『第12章』夏祭り





最近いろんなことが起きすぎていて、一回整理したいところだ。


灰崎くんの一件も、みんなに心配かけてしまった。
黄瀬くんも自分が入ってきたことも関係あるのではないかと、灰崎くんを気にするより、灰崎くんが私に対してしたことを気に病んでいるようだ。


灰崎くんの分も、レギュラーとして活躍頑張ってほしいと伝えると、黄瀬くんがもちろんっス!と一層練習に励んでいる。



でもどことなく、練習もギクシャクする場面も増えていて、個人個人では仲良くなれた気もするけども、チームワークとしては少し不安だ。



『…ふぅ…』

「ため息なんて珍しいじゃん?」

『…無意識だった』

「そういえば和くんからビデオもらったけど、赤司くんとのキスシーンどエロかったなぁ」

『っ!泪!からかわないで!』

「和くんあれ生で見ちゃったんでしょ?相当凹んでるから遊んであげなよー?つーか連絡しろ!」

そういえば和成からいつも連絡くるのに、文化祭のあとから連絡がかれこれ3週間以上来てないな。


「…お前、今かなり頭ん中混乱してるみたいだな」

『…なんでわかるの?』

「こないだ月光弾いてたからな、お前あの曲弾くとき、気持ち落ち着かせたいときだから」


さすが兄だ、よくわかってくれる…


「好きなやつでもできた?」

『…わかんない』

「わかんないってことは、お前があと一歩踏み出してないってことだろ」


私があと一歩…?


「決定づける何かを、本当はわかっているのに均衡を壊したくなくて踏み出してねぇんだよ」

「モヤモヤしたもん、全部ぶつけちまえば早い話なのにな、不器用なもんだ」


『…なんか泪のくせにムカつく…』

「…失ってからじゃ、おせーんだからな」


そう言った泪は、どこか自分が何かを失ったことがあるような、そんな遠い目をしていた。















「俺以外の男とキスした幼なじみは俺に何の用っすかーー??」

『そんなふて腐れてどうしたのよ』

「べっつに?あの劇がとてもファーストキスとは思えなくてさぁ」

…そうだ、和成はとても鋭い。

そして私はみんなにはごまかせても、和成には嘘をつきたくない。


“和成は私の1番の友人であり、理解者”なのだ。


和成なら、私のこのモヤモヤした気持ちを理解してくれるかもしれない。


『和成…ちょっと相談してもいい?』

「まぁ、だいたい想像つくけど、もちろん聞くよー?俺はしーちゃんの1番の理解者だからね?」


和成も同じように思ってくれていて、安心したと同時に、赤司くんと黄瀬くんのこと、そしてバスケ部のいざこざなどを話した。


「あーー、中には聞きたくなかった話もあったけど、ま、しーちゃんのことは何でも知りたいし、とりあえず話してくれてサンキュ!」


『…恥ずかしいけど、好きとかそーゆう気持ちとか、チームプレーしたことない私がみんなの気持ちわかってあげることとかが難しいし…』


「バスケに関しては、当人同士しか感じられない不安とかもあるんだろーな、強すぎると、孤独になるっつーのも羨ましい話だが…正直強すぎる帝光の話は、強制退部のこともない話じゃねーだろうし。」


「あと、その、赤司と黄瀬!しーちゃんに手ぇだしやがってむかつくぜっ…、まぁ確かに真反対だな。これは勝手な俺の想像だけど…」


「その赤司ってのは、しーちゃんに対して独占欲が強いんだと思うぜ。他の人より優勢に立ちたいってのがすげぇわかる。そしてその位置にいる自分に絶対的な自信があるのに、どこかに不安もあるんだろうな


ーーーーー独占欲…


「んで、黄瀬ってのは単純!そいつは俺と近い考えの持ち主だと思うぜ?純粋に好きな気持ちを伝えて、赤司に向いているしーちゃんの気を惹きたいんだと思う。こっち向いてーーーって感じの構ってちゃんだな」


な、なるほど…

『私はどっちも嫌だと思わなかったの、何でだと思う?2人とも好きなのかな?好きってどこから好きなの?』


「…好きっていうのは種類もあるし、それは人によってどこまでのパーソナルスペースかっていうのが違う、例えば…」


和成が私に近づく。この感じ二回目だ。


『…っな、なに?』


「俺が抱きしめたり、例えばキスしたらしーちゃんは嫌だ?」


和成と…?


『抱きしめられるのは安心するから嫌じゃない、キ、キスはわかんないけど…恐い』

和成とのこの幼なじみという関係が壊れそうで、キスは友達とする行為ではないのは私も知っている。頬とか、唇以外なら友達ともするんだろうけど…


『唇にするのは、幼なじみの関係が壊れてしまいそうで、恐いな』


「…じゃあする時は、幼なじみの関係をぶっ壊したいときにすることにするわぁ」

と和成はケラケラ笑った。



「そうやって、冷静に何かされたとき、またはされるってなった時に、自分がどう思ったのか、そこを考えるんだ」


ーーーー今みたいにな!



確かに、近寄られるだけで怖いと思う人もいる。灰崎くんの一件で、あんなに男の人に抵抗できないことを知ったし、より怖くなった。


そう考えると、抱きしめられたり、キスされることを受け入れられるということは、その人のことを少なくとも信用しているということだ。




『な、何となくわかった気がします…』


「つーかあんま誰にも彼にも無防備にしてんなよ?なんかあったらすぐ俺に言って!今みたいにな!いつでも話せ!」




ーーーーーー和成ありがとう。




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