ミステリー要素ありなので、話が込み入ってきました。最初は夢主の名前を出さないつもりだったので、少し読みにくい部分があるかもしれません。
DC×刀剣乱舞×相棒 越境者
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
聞き込みを重ねた結果は、芳しくなかった。
安室と杉下はまず、松田夫婦が住んでいるはずのマンションを訪ねた。
松田夫婦が暮らしているはずの部屋には、遠藤と名乗る四人一家が暮らしており、室内の家具も全て取り換えられていた。
マンションの他の住人やオーナーも松田を知らないと言い、松田が暮らしていた痕跡は皆無。
マンションの近隣住民にも安室と杉下は聞き込んだが、平日の昼間で人通りも少なく、有益な証言は望み薄だった。
ようやく一人の老人が「マンションの前に止まっていた二台の引っ越しトラックと、トラックの助手席から降りてきた子供を見た。引っ越しトラックにはマークも業者の名前もなく、どこのトラックかわからなかった」と証言しただけだ。
マンション近隣の防犯カメラもできる限り確認したが、不審なトラックは写っておらず。
まだ内容を確認できていない見守り自販機の映像が三台分あるが、安室は期待していなかった。
見守り自販機の映像は、鑑識課の米沢に確認してもらっている。
渚の仕事場だと松田が言ったマンションにも、やはり別の住人が暮らしていた。
仕事場のマンションでも誰も松田や渚を知らず、聞き込みの成果はゼロだ。
安室は、渚の本を出している出版社へ車を走らせていた。
聞き込みの結果を思い起こしながら、安室は重い口を開く。
「出版社も望み薄ですね……渚さんは著者近影を発表していません。本があっても、ペンネームのなりすましは可能です。担当編集者は渚さんの顔を知っている可能性が高いですが、未来からの介入があれば、時系列も記憶も好きなだけ改竄できます。実際、マンションの住人たちは口を揃えて「松田を知らない」と証言しています」
助手席の杉下が頷く。
「降谷くんの指摘はもっともです。聞き込みされる確率が高い人物は、あらかじめ用意して偽証できる……しかし、僕としては松田君の部屋の右隣の住人の証言が気になりますね。都内のマンションでは、ご近所付き合いは希薄です。同じ階に住んでいても、隣人を知らないケースは珍しくありません。なのに「隣は四人一家で間違いない」と断言した」
安室は肩を竦めた。
「わざとらしい点は、遠藤一家も同じですよ。今日は平日です。たまたま父親が休日で、しかも聞き込みに一家総出の対応とは……やはり遠藤一家の他に、オーナーや右隣の住人も共犯ですか……」
「雑な点があるのは事実ですが、かなり大掛かりな犯行です。警察の入室を予測して、松田くんの部屋の家具まで全て入れ替えている。彼らは多少粗があっても、マンションに松田くんが住んでいない状況を作りたかった」
何を思ったのか杉下が一瞬、目を伏せた。
「犯行グループには人員も、資金もあると推測できます。降谷くんも犯人には心当たりがあるはずです。歴史修正主義者……もしくはもっと力のある存在」
杉下が目線で、安室に返答を促す。
不吉な予想に、安室は自分の表情が強張るのを感じた。
「未来の政府ですか? 確かに松田は優秀な奴ですが……人員や資金を投入して消すほど、松田が未来にとっての重要人物とは思えません。まさか、これから松田が関わる事件で未来が変わるとでも?」
「松田くんが未来を変える可能性は充分にあります。審神者である渚さんにとって、松田くんは重要人物です。松田くん自身も、爆発物の専門家。彼が一つ、爆発物を解体できないだけで数十人から数百人以上の人生が変わります。爆弾は被害が大きいですから」
かつてニュースで見た、観覧車が爆発する瞬間が安室の脳裏をよぎる。
安室は、松田が死を選んだ理由を想起した。
(杉下警部の指摘は正しい……爆弾一つで大勢の命を脅かせる。松田が観覧車で死ななければ、米花中央病院にいた人たちが死んでいた。米花中央病院が吹き飛べば、確実に歴史に残る大事件になっただろう……)
安室は一瞬目を伏せ、息を吐き出す。
ハンドルを握り直し、安室は目の前の道を見据えた。
「やはり、出版社へ向かっても無駄足になる可能性が高いですね。渚さんの実家を当たってみますか? もしくは、渚さんの本当の父親である、神奈川県警の宗像本部長を」
杉下が、微笑みながら安室を見た。
薄気味悪い杉下の笑みに、安室は一刹那、沈黙する。
安室の首筋と腹の辺りが寒くなった。
