ポケモン系SS
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「みなさいこれを! ついにスクールの卒業資格を得ました! しかも飛び級です。愚鈍なあなたにはなしえないことですよ! 」
得意満面な顔で部屋に飛び込んできたのはくせっ毛で自信満々、服のセンスが皆無なクソガキだ。
暑さをしのぐのにくっついていたゴーストは、やつの声を聞くと嫌そうに顔をしかめる。あんまり好きじゃないかもしれないけど、人だったら関係をうまく作れないタイプかもしれない。まあ彼はポケモンで、そんな心配は杞憂だけれども。
「だから~? 」
「だからですって!? このすごさが分からないんですか!? 分かるならもっととるべき対応があるはずでしょう! 」
「とるべき態度だって? 」
そうだ、と鼻を高くして視線を外した少年は。そうだ彼はまだ少年だから、きっとこれからこの鼻っ柱をへし折られるだろうな。少なくとも、ここの子ども連中はそう願っているだろう。
「おれが思うに、お前に必要なのは賞賛じゃなくて謙虚さだぜ。ビート」
「はあ!?」
怒りか、呆れか、それともがっかりしたのか。彼は言葉を吐こうとするものの、次の単語が見つからないようだった。
ゴーストはビートの感情を読んだのかしらないが、おろおろとし始めている。そもそもが人の感情に敏感で優しいやつだから仕方がない。おれの手持ちになったのは良かったかもしれないが、生憎と部屋割りに問題があった。
「お前ね、ついにベックのやつが部屋を飛び出したんだ。理由はわかってるだろ? おれ達はここが家だから、うまいことやんなきゃならない。分かってるだろ?」
2段ベッドが2つ、机が4つ並んだ部屋に割り当てられたのは二人だけだ。もう二人はビートの態度に嫌気がさして、これは柔らかいニュアンスにしているだけで、彼らの言葉をそのまま言うなら、「くそったれ!」だ。
「ねぇビート、賞賛だけをもらうことは難しいよ」
「・・・・・・! なんでですか!? ぼくはちゃんとやってます! 正しく努力して、成績だっていい! ローズさんが目をかけてくくださる才能もある! ぼんやり生きてるあなたとは違う! 」
めちゃくちゃに怒っているビートに、肩をすくめて返事をした。彼はまだ少年なのだ。あんまりやりすぎるのも、年長者としてよくないだろう。いくら色々と問題が山積みだったとしても、彼も数多くいる弟妹のひとりだ。まあ、返答の結果は、彼の怒りに油を注ぐだけのようだったが。
「なあビート。まぁ、ちょっと聞けよ」
カッカとしているビートだが、話を聞く気にはなってくれたらしい。ドッカリと向かいのベッドに腰を掛けて、足を組んでコッチを睨みつけている。
「このゴースとな、おれの妹なんだ」
「は? 」
「おれの妹は母さんの腹から生まれてすぐに死んじまってさ。その後、墓の近くに出たのがこのゴーストだったんだよ。だからずっとこのゴーストのことを妹だと思っていてな」
「いや。嘘をつくのも大概にしてくれます? あなたの妹の話は知らないですが、あなたはそもそも赤ん坊のころからここですよね? しかもそのゴーストはオスですよね!? 」
「なんだ知ってたのか」
妹のくだりの時にはポカンとしていたのに、すぐにツッコむとは流石じゃないか。ていうか、人のポケモンの性別も認識しているとは。案外、落ち着いたらまともな大人になるのかもしれない。
まあ、おれには知ったことではないが。でも同室のよしみで、彼の人生がむちゃくちゃになるのも見過ごせない。
「ちょっとは落ち着いたかー? 」
「もともと、ぼくは落ち着いていますから!」
「そうかよー」と返事をしながら見つめてやれば、ビートはおれの様子に気づいたようだった。今までは適当に流していたが、今日のおれはビートとちゃんと話す気があるのだ。
「おれはね、ビートがどういう未来を選んでもいいと思ってるし、才能があるならふさわしいところで輝けばいいと思ってるんだ。
ローズさんはガラルで一番先を走ってる人だから、きっとお前も仕事に就いたらなんの心配もないだろうし。でも、能力と人間関係は別のもンだからな。なんにせよ、お前は今のままじゃどっかで痛い目を見るぞ」
「……なんで、そんなことをあなたに言われなきゃならないんですか? 」
いつものヒートアップした様子ではない。冷静に話を聞いてくれている様に安心した。でも質問は結構アレだ。年頃のおれにはちょっと恥ずかしいやつだ。思わず目をそらして、無意味に額をなでてしまう。
「そりゃあ。……、おれは兄貴だからだよ」
「…」
今までおれがやってもらったように、今度はおれが兄貴をやる。それに今一番年長なのもおれなのだ。少しだけ、今までの"兄たち"の様子を思い出した。理不尽で強くて、思いやりがある不思議な人たちだ。彼らはでも、弟妹たちが泣いたときと、悩んでいるときには真剣だった。その気持ちが分かるようになったのは、やっぱり成長したからだろう。
ビートもいつか、そういう気持ちが分かるようになればいいが。まあでも、人は必ず出会うと聞いたので。おれは余計な心配はしないのだ。人生はゆるくて楽しくて、時々苦かったりカラかったりする程度でいい。
「ま、それはそうでいいとして。そんなに頑張ってて疲れねぇ? 」
「はン。これくらい当然だ。あなたのような堕落した人生なんてごめんですからね」
「そーお? 」
「あなたにこうして説教をされているということ自体が不愉快でたまりませんよ」
「そうかー。まあ、お前もいつか出会うだろうから。その時までは、その調子で生きているのがいいのかもね」
「どういうことですか? 」
「気になっちゃう?」にんまりとゴーストに似た顔を向けて。話を終わらせる気のビートはややひるんだようだ。とても嫌そうな顔をしている。おれの好きな顔だ。
「人はね、必ず出会うんだぜビート。人生をおっきく変える誰かにね。おれがそれになれなかったのは残念だけどー」
「運命論ですか? くだらない。そんなことにかまけてるくらいなら、もっと未来のことに力をいれるべきです」
ビートは端から切り捨てるように、煙たいものを見るようにそう言った。けど、これは結構アテになるんだけどな。そして「はっ」とした。そういえば、おれってばビートにちゃんと言っていないのではないか? 知っているものと思っていたけど、今日でこの反応ってことは? もしや?
