ミステリー要素ありなので、話が込み入ってきました。最初は夢主の名前を出さないつもりだったので、少し読みにくい部分があるかもしれません。
DC×刀剣乱舞×相棒 越境者
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「わざとらしい真似すんな、もうバレてんだよ、お前!!」
怒号と共に、コナンは顔を殴られた。
「ぐっ」と呻き声を漏らし、コナンは痛みに耐える。
(バレてる? 何が……まさか、俺の正体が!?)
コナンは目の前の人々を睨みつけた。
全員で三人。
運転席に男一人、後部座席に女一人と男一人だ。
運転席に座っているのは、三十代か二十代後半の若い男。
鍵が閉まっていたはずの運転席にさっさと座り、コナンからスマホを取り上げた。
すでに運転席の男が、車のエンジンをかけている。
「あんまり痛めつけるんじゃないよ。その子が死んだら、元も子もないんだからね」
拳銃を構えながら、後部座席の四十代くらいの女が叱責する。
「わかってる!」と運転席の男が怒鳴り返す。
もう一人、後部座席の男も拳銃を撃つ準備をしている。
(運転席から降りる時、松田刑事は鍵を閉めて行ったはず……なのに、三人とも車に勝手に乗り込んできた。本来の車の持ち主か? それとも、何か未来の技術?)
車が動き出し、外の景色が動く。
(ホテルに向かっている……まさか、彼らの狙いは松田刑事か!?)
後部座席の男は、他の二人より落ち着いて見える。
コナンは慎重に、後部座席の男へ問いかけた。
「おじさんたちは誰? 「家族を守る会」の人たち?」
三人の顔色が変化した。
運転席の男が、驚愕した顔で怒鳴る。
「お前、いったいどこから……!」
「ボクも知ってるよ。審神者や神隠し、未来のこと。ボクや渚さんが狙われるのは、審神者だからだよね。でも、松田刑事を狙う理由は? 渚さんの旦那さんだから?」
「ボウズ!? お前ら、人の車で勝手に何してやがる!?」
松田の声が、車外から響く。
コナンが外を見ると、緊迫した場面だった。
「殺せ」と犯人から言われた外国人女性を、松田が片腕で取り押さえている。
松田が押さえている外国人女性と一瞬だけ、コナンの眼が合った。
外国人女性が驚いた顔をして、コナンを凝視する。
コナンは違和感を持つ。
(なんだ? 彼女は怯えていない。むしろ、俺を心配している?)
ホテルのロビーから、大勢の警察官が松田を追ってきた。
伊達や風見もいる。
松田は完全に警察から犯人扱いだ。
コナンに気付いた風見が「あっ」と大きく口を開ける。
(まずい、今はまず松田刑事を助けねえと!)
咄嗟にコナンは窓を開け、松田に叫び返した。
「助けて、松田刑事、風見刑事! 車に変な人たちが」
コナンは勢いよく、背後に引き倒された。
銃声が響く。
後部座席の二人が、松田たちに発砲していた。
コナンは慌てて窓の外を見る。
松田が外国人女性を庇い、身を伏せていた。
伊達や風見など、他の警察官たちも身を伏せている。
銃声がまだ続く。
後部座席の二人が発砲を止めない。
風見が何か指示を出す。
数人の私服警官が足早に、駐車場へ向かうのが見えた。
後部座席の女が、駐車場へ向かう警官へ発砲する。
松田が動いた。
外国人女性を伊達へ突き飛ばす。
