かみさまのいうとをり。
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そーんな感じで私は流星街に生まれたわけですけども! なんやかんや月日とイベントを経過して、このように育ったわけでございます!
紙袋頭のお姉さんは、私にいろいろ~なことを残して私の前から消えてしまいました。本当にたくさんのことを残してくれて、体力に武力、念能力や金銭に関わるやりとりなんかも全てです! 私の今があるというのは彼女のおかげです。神さまの使途だったのかもしれません。無私の人です。
そんな感謝はさておき。私も流星街では働かなくてはなりません。流星街では権利は強さですからね。力のない者にはなにも残りませんし、仕事をただこなすだけでもだめです。仕事で力を証明して、権力をこなすだけの小賢しさを提示し続けなければなりません。そして中枢になるとまた義務が生じますからね。ほどほどでいるのも重要でしょう。だって私、流星街よりも布教活動を優先したいのですもの!
だからガンガン働きます! 布教の場を整えるのもタダじゃあなんともなりませんから!
目的をもってふらついている私の目の前に金髪の少女がいます。流星街ではよく見るタイプのひょろひょろとした、それでいてどん欲な感じの少女(多分)です。
「お嬢さん、もしよければ家(うち)で休んでいきませんか? おやつと本がありますよ」
遠くにいたはずの私が突然に目の前に現れたからでしょう。すっごくびくついています。ごめんなさいね。でも、私の言葉に迷いながら頷いてくれたんですよ。不思議だわ、悪い大人についていくのは愚か者のする行為ですよ?
ゴミ山から中央に向かう途中、手をつないでお話ししたところによると彼女はパクノダというお名前。仲良しのお友達と一緒によくいるけど、今日はみんなばらばらで暇つぶしにここらにいたそう。運がいいわ~。私もパクノダも。パクノダ、とっても劇的な力を得そう。この流星街で、こんなに繊細な心の動きを保っているのだもの。生き残れたら、きっとすごい。
「ねえ、エルル」
「なあに? パクノダ」
「エルルはどうして、私を誘ったの? 」
薄汚れた肌のパクノダは、神の家(うち)の前で私に聞きました。うちは結構、流星街の中ではまともな建物だと思います。でもね、私の答えはきっと流星街では異物な方。それでも同じくこたえます。
「隣人とはうまく付き合うことが神のお教えだからです。だからパクノダ、遠慮なさらないで。もしも不都合があるのなら、私の神に祈ってください」
そうやって言うと、パクノダは決心したように頷きました。私はそれに合わせて扉を開きます。そんなに怖いものじゃあないはずですけれど。
扉の内側は雨漏りもなく、ゴミもない平らな床。椅子とテーブルと、そして様々な本を収める書棚。炊き出しのためのわずかな台所。
視界には入らないけれど、祭壇の奥には私の私室がある。それが家のすべて。
「いらっしゃいパクノダ。神の家へようこそ。好きなところに座って待っててくださる? いまおやつを持ってきますからね。自由に見て回っていてもいいですよ」
視線をぐるぐるとやっているパクノダを放って、私は私室に向かう。パクノダはものを盗んで家を去るようには見えなかったし、自由にしてやったほうが彼女にはよさそうに見えました。私が席を外すのも、彼女の緊張をやわらげるでしょうし。
そう思ってゆっくりと準備をします。まともな建物といっても見れるものはそう多くありません。先日の少年は本棚に食いつかんばかりでしたが、そもそも流星街では文字を読めるものも多くありませんし。
「あら、そういえばパクノダは文字が読めるのかしら・・・・・・? 」
おやつとココアの入ったマグカップを準備したところで気がついてしまいました。字が読めないのなら、家はけっこうつまらないかもしれません。
これまでの時間を取り戻すようにせかせかと歩みます。そう遠くない距離を「急ぐ」と、つむじ風のような勢いが出てしまいますので注意が必要ですよ。
そうやって部屋からパクノダの姿を見ますと、やっぱり本を手にとってはいないようでした。ぼんやりと椅子に腰かけ、祭壇に掲げられている神の像を眺めているようです。
「パクノダ、約束通りのおやつなのだけど」
私の声でびっくりしてしまったようです。声かけのタイミングがよくありませんでした。体をすくませています。
「ああごめんなさいね、怒っていませんから。おやつを持ってきたの、一緒に食べませんか? 気になる本はありませんでしたか? 」
パクノダはひとつ頷いて、書棚から本を一冊もってきました。彼女は浮かれた表情ではありませんが、そう悪い状態でもなさそうです。
礼拝向きの固い木の椅子は、長時間をすごすには向いていません。だけど、お茶をしたりおしゃべりをすうのにはそんなに気になりません。
「・・・・・・おいしい! 」
「それはよかった」
私の様子をうかがいながら食べるパクノダのなんとかわいいらしいこと! これで新たな信者ゲット間違いなしでしょう!
