慟哭の宇宙
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すでに戦闘は終わっており、敵機もいない。
私はモニターで周囲を確認しながら、ヴェサリウスへ通信を入れる。
『こちら、ジン、カナーバ機。ミゲルを回収した。機体、人員共に損傷無し。今より帰投する。着艦許可を』
『了解、着艦を許可する』
ヴェサリウスへの帰投ルートへ入る。
『相対速度合わせ、ヴェサリウスと同期』
『カナーバ機、機体を視認。相対速度、同期を確認。着艦、どうぞ』
ジンの機体をくるりと後ろ向きにする。
着艦姿勢を取った。
カタパルトが左右のモニターに見える。
ヴェサリウスとの速度は同期しているが、どうしても、後ろから艦内へ飛び込む形で着艦する。
着艦用のネットが、ジンの機体を受け止めてくれる。
わずかな揺れがコクピットにも伝わった。
ミゲルが微笑んだ。
『お疲れさん。相変わらず、良い着艦だったぜ』
『ミゲルもお疲れ様。大変だったね』
『別に、大したことないさ。ナチュラル共の相手なんて……だが、あのジン!』
ミゲルがまた、コクピット内部を殴る。
『いったい、なんなんだアイツは! 残った新型もそうだ! あんなに迅速に機体を動かせるナチュラルがいるのか!? まさか、裏切者!? コーディネーターが……』
『パイロットの真相はわからないけど、脅威だよ。連合のモビルスーツの性能は高い。量産できる機体なら、どれほどの戦火を生むか』
私の脳裏にヘリオポリスの惨状が過ぎる。
(私たち、ザフトだって脅威は同じ。力を使うだけでは、この戦争、終わらないだろう。でも、終わらせる方法が……わからない)
ミゲルが深刻な顔で、私に問いかける。
『やっぱ、量産してくるよな……機体は分捕っても、連合にデータは残っている。データさえあれば、いくらでも作れるぜ』
『後の問題はパイロット……機体は量産できても、機体を動かせるパイロットがどれだけいるのか。連合がパイロットの育成を終える前に、どうにか大本を叩かないと』
ミゲルが真剣な表情で私に頷く。
『ジョシュアか……いっそのこと、一気に降下作戦でも出来ればいいんだがな。雑魚をいくら殺しても、親玉を叩かなきゃ戦争は終わらないぜ』
私はミゲルに沈黙を返した。
(アラスカのジョシュアを叩いても、この戦争は終わらない。戦争の根底には差別意識があるからだ。ナチュラルがコーディネーターを差別する限り、戦乱は続くだろう)
私はコクピットハッチを開けた。
ミゲルが外へ出る。
私も外に出て、ギクリと動きを止めた。
いつもならクロエのジンが停まっているスペースに、別の機体がいる。
アスランが強奪してきた機体だ。
機体データを吸い出しているのか、コクピットから多数のコードが伸びている。
整備班が数人、慌ただしく整備用のパソコンや機械を操作している。
私は、クロエの死を実感した。
爆散したクロエ機を私は思い出す。
もう、本当にクロエはいないのだ。
ミゲルがアスランの機体へ接近した。
コクピットを覗き込み、ミゲルがアスランを労っている。
私はなんだか、切ない気分になった。
かつてミゲルから聞いた家庭状況を思い出す。
(アスランやイザークは、私たちの二期後輩だ。ミゲルは、アスランたちが可愛くて仕方がないのだろう。ミゲルには、弟がいるから……いつ、ミゲルは家に帰れるんだろう。もう帰れなくなった人たちは?)
モビルスール格納庫内に、警報が鳴る。
『クルーゼ隊長機、帰還。被弾による損傷在り。消火班、救護班をBデッキへ』
私はアナウンスに驚いた。
クルーゼ隊長のシグーが、いきおいよく着艦してくる。
シグーは、片腕を失っていた。
整備班やアスランからも、驚きの声が聞こえる。
クルーゼ隊長のシグーに消火用の水流が掛け始められた。
(隊長機が腕を失うなんて。誰がやった?……もしかして、隊長機の腕を落としたのは、あの子?)