目ざとく、後部座席の男が松田へ発砲した。
松田のすぐそばに銃弾が着弾し、アスファルトの破片が飛ぶ。
伊達や風見など数人が、車へ発砲する。
威嚇射撃だ、車には当たらない。
誰かの撃った弾が、後部座席の女へ当たった。
短い悲鳴を上げ、女が銃を取り落とす。一人分の発砲が止まる。
松田が車を追って走り出す。
いくつか、松田を制止する声が飛ぶ。
松田は止まらず、車を追いかける。
車はだんだんスピードを上げ、交差点に突っ込んだ。
周囲の車から、抗議のクラクションが猛然と飛ぶ。
車は止まらない。
時に蛇行しながら、どんどん周りの車を追い越していく。
コナンはまた窓にしがみつき、車の外を見た。
松田がガードレールを飛び越え、車線に飛び出す。
長い手足を駆使し、必死の形相で松田が走る。
車はそれなりのスピードを出しているのに、松田との距離は変わらない。
「おうおう、頑張るねぇ。お前は別にいらねえんだけどな」
後部座席の男が、再び松田へ発砲した。
さすがに反射的に、松田が自分の頭を庇う。
だが、松田の足は止まらない。
松田が車を追いかけ続ける。
険しい顔で、松田はコナンと車を凝視している。
「距離が縮まってやがる。スピード上げてるのに、どうする、どうします!?」
運転席の若い男が、後部座席の男へ指示を求める。
「プランCだ。予定通り始末する。花見町の倉庫街へ行け。ルートは頭に叩き込んでいるな? 令和だと、花見町の倉庫街はNシステムに引っかからない」
「おじさん、警察官でしょ。Nシステムのルートを知っているのは、警察官しかありえない。未来の警察だったら、過去のデータも調べられるはず。もしかして、おじさんも審神者だったの?」
コナンは冷静に、後部座席の男に質問した。
男がちらりと、コナンを見た。コナンは男の眼を見つめ返す。
深い悲しみが男の眼に浮かんでいた。
弾を撃ち尽くしたのか、男がカートリッジを取り換える。慣れた手つきだ。
「昔の自分なんざ、もう忘れたよ」
「あんた、さっきからうるさいねえ! どうして、なんで、そればっかり! 知ってどうするんだい!? 人質は大人しくしてりゃあいいんだよ!」
ハンカチで血を押さえた後部座席の女が、般若の形相で叫ぶ。
女の眼にも悲しみがある。
コナンはなるべく女を刺激しないよう、静かに尋ねた。
「おばさん、きっと未来の人だよね。レギオンって、何? おばさんも、家族を亡くしたの?」
「亡くしたんじゃない、取られたんだ! 化け物に!」
女の眼から、涙がぶわりと噴き出す。
「あの子は行きたくないと言ったのに、適性があるから、三年でいいからって無理やり……優しい子だった! 夢だってあった! 姉さんだけならともかく、子供は許せない!!」
「おばさんは、刀剣男士に子供もお姉さんも隠されたんだね。じゃあレギオンって、なに? レギオンに頼めば、おばさんの子どもは帰ってくるの?」
女が答えようとした瞬間、拳銃の発砲音がいくつか重なって聞こえた。
ライフルの発砲音が、拳銃の発砲音の中に混ざる。
車の走行音が変わり、大きく車体が前に落ちる。
断続的な縦揺れが車全体を襲う。
両側の車輪が道路に擦れ、車外で激しく火花が上がるのが見えた。
(両方同時にパンク!? 違う、誰かが狙撃した!)
