『第19章』ファイナル



「(うちの流れは途切れてない。
 火神君のゾーン抜きでも十分やれてる。なら…)」


リコさんは”黒子交代”を宣言した。




「なんで!出るのよ、こんな時に」
なにやら根武谷さんに怒る実渕さん。


そんな実渕さんにテツヤくんがぶつかりそうになるが、未然に避けられた


「ごめんなさいね」


「いえ…」
 

「(黒子を避けた?)」
降旗くんが思うのと同時に、


「(観客にも…おかしいよね。だって、誰にも気づかれないのが普通の筈なのに…)」
雫もそう思っていた。



火神くんのマークは葉山さんに戻った。


急に葉山さんは火神くんをじっと見つめ、よかった!と言い出した。


「赤司にやられても、まだあきらめてないっ」

「あたりめーだ!何言ってる!?」


火神くんが反論する。



「だってさ…戦意失くしたショボくれた奴にやり返しても、面白くないじゃんよ。もう二回も抜かれたもんね。5回は抜くよ」



その言葉に困惑する火神くん


「(5!? 倍返しの4回とかじゃねぇの?計算方法がよく分からん!)」


「いや、何度でも抜いて返しきれなくしてやらぁ!」


火神くんが言い返すと、ボールが回ってきた。
急に葉山さんの雰囲気が変わった。




「(タイガ以外にもいたか、この気配…”野生”)」
アレックスは心の中で思った。



「(こいつ!)」


火神くんの後ろからテツヤくんが現れ、日向先輩へとパスが回されシュートを放つが、外れる。



「触ってたのか…」



日向先輩が実渕さんに言うが…



「まぁね。けど、問題はそこじゃないわよ、順平ちゃん」


「(順平ちゃん…!?)」



洛山ボールから、征十郎から渡されたボールは葉山さんへ。
火神くんが行く手を阻むが、葉山さんは”4本”でドリブルを放つ!


「(マジで消えたように見える…!)」


洛山へ得点が入る。



「洛山から点を取るには全員の力を合わせなきゃダメだ!パス、回してくれよ!」

日向先輩がみんなに声をかけた。



「(やっぱり変だ。さっきからもうテツヤくんがほとんどディフェンスを外せてない!…まさか、テツヤくんの影の薄さが無くなってる!?)」



『リコさんっ、』


リコさんにこの事を言おうとしたその瞬間、テツヤくんからのパスを実渕さんに止められてしまう。



「テツくんのパスがとられた!?」


「いや…
 (テツにシュートを教えた時の違和感。あれはつまり…こういうことかよ)」


桃井と青峰も観客席での違和感に気づいた。



「くそっ、一体どうやって…」


そう日向先輩がつぶやくと、実渕さんが普通に答える


「何も。見えてたからとったの、それだけよ」


「(見えてた…?じゃあ、さっき3Pに追いつかれたのは…。ってことはまさか…)」



「見るに堪えない愚行だよ。唯一最大の長所を手放すとは」


征十郎の言葉にびくりと反応するテツヤくん


「おまえが中学時代、今のスタイルに行きついた後、僕はパスのバリエーションを増やすことはさせても、シュートやドリブルは身に着けさせなかった。
 なぜだかわかるかい?」



「それをすれば、いずれ影の薄さが失われるのが分かっていたからだ。バニシングドライブ・ファントムシュート。そんな派手な技を使う選手が目立たないはずないだろう?さらに決定打は”準決勝のブザービーター”」



「なまじ光ることを覚えたばかりに
 おまえはもはや影にもなれなくなった」



「幻の6人目になくなったお前ではすでに並の選手の価値もない。こうなることに今まで気付けなかっただなんて、失望したよ、テツヤ」



征十郎はテツヤくんにそう言い放って、その場を離れた


「(くそっ、普通のフェイント程度にしかなってない!)」


伊月先輩はそう思ってパスを出しあぐねていた。



その思考をよんだのか、そこを征十郎にカットされるが、そのボールはコート外へ



「少し甘かったか…」



そのタイミングで誠凛の交代。



ベンチにかけようとしたテツヤくんにリコさんは声をかけた。

「黒子くん、そっちじゃなくてこっちこっち!」


監督の隣にくるように指示するリコさん。



「あきらめないで、すぐ出てもらうわよ」



そう言い放った言葉にテツヤくんは驚いた様子だった。


『ここで引っ込めたままなら、負けも同然。やる事は活路を見出すこと…。』



またボールがコート外に出ると、再び交代が告げられる。


「すまないわね、黒子くん。こんな風にコートに戻すなんて」


「いいえ、逆です。行ってきます」


「”第1クォーター残り3分ちょい。あなたに全部あげるわ。だから、思いっきりやられてきてほしいの。
 もう一度戦って勝つために”」



ボールがテツヤくんへまわり、そこからバニシングドライブを放った。だが、マークを外せない。


『”テツヤくんをただひっこめたら、それこそ再起不能になってしまう。だから、あえてプレーを続けてもらって皆でテツヤくんの復活策を見つけ出す”』


続けて、ファントムシュートを放つがそれさえも阻まれる。


洛山の攻撃となり、誠凛の守備もむなしくシュートを入れられてしまう


「どういうつもりか、知らないけど、彼を入れたままやろうなんて、甘いんじゃない?」


実渕さんはそう日向先輩に言う


その後、誠凛は悔しさを晴らすように点を入れて、やり返す。


「さっきの、うちが甘いんじゃなくて
 そっちがなめてんじゃねぇ?」



日向先輩が言い返した。



「第1クォーターを同点で締めたのは上出来ね。でも、交代よ黒子くん。3分足らずで解決策を出すのは流石に無理だけど、情報はとれたわ。
 復活の糸口を考える為にも第2クォーターは一度下がって、様子を見るわよ」



ギュッと服を握りしめて、テツヤくんは「はい…」と返事をした。



「元気出せよ、黒子。またお前のパスが必要なんだ。俯く前に少しでもあがこうぜ」


「火神君…」


「まったく使い物になんねぇお前を入れたままでも第1クォーターなんとかなったんだ。
 こっちのことは心配すんな!」


『その言い方は慰めてるのかよくわからなくなってるよ火神くん…』


「分かっていますが、できればオブラートに包んで言ってくれませんか…?でも…そうですね。
絶対もう一度、コートに戻ります。勝つために」


「おう!頼むぜ、黒子」


「第2クォーターは勝算がある。いくら洛山と言っても、5人全員化けもんって訳じゃない。
特に、5番。黛って選手は水戸部なら十分戦える相手だ」



水戸部先輩は頷いた。



『“なんだろう、5番のひとの違和感…
誰かにすごく雰囲気が似ている…”』



試合開始後、征十郎が誰もいない場所にパスを回した。
一瞬驚く誠凛だが、ミスだと考えボールを取りに行こうとすると…


その瞬間、5番の黛さんがパスの方向を変えた。



一連の行動に誠凛は驚く
それはまさに”ミスデレクション”だったからだ


「まさか黒子と同じ…」


誠凛、それぞれが同じことをつぶやくがそれを征十郎は否定する。



「少し違うな。彼はテツヤと同じ特性を持ちながら基本性能がすべて一回り高い。いわば、テツヤは”旧型”



 黛千尋は”新型”の6人目(シックスマン)だ」



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