「気づきませんか? 僕たちが事件を追いかけられるよう、手掛かりが残されています。未来からの手掛かりです。伊達くん達が出会った、高橋看護師。コナンくんが入手した黒いスマホと匿名掲示板。松田くんのチョーカー型爆弾ですら、現在は機能が停止している……確実に、誰かが我々を手助けしています」
安室は瞠目した。
「松田を手助けしている誰かは、我々が聞き込むと予想していた。だから、どこかに必ず手掛かりを残していると? 杉下警部は、誰かが意図して捜査を誘導しているとお考えですか?」
「失礼」と片手を上げ、杉下が安室の発言を遮った。
杉下が自分の胸ポケットからスマホを取り出す。
発信者は米沢守だ。
二言三言話し、杉下が通話を切った。
「米沢さんからです。横浜のみなとみらいへ向かってください。我々が気付いた以上、犯人側も手掛かりに気づいたでしょう」
安室は続きも聞かず、すぐに車のハンドルを切った。
エンジンが唸り、タイヤが回転を早めスピードが上がる。
やや強引に車線変更し、安室の車が横浜へ進路を取る。
車内上部のアシストレバーを握りながら、不満そうに杉下が安室を虎視した。
安室は車の進路を凝視したまま、淡々と答える。
「至急ですよね? ようやく見つけた手掛かりです。犯人側に消される前に、なんとしてでも接触しなければ。手掛かりの内容は?」
「封筒です。中には、書類か記録媒体が入っていると考えられます。見守り自販機三台のうち、一台にのみ渚さんの姿が写っていました。渚さんが手に持っていたのは、数封の角二封筒です。封筒の中の一通の宛先が、横浜のみなとみらいでした」
「宗像本部長宛でしょうか? 映像がフェイクの可能性は? 渚さん自身が手掛かりを残しているのなら、事件を誘導しているのも渚さんになる。彼女は今回、身体に劇薬を注射された被害者です。事件を初めから予期していたのなら、被害も防げたはず」
「劇物とは?」と杉下から安室へ、冷徹な質問が飛ぶ。
安室は一瞬、ひやりとした戦慄を全身で感じた。
「こちらのルートで入手した情報です。薬物の効果はわかりません。しかし、注射されてすぐに亡くなってもおかしくない劇薬だと」
杉下が瞠目し、みるみる表情が険しくなる。
「……渚さんは亡くなっていません。であれば……渚さんは、犯罪を予期しながらあえて被害に遭った可能性が高いと、僕は考えます。毒物を注射される前に、渚さんは解毒薬や中和剤の服用をしていたのでは?」
安室は驚愕のあまり、一刹那、身体が硬直した。
(杉下警部の指摘は理に適っている……「ただの作家とは思えない」とベルモットも言っていた……だが……)
安室は今まで見た松田渚の様子を想起する。
ポアロの前で倒れた姿や、「松田を頼む」と杉下に泣きながら頼んでいた姿が、杉下の語る冷静な人物像と、どうしても安室の中で結びつかない。
「まさか……渚さんは民間人ですよ? 彼女は何の訓練も受けていない……殺されるとわかっていて、民間人が先手を取るなど」
「ですが、渚さんは審神者です。未来は歴史修正主義者との戦争状態にあるとコナンくんが言っていました。本丸は前線基地です。審神者が本丸の管理責任者である以上、高度な訓練を受けた軍人と考えるべきでは?」
「失礼ですが、杉下警部の憶測だと僕は感じています。匿名掲示板を見た限りでは、情報の取り扱い方など審神者たちは民間人に近い印象を受けました。軍事訓練を受けているとは思えない。警察や自衛隊から審神者への出向も多いと書いてありましたが、渚さんは民間人だったはず」
「では、一つだけ質問を。匿名掲示板に異能や超感覚などの記述はありませんでしたか? エスパー、異能持ち、超能力者など、呼び名は何でも構いません。審神者は歴史を守る仕事ですから、正しい歴史を知る力や、これから起きる出来事を知る力、とも言われているかもしれません」
予想外の杉下の指摘に、安室は瞠目する。
杉下が満足そうに微笑んだ。
「その様子だと、あったのですね。匿名掲示板に、未来予知の記述が……お話しても、到底信じてもらえないと思いますが……」
唐突な芝居がかった杉下の言葉に、安室は眉を顰めた。
思わず、安室は杉下の様子を見る。
杉下がいつも通りの澄ました顔で、安室と眼線を合わせた。
物静かな杉下の眼は、深い湖の如く底が知れない。
「初めて僕と会った時の渚さんの言葉です。十二年前の秋。亀山くんも特命係に在籍する前。当時の渚さんは、高校二年生でした」
杉下が安室の目を見据えたまま、断言した。