運転席の男がハンドルにしがみつき、後部座席の女もドア上部のアシストグリップを握り締めている。
後部座席の男だけが、まだ執拗に拳銃で松田を狙っていた。
コナンは咄嗟に、腕時計型麻酔銃で後部座席の男を撃った。
うまく針が命中し、男の頸ががっくりと前に落ちる。
もう後部座席の男は眠っていた。
気絶しているのか、運転席の男も動かない。
「っこの、よくも!」
後部座席の女が拳銃を取り、コナンへ銃口を向ける。
コナンは、真っ直ぐに女を見つめた。
女の動きが一瞬止まる。苦しげな葛藤が、女の目に浮かぶ。
後部座席のドアが開き、女が外に引きずり出された。
女が地面に投げ出され、拳銃が遠くへ蹴飛ばされる。
相変わらず、高木の血で染まったシャツを着た、松田が立っていた。
松田も銃を持っているはずなのに、構えていない。
銃弾が掠めたのか、松田の頬に薄く血が滲んでいる。
「もうやめようぜ。あんたも怪我しているし、もう充分だろ」
女が獰猛な顔つきで吠えた。
「うるさいっ! 何が充分なの、まだ何も終わっちゃいない! 碧だって帰ってきてない! この子をレギオンに引き渡したら、引き渡せたら……!」
女が悲痛な声を上げながら、地面に突っ伏した。
号泣を聞きながら、コナンは船の駆動音に気付いた。
窓の外に海が見える。
いつのまにか、コナンの乗った車は花見町の倉庫街についていた。
殺気が、コナンの背後から飛ぶ。
振り返る間もなく、コナンの頸に誰かの手が回った。
冷たい戦慄がコナンの全身に走る。
運転席で気絶していたはずの、若い男だ。
若い男が、震えながら松田に銃口を向けている。
冷や汗でびっしょりとした男の指が、コナンの首を押さえている。
松田が冷酷な目で男を見た。
「撃ってみろよ。撃てんのかよ、お前」
若い男が生唾を飲み込む。
松田に気圧されたのか、若い男が銃口をコナンのこめかみに向き直す。
「動くなよ。少しでも動けば、工藤新一の頭を吹き飛ばす」
松田が、わずかに顔を顰める。
「馬鹿な真似はやめろ。そいつは工藤新一じゃ」
若い男が吠えた。
「知ってるんだ、俺は! 書いてたからな、歴史の本に! 江戸川コナンは工藤新一、令和でこの事実を知った奴はみんな死ぬって! だから、もうアンタも終わりなんだよ!!」
若い男がコナンを突き飛ばし、逃げようとした。
低い呻き声を漏らし、若い男が崩れ落ちる。
若い男の背後から、メガネをかけた糸目の男が微笑みながら顔を出す。
「無事かな、坊や。松田刑事も大丈夫そうですね」
「沖矢さん、どうして!?」
コナンは驚きながら、沖矢に質問した。
気絶した若い男を車から降ろしながら、沖矢が答えた。
「買い物に行こうとしたところ、茶髪の少女に呼び止められてね。詳しい事情はわからないが、阿笠博士も困っておられる様子だし、私も同乗したんだ」
若い男を拘束し、沖矢がコンテナの影に置く。
沖矢が顎で示した方向をコナンが見る。
少し離れた場所に阿笠のビートルが止まっていた。
ビートルの運転席には、心配そうな顔をした阿笠がハンドルを握っている。
いつ車から降りたのか、追跡メガネをかけた灰原哀が立っていた。
危険を感じ取っているのか、灰原の顔が青白い。
瞠目して、灰原が松田を凝視している。
灰原の足元では、先ほどまで号泣していた女が眠っていた。
おそらく、灰原が時計型麻酔銃で眠らせたのだろう。
「状況は?」
沖矢が後部座席の男を降ろしながら、松田に質問する。
「俺のチョーカーと坊主の手錠が爆弾だ。坊主の手錠は、シートベルトを外したら爆発する」
「なるほど。手錠を車から外せるか?」
「それくらいならな。だが、ここで手錠の解体は無理だ。道具もねえし」
「安心しろ。工具は一式、持って来た。坊や、動くなよ」
