『第2章』海常高校と練習試合
そしてあっという間に一週間が経ち練習試合の日になった。
「......」
『火神くん目が充血してるよ?』
「火神くん、いつにも増して目つき悪いですよ」
「うっせー!ちょっとテンション上がって眠れなかっただけだ」
「遠足前の小学生ですか」
テツヤくんとと火神くんはそんな事を話しながら海常高校の校門をくぐっていった。
「雫っちーーーーーー!!!!!!」
ガバッと抱きついてきたのは黄瀬くん、本当に大きいワンちゃんみたいだ。
(((だから俺たちのマネージャーに!!)))
『き、黄瀬くん重い…』
「すぐに離れてください、じゃないとこないだの写真を…」
「あ!どもっス。今日は皆さんよろしくっス」
黄瀬くんは誠凛の選手たちに向き直して挨拶をした。
「黄瀬....!!」
「広いんでお迎えにあがりました」
「ありがとうございます、はぐらかしてもダメです、離してくださいね」
テツヤくんが丁寧にお礼をいったあと、私と黄瀬くんを引き剥がした。
「黒子っち〜!あんなにあっさりフルから毎日枕を濡らしてしたんスよ〜。女の子にもフラれたことないのに....」
「さらっと嫌味言うのやめてもらえますか、それと雫さんにフラれてますよね」
黄瀬くんの発言にテツヤくんは少しイラッとしながらそういった。
「それは言葉のあやっスよ、もう。…でも、黒子っちにあれだけ言わせる君にちょっと興味あるんス」
そう言って火神くんと付き合う黄瀬くん。
こんなに威圧的な彼はあまり見たことないかもしれない。
私に見せてなかっただけかもしれないけど…
「あれだけハッキリ喧嘩売られちゃあねぇ…。俺もそこまで人間できてないんで、本気で潰すっスよ」
「当たり前だ。こっちだって負ける気はさらさらねぇんだよ!」
体育館に案内されると、どうやら片面コートでやるみたいで、反対側では通常練習をしていた。
「あぁ...きたか。今日はこっちだけでやってくれるかな」
私たちが体育館に入ると、一人の中年で太った男性…おそらく海常の監督が話しかけてきた。
「よろしくお願いします!それで...これは?」
「見てのとおりだよ。今日の試合は軽い調整だからね。出ない部員には学ぶものがなさすぎてね。無駄をなくす為に普段の練習をしているよ」
相手の監督のその発言を聞いて誠凛の全員がイラッとした顔をしていた。
かと言い私もこれには少しむっとしてしまう。
「それでも、相手はうちのレギュラーだ。トリプルスコアなどにならないように頼むよ」
この監督は誠凛のことを舐めていると全員が一瞬にしてわかってしまった。
「なめやがって...練習の片手間に相手してやるってことかよ!」
火神くんや2年の先輩たちはもうすでにフラストレーションが溜まっているみたいだ。
「黄瀬...お前なにユニフォーム着てんだ。お前は出さんぞ」
「...え?なんでっスか!」
「お前が出たら試合にならないだろう。だからお前はベンチだ」
ユニフォームを着ようとしてた黄瀬に対して監督はそう言い残すと他の部員のところに行き黄瀬くんから離れていった。
「大丈夫っス!ベンチにいるわけだしあの人ギャフンと言わせてくれれば...まぁでも、俺を引きずり出すことが出来なきゃキセキの世代を倒すとかいう資格ないっスから」
「アップはしといてください。出番待つとかないんで」
「....あの、すいません。調整とかそーゆーのはちょっと無理かと」
テツヤくんは黄瀬くんに、リコさんは相手の監督にいった。
『そんな余裕はすぐなくなると思いますよ』
私が最後に追い討ちをかけるように伝えると、監督は一瞬照れたあと、イラついた顔をして黄瀬くんは少し楽しみそうに笑っていた。
「黄瀬…あの女神のように美しい女性は誰だ?」
「中学時代のマネージャーで、雫っちって言うんすよ〜!可愛いっスよね〜!?でもダメっスよ森山さん、雫っちはオレのなんで!」
「オレ、今日あの子のためにシュートを打つ…」
「森山テメェ!相手のマネージャーのために決めてどうすんだ!しばくぞ!?黄瀬も相手のマネージャーにベタベタしてんじゃねぇ!!」
「ちょ、蹴らないでくださいッスー!!!」
なにやら向こうのベンチは騒いでいるみたいだけど、もう練習試合が始まる…
『…火神くん、ちょっといい??』
「それではこれから誠凛高校と海常高校の練習試合を始めます!」