おやつもそこそこに私は本を眺めます。流星街の子供達にとってはおやつは魅力的でしょうが、私は食べ慣れていますからね。もうひとつパクノダにあげます。
「ありがとうございます! 」
「いいのですよ。ところでパクノダは何の本を・・・・・・おや、これは我が宗派の絵本ですね」
「・・・・・・読めそうなのが、それだけだったから」
「おや、パクノダは文字がいまいちですか? ・・・・・・よろしければここで学んでいきますか? 」
「!?」
パクノダの顔に信じられないとありありと書かれています。なんて間抜けな顔! あの子もこれくらいの可愛げがあったらよかったのに!
少なくともまともな大人をやるのであれば、交渉を覚えなくてはなりませんから。このような表情は我慢するべきでしょうね。
「うふふ、かまいませんよ。ここは神の家ですからね、与えられるものは与えなくては。覚えたかったらまたいらっしゃい。その時には、またおやつをあげましょうね」
「どうして、? そんなにくれるんですか? 」
「あら、不思議ですか? ここは神の家、だけでは納得できないのですね。そうですね、なぜか。・・・・・・隣人とはほどほどに付き合うものでしょう? 」
*************************************
side:パクノダ
通い慣れた道を歩いて、ふと初対面の頃を思い出した。パクノダをさらうように連れ去った女。エルルのことだ。
エルルは流星街でとても有名な人間だ。
子どもにアクションをしては、自分の「神の家」に連れて行って食べ物をくれる。それでうまくいった子どももいれば、うまくいかなかった子どももいる。うまくいかなかったやつは帰ってこなかった。
その頃のパクノダはまだ色々なことができなかったから、エルルのこともうまく理解できていなかった。
彼女は圧倒的な存在感を持っていた。それなのに気がついたときには目の前にいた。いつもの友人たちがいないから、今日はどうしようかと迷っているわずかな時間だった。
「お嬢さん、もしよければ家で休んでいきませんか? おやつと本がありますよ」
エルルは想像よりもずっと若い女だった。黒い服を着て、やさしい顔で笑いかけてきた、圧倒的な強者。頷く以外の選択肢がない。
あまりの緊張に何を話していたかはあまり覚えていない。だけど、彼女は真実やさしかったのだ。家について、おやつをもらって、本を読んでもらって。
そういえば彼女に何度か聞いたのだった。「どうして私たちに声をかけるの?」と。そうしたら彼女、何度でも同じ答えを返す。
「隣人とはほどほどに付き合うものですよ」
はじめて見たときから変わらない扉は、いつだって何者をも受け入れる。ここには他人の気配が薄い。人がいることはとてもマレだ。彼女の布教は失敗し続けている。
ノックをせずとも彼女にはわかる。しなくとも怒られない。だけど、ノックという作法は教えてくれた。
「エルル、お茶を入れてくれる? 」
私は彼女の人となりを信じたからここに通う。文字を教えてもらって、精神の均し方も知り、彼女の信仰を聞きながら。
「もちろんですよ、パクノダ。準備をする間、少しだけ祈ってくれますか? 」
エルルの信仰には共感できないところが多いけれど、それでもかまわないという。信じなくてもいいから祈ってくれと。
あなたがいつでも微笑んで迎えてくれるから、この祈りに反発はない。それでも理解できない。
--私たちには隣人なんていない。
紙袋頭のお姉さんは、私にいろいろ~なことを残して私の前から消えてしまいました。本当にたくさんのことを残してくれて、体力に武力、念能力や金銭に関わるやりとりなんかも全てです! 私の今があるというのは彼女のおかげです。神さまの使途だったのかもしれません。無私の人です。
そんな感謝はさておき。私も流星街では働かなくてはなりません。流星街では権利は強さですからね。力のない者にはなにも残りませんし、仕事をただこなすだけでもだめです。仕事で力を証明して、権力をこなすだけの小賢しさを提示し続けなければなりません。そして中枢になるとまた義務が生じますからね。ほどほどでいるのも重要でしょう。だって私、流星街よりも布教活動を優先したいのですもの!