沖矢が自分のズボンのポケットからナイフを出す。
コナンはとっさに、沖矢を止めた。
「沖矢さん、待って! ベルトが戻る内部にも仕掛けがあるのかも。ガムテープとかある? シートベルトが中に戻らないように、止めた方がいいと思う」
「わかった。ガムテープなら車に」
沖矢が運転席から降りようとした時、カーナビが不気味に赤く光った。
キリル文字が表示され、数字のカウントダウンが始まった。
残り時間はおよそ、三十秒。
合成音声が流れ始める。
『残念だよ、松田。命惜しさに仲間に助けを求めるとはな。せめてもの手向けだ。仲良く仲間共々、吹き飛ばしてやろう』
沖矢が迅速に、コナンのシートベルトをナイフで斬り裂く。
銃声が二発響き、松田がコナンの手錠が通る室内部品を破壊した。
松田が車のドアを大きく開く。
沖矢がコナンを抱えて、車外へ飛び出す。
「いかん!」と阿笠の警告が飛んだ。
「松田刑事!」と灰原の悲鳴が響く。
大きく車が爆発し、轟音が轟く。
病院と同じ、蛍光ピンクの爆炎が盛大に上がった。
爆風が沖矢の身体を煽る。
コナンを抱えながら、沖矢が受け身を取った。
沖矢がすぐに体勢を立て直し、片目を開けた。
特徴的な沖矢の目が、コナンの顔を覗き込む。
「坊や、怪我は?」
「ボクはなんともないよ! 沖矢さんや、松田刑事は!?」
爆発した車を見て、コナンは一瞬、言葉を失った。
さっきまで乗っていた車が、炎の中でひしゃげている。
ガソリンにも引火したのか、天まで黒煙が伸びていた。
「私は無事だ。少々、スーツの裾が焦げてしまったがね。松田刑事は……」
沖矢の目線が、コナンの背後に動く。
コナンは急いで振り返った。
少しワイシャツやズボンを焦がした松田が立っていた。
煙を吸ったのか、松田が軽く咳き込む。
「俺も無事だぜ。吹き飛ぶするのはわかっていたし、ドアを開けてすぐ離れたからな。だから嬢ちゃんも、いつまでも怖い顔すんな」
松田がしゃがみ、灰原に目線を合わせる。
大丈夫だと灰原に印象付けたいのか、松田が微笑んでいる。
「でも、あなた、服の血……大丈夫なの? ただでさえ、あなたは悪魔の声に耳を傾けやすいのに……」
灰原が青ざめたまま、松田の血まみれのシャツを示す。
「これは俺の血じゃねえから。いい加減、着替えねーとダメだな。怖がらせて悪かったな、嬢ちゃん」
松田が灰原から離れる。
コナンは松田に不安と焦燥を感じた。
このまま、ふっと霧みたいに、どこかへ松田が消えてしまいそうだ。
「待って、松田刑事、どこ行くの!?」
松田が振り向いた。
「坊主も、もうわかってんだろ。車の爆発は、俺のチョーカーの盗撮機能のせいだ。でも、坊主の手錠は爆発してねぇ。爆発の影響か、別のアクシデントか。今だったら、犯人はこっちの状況を見ていない。車の爆発で、坊主が死んだと思っている。坊主が離脱するなら、今しかねぇぜ。阿笠博士、道具と時間さえありゃ、坊主の手錠は解体できるな?」
阿笠が戸惑いながら頷く。
「ま、まあ……最悪の場合でも、自宅に帰れば解体できそうじゃが……」
「なら、悪いが坊主の手錠は頼んだぜ」
松田が駆け出そうとする。とっさにコナンは呼び止めた。
立ち止まり、松田が少し振り返った。
「俺と坊主は、別行動になった方がいい。坊主だって、何かの拍子に俺の首が吹っ飛ぶのを見たくねーだろ」
驚愕のあまり、コナンは一瞬沈黙した。
(松田刑事は、チョーカーの爆弾は解体できないと判断しているのか。わざわざ言わないのは、俺や周りの人を不安にさせたくないから。どうして解体できないんだ? 自分の首についているから? 未来の技術の爆弾だから? 理由なんか、どうでもいい。とにかく今は、松田刑事を絶対一人にしちゃだめだ!)
