『第10章』帝光祭
帝光祭当日ーーーー。
あれから赤司くんとは何事もなく過ごしている。
何事もないが、何も変わってないわけではない。
彼の私をみる視線が優しいということに、気づくことができた。
そして私の中でも、赤司くんの存在は大きくなっている。
少しだけ目で追う回数も増えた気がする。
そして…
「雫、最終確認をしようか」
名前で呼ばれるようになり、クラスとバスケ部で大きな波紋を呼んだ。
いち早く気づいたなっちゃんとつーちゃんにも追求されたし、もちろんさつきにも聞かれた。
“何か2人の間であったの!?”
あったけど、この間の話はまだ恥ずかしくて言えなくて…
今度落ち着いて話すということを伝えた。
ただ、“付き合ってるの⁉︎”に対してははっきり答えた。
私たちは付き合っていない。
なんなら、私は自分の気持ちがわからないということを伝えたし、彼にも好きだとは言われていない。
それでもたしかにキスをした。
「雫っちー!!ミスコン頑張ろうね!!俺も1位目指して頑張るっス」
『黄瀬くん!…将校の格好?すごい似合ってるね!そういえば出し物は縁日だっけ?』
「艶仁知っス!紫原っちのも見て欲しいんでついてきてほしいっス!」
縁日なのにこのコスプレはすごいな。
黄瀬くんのおかげですごく賑わってるみたいだけど…
「あれーぽたちんじゃーん?何お菓子くれんの?」
あ、むっくん!……んん!?
『その格好は…?』
むっくんはおおきなフリフリドレスを着ていた。女王さまみたいなしっかりしたやつ…
「紫原っち!あれやってあれやって!」
「んんー?あぁ…“パンがないならお菓子を食べればいいじゃなぁ〜い!!”」
お、おお…そうだね…むっくん。お菓子あげとこう。
「雫っち!クイズ研のスタンプラリーでよ!」
『それ、いろんな人に誘われたけど…衣装合わせの時間で出れないんだよね』
「そーなんすか…残念…白雪姫の雫っち可愛いだろうなぁ♪あ、みんなで直前に見に行ってもいいっスか!?」
『あれ?劇見にこないんじゃなかった??』
「いやぁ、やっぱり気になるからみんなで見に行くことになって!」
『それは緊張するけど頑張らないとだね』
衣装合わせの時間と開演前の間に1時間はあるから、その間にきてねと伝えておいた。
劇は14時からで、13時から衣装合わせだ。
それまでは暇で、夕方17時にミスコン発表、そのあと後夜祭となっている。
和成が11時にくる予定だから…少し時間あるなぁ。
「なにをしているのだよ」
『あ、緑間くん!今日はホラ貝なんだね』
「そうだ…お前の星座はたしか今日8位なのだよ、ラッキーアイテムは動物の鳴き声だそうだ」
『…8位って微妙だし、そのラッキーアイテムは持つのは厳しそうだね』
「あと黄色に注意、だそうだ。気を付けるのだよ。黄色信号は渡らないほうがいい…」
そう言って緑間くんは去っていった。
相変わらずミステリアスな子だなぁ。
「雫、ここで何しているんだ?」
『赤司くんっ、今緑間くんに会ってて…』
今日の順位とラッキーアイテムの話をしていたことを伝えた。
『赤司くんはこれから道場破りだっけ?』
どうやらいろんなボードゲームの部活動に勝負して賞品を獲得していくらしい。
「13時までは暇つぶしになると思ってね、雫は先約があると言っていたから荒稼ぎしてくるよ」
『そういえば、クイズ研のスタンプラリーはそんなにいい賞品があるのかな?時間的に出れないけど、結構誘われたんだよね』
「あぁ、レブロンのバッシュがもらえるらしいが…それよりもジンクスのほうが強いのかもしれないね」
ーーー優勝した男女は永遠に結ばれるらしいよ。
「君と出れないのが残念だ」