「五年後の十一月に起きる高層マンションの爆破事件を防いでほしい。右京さんに出来なければ、他の誰にも助けられません……と、渚さんは特命係にまでお願いに来たのです。渚さんは高校生の時点で、五年後に起きる萩原くんの殉職を知っていました」
安室と杉下はまず、松田夫婦が住んでいるはずのマンションを訪ねた。
松田夫婦が暮らしているはずの部屋には、遠藤と名乗る四人一家が暮らしており、室内の家具も全て取り換えられていた。
マンションの他の住人やオーナーも松田を知らないと言い、松田が暮らしていた痕跡は皆無。
マンションの近隣住民にも安室と杉下は聞き込んだが、平日の昼間で人通りも少なく、有益な証言は望み薄だった。
ようやく一人の老人が「マンションの前に止まっていた二台の引っ越しトラックと、トラックの助手席から降りてきた子供を見た。引っ越しトラックにはマークも業者の名前もなく、どこのトラックかわからなかった」と証言しただけだ。
マンション近隣の防犯カメラもできる限り確認したが、不審なトラックは写っておらず。
まだ内容を確認できていない見守り自販機の映像が三台分あるが、安室は期待していなかった。
見守り自販機の映像は、鑑識課の米沢に確認してもらっている。
渚の仕事場だと松田が言ったマンションにも、やはり別の住人が暮らしていた。
仕事場のマンションでも誰も松田や渚を知らず、聞き込みの成果はゼロだ。
安室は、渚の本を出している出版社へ車を走らせていた。
聞き込みの結果を思い起こしながら、安室は重い口を開く。
「出版社も望み薄ですね……渚さんは著者近影を発表していません。本があっても、ペンネームのなりすましは可能です。担当編集者は渚さんの顔を知っている可能性が高いですが、未来からの介入があれば、時系列も記憶も好きなだけ改竄できます。実際、マンションの住人たちは口を揃えて「松田を知らない」と証言しています」
助手席の杉下が頷く。
「降谷くんの指摘はもっともです。聞き込みされる確率が高い人物は、あらかじめ用意して偽証できる……しかし、僕としては松田君の部屋の右隣の住人の証言が気になりますね。都内のマンションでは、ご近所付き合いは希薄です。同じ階に住んでいても、隣人を知らないケースは珍しくありません。なのに「隣は四人一家で間違いない」と断言した」
安室は肩を竦めた。
「わざとらしい点は、遠藤一家も同じですよ。今日は平日です。たまたま父親が休日で、しかも聞き込みに一家総出の対応とは……やはり遠藤一家の他に、オーナーや右隣の住人も共犯ですか……」
「雑な点があるのは事実ですが、かなり大掛かりな犯行です。警察の入室を予測して、松田くんの部屋の家具まで全て入れ替えている。彼らは多少粗があっても、マンションに松田くんが住んでいない状況を作りたかった」
何を思ったのか杉下が一瞬、目を伏せた。
「犯行グループには人員も、資金もあると推測できます。降谷くんも犯人には心当たりがあるはずです。歴史修正主義者……もしくはもっと力のある存在」
杉下が目線で、安室に返答を促す。
不吉な予想に、安室は自分の表情が強張るのを感じた。
「未来の政府ですか? 確かに松田は優秀な奴ですが……人員や資金を投入して消すほど、松田が未来にとっての重要人物とは思えません。まさか、これから松田が関わる事件で未来が変わるとでも?」
「松田くんが未来を変える可能性は充分にあります。審神者である渚さんにとって、松田くんは重要人物です。松田くん自身も、爆発物の専門家。彼が一つ、爆発物を解体できないだけで数十人から数百人以上の人生が変わります。爆弾は被害が大きいですから」
かつてニュースで見た、観覧車が爆発する瞬間が安室の脳裏をよぎる。
安室は、松田が死を選んだ理由を想起した。
(杉下警部の指摘は正しい……爆弾一つで大勢の命を脅かせる。松田が観覧車で死ななければ、米花中央病院にいた人たちが死んでいた。米花中央病院が吹き飛べば、確実に歴史に残る大事件になっただろう……)
安室は一瞬目を伏せ、息を吐き出す。
ハンドルを握り直し、安室は目の前の道を見据えた。
「やはり、出版社へ向かっても無駄足になる可能性が高いですね。渚さんの実家を当たってみますか? もしくは、渚さんの本当の父親である、神奈川県警の宗像本部長を」
杉下が、微笑みながら安室を見た。
薄気味悪い杉下の笑みに、安室は一刹那、沈黙する。
安室の首筋と腹の辺りが寒くなった。
「気づきませんか? 僕たちが事件を追いかけられるよう、手掛かりが残されています。未来からの手掛かりです。伊達くん達が出会った、高橋看護師。コナンくんが入手した黒いスマホと匿名掲示板。松田くんのチョーカー型爆弾ですら、現在は機能が停止している……確実に、誰かが我々を手助けしています」
