『第19章』〜ファイナル〜






海常との試合を終え、誠凛も控え室に戻り帰る支度をしていたところ、ボーとしている黒子に雫は声をかけた。


『どうしたの?テツヤくん』

「いえ…雫さんは知ってると思いますけど、僕は今までパスに徹してきて、シュートを決めたことがなくて、ましてはブザービーターなんて初めてなんです」

「おっ、そういやそうか…」

『たしかに、ブザービーターに繋がるパスはたくさんあったけど…シュートは初めてだね』

「なんというかもう…死んでも本望です」

「うわっ!?見たことねぇ、最高に緩んだ顔!
 つうか、死ぬな!」

「喜ぶのは無理ないなぁ」
 
「影が薄いどころか、今日一番のヒーローじゃないか?」


木吉と伊月がそういう。


「喜ぶのはいいが、ほどほどにしておけよ」


日向がたしなめるようにいうが、顔に締まりがない。


『日向先輩、顔緩んでますよ?』

「締まんないわね!もう。日本一まであとひとつ。海常はもちろん、今まで戦ってきたチームの分まで勝たなきゃならないんだから」


結局最後はリコさんが締めた。


「そんじゃ、帰んぞ!」

「「「「おっす!」」」

火神はそんな中、あることに気付く


「あれ!?あれ!?…ねぇ!」

「どうした、急に?」

「リングなくした!」

『えぇ!?氷室さんとの大切なものじゃない!』

「ちょ、俺探してきます!」

「おい!火神!」

火神は探しに行ってしまった。そして試合会場で探していると、緑間が火神に声をかけた。


「探し物はこれか?」

「そう、それ!どこで…!?緑間…」


黒子と雫が試合会場にくると、緑間と火神が話していた。


「黄瀬に勝ったようだな」

「ん、おう」


火神がそう言うと、緑間は笑った。


「なんだよ?」

「まさかお前が赤司の所までたどり着くとはな。ほめてやるのだよ」

「何で上からなんだよ。てめぇはよ。つーか、何でこんなとこいんだよ」

「別に、物思いにふけっていただけなのだよ」
そう返した。

「なんだよ、そりゃ。おまえだって明日、3決あるだろうが」

「かまわん。不本意だが、結果は見えている。その後、ついでにお前達の試合も眺めていくことにするのだよ」

「赤司の応援でもすんのか?」

「するか、馬鹿め」


緑間は即答した。


「その気もないし、奴に応援は必要ない。赤司は強いぞ」

「わかってら。でも、やってみなきゃわかんねぇぜ」

そんな二人を眺めている黒子と雫が後ろから声をかけられた。


「よぉ、何してんの?こんなところで」

『「高尾君」』


高尾は2人の視線の先に緑間と火神がいることに気付く。


「…あれ?真ちゃんの隣にいるの、火神?」


それを見て、笑い出す高尾。


「…そういや、夏にもこんなことあったなぁ。まぁ、でも笑って見てるノリじゃねぇな。いくわ、明日頑張れよ」

「はい」

「おーい、真ちゃん!頼むぜ、毎回。帰るぞ!」


高尾が緑間に声をかける。


「火神、ひとつ教えてやるのだよ。赤司征十郎は二人いる」

「何言ってんだ!いったいどういうことだよ!」

「…あとはそこにいる黒子と雫に聞け。じゃあな、ぜいぜい頑張るのだよ」

『…緑間くん』

「…ようやくたどり着くことができたな。まさか自身で向かい立つとは思わらなかったのだよ…」

そして雫の頭をポンと叩いた緑間が去った後、火神は黒子と雫に聞く。


「聞いてたんだろ、あれどういうことだよ」


そう聞くと、黒子は「あとで話します」と返した。


「おい!ごまかすなよ!」


火神は怒るが、黒子はそれを否定する。


「いえ、皆の前で話したいんです。隠してきたわけではありませんが、緑間君の話も含めて赤司君と戦う前に知っていてほしい。僕たちの過去を」


『テツヤくん…』


「話しますね、みんなとの過去を。赤司くんのことも」


わたしは静かに頷き、そして私たちは全員で火神くんの家に向かった。








「じゃ、黒子。話してくれ」


いやなんで俺の家!?と突っ込む火神に冷静にリコ含むみんなが諭す。


「黒子は中学からバスケ始めたのか?」


木吉がそう聞く。


「いえ、僕がバスケを始めたのは小5から……。テレビで試合を見て、面白そうと思って。いったって普通の理由で始めました。近くにミニバスのクラブなどもなかったので、僕は毎日ゴールのある公園でバスケをしていました。そんなある日、一人の男の子が声をかけてくれたんです。……彼とはすぐに仲良くなりました。彼は僕よりうまかったので、色々教えてくれました。ですが、6年生の時彼は引っ越すことになり、その時ひとつ約束をしました。二人とも中学でバスケ部に入って、いつか試合で戦おう、と。」


「へぇ、そんな奴がいたんだ」

「で、どうなったの?今もやってんだろ、バスケ」


降旗君がそう聞く。


「いいえ、やめました。僕のせいで。彼はもう、絶対僕を許してはくれないでしょう」


その言葉に雫以外の一同が驚く。


「なんで?…いったい何が?」

「そうですね…やはり、ここから順番を追って話しましょう。彼を約束し、年が明けた4月。僕は帝光中学校に入学しました。春と思えないほど、澄んだ青い空の日でした」


ーーーー青く澄みきった空、帝光中バスケ部。新しい日々への期待と不安。そして僕は―彼らと出会った。




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