コナンは必死に松田を観察し、気付いた。
「でも、松田刑事のチョーカー、また色が変わっているよ! 今は結晶体が青になってる! チョーカーにあったラインも全部消えてるよ! それでも危険なの!?」
驚く松田に、灰原が手鏡を渡す。
「江戸川君の指摘は本当よ……首のチョーカー、見たことないタイプの爆弾ね。少なくとも、既存の技術じゃない。でも、まさか解体できないのかしら? あなたでも?」
灰原の挑発を、松田が鼻で笑う。
「約束は出来ねえな」
「ならなおさら、一人になるのはやめた方がいいわ。今の貴方は手負いの獣。姿の見えない爆弾魔に、一人で立ち向かうには分が悪すぎる。今日はハロウィンだけど、血濡れの服も人目を引くわ。いくら狼と言えども、群れから逸れた弱った獣は狩られるのが運命 ……化け物たちの行列に紛れて、あの世まで行くつもり?」
松田が肩を竦めた。
「相変わらず、小難しい理屈を並べやがる。坊主といい、嬢ちゃんといい、最近の小学生はとんでもねえな」
風に乗って、遠方からサイレンが聞こえ始めた。
「警察と消防が来ます。犯人グループも全員拘束しましたし、あとは日本の警察に任せて、我々は立ち去りましょう。よろしいですね?」
沖矢が確認を取るために、松田を見る。
松田も沖矢に頷き返す。
コナンは黒いスマホを思い出し、ズボンのポケットを探った。ない。
ハッとして、コナンは急いで車を振り返る。
炎上し続ける車の残骸は、熱のせいで真っ赤になっていた。
「しまった! スマホが……」
「もしかして、これをお探しかな?」
沖矢が黒いスマホをコナンに見せる。
コナンは安堵のあまり、胸を撫で下ろした。
「よかった……すごく大事なことが分かったんだ。安室さんにも教えないと」
松田と灰原の後を追い、コナンも阿笠のビートルへ乗り込む。
警察のNシステムに見つからないよう、ビートルの運転席には松田が座った。
阿笠は後部座席に移動し、灰原の隣にいる。
沖矢がビートルの助手席に座り、ドアを閉める。
「沖矢さんよ、万が一の時はハンドルを頼むぜ。もうほとんどチョーカーの機能は死んでいるが、まだ解体 してねえからな」
不穏な松田のささやきに、コナンと灰原は瞠目する。
物騒な発言に、阿笠も硬直していた。
沖矢が冷静に松田へ尋ねる。
「爆発の規模はどのくらいだ?」
「安心しろ。首のチョーカーには、必要最低限の爆薬しか入ってねえ。経費削減か、なんだか理由は知らねえが……助手席にいるアンタは、火傷もしねえだろうよ」
「……わかった。その時は、俺が引き継ごう」
松田が沖矢に頷き返し、車を出発させる。
コナンは唇をぎゅっと結びながら、フロントシートのやり取りを聞いていた。
匿名掲示板で見た「観覧車で一名、警察官死亡」や「死期逸脱者」の文字がコナンの頭の中に浮かんでくる。
コナンの眼線に沖矢が気付く。
先ほどまでの不穏な会話とは裏腹に、沖矢がにこやかにコナンたちを振り返った。
「では、安全な場所までドライブも兼ねて、情報共有をしようか」
コナンが沖矢に今までの経緯を話そうとした時、阿笠のスマホが鳴った。
「すまん、電話じゃ」と阿笠がコール音を切ろうとして、瞠目する。
「杉下警部からじゃぞ!」
「なんだって!? 博士、貸してくれ!」
コナンは慌てて阿笠からスマホを受け取った。
スピーカーモードにして通話をオンにする。
「杉下警部!?」
『その声は、コナンくんですね。うまく阿笠博士と合流できた様子で、何よりです。松田くんも一緒にいますか?』
コナンは運転席の松田を、ちらりと見た。
「松田刑事も一緒にいるよ。今、運転中なんだ。博士たちに連絡してくれたのは、杉下警部だったんだね」
『コナンくん達には、手助けが必要だと思いましたから。君が拉致されてから何があったのか、そちらの状況を教えてください』
怒号と共に、コナンは顔を殴られた。
「ぐっ」と呻き声を漏らし、コナンは痛みに耐える。
(バレてる? 何が……まさか、俺の正体が!?)