安室は瞠目した。
「松田を手助けしている誰かは、我々が聞き込むと予想していた。だから、どこかに必ず手掛かりを残していると? 杉下警部は、誰かが意図して捜査を誘導しているとお考えですか?」
「失礼」と片手を上げ、杉下が安室の発言を遮った。
杉下が自分の胸ポケットからスマホを取り出す。
発信者は米沢守だ。
二言三言話し、杉下が通話を切った。
「米沢さんからです。横浜のみなとみらいへ向かってください。我々が気付いた以上、犯人側も手掛かりに気づいたでしょう」
安室は続きも聞かず、すぐに車のハンドルを切った。
エンジンが唸り、タイヤが回転を早めスピードが上がる。
やや強引に車線変更し、安室の車が横浜へ進路を取る。
車内上部のアシストレバーを握りながら、不満そうに杉下が安室を虎視した。
安室は車の進路を凝視したまま、淡々と答える。
「至急ですよね? ようやく見つけた手掛かりです。犯人側に消される前に、なんとしてでも接触しなければ。手掛かりの内容は?」
「封筒です。中には、書類か記録媒体が入っていると考えられます。見守り自販機三台のうち、一台にのみ渚さんの姿が写っていました。渚さんが手に持っていたのは、数封の角二封筒です。封筒の中の一通の宛先が、横浜のみなとみらいでした」
「宗像本部長宛でしょうか? 映像がフェイクの可能性は? 渚さん自身が手掛かりを残しているのなら、事件を誘導しているのも渚さんになる。彼女は今回、身体に劇薬を注射された被害者です。事件を初めから予期していたのなら、被害も防げたはず」
「劇物とは?」と杉下から安室へ、冷徹な質問が飛ぶ。
安室は一瞬、ひやりとした戦慄を全身で感じた。
「こちらのルートで入手した情報です。薬物の効果はわかりません。しかし、注射されてすぐに亡くなってもおかしくない劇薬だと」
杉下が瞠目し、みるみる表情が険しくなる。
「……渚さんは亡くなっていません。であれば……渚さんは、犯罪を予期しながらあえて被害に遭った可能性が高いと、僕は考えます。毒物を注射される前に、渚さんは解毒薬や中和剤の服用をしていたのでは?」
安室は驚愕のあまり、一刹那、身体が硬直した。
(杉下警部の指摘は理に適っている……「ただの作家とは思えない」とベルモットも言っていた……だが……)
安室は今まで見た松田渚の様子を想起する。
ポアロの前で倒れた姿や、「松田を頼む」と杉下に泣きながら頼んでいた姿が、杉下の語る冷静な人物像と、どうしても安室の中で結びつかない。
「まさか……渚さんは民間人ですよ? 彼女は何の訓練も受けていない……殺されるとわかっていて、民間人が先手を取るなど」
「ですが、渚さんは審神者です。未来は歴史修正主義者との戦争状態にあるとコナンくんが言っていました。本丸は前線基地です。審神者が本丸の管理責任者である以上、高度な訓練を受けた軍人と考えるべきでは?」
「失礼ですが、杉下警部の憶測だと僕は感じています。匿名掲示板を見た限りでは、情報の取り扱い方など審神者たちは民間人に近い印象を受けました。軍事訓練を受けているとは思えない。警察や自衛隊から審神者への出向も多いと書いてありましたが、渚さんは民間人だったはず」
「では、一つだけ質問を。匿名掲示板に異能や超感覚などの記述はありませんでしたか? エスパー、異能持ち、超能力者など、呼び名は何でも構いません。審神者は歴史を守る仕事ですから、正しい歴史を知る力や、これから起きる出来事を知る力、とも言われているかもしれません」
予想外の杉下の指摘に、安室は瞠目する。
杉下が満足そうに微笑んだ。
「その様子だと、あったのですね。匿名掲示板に、未来予知の記述が……お話しても、到底信じてもらえないと思いますが……」
唐突な芝居がかった杉下の言葉に、安室は眉を顰めた。
思わず、安室は杉下の様子を見る。
杉下がいつも通りの澄ました顔で、安室と眼線を合わせた。
物静かな杉下の眼は、深い湖の如く底が知れない。
「初めて僕と会った時の渚さんの言葉です。十二年前の秋。亀山くんも特命係に在籍する前。当時の渚さんは、高校二年生でした」
杉下が安室の目を見据えたまま、断言した。
「五年後の十一月に起きる高層マンションの爆破事件を防いでほしい。右京さんに出来なければ、他の誰にも助けられません……と、渚さんは特命係にまでお願いに来たのです。渚さんは高校生の時点で、五年後に起きる萩原くんの殉職を知っていました」