『第19章』ファイナル
「黒子!
…今日の試合、よかったらこれ、使ってくれないか?」
降旗君が黒子に渡したのは”リストバンド”
「これは…」
「俺たちの想いがこもってる」
「試合には出られないかもしれないけど、一緒に戦わせてほしいんだ」
『昨日の話聞いて、今日みんなで用意してくれたんだって』
3人の想いに黒子はリストバントを受け取る
「ありがとうございます。両方つけて、戦います。
荻原君のも誠凛(みんな)のも」
そして顧問やコーチの紹介や選手紹介のアナウンスが流れた。
女子高生のリコさんのコーチ紹介に、観客がざわめいていたけれど。
対戦したことある学校は、リコさんのコーチとしての実力を認めざるを得ないだろうな。
「続きまして、スタディングメンバーの紹介です。
11番、黒子テツヤ」
ただ、いつもと違ったのが
観客がテツヤくんの入場にざわついたことだった。
嬉しいことなのに。
なにか、嫌な予感がするーーーーー。
そしてついに…試合開始の挨拶を終えた。
「あの先輩……ジャンプボール…俺に飛ばせてもらえないスか?」
火神くんは木吉先輩に声をかけた
「どうしたんだ? 急に。
確かに高さはお前が上だが…タイミングが…」
「お願いします…」
その表情と言葉に木吉先輩は要求を受け入れたようだ。
「…分かった。じゃ、頼むぜ」
「(火神のこの感じ…見覚えがある。闘志は充満しているけど、落ち着いてる。
恐らく精神的にもベストコンディンション)」
「だとしたら、可能性はあるんじゃないか…?」
その様子を見ていた、むっくんと氷室さんが言う
「かもねー。赤ちんに一泡吹かせられるだとしたら、
考えられないけどまずあいつでしょ」
試合開始の笛が鳴り、最初のボールは火神くんがとった。
伊月先輩からテツヤくんに渡ってイグナイトパス廻を放つ
『え!?イグナイトパス廻!?』
「廻!?それ、俺取れねぇ!」
やはり、日向先輩はパスをとれず、ワンパウンドしてシュートを入れようとする
が、実渕さんが止めた。
「ファンブルしなきゃ決められてたのに。残念ね」
止められたボールは征十郎が拾い、根武谷さんへと渡りシュート
だが、今度は火神くんが止めた
ボールは木吉先輩に渡り、再び火神くんへとパスされる
征十郎と対峙する火神くん
「(昨日の夜、黒子の話を聞いてから考えた。俺がもしあいつの立場だったら、どうしただろう?
お前が悪いと言ったけど、それだけが原因のはずがない。
殴っても変わらなかったかもしれない。結局、答えは出なくて、とにかくこのもやもやを吹っ飛ばしてぇと思った。
だから、飛ぶんだ!)」
火神くんは右足を踏み込む
「(速い……まさかこれは…)」
「(勝ちてぇ!黒子と……皆と!)」
初っ端早々、メテオジャムを放ったのであった。
「(メテオジャム…?)」
中々ない征十郎の驚き顔だった。
「まじあるか!」
「赤司の上からたたき込んだ!」
「えっ!?あの技を使える時って…」
「(俺が教えた、あの領域に入る為のトリガー。
だからってまさか、いきなり入るかよ)」
「(あいつにとってのトリガー。
それは”仲間の為に戦う意志”)」
『火神くん…やっぱりテツヤくんの、誠凛の光(エース)だよ』
「面白い……
ゾーンか」
火神くんがゾーンに入ったことにより、誠凛の攻撃力は跳ね上がる。
無冠の五将でも火神くんは止められない。
「(凄い…やはりゾーンに入った時の攻撃力は桁が違う…。けど…)」
「これってやばくねぇか? ゾーンって体力の消耗が半端ねぇんだろ?最後までもつのかよ…」
「へたにブレーキかけるぐらいなら、このままいくわよ。ただし、スタミナ切れを起こさない為にも火神くんにはオフェンスに専念してもらうわ」
そして、水戸部先輩と交代となったのはテツヤくんだった。
「僕…結構やる気全開で出てったんですけど…」
『こればっかりはしょうがないよね』
観客もテツヤくんが下がったことに反応している。
ものすごく違和感を感じる。
胸がざわつく感じがーーーーーー。
「ってことでおまえはオフェンスに専念だ」
「後ろは俺たちに任せて、ガンガン行け!」
「ウッス!」
「少し調子に乗り過ぎているようだね、火神大我」
無冠の五将が苦戦している中、葉山さんとマークチェンジした征十郎、つまり。
『両チーム、絶対的エース衝突。
ここの結果をこの先の流れに直結する…』
ボールは伊月先輩。
「(どうする? それでも火神でいくか?
俺たちで攻めるか?リスクが低いのは後者だが)」
「(くれ!ここで赤司を逆にぶっ倒せば、
一気に流れに乗れる!)」
その表情に伊月先輩は日向先輩に目配せをし、伊月先輩の選択にコクリと日向先輩はうなづいた。
“ゾーンvsエンペラーアイ”
最初に動いたのは火神だが、赤司はエンペラーアイで止めるかかる。
だが、火神はそれを避けた
「火神の速さがエンペラーアイを超えた!!」
「(いける!このままとどめをさしてやる!)」
そのまま、”メテオジャム”
でも、そのシュートを外れてしまった。
「エンペラーアイを超えた?見くびってもらっては
困るな。
わざと抜かせたんだ」
そうはっきりと征十郎は告げる。
「(なんてやつなの。
火神君は赤司君のカットをかわす為に一歩目の踏込みが大きくなっていた。
その分、ドライブが外に膨らんで、わずかにゴールまでの距離が遠くなってしまった)」
「赤司はエンペラーアイを持つから、無敵やなんちゃう。赤司がエンペラーアイを持つから、無敵なんや」
観客席で今吉がいう。
「馬鹿が。雑念が出てきたな…」
洛山ボール。
征十郎を止めようとするが、葉山さんにスクリーンに入られてしまい、伊月先輩自身が止められてしまう。
征十郎の前には火神くんが…。
「へぇ…赤ちんにしては珍しく一気にカタつけにきたね」
「ここで負けたらゾーンが切れる。だけならまだいいが、100%の力を発揮してそれが通用しないとなりゃ反動で、一気に絶不調もあり得るぜ」
紫原と青峰は流れの傾きを予想していた。
「あまり僕をイラつかせるな」
そう征十郎はつぶやくと、ゾーン状態の火神くんをいとも簡単に転ばせてしまう。
「フェイクとオリジナル。比べられるすら不快だ。
頭が高いぞ」
『火神くん、征十郎に勝てるかどうか考えて、攻めあぐねてる……』
モヤモヤしてそうな火神くんに、水戸部先輩がコクリと火神くんに向かってうなづくと去っていった。
「水戸部…先輩…」
ふぅーーーーーーーー。
「これってゾーンが解けた…?」
「あぁ、いつも通りにな。体力もまだ残ってる、解け方としてはひとまず、最高じゃねーの?」
『(仲間のおかげで攻めていけて、仲間のおかげでゾーンを消費せずに冷静に戻れる…最高だね、火神くん)』
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