『第2章』海常高校と練習試合





校門まで黄瀬くんを送るため、2人で歩いていた。

「本当学校離れて寂しいっスよぉぉ!!昼休みになるたびに雫っちに会いたくなっちゃって…この間ピーチティー買っちゃうくらいっスよ」

『私も今日久しぶりに黄瀬くんに飛びつかれたとき懐かしく感じたよ』

「と、いうか…セーラー服可愛すぎて永久保存したいんスけど!!一緒に写真撮ろ!」


そう言って黄瀬くんは私の肩を組んで、写真を撮った。


『本当に待ち受けにしたの?』

「これで携帯開くたび寂しくないっス!」

『ふふ、本当相変わらず元気で良かった、バスケ部は楽しい?』

「んー、まぁそうっすね、厳しい先輩がいるんで怒られることも多いっスけど、エースとして試合に出してもらえてるっス」


青峰と1on1していた前みたいに、飛び抜けてワクワクしているような感覚ではなさそうだけれど、うまくやっているみたいだ。


「雫っち、赤司っちに勝って前の赤司っちに戻したいって言ってたじゃないっスか。正直あのチームで勝てるかどうか……」

『…まだ入ったばかりで手探りだし、個人個人はどうかわからないけど、力を合わせれば不可能なんてないでしょ?』

「…む、やっぱり黒子っちの考えなんっスね」

『とにかく、来週の練習試合楽しみにしてるね』

「あっそうだ!オレが勝ったら、オレのこと名前で呼んでほしいんスけど…黒子っちだけ、ずるいっス…」

『え?それくらい、別に勝っても負けても…』

「いや、雫っちに名前で呼ばれるなんて、神に愛されるようなものっスよ!?タダでなんてそんな…ダメっス!」

『そんなんでいいなら、全然いいよ?でも勝つのは誠凛だけどね?』


黄瀬くんは約束ッスよー!と言って笑顔で去っていった。













体育館に戻ると、みんなはいつも通り練習をしていた。
私が戻ったのに気づくと、リコさんは私を呼び出した。



「雫ちゃん、以前本入部届をもらった時、他の一年生と同じように志望動機を聞いたわよね?」


屋上でみんなが宣誓した次の日、石灰で“日本一にします”とテツヤくんと書いたことはリコさんにバレていた。

志望動機も、テツヤくんと同じ、チームプレーでキセキの世代に勝ち、日本一になりたい。その手伝いをしたいことを伝えた。


「…さっき、黄瀬くんが言っていた言葉で、雫ちゃんの願い…って言っていたのを聞いたわ。単刀直入に聞くと、雫ちゃんには黒子くんとは別のもっと具体的な目標があるんじゃないかしら?」



“雫っちの願いだって、ここじゃあ叶えられそうにないしーーーーーー”




やはり、リコさんはかしこくて鋭い。
女子高生でみんなをまとめてカントクをしているだけある。
さっき黄瀬くんが呟いた一言で、そこまで見抜いてしまうなんて…


「…言いたくないのなら無理に聞くつもりはないわ。同じバスケ部の仲間で、力になれるのであれば聞いておきたいと思っただけだから」


『リコさん…、ありがとうございます。少し、私の私情を挟む話になってしまうので……でも、必ず皆さんに伝えるときが来ると思います!それまで…その…』


「…わかったわ!信じて待つことにする。ただ、悩んでしまうのであれば、私でも日向くんでも、相談にきなさいね!」





あぁ、ほんとうにこの誠凛バスケ部はいいチームだ。





『ありがとうございます、リコさん…っ』






3/9ページ