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『第19章』ファイナル




ついに翌日、決戦の日。





それぞれが家族や大事な仲間と過ごしている中、雫もまたいつも通りの朝を兄と奏さんが作ってくれた朝ごはんを食べながら過ごしていた。



「いよいよ決勝戦だな、雫。俺も秀徳応援しに早めに観覧席で待ってるからな!」



三位決定戦が決勝の前にある。


海常vs秀徳


キセキの世代でいうと、涼太くんと緑間くんの戦いでもある。



が、昨日のセミファイナルの様子でいくと、涼太くんの出場は難しいと思う。





『ありがとう泪、私はみんなを応援することしかできないけど、それでもここまで来れて、洛山と戦えて嬉しいと思うよ』





“試合前に少し話したい”



メールの受信音がし、内容を確認すると、
簡潔に、ただ断る術がないくらい希望というより命令に近いのがこんな短文でも伝わるのがわかる。




『私も、少し早めにでようかな』






そして夕方ーーーーー。


東京体育館に最後の試合の行く末を見届けようと各高校が会場にどんどんやってきた。




「うーさっぶ。しっかし、青峰が一緒に決勝を見に来るなんてなぁ、雪でも降るんちゃうか」



「うっせぇな。受験勉強もロクに進んでねぇんだろ」



「ぬかせ」
「お前より百倍頭良いっつうの」






「紫原が素直にわしらと見に来るなんて、雪でも降りそうじゃな」


「うっさいし、もう。アゴ」



「アゴだな」

「アゴ」


アゴ呼ばわりで落ち込む岡村だが、そんな似たような会話の後、桐皇と陽泉の団体がお互いに気づいた。



「あーら、陽泉さん。こらどうも」


「今吉?…夏以来か。久しぶりじゃな。まぁ、お互い負けちまったが」


「いーや、当たりこそねてしまいましたな。ははは」


主将たちの会話に引き続き、青峰と紫原も


「よぉ、開会式で会ったばっかなのに、随分久しぶりな気がすんな」


「だねぇ」


「そういや、一人いなくね?あの片目隠れた…」


「むろちん?なんか用事で遅れんだって」



そう言った後、沈黙が流れるが、紫原が切り出した


「ねぇ、峰ちん」


「あぁ?」


「どっちが勝つと思う?」


あの無頓着な紫原ですら、勝敗の行方を気にしていた。


「なんだそれ、3決の話か?決勝の話か?」


「両方ー」


「3決はもう決まってんだろ。あいつが欠場しちまったら、気合でどうこうなる問題じゃねぇし。決勝はしんねぇよ、



ーーーーーだから見届けに来たんだろ?」



「この試合で、ぽたちんの未来も変わるんだよね〜 」


「あぁ、そうだな」



「赤ちんの横にいるぽたちんがフツーだと思ってるけど、ぽたちんが京都行っちゃったら、きっと峰ちんも黒ちんも、黄瀬ちんも悲しいよねー」



「他のやつらのことは知んねーよ、ただ確かに気に食わなねぇな」







会場では3決は予想通り、秀徳優勢で10分間休憩を迎えた。
キセキの世代緑間を相手に、黄瀬の出場なしでは海常は厳しい試合だった。



ハーフタイムの間にファイナルの練習が始まり、誠凛と洛山がアップを始めた。




日向先輩が洛山の練習を見ているのを見て、不思議そうに河原くんが声をかけた。



「キャプテン、どうかしたんですか?」


その言葉に日向先輩は洛山の練習を見るように言った


「パスからレイアップしているだけじゃ……」


河原くんは言いかけるが、あることに気付き絶句する。


「あいつら、常に同じリズムでまったく外さないんだ。レイアップはもっとも成功率の高い基本のシュートだ。…だが、どんな強豪でも100%入れるところなんて、見たことねぇ。こいつら基本が出来てるなんてレベルじゃない。染み付いてるんだ。恐ろしい濃さでおびただしいほどの反復練習を経て、ただのレイアップシュート見て、ぞっとしたのは初めてだぜ」


一方、洛山ではーーー。



根武谷の長いゲップに実渕が怒っていた。



「あんたそれ、長すぎでしょ!過去最長じゃないの!?」



「おう、今日MAX食ってきたからよ。なんせ俺のマッチアップは木吉だろ?あいつとは因縁もあるしな!つい筋力が膨れ上がっちまう!」



「レオ姉は?」



「日向順平。いもくさいのはタイプじゃないけど、
 ちゃんと可愛がってあげるわよ」



不適な笑みで日向先輩をみながら口角を上げる実渕
さん




ぶるっ!!



『大丈夫ですか?日向先輩』



「なんか一瞬、すげぇ寒気した」




「それより心配なのはあんたなんだけど、火神でしょ。マーク」


「あぁ、やばいね!けどまぁ、なんとかなるっしょ!ねぇー黛さん」




「軽いわねぇ、相変わらず。状況分かってんの?」




「わかってるって!要は…
 誠凛ぶっつぶせばいいってことっしょ」



「ならいいけど」



「赤司、スタートからでんだよな?」


「もちろんだ。彼らは強い。決して油断できない。だが、絶対は僕だ。そして、勝つのは洛山のバスケこそ、絶対だ」



洛山コートのほうに転がってしまったボールを征十郎が拾ってくれ、テツヤくんに渡した



「ついにこの日が来たね
正直、驚いているよ。おまえがここまで来る可能性は低いと思っていた。あの時の答えは出たかい?」



「はい」



「では見せてもらおうか?おまえのバスケを」




「いえ、見せるのは僕のバスケではありません
ーーーー僕達のバスケです」



そう宣言をしたテツヤくんの目は真剣だ

それを聞いた征十郎はフッと笑った


「なるほど
受けてやろう」




征十郎はベンチにいる私の方を向いた。




「雫がこのチーム(誠凛)にいれるのは、この試合が終わるまでのこと。しっかり目に焼き付けておくことだ。僕の絶対の勝利を」




『私は誠凛を、みんなを信じてるよ』






ーーーーー試合前



征十郎からのメールを受け取り、早く着くようにした私は、東京体育館の近くの公園で征十郎と会った。




大した話はしていない。




今のテツヤくんと征十郎のやり取りのように、誠凛が、私のいるチームメイトがファイナルまでくると思っていなかった話と、約束の確認だった。






「今日の試合、僕が、洛山が勝ったら一年前の約束どおり洛山にきてもらうよ」




約束なんてしてない。
ただ、一方的な宣戦布告だったはず。




それでも一年間、私を縛るのには十分な約束だった。





『新しい光と影、そして仲間を思い合って、なによりバスケが大好きなみんなはきっと、負けないよ』











3決の試合も終わり、秀徳が勝利を収めた。
喜ぶ秀徳の中で、涼太くんに声をかける緑間くんの姿があった。



「黄瀬、勝負はお預けだ。次こそ、お互い全力でやろう」



「緑間っち…」




「当ったり前じゃないッスか!俺が出てたら、勝ってたッス絶対!」




「このっ…返り討ちにしてやるのだよ」




「まぁ、しょうがないっすねぇ。悔しいけど、今日の俺らは前座ッス。
 おいしい所は主役に譲るッスよ」






最終試合が始まるーーーーーー。





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