『第1章』入学と入部
春の麗らかな陽射しが降り注ぐ中。
入学式が始まった。
ーーーーーー新入生代表、藍澤雫
私立誠凛高等学校の満開に咲き誇る桜並木が立
ち並ぶ校舎と校門とを結ぶ道には、生徒達と共に部活動勧誘の声が無数に溢れていた。
「ラグビー興味ない?」
「日本人なら野球でしょー!」
「水泳!超気持ち良い!!」
新設校故に現在唯一の上級生である二年生達は自分達の部活に新入部員を招き入れようと、歩いてくる新一年生達に思い思いに勧誘の声をかけていた。
「藍澤さん、バスケ部入りますよね?」
『うん、黒子くん…制服が違うと変な感じだね』
「藍澤さんのセーラー服姿を拝めるなんて光栄です」
『セーラー服だと、なんか変な感じ…黒子くんも学ラン新鮮だね』
“パシャっ”
「絶対これ後で必要になると思うんですよね」
『…写真撮った?』
「さて、入部届け出し行きましょうか」
『え、スルーした?』
『すみません、バスケ部はここで会っていますか?』
「えっ?あ、じゃ、女子…っ!」
「もしかして、マネージャー希望とか!?」
メガネをかけた人と、ショートカットの人に声かけた。2人は驚いたような顔で私を見つめている。
「私はカントクの相田リコよ!この仮入部届に、名前と出身校書いてね!」
『あ、はい…』
カントクさん、女のひとなんだ!しかも生徒…すごいなぁ…
隣で黒子くんは書いているけど、多分気付かれてない…!?
そして名前と中学、備考欄にマネージャー希望と書いた。
すると私の書いているところが暗くなる。影?
「…ここがバスケ部か?」
大きな男子生徒が私の後ろで、おそらく二年生の首根っこを掴んできた。
カントクさんが部の説明をはじめた。
「誠凛は去年出来たばっかの新設校なの。上級生はまだ二年だけだからキミみたいに体格よければすぐに・・・」
「そーゆーのいいよ。紙くれ。名前書いたら帰る」
そして彼は私の横で書き始める…
するとカントクさんは彼に話しかける。
「あれ?志望動機は無し・・・・?」
「別にねーよ。どーせ日本のバスケなんてどこも一緒だろ」
彼はアメリカ育ちみたいだ。
なんだか、勘だけど、強そうな気がする。
あれ、黒子くんいなくなってる…
そして大きな彼が去った後、カントクさんは黒子くんの入部届けをみつけた。
「帝光バスケ部出身!?しかも今年一年ってことはキセキの世代の!?うわーなんでそんな金の卵の顔忘れたんだ私!!」
私はメガネのひとにかけましたと言って、紙を渡してその場を去った。
黒子くんを探すために、
「っ!おいリコ、そっちだけじゃねぇ、さっきのくそ綺麗な子も帝光中だとよ」
「今年の一年はとんでもなさそうね…」
『さっき、気づかれなかったね?』
「もう慣れました。そして、新しい光も見つかりそうです」
さっきのアメリカくんのことかな?
『新しい光をみつけて、チームプレーで頑張ろうね、黒子く…』
「テツヤです、もう付き合いも長いですし、ここからはお互い目的のある仲間じゃないですか。ぼくも雫さんと呼びます」
『…そうだね、テツヤくん。ここから頑張ろうね』
「はい、改めてよろしくお願いします」
私は胸元のネックレスを手で抑えた。
征十郎がいない学校での生活が始まった。