だからガンガン働きます! 布教の場を整えるのもタダじゃあなんともなりませんから!
目的をもってふらついている私の目の前に金髪の少女がいます。流星街ではよく見るタイプのひょろひょろとした、それでいてどん欲な感じの少女(多分)です。
「お嬢さん、もしよければ家(うち)で休んでいきませんか? おやつと本がありますよ」
遠くにいたはずの私が突然に目の前に現れたからでしょう。すっごくびくついています。ごめんなさいね。でも、私の言葉に迷いながら頷いてくれたんですよ。不思議だわ、悪い大人についていくのは愚か者のする行為ですよ?
ゴミ山から中央に向かう途中、手をつないでお話ししたところによると彼女はパクノダというお名前。仲良しのお友達と一緒によくいるけど、今日はみんなばらばらで暇つぶしにここらにいたそう。運がいいわ~。私もパクノダも。パクノダ、とっても劇的な力を得そう。この流星街で、こんなに繊細な心の動きを保っているのだもの。生き残れたら、きっとすごい。
「ねえ、エルル」
「なあに? パクノダ」
「エルルはどうして、私を誘ったの? 」
薄汚れた肌のパクノダは、神の家(うち)の前で私に聞きました。うちは結構、流星街の中ではまともな建物だと思います。でもね、私の答えはきっと流星街では異物な方。それでも同じくこたえます。
「隣人とはうまく付き合うことが神のお教えだからです。だからパクノダ、遠慮なさらないで。もしも不都合があるのなら、私の神に祈ってください」
そうやって言うと、パクノダは決心したように頷きました。私はそれに合わせて扉を開きます。そんなに怖いものじゃあないはずですけれど。
扉の内側は雨漏りもなく、ゴミもない平らな床。椅子とテーブルと、そして様々な本を収める書棚。炊き出しのためのわずかな台所。
視界には入らないけれど、祭壇の奥には私の私室がある。それが家のすべて。
「いらっしゃいパクノダ。神の家へようこそ。好きなところに座って待っててくださる? いまおやつを持ってきますからね。自由に見て回っていてもいいですよ」
視線をぐるぐるとやっているパクノダを放って、私は私室に向かう。パクノダはものを盗んで家を去るようには見えなかったし、自由にしてやったほうが彼女にはよさそうに見えました。私が席を外すのも、彼女の緊張をやわらげるでしょうし。
そう思ってゆっくりと準備をします。まともな建物といっても見れるものはそう多くありません。先日の少年は本棚に食いつかんばかりでしたが、そもそも流星街では文字を読めるものも多くありませんし。
「あら、そういえばパクノダは文字が読めるのかしら・・・・・・? 」
おやつとココアの入ったマグカップを準備したところで気がついてしまいました。字が読めないのなら、家はけっこうつまらないかもしれません。
これまでの時間を取り戻すようにせかせかと歩みます。そう遠くない距離を「急ぐ」と、つむじ風のような勢いが出てしまいますので注意が必要ですよ。
そうやって部屋からパクノダの姿を見ますと、やっぱり本を手にとってはいないようでした。ぼんやりと椅子に腰かけ、祭壇に掲げられている神の像を眺めているようです。
「パクノダ、約束通りのおやつなのだけど」
私の声でびっくりしてしまったようです。声かけのタイミングがよくありませんでした。体をすくませています。
「ああごめんなさいね、怒っていませんから。おやつを持ってきたの、一緒に食べませんか? 気になる本はありませんでしたか? 」
パクノダはひとつ頷いて、書棚から本を一冊もってきました。彼女は浮かれた表情ではありませんが、そう悪い状態でもなさそうです。
礼拝向きの固い木の椅子は、長時間をすごすには向いていません。だけど、お茶をしたりおしゃべりをすうのにはそんなに気になりません。
「・・・・・・おいしい! 」
「それはよかった」
私の様子をうかがいながら食べるパクノダのなんとかわいいらしいこと! これで新たな信者ゲット間違いなしでしょう!
