今日から私がマスター
ほんの数日前から、私の知り合いリストに小学生が加わった。こんな渋い喫茶店に小学生がくるのか、という気持ちと同時にややしょっぱい気持ちもある。この少年、毛利先生に引き取られたというのだから。
とかく、この小学生の少年、江戸川コナンはとにかく大人の舌の持ち主だった。
「今日は梓さんはいないのー? 」
「いやー、いらっしゃい常連さん。榎本さんはね、試験前だからしばらくお休みですよ」
「そうなんだ」と納得する小学生である。理解できたんだ。私の知らんところで名前呼びのあたりもちょっと怖い。距離感がわからない。
「さて、コナン君の注文ですが、アイスコーヒーでよろしいですか? 」
「うん!」
「もしよろしければ、こちらに新作のデザートがございますが一緒にいかがですか?」
カウンター席によじ登る子供の身長のたよりなさ。手のひらの小ささ、まだバランスのとれていない顔のパーツ。ーー何度見ても不安になる。
「ええと、ホットケーキのアイス添え?」
「はい。味は2種類あるのですが、私のおすすめはこちらのシナモンとアーモンドの方です。アレルギーやシナモンがイヤじゃなければ、ベーシックなバニラよりもおいしく食べられると思います」
まだ喉仏もない薄いのどが鳴るのが見えた。
「シナモンとアーモンドのホットケーキをお願いします・・・・・・!」
「かしこまりました」
アイスコーヒーを先に出して、ホットケーキの準備をする。ホットケーキはとくにアレンジをしないベーシックなものだ。それに、アーモンドアイスとシナモンシュガー、バターをのせて出来上がりである。蜂蜜とメープルシロップは別添え。お客様の好みに合わせて。
こころなしか、コナン君はいつもよりそわそわしている気がする。いつもなら小難しいクイズや厚めの本を読んでいるのに。今日は私の手元をちらちらと覗いている。
「おまたせしました」
あたたかいホットケーキに冷たいアイス。それもとても甘いやつだ。ホットケーキは、まあベーシックな粉を買って作っているけれど、この組み合わせは結構いけると思う。
調理器具を片づけながらコナン君の様子をうかがう。けして直視してはいけないけれど、雰囲気をね、読む感覚というか。
「マスター! これ、とっても美味しいよ! 」
これには私もにっこり。
夢中で食べる小学生と、それを眺める喫茶店の主。実に絵になる光景だ。こんな日ばかりだといいのに。
「ごちそーさまー。マスター、このホットケーキ、ホイップクリームを添えてもよかったんじゃない? 甘すぎる? 」
「一度考えたのですが、そうなると年齢層を選ぶかなと思いまして。訴求力が若年層に強すぎませんか? 」
「うーん、確かに今のポアロのお客さんの感じからするといまいちかもね」
やはり、はじまってしまう。商品の講評が。
コナン君の舌は本当に大人というか、なんでもかんでも美味しいと言うわけではない。そのうえ、論理的に商品の価値について話してくる。これが嬉しいような、うらさみしいような。
「そうでしょう。でも時々、大人もわっと食べたくなるときがありますから。うちの既存のメニューの中にはパフェだけでしたが、それを強化するためにとりあえず。
コナン君はすぐに食べてしまいましたが、アイスでぐずぐずになったホットケーキも美味しいんです」
はじめて会った日がそもそも新メニューの試食会で、それからこの様子なのだ。コナン君はこれが通常営業のようで、とくに背伸びをしている様子もない。小学生に品評されることを許せれば、客観的なコメントが手に入る。まあ、こういうのもあるんだなあ。
お皿を下げながらコナン君に礼を告げる。
コナン君はナンプレで時間をつぶすらしい。毛利探偵事務所にはお客さんが来ているのだとか。
「ごゆっくり」
一声かけて店内の清掃を行う。店内はどれだけきれいにしたっていい。グラスやカップをふくのも落ち着く。時間があるからこそ、煩雑な処理を落ち着いてこなすことができる。
