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『第18章』セミファイナル







そして黄瀬に対峙したのは黒子だった。驚く海常。


「前と同じなんてこと、ないッスよねぇ」


「はい。前とは違います!」


黒子が答える。


「(イーグルスピア!)」


『空いてるのは左。テツヤくんはわざと右から抜かせ、涼太くんは重心を右に切り返すんじゃ、間に合わない』


「(タイミング完璧!逃げ場はねぇ!)」


だが、黄瀬は回転をかけながらのパスでそれを避けた。


「(今のは黒子君のパススキルの応用。ノーモーションからスピンの遠心力を利用してパス)」


『テツヤくんのパスの応用まで…涼太くん…』


ボールを笠松さんが受け取り、また黄瀬にパスをする。黄瀬はそのままシュートをしようとするが、火神が後ろから現れた。それでも、黄瀬はシュートを決める。


「火神君」


「何をしてこようが無駄っスよ!今の俺は誰にも止められない!」



ボールは黄瀬へとまわり、再び火神VS黄瀬となるが、


「(これはまさか…ファントムシュートかよ!)」


「そんな…パスだけならまだしも」


「ファントムシュート、ミスデレクションが使えなきゃ、撃てないはずじゃ…」


降旗と小金井がつぶやく。


「(いや…使っていない!黄瀬は変則フォームし、そこから緑間の様な高弾道で撃つことで初速をあげて、視界から外した!)」


そんな海常の猛追に観客たちの応援のボルテージも上がっていく。


「なんだよ、これ」


「観客のほとんどが海常を応援してる。これじゃまるで…うちはヒールじゃないか!」


『途中、エースが抜け、それでも食らいつこうとする懸命のプレー。そして、絶体絶命のピンチにエースが戻り、そこからの怒涛の追い上げ。応援したくなるのは当然…』


「こうなると、苦しいのはウチ。差が詰まるたび、湧き上がる観客。ミスすれば、喜ばれ、シュートを決めても歓声はないわ!追われるプレッシャーとアウェーと化した場内、この中で平常どおりプレイするのは至難の業…」


そんな時、木吉がパスを受け取りミスをしてしまう。

黄瀬VS火神


「(遅い!なんとか追いついただけで体勢はバラバラ!)」


黄瀬は火神を抜いた


「(隙だらけっすよ?)」


そのまま、シュートを決めようとするが、火神はあきらめずに後ろから飛ぶ!


「ブッシング! 白、10番。2ショット」


火神がファールをとられてしまった。


「わりぃ」


黄瀬に素直に謝る火神。観客はわざとだとさらにヤジを投げる。


「(違う…。わざとなんかじゃない。こいつはただ…必死なだけ)」


「ヒールだろうが、なんだろうが知らねェよ。そんなもんがあって、負けるのが決まってんの、フィクションの中だけだろうが!!…これは俺たちのドラマだ!筋書きは俺たちが決める!」


「火神……くさい。セリフが…」


「よくそんな、くさいこと言えましたね。一体どの口が言うんですか?」


「てめぇだって、ぼくは影だとかぬかしてただろうが!」


「俺たちのドラマだ!俺たちのドラマだ!」


「リピートするな!」


「火神、おまえドラマの脚本なんてかけたのか?凄ぇな」


「あんたは…黙ってろ…」


「いや、だから、周り気にすることねぇつーか…絶対勝って、その…」


言葉を詰まりながらも必死に伝えようとする火神。


「わかってるよ。みなまで言うな。おかげで肩の力が抜けた。あと残り2分、楽しんでこーぜ」


「日向、それ俺のセリフ…」


「とはいえ、やばい状況は変わっていない。何か手をうたないと…」


伊月がそう言うと、黒子が声を上げた。


「あの…今の火神くんのくさいセリフで思いつきました」


『予測するというより、誘導すると言った方が正しいかもしれない。今の涼太くんを止めるにはそれしかない。日ごろから人間を観察し、訓練しているテツヤくんなら、涼太のプレイ傾向、癖を見抜き、次のプレイを限定することができる』