おやつもそこそこに私は本を眺めます。流星街の子供達にとってはおやつは魅力的でしょうが、私は食べ慣れていますからね。もうひとつパクノダにあげます。
「ありがとうございます! 」
「いいのですよ。ところでパクノダは何の本を・・・・・・おや、これは我が宗派の絵本ですね」
「・・・・・・読めそうなのが、それだけだったから」
「おや、パクノダは文字がいまいちですか? ・・・・・・よろしければここで学んでいきますか? 」
「!?」
パクノダの顔に信じられないとありありと書かれています。なんて間抜けな顔! あの子もこれくらいの可愛げがあったらよかったのに!
少なくともまともな大人をやるのであれば、交渉を覚えなくてはなりませんから。このような表情は我慢するべきでしょうね。
「うふふ、かまいませんよ。ここは神の家ですからね、与えられるものは与えなくては。覚えたかったらまたいらっしゃい。その時には、またおやつをあげましょうね」
「どうして、? そんなにくれるんですか? 」
「あら、不思議ですか? ここは神の家、だけでは納得できないのですね。そうですね、なぜか。・・・・・・隣人とはほどほどに付き合うものでしょう? 」
*************************************
side:パクノダ
通い慣れた道を歩いて、ふと初対面の頃を思い出した。パクノダをさらうように連れ去った女。エルルのことだ。
エルルは流星街でとても有名な人間だ。
子どもにアクションをしては、自分の「神の家」に連れて行って食べ物をくれる。それでうまくいった子どももいれば、うまくいかなかった子どももいる。うまくいかなかったやつは帰ってこなかった。
その頃のパクノダはまだ色々なことができなかったから、エルルのこともうまく理解できていなかった。
彼女は圧倒的な存在感を持っていた。それなのに気がついたときには目の前にいた。いつもの友人たちがいないから、今日はどうしようかと迷っているわずかな時間だった。
「お嬢さん、もしよければ家で休んでいきませんか? おやつと本がありますよ」
エルルは想像よりもずっと若い女だった。黒い服を着て、やさしい顔で笑いかけてきた、圧倒的な強者。頷く以外の選択肢がない。
あまりの緊張に何を話していたかはあまり覚えていない。だけど、彼女は真実やさしかったのだ。家について、おやつをもらって、本を読んでもらって。
そういえば彼女に何度か聞いたのだった。「どうして私たちに声をかけるの?」と。そうしたら彼女、何度でも同じ答えを返す。
「隣人とはほどほどに付き合うものですよ」
はじめて見たときから変わらない扉は、いつだって何者をも受け入れる。ここには他人の気配が薄い。人がいることはとてもマレだ。彼女の布教は失敗し続けている。
ノックをせずとも彼女にはわかる。しなくとも怒られない。だけど、ノックという作法は教えてくれた。
「エルル、お茶を入れてくれる? 」
私は彼女の人となりを信じたからここに通う。文字を教えてもらって、精神の均し方も知り、彼女の信仰を聞きながら。
「もちろんですよ、パクノダ。準備をする間、少しだけ祈ってくれますか? 」
エルルの信仰には共感できないところが多いけれど、それでもかまわないという。信じなくてもいいから祈ってくれと。
あなたがいつでも微笑んで迎えてくれるから、この祈りに反発はない。それでも理解できない。
--私たちには隣人なんていない。
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