短編・ネタ
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白い浜辺を駆け回った。
見える限りどころか、この島の全てで自由が許された。大声をあげても、道の真ん中で寝そべって(食卓でウタがそれをばらしたから、後で行儀が悪いと怒られはしたけど)も、好きな場所で好きなことが出来た。私たちはそれがどういうことなのか分かっていなかった。ただ楽しかった。
私が行商でこの島を訪れたら、その日は一日それでおしまいになった。普段なら海流や島の特性、経済圏と海賊の縄張りなんかについてずっと勉強が続く。だけど、行商の日はそれでおしまい。次の朝までは自由にすごしていい。
ウタも同じだった。普段とはちがって、私が島を訪れたときだけはレッスンやなにやらが休息になる。
私たちは同類だった。
何も話さずとも分かった。はじめて顔を合わせたときから、私たちは根っこの部分が同じなんだと気が付いた。ウタもそれは同じで、後から時間をかけて話していくうちにそれが分かった。
私たちには途方もなく大きな夢があった。
だからなんだって頑張れた。レッスンや勉強も必死だった。それでもこうして、「友人」と顔を合わせる日は特別だった。楽しかった。
日の高いうちから浜辺を走り回って、くだらない噂話や夢について語った。一緒にご飯を食べて、同じベッドで眠った。次の日が来たら、またしばらくのお別れが待っていると分かっていたけど、だからまた頑張れた。私たちは夢を追いかける友だったけど、どちらが先に叶えられるか競うライバルでもあった。
同じ布団で眠って、同じ空気を吸って、私たちは夢を叶える約束を何度も交わした。それが私のよすがだった。
それが、私たちの夢だった。
ウタが、夢を燃やし尽くして死んでしまった。
ゴードンさんからの手紙は短かった。頭の中は霧がかかったかのようで、世界をうまく認識できない。感情も鈍く、いま襲撃されたらひとたまりもないだろう。
ウタはシャンクスに会えた。
ウタは世界を救えなかった。私はここで、何も知らないままだった。あの子は私になにも言わなかった。
「・・・・・・不義理なやつだ」
思い返されるのは伸びやかに歌っていた姿。海岸で、教会で、森で。
震える声をごまかしながら、「夢がある」と言ったウタ。その姿は、最後に会ったときのまま幼い。
手紙のやりとりが時々あっただけで、私は彼女の今を何も知らない。ステージやなにやらも、情報は知っていても見なかった。どんな声で歌っていたのだろう。どんなステージだったのだろう。どんな姿に成長していたのだろう。何も分からない。何も分からないことだけが分かった。
ぱたり。
便せんに落ちた滴に、頭が少しはっきりする。熱をもったまぶたは、堰を切ったように水を流し続ける。気持ちも、思い出も置き去りだ。
私はずっと、あの白い浜辺を歩けると思っていたよ。
ねえウタ、私はとてもさみしい。
見える限りどころか、この島の全てで自由が許された。大声をあげても、道の真ん中で寝そべって(食卓でウタがそれをばらしたから、後で行儀が悪いと怒られはしたけど)も、好きな場所で好きなことが出来た。私たちはそれがどういうことなのか分かっていなかった。ただ楽しかった。
私が行商でこの島を訪れたら、その日は一日それでおしまいになった。普段なら海流や島の特性、経済圏と海賊の縄張りなんかについてずっと勉強が続く。だけど、行商の日はそれでおしまい。次の朝までは自由にすごしていい。
ウタも同じだった。普段とはちがって、私が島を訪れたときだけはレッスンやなにやらが休息になる。
私たちは同類だった。
何も話さずとも分かった。はじめて顔を合わせたときから、私たちは根っこの部分が同じなんだと気が付いた。ウタもそれは同じで、後から時間をかけて話していくうちにそれが分かった。
私たちには途方もなく大きな夢があった。
だからなんだって頑張れた。レッスンや勉強も必死だった。それでもこうして、「友人」と顔を合わせる日は特別だった。楽しかった。
日の高いうちから浜辺を走り回って、くだらない噂話や夢について語った。一緒にご飯を食べて、同じベッドで眠った。次の日が来たら、またしばらくのお別れが待っていると分かっていたけど、だからまた頑張れた。私たちは夢を追いかける友だったけど、どちらが先に叶えられるか競うライバルでもあった。
同じ布団で眠って、同じ空気を吸って、私たちは夢を叶える約束を何度も交わした。それが私のよすがだった。
それが、私たちの夢だった。
ウタが、夢を燃やし尽くして死んでしまった。
ゴードンさんからの手紙は短かった。頭の中は霧がかかったかのようで、世界をうまく認識できない。感情も鈍く、いま襲撃されたらひとたまりもないだろう。
ウタはシャンクスに会えた。
ウタは世界を救えなかった。私はここで、何も知らないままだった。あの子は私になにも言わなかった。
「・・・・・・不義理なやつだ」
思い返されるのは伸びやかに歌っていた姿。海岸で、教会で、森で。
震える声をごまかしながら、「夢がある」と言ったウタ。その姿は、最後に会ったときのまま幼い。
手紙のやりとりが時々あっただけで、私は彼女の今を何も知らない。ステージやなにやらも、情報は知っていても見なかった。どんな声で歌っていたのだろう。どんなステージだったのだろう。どんな姿に成長していたのだろう。何も分からない。何も分からないことだけが分かった。
ぱたり。
便せんに落ちた滴に、頭が少しはっきりする。熱をもったまぶたは、堰を切ったように水を流し続ける。気持ちも、思い出も置き去りだ。
私はずっと、あの白い浜辺を歩けると思っていたよ。
ねえウタ、私はとてもさみしい。