「解ったわ。残念ながら、やはり黄瀬君の体力が尽きる気配はないし」


「どっちにしろ、黄瀬を止めなきゃ勝てねぇってことだ!なら、黒子に託すしかねぇだろ」


「いくぞ!勝機はまだある!」


「全員最後まで絶対、あきらめんな!誠凛ーファイオー!!」


そして黒子の観察が始まり、その間も黄瀬は得点を重ね、海常リードで追いつかれたが、また78対79で誠凛は逆転を果たす。


「落ち着け!まだ時間はある。 時間たっぷりとって、1本とればうちの勝ちだ!」


笠松はそう皆に言う。


「今ので答えが出ました。タイムアウトの時に言った通りです。あとはよろしくお願いします」


黒子は火神にそう話した。


海常が攻撃に移る中、黄瀬の目の前に黒子がマークに付いた


「これが最後です、黄瀬君。来い!」


「ここが最後のチャンスだ!死ぬ気で全部出しきれ!」


日向が叫ぶ。
 

誠凛のディフェンスに熱が入る。


「焦るな!集中しろ!全力で冷静にとどめをさす!」


笠松が叫ぶ。

両者、こう着状態の中―
 

「(ライバルって言ってくれたこと、本当にうれしかった。だから…)」


ボールは黄瀬へとパスされた


「(勝ちたい!)」
 

その瞬間、黒子は黄瀬のボールをスティールしようとする。一瞬、驚く黄瀬、


「(スティール!?)」


「(だが、不可能だ。いくら意表をついた所で
 あいつの速さはたかがしれている)」


黄瀬は青峰のコピーで黒子をかわすが、その前に火神が現れる


「黄瀬!!」
  

「(やっぱ、そう来たッスか…。
 ならここでかわして…終わりにする!)」


今度は赤司のコピーで火神をかわそうとする。
だが、火神はそれをこらえ、こけない。すると、黄瀬はもう一回、切り返しをし、火神をこけさせた。


「(切り返しふたつ…!?…くそっ)」


「とどめだ!」


黄瀬は紫原の「トールハンマー」でシュートを決めようとする。


「いや…狙い通りだよ。ここまで全部な」


火神はそうつぶやく。そしてあまりにもうまくいきすぎている様子に黄瀬君が直感する。


「(おかしい…。すんなりいきすぎじゃないッスか…?これで俺が決めたら、黒子っちのマークは意味がなかったことになる。じゃあ・・・わざと…?)」



その瞬間、伊月の「イーグルスピア」が放たれようとしていた。


「(イーグルスピア!?)」


ボールは黄瀬の手から弾き飛ばされる


「(まだだ!まだボールはいきている!けど、もしとってもそこから打てるシュートがない。なら、パスか?)」


「(違う!頼っちゃいけない仲間なんて、いるもんか!エースの仕事はチームを勝たせることだ!)」


その瞬間、空中にあったボールを黄瀬はパスをした。笠松先輩へと。


「(ったく、まいるぜ。これを決めなきゃ…男じゃねぇ!)」


放ったシュートは見事にゴールへと入った。


80対79
喜ぶ海常。


会場全体が海常の勝ちを確信している中、ボールは木吉の手に渡った。


「まだだ!」


それを見て、笠松が叫ぶ

「言ったはずだぜ!」


木吉からロングパスが火神に放たれる。


「狙い通りだってな!」


「「「いけー!!」」」


海常は火神を追いかけるが、一歩先に出ていた火神に追いつけない。


「(速え…!追いついたとしても火神を止めるには俺では高さが圧倒的に足りねぇ!…どうする)」


その瞬間、黄瀬が通り過ぎた。そして、火神に追いつき、黄瀬は火神の目の前に立ちはだかった!


「そんな!」


「(どうする?ドリブルでかわすような時間はねぇ!だとしたら…いちかばちかだ!)」


「メテオ・ジャム!?」


「黄瀬ぇぇ!」


「火神君!!」


「まだだ!!」


火神はそう叫び、わざとゴールの壁にぶつけ、跳ね返りさせた。そのボールは黒子へと渡り、ファントムシュートを決めた。ブザービーターで。


そして80対81で誠凛の勝利。


「完敗ッスわ」

「黄瀬…」


火神と握手を交わす。

「本当に…二度も俺に勝ちやがって、マジで捨て台詞も出てこないっすよ。けど、すっきりもしてる。全部出しきって負けて悔いなし、って感じッス」


『涼太くん…』


「黄瀬君、強かったです本当に。試合には勝ちましたが、黄瀬君を止めることはできませんでした」


「なんだかなぁ…。オレだけ勝っても意味ないんスよね、やっぱ。昔だったら、その言葉だけでもドヤ顔出来たッスけど…今はもう、嫌味言われるとしか思えないッス…次こそ、うちが勝つ。また来年、勝負ッス!」


「はいっ!」


「こりゃ、次やる時はまた一段と厳しそうだな」


「はい、最高の選手です、海常の黄瀬君は」


それぞれ、海常と握手する中のキャプテン同士―

「もういっそ、優勝しちまえ。勝てよ、俺らの分まで」


「はい!」


試合終了の挨拶が終わり、それぞれ控え室に戻る中。黄瀬は足の痛みを感じた。


「(今頃になって…けど、もういいんだ。終わったんだ、全て)」


すると、黄瀬の頭の上にタオルがかけられる。


「ったく、んな見え見えのやせ我慢してるようじゃ、モデルは出来ても役者は無理だな」


笠松先輩はそう言った。すると、黄瀬の目から涙が流れ始める


「勝ち…たかった…ッス!」


「俺…皆と勝ちたかったッスぅぅ…」


「そうだな…」


海常としてチームプレーを大切にしたエースの涼太くんのプレーに、わたしの心にも感動が生まれていた。
勝って嬉しい。
涼太くんが変わってくれて嬉しい。




そして……


次はファイナル。征十郎との試合だ。



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