたようだけれど…
「隙だらけっスよ」
黄瀬くんは火神くんのディフェンスをいとも簡単に抜きそのままゴールまで進んでいった。
「さっきのお返しっス!!」
「決めさせねぇ!」
火神くんがなんとか追いつきブロックをする為にジャンプし、さらに日向先輩も近くにいたためジャンプし二人でシュートを防ごうとした。
「甘いっスよ!!」
黄瀬くんは二人のブロックをいにもかえさず悠々とダンクを決め、そのゴールはギィと音を立てていた。
「女の子にはあんまっスけど、バスケでお返し忘れた事ないんスよ」