窓から差し込む日差しがきれいで、うっとりするようなある日のことだった。
とかく、この小学生の少年、江戸川コナンはとにかく大人の舌の持ち主だった。
「今日は梓さんはいないのー? 」
「いやー、いらっしゃい常連さん。榎本さんはね、試験前だからしばらくお休みですよ」
「そうなんだ」と納得する小学生である。理解できたんだ。私の知らんところで名前呼びのあたりもちょっと怖い。距離感がわからない。
「さて、コナン君の注文ですが、アイスコーヒーでよろしいですか? 」
「うん!」
「もしよろしければ、こちらに新作のデザートがございますが一緒にいかがですか?」
カウンター席によじ登る子供の身長のたよりなさ。手のひらの小ささ、まだバランスのとれていない顔のパーツ。ーー何度見ても不安になる。
「ええと、ホットケーキのアイス添え?」
「はい。味は2種類あるのですが、私のおすすめはこちらのシナモンとアーモンドの方です。アレルギーやシナモンがイヤじゃなければ、ベーシックなバニラよりもおいしく食べられると思います」
まだ喉仏もない薄いのどが鳴るのが見えた。
「シナモンとアーモンドのホットケーキをお願いします・・・・・・!」
「かしこまりました」
アイスコーヒーを先に出して、ホットケーキの準備をする。ホットケーキはとくにアレンジをしないベーシックなものだ。それに、アーモンドアイスとシナモンシュガー、バターをのせて出来上がりである。蜂蜜とメープルシロップは別添え。お客様の好みに合わせて。
こころなしか、コナン君はいつもよりそわそわしている気がする。いつもなら小難しいクイズや厚めの本を読んでいるのに。今日は私の手元をちらちらと覗いている。
「おまたせしました」
あたたかいホットケーキに冷たいアイス。それもとても甘いやつだ。ホットケーキは、まあベーシックな粉を買って作っているけれど、この組み合わせは結構いけると思う。
調理器具を片づけながらコナン君の様子をうかがう。けして直視してはいけないけれど、雰囲気をね、読む感覚というか。
「マスター! これ、とっても美味しいよ! 」
これには私もにっこり。
夢中で食べる小学生と、それを眺める喫茶店の主。実に絵になる光景だ。こんな日ばかりだといいのに。
「ごちそーさまー。マスター、このホットケーキ、ホイップクリームを添えてもよかったんじゃない? 甘すぎる? 」
「一度考えたのですが、そうなると年齢層を選ぶかなと思いまして。訴求力が若年層に強すぎませんか? 」
「うーん、確かに今のポアロのお客さんの感じからするといまいちかもね」
やはり、はじまってしまう。商品の講評が。
コナン君の舌は本当に大人というか、なんでもかんでも美味しいと言うわけではない。そのうえ、論理的に商品の価値について話してくる。これが嬉しいような、うらさみしいような。
「そうでしょう。でも時々、大人もわっと食べたくなるときがありますから。うちの既存のメニューの中にはパフェだけでしたが、それを強化するためにとりあえず。
コナン君はすぐに食べてしまいましたが、アイスでぐずぐずになったホットケーキも美味しいんです」
はじめて会った日がそもそも新メニューの試食会で、それからこの様子なのだ。コナン君はこれが通常営業のようで、とくに背伸びをしている様子もない。小学生に品評されることを許せれば、客観的なコメントが手に入る。まあ、こういうのもあるんだなあ。
お皿を下げながらコナン君に礼を告げる。
コナン君はナンプレで時間をつぶすらしい。毛利探偵事務所にはお客さんが来ているのだとか。
「ごゆっくり」
一声かけて店内の清掃を行う。店内はどれだけきれいにしたっていい。グラスやカップをふくのも落ち着く。時間があるからこそ、煩雑な処理を落ち着いてこなすことができる。
窓から差し込む日差しがきれいで、うっとりするようなある日のことだった。