コナンは目の前の人々を睨みつけた。
全員で三人。
運転席に男一人、後部座席に女一人と男一人だ。
運転席に座っているのは、三十代か二十代後半の若い男。
鍵が閉まっていたはずの運転席にさっさと座り、コナンからスマホを取り上げた。
すでに運転席の男が、車のエンジンをかけている。
「あんまり痛めつけるんじゃないよ。その子が死んだら、元も子もないんだからね」
拳銃を構えながら、後部座席の四十代くらいの女が叱責する。
「わかってる!」と運転席の男が怒鳴り返す。
もう一人、後部座席の男も拳銃を撃つ準備をしている。
(運転席から降りる時、松田刑事は鍵を閉めて行ったはず……なのに、三人とも車に勝手に乗り込んできた。本来の車の持ち主か? それとも、何か未来の技術?)
車が動き出し、外の景色が動く。
(ホテルに向かっている……まさか、彼らの狙いは松田刑事か!?)
後部座席の男は、他の二人より落ち着いて見える。
コナンは慎重に、後部座席の男へ問いかけた。
「おじさんたちは誰? 「家族を守る会」の人たち?」
三人の顔色が変化した。
運転席の男が、驚愕した顔で怒鳴る。
「お前、いったいどこから……!」
「ボクも知ってるよ。審神者や神隠し、未来のこと。ボクや渚さんが狙われるのは、審神者だからだよね。でも、松田刑事を狙う理由は? 渚さんの旦那さんだから?」
「ボウズ!? お前ら、人の車で勝手に何してやがる!?」
松田の声が、車外から響く。
コナンが外を見ると、緊迫した場面だった。
「殺せ」と犯人から言われた外国人女性を、松田が片腕で取り押さえている。
松田が押さえている外国人女性と一瞬だけ、コナンの眼が合った。
外国人女性が驚いた顔をして、コナンを凝視する。
コナンは違和感を持つ。
(なんだ? 彼女は怯えていない。むしろ、俺を心配している?)
ホテルのロビーから、大勢の警察官が松田を追ってきた。
伊達や風見もいる。
松田は完全に警察から犯人扱いだ。
コナンに気付いた風見が「あっ」と大きく口を開ける。
(まずい、今はまず松田刑事を助けねえと!)
咄嗟にコナンは窓を開け、松田に叫び返した。
「助けて、松田刑事、風見刑事! 車に変な人たちが」
コナンは勢いよく、背後に引き倒された。
銃声が響く。
後部座席の二人が、松田たちに発砲していた。
コナンは慌てて窓の外を見る。
松田が外国人女性を庇い、身を伏せていた。
伊達や風見など、他の警察官たちも身を伏せている。
銃声がまだ続く。
後部座席の二人が発砲を止めない。
風見が何か指示を出す。
数人の私服警官が足早に、駐車場へ向かうのが見えた。
後部座席の女が、駐車場へ向かう警官へ発砲する。
松田が動いた。
外国人女性を伊達へ突き飛ばす。
目ざとく、後部座席の男が松田へ発砲した。
松田のすぐそばに銃弾が着弾し、アスファルトの破片が飛ぶ。
伊達や風見など数人が、車へ発砲する。
威嚇射撃だ、車には当たらない。
誰かの撃った弾が、後部座席の女へ当たった。
短い悲鳴を上げ、女が銃を取り落とす。一人分の発砲が止まる。
松田が車を追って走り出す。
いくつか、松田を制止する声が飛ぶ。
松田は止まらず、車を追いかける。
車はだんだんスピードを上げ、交差点に突っ込んだ。
周囲の車から、抗議のクラクションが猛然と飛ぶ。
車は止まらない。
時に蛇行しながら、どんどん周りの車を追い越していく。
コナンはまた窓にしがみつき、車の外を見た。
松田がガードレールを飛び越え、車線に飛び出す。
長い手足を駆使し、必死の形相で松田が走る。
車はそれなりのスピードを出しているのに、松田との距離は変わらない。
「おうおう、頑張るねぇ。お前は別にいらねえんだけどな」
