『第6章』夏休み直前
目が覚めたら家のベッドだった。
きっと兄が迎えに来て運んでくれたのだろう。
今はもうどっぷり夜が暮れているみたいだ。
『泪…ごめん迷惑かけた…』
兄はリビングにいた。
机の上に、奏さんが作ってくれたであろう、焼うどんがあった。
「迷惑なんて家族でねえよ、心配はしたけどな。焼うどん温めてやる」
どうやら私の荷物を赤司くんが持ってくれて、泪が私を運んだとのこと。
『体育祭大丈夫だったかな…片付けできなかった』
「おぉ、さすがだな赤司くんは、気にすると思ったみたいで、問題なく終了したと伝えてくれ、って言われたよ」
彼がいうなら本当に問題なく終わったのだろう。
最近彼にお世話になりすぎてるな。
灰崎くんにも。
私の好きなリプ○ンシリーズをプレゼントしよう。
『赤司くん、ご心配をおかけしました』
昼休み、自分のピーチティーと一緒に、赤司くんにアップルティーを渡した。
なんとなくアップルティーのイメージだった。
「これはいつも藍澤が飲んでるシリーズのか?ありがたくいただくよ」
なかなか美味しいね、と赤司くんは言ってくれた。ピーチティーよりは甘くないはずだ。
「体調はもう大丈夫なのか?」
『おかげさまで、もうこの通り元気満タン』
「今日から部活もあるから、無理しないように」
ありがとうと伝えて、私は灰崎くんを探しに行った。
食堂のところに灰崎くんはいた。
どうやら青峰の学食のおかずを横取りしてたみたいだ。さつきもいる。
『灰崎くん、この間はありがとう。癪だけど、これお礼』
そう言って私はリプ○ンの、なんとなく消去法でグレープティーをわたした。
「ミドリンから聞いたよぅ、もう大丈夫なの?部活も出れる?」
「お前足はえーのに身体弱いんだな、つーか灰崎てめぇ俺の唐揚げとったんだからそのジュースよこせ」
「さすがに俺も目の前で死なれたら目覚め悪りぃからな。お、グレープティーじゃん。わかってるわお前」
やらねーよ、じゃぁな。と灰崎くんは颯爽とどこかへ向かった。
『そういえば緑間くんも保健室いたな、ピーチティーもらったし、おしるこ渡しとこ』
「見つけた〜ぽたちん、倒れたって聞いたから、ミルキー買ってきたよ〜」
「むっくん!」
なんでミルキー?と返してお礼を言い受け取ると、ママの味だから。といわれた。
「紫原がお菓子買ってあげるとか、レアだな」
「峰ちんにはあげないけどね〜」
「あ、ミルキーといえば、ペコちゃんの柄切れずに10個いるといいことあるって聞いたよ!」
さつきはそういう迷信とか、占いとか好きそうだな。おは朝信者に唯一仲間できそうなのに。
『食べながら探してみるね。ありがとむっくん』
さて、おは朝信者のところにおしるこ持っていこう。
『あ、いたのだよ。緑間くん』
「…真似をするな藍澤。…体調はいいのか?」
おかげさまで、と言って、おしるこを渡した。
もちろん“つめた〜い”やつだ。
緑間くんは受け取ると、その場で飲み始めた。
今日は手が塞がってないのだな。
『ラッキーアイテムは今日なに?』
「今日のラッキーアイテムはテーピングなのだよ。常に巻いて人事を尽くしている俺は今日は無敵だ」
『それは強いね、放課後巻き直してあげよう』
緑間くんはツンデレというやつみたいで、最初の頃よりだいぶ話せるようになったな。
表情も、柔らかくなったような気がする。
教室に戻って、ミルキーを一つ食べると、1回目でペコちゃんの顔が10個あった。
赤司くんに、何か嬉しそうだねって言われたから、ミルキーの話をすると笑われた。
放課後みんなにこの10個のペコちゃんを見せてあげようとおもった。