私は、鏡の如く私自身とそっくりな少年を思い出す。
(メビウスゼロは、私との交戦で武装をほとんど失っていた。敵の白いジンにも、シグーと対抗可能な装備があったとは思えない。残るは新型……あの少年、軍人には見えなかったのに)
強い不安が私の胸に広がっていく。
(私に似た少年は今、どうしているだろう。あの子もコーディネーターなの? とても兵士には見えなかった。コーディネーターなら、大丈夫かしら……ザフトがヘリオポリスを攻めたから、あの子が周囲から責められたり、危ない立場にならないといいけど……)
私は眼を伏せ、ぐっと掌を握り締める。
根拠もなく大丈夫と思おうとしたが、不穏な予想は私の中から消えてくれない。
今この瞬間も、後で取り返しのつかない決断がヘリオポリス内部で起きているのでは、と私は不安になっていく。
私は首を振り、ジンのコクピットを降りる。
いつまでも悪い予感が、私の胸に付きまとっていた。
私はモニターで周囲を確認しながら、ヴェサリウスへ通信を入れる。
『こちら、ジン、カナーバ機。ミゲルを回収した。機体、人員共に損傷無し。今より帰投する。着艦許可を』
『了解、着艦を許可する』
ヴェサリウスへの帰投ルートへ入る。
『相対速度合わせ、ヴェサリウスと同期』
『カナーバ機、機体を視認。相対速度、同期を確認。着艦、どうぞ』
ジンの機体をくるりと後ろ向きにする。
着艦姿勢を取った。
カタパルトが左右のモニターに見える。
ヴェサリウスとの速度は同期しているが、どうしても、後ろから艦内へ飛び込む形で着艦する。
着艦用のネットが、ジンの機体を受け止めてくれる。
わずかな揺れがコクピットにも伝わった。
ミゲルが微笑んだ。
『お疲れさん。相変わらず、良い着艦だったぜ』
『ミゲルもお疲れ様。大変だったね』
『別に、大したことないさ。ナチュラル共の相手なんて……だが、あのジン!』
ミゲルがまた、コクピット内部を殴る。
『いったい、なんなんだアイツは! 残った新型もそうだ! あんなに迅速に機体を動かせるナチュラルがいるのか!? まさか、裏切者!? コーディネーターが……』
『パイロットの真相はわからないけど、脅威だよ。連合のモビルスーツの性能は高い。量産できる機体なら、どれほどの戦火を生むか』
私の脳裏にヘリオポリスの惨状が過ぎる。
(私たち、ザフトだって脅威は同じ。力を使うだけでは、この戦争、終わらないだろう。でも、終わらせる方法が……わからない)
ミゲルが深刻な顔で、私に問いかける。
『やっぱ、量産してくるよな……機体は分捕っても、連合にデータは残っている。データさえあれば、いくらでも作れるぜ』
『後の問題はパイロット……機体は量産できても、機体を動かせるパイロットがどれだけいるのか。連合がパイロットの育成を終える前に、どうにか大本を叩かないと』
ミゲルが真剣な表情で私に頷く。
『ジョシュアか……いっそのこと、一気に降下作戦でも出来ればいいんだがな。雑魚をいくら殺しても、親玉を叩かなきゃ戦争は終わらないぜ』
私はミゲルに沈黙を返した。
(アラスカのジョシュアを叩いても、この戦争は終わらない。戦争の根底には差別意識があるからだ。ナチュラルがコーディネーターを差別する限り、戦乱は続くだろう)
私はコクピットハッチを開けた。
ミゲルが外へ出る。
私も外に出て、ギクリと動きを止めた。
いつもならクロエのジンが停まっているスペースに、別の機体がいる。
アスランが強奪してきた機体だ。
機体データを吸い出しているのか、コクピットから多数のコードが伸びている。
整備班が数人、慌ただしく整備用のパソコンや機械を操作している。
私は、クロエの死を実感した。
爆散したクロエ機を私は思い出す。
もう、本当にクロエはいないのだ。
ミゲルがアスランの機体へ接近した。
コクピットを覗き込み、ミゲルがアスランを労っている。
私はなんだか、切ない気分になった。
かつてミゲルから聞いた家庭状況を思い出す。
(アスランやイザークは、私たちの二期後輩だ。ミゲルは、アスランたちが可愛くて仕方がないのだろう。ミゲルには、弟がいるから……いつ、ミゲルは家に帰れるんだろう。もう帰れなくなった人たちは?)
モビルスール格納庫内に、警報が鳴る。
『クルーゼ隊長機、帰還。被弾による損傷在り。消火班、救護班をBデッキへ』
私はアナウンスに驚いた。
クルーゼ隊長のシグーが、いきおいよく着艦してくる。
シグーは、片腕を失っていた。
整備班やアスランからも、驚きの声が聞こえる。
クルーゼ隊長のシグーに消火用の水流が掛け始められた。
(隊長機が腕を失うなんて。誰がやった?……もしかして、隊長機の腕を落としたのは、あの子?)
私は、鏡の如く私自身とそっくりな少年を思い出す。
(メビウスゼロは、私との交戦で武装をほとんど失っていた。敵の白いジンにも、シグーと対抗可能な装備があったとは思えない。残るは新型……あの少年、軍人には見えなかったのに)
強い不安が私の胸に広がっていく。
(私に似た少年は今、どうしているだろう。あの子もコーディネーターなの? とても兵士には見えなかった。コーディネーターなら、大丈夫かしら……ザフトがヘリオポリスを攻めたから、あの子が周囲から責められたり、危ない立場にならないといいけど……)
私は眼を伏せ、ぐっと掌を握り締める。
根拠もなく大丈夫と思おうとしたが、不穏な予想は私の中から消えてくれない。
今この瞬間も、後で取り返しのつかない決断がヘリオポリス内部で起きているのでは、と私は不安になっていく。
私は首を振り、ジンのコクピットを降りる。
いつまでも悪い予感が、私の胸に付きまとっていた。