後部座席の男が、再び松田へ発砲した。
さすがに反射的に、松田が自分の頭を庇う。
だが、松田の足は止まらない。
松田が車を追いかけ続ける。
険しい顔で、松田はコナンと車を凝視している。
「距離が縮まってやがる。スピード上げてるのに、どうする、どうします!?」
運転席の若い男が、後部座席の男へ指示を求める。
「プランCだ。予定通り始末する。花見町の倉庫街へ行け。ルートは頭に叩き込んでいるな? 令和だと、花見町の倉庫街はNシステムに引っかからない」
「おじさん、警察官でしょ。Nシステムのルートを知っているのは、警察官しかありえない。未来の警察だったら、過去のデータも調べられるはず。もしかして、おじさんも審神者だったの?」
コナンは冷静に、後部座席の男に質問した。
男がちらりと、コナンを見た。コナンは男の眼を見つめ返す。
深い悲しみが男の眼に浮かんでいた。
弾を撃ち尽くしたのか、男がカートリッジを取り換える。慣れた手つきだ。
「昔の自分なんざ、もう忘れたよ」
「あんた、さっきからうるさいねえ! どうして、なんで、そればっかり! 知ってどうするんだい!? 人質は大人しくしてりゃあいいんだよ!」
ハンカチで血を押さえた後部座席の女が、般若の形相で叫ぶ。
女の眼にも悲しみがある。
コナンはなるべく女を刺激しないよう、静かに尋ねた。
「おばさん、きっと未来の人だよね。レギオンって、何? おばさんも、家族を亡くしたの?」
「亡くしたんじゃない、取られたんだ! 化け物に!」
女の眼から、涙がぶわりと噴き出す。
「あの子は行きたくないと言ったのに、適性があるから、三年でいいからって無理やり……優しい子だった! 夢だってあった! 姉さんだけならともかく、子供は許せない!!」
「おばさんは、刀剣男士に子供もお姉さんも隠されたんだね。じゃあレギオンって、なに? レギオンに頼めば、おばさんの子どもは帰ってくるの?」
女が答えようとした瞬間、拳銃の発砲音がいくつか重なって聞こえた。
ライフルの発砲音が、拳銃の発砲音の中に混ざる。
車の走行音が変わり、大きく車体が前に落ちる。
断続的な縦揺れが車全体を襲う。
両側の車輪が道路に擦れ、車外で激しく火花が上がるのが見えた。
(両方同時にパンク!? 違う、誰かが狙撃した!)
運転席の男がハンドルにしがみつき、後部座席の女もドア上部のアシストグリップを握り締めている。
後部座席の男だけが、まだ執拗に拳銃で松田を狙っていた。
コナンは咄嗟に、腕時計型麻酔銃で後部座席の男を撃った。
うまく針が命中し、男の頸ががっくりと前に落ちる。
もう後部座席の男は眠っていた。
気絶しているのか、運転席の男も動かない。
「っこの、よくも!」
後部座席の女が拳銃を取り、コナンへ銃口を向ける。
コナンは、真っ直ぐに女を見つめた。
女の動きが一瞬止まる。苦しげな葛藤が、女の目に浮かぶ。
後部座席のドアが開き、女が外に引きずり出された。
女が地面に投げ出され、拳銃が遠くへ蹴飛ばされる。
相変わらず、高木の血で染まったシャツを着た、松田が立っていた。
松田も銃を持っているはずなのに、構えていない。
銃弾が掠めたのか、松田の頬に薄く血が滲んでいる。
「もうやめようぜ。あんたも怪我しているし、もう充分だろ」
女が獰猛な顔つきで吠えた。
「うるさいっ! 何が充分なの、まだ何も終わっちゃいない! 碧だって帰ってきてない! この子をレギオンに引き渡したら、引き渡せたら……!」
女が悲痛な声を上げながら、地面に突っ伏した。
号泣を聞きながら、コナンは船の駆動音に気付いた。
窓の外に海が見える。
いつのまにか、コナンの乗った車は花見町の倉庫街についていた。
殺気が、コナンの背後から飛ぶ。
振り返る