「アー……、ビート? もしてかし明日のこと、知らない? 」
「明日? そういえばチビ達が広間の飾りつけをしてましたけど、誰かの誕生日ですか? 」
これにはマジで頭を抱えたくなった! マジか。コイツ、本当に知らねぇ! しかもおれもちゃんと伝えてないやつ! そういえば同室になってから、そういうのを伝えるのはおれだったな…!
自然、おれの態度はさっきまでと180度変わる。ちらちらとビートの顔に視線をやるものの直視が難しい! ビートの言葉にも険が混じるっていうもの!
「なんなんですか? さっさと言ってください」
「アー…、その。おれ、明日でここを卒業しまーす…」
「伝え忘れててすまん」と言って片手を上げると、今までにないくらい表現の難しい顔をしたビートがいた。青天の霹靂って感じかもしれない。肩をわななかせて、額に欠陥を浮かべて。息を吸って大きく叫んだ。おれはよく知っているから耳をふさいだよ。当然だよね。
「聞いてないんですが?!」
そりゃそうだ。今、そう言ったばっかりじゃん。
得意満面な顔で部屋に飛び込んできたのはくせっ毛で自信満々、服のセンスが皆無なクソガキだ。
暑さをしのぐのにくっついていたゴーストは、やつの声を聞くと嫌そうに顔をしかめる。あんまり好きじゃないかもしれないけど、人だったら関係をうまく作れないタイプかもしれない。まあ彼はポケモンで、そんな心配は杞憂だけれども。
「だから~? 」
「だからですって!? このすごさが分からないんですか!? 分かるならもっととるべき対応があるはずでしょう! 」
「とるべき態度だって? 」
そうだ、と鼻を高くして視線を外した少年は。そうだ彼はまだ少年だから、きっとこれからこの鼻っ柱をへし折られるだろうな。少なくとも、ここの子ども連中はそう願っているだろう。
「おれが思うに、お前に必要なのは賞賛じゃなくて謙虚さだぜ。ビート」
「はあ!?」
怒りか、呆れか、それともがっかりしたのか。彼は言葉を吐こうとするものの、次の単語が見つからないようだった。
ゴーストはビートの感情を読んだのかしらないが、おろおろとし始めている。そもそもが人の感情に敏感で優しいやつだから仕方がない。おれの手持ちになったのは良かったかもしれないが、生憎と部屋割りに問題があった。
「お前ね、ついにベックのやつが部屋を飛び出したんだ。理由はわかってるだろ? おれ達はここが家だから、うまいことやんなきゃならない。分かってるだろ?」
2段ベッドが2つ、机が4つ並んだ部屋に割り当てられたのは二人だけだ。もう二人はビートの態度に嫌気がさして、これは柔らかいニュアンスにしているだけで、彼らの言葉をそのまま言うなら、「くそったれ!」だ。
「ねぇビート、賞賛だけをもらうことは難しいよ」
「・・・・・・! なんでですか!? ぼくはちゃんとやってます! 正しく努力して、成績だっていい! ローズさんが目をかけてくくださる才能もある! ぼんやり生きてるあなたとは違う! 」
めちゃくちゃに怒っているビートに、肩をすくめて返事をした。彼はまだ少年なのだ。あんまりやりすぎるのも、年長者としてよくないだろう。いくら色々と問題が山積みだったとしても、彼も数多くいる弟妹のひとりだ。まあ、返答の結果は、彼の怒りに油を注ぐだけのようだったが。
「なあビート。まぁ、ちょっと聞けよ」
カッカとしているビートだが、話を聞く気にはなってくれたらしい。ドッカリと向かいのベッドに腰を掛けて、足を組んでコッチを睨みつけている。
「このゴースとな、おれの妹なんだ」
「は? 」
「おれの妹は母さんの腹から生まれてすぐに死んじまってさ。その後、墓の近くに出たのがこのゴーストだったんだよ。だからずっとこのゴーストのことを妹だと思っていてな」
「いや。嘘をつくのも大概にしてくれます? あなたの妹の話は知らないですが、あなたはそもそも赤ん坊のころからここですよね? しかもそのゴーストはオスですよね!? 」
「なんだ知ってたのか」
妹のくだりの時にはポカンとしていたのに、すぐにツッコむとは流石じゃないか。ていうか、人のポケモンの性別も認識しているとは。案外、落ち着いたらまともな大人になるのかもしれない。
まあ、おれには知ったことではないが。でも同室のよしみで、彼の人生がむちゃくちゃになるのも見過ごせない。
「ちょっとは落ち着いたかー? 」
「もともと、ぼくは落ち着いていますから!」
「そうかよー」と返事をしながら見つめてやれば、ビートはおれの様子に気づいたようだった。今までは適当に流していたが、今日のおれはビートとちゃんと話す気があるのだ。
「おれはね、ビートがどういう未来を選んでもいいと思ってるし、才能があるならふさわしいところで輝けばいいと思ってるんだ。
ローズさんはガラルで一番先を走ってる人だから、きっとお前も仕事に就いたらなんの心配もないだろうし。でも、能力と人間関係は別のもンだからな。なんにせよ、お前は今のままじゃどっかで痛い目を見るぞ」
「……なんで、そんなことをあなたに言われなきゃならないんですか? 」
いつものヒートアップした様子ではない。冷静に話を聞いてくれている様に安心した。でも質問は結構アレだ。年頃のおれにはちょっと恥ずかしいやつだ。思わず目をそらして、無意味に額をなでてしまう。
「そりゃあ。……、おれは兄貴だからだよ」
「…」
今までおれがやってもらったように、今度はおれが兄貴をやる。それに今一番年長なのもおれなのだ。少しだけ、今までの"兄たち"の様子を思い出した。理不尽で強くて、思いやりがある不思議な人たちだ。彼らはでも、弟妹たちが泣いたときと、悩んでいるときには真剣だった。その気持ちが分かるようになったのは、やっぱり成長したからだろう。
ビートもいつか、そういう気持ちが分かるようになればいいが。まあでも、人は必ず出会うと聞いたので。おれは余計な心配はしないのだ。人生はゆるくて楽しくて、時々苦かったりカラかったりする程度でいい。
「ま、それはそうでいいとして。そんなに頑張ってて疲れねぇ? 」
「はン。これくらい当然だ。あなたのような堕落した人生なんてごめんですからね」
「そーお? 」
「あなたにこうして説教をされているということ自体が不愉快でたまりませんよ」
「そうかー。まあ、お前もいつか出会うだろうから。その時までは、その調子で生きているのがいいのかもね」
「どういうことですか? 」
「気になっちゃう?」にんまりとゴーストに似た顔を向けて。話を終わらせる気のビートはややひるんだようだ。とても嫌そうな顔をしている。おれの好きな顔だ。
「人はね、必ず出会うんだぜビート。人生をおっきく変える誰かにね。おれがそれになれなかったのは残念だけどー」
「運命論ですか? くだらない。そんなことにかまけてるくらいなら、もっと未来のことに力をいれるべきです」
ビートは端から切り捨てるように、煙たいものを見るようにそう言った。けど、これは結構アテになるんだけどな。そして「はっ」とした。そういえば、おれってばビートにちゃんと言っていないのではないか? 知っているものと思っていたけど、今日でこの反応ってことは? もしや?
「アー……、ビート? もしてかし明日のこと、知らない? 」
「明日? そういえばチビ達が広間の飾りつけをしてましたけど、誰かの誕生日ですか? 」
これにはマジで頭を抱えたくなった! マジか。コイツ、本当に知らねぇ! しかもおれもちゃんと伝えてないやつ! そういえば同室になってから、そういうのを伝えるのはおれだったな…!
自然、おれの態度はさっきまでと180度変わる。ちらちらとビートの顔に視線をやるものの直視が難しい! ビートの言葉にも険が混じるっていうもの!
「なんなんですか? さっさと言ってください」
「アー…、その。おれ、明日でここを卒業しまーす…」
「伝え忘れててすまん」と言って片手を上げると、今までにないくらい表現の難しい顔をしたビートがいた。青天の霹靂って感じかもしれない。肩をわななかせて、額に欠陥を浮かべて。息を吸って大きく叫んだ。おれはよく知っているから耳をふさいだよ。当然だよね。
「聞いてないんですが?!」
そりゃそうだ。今、そう言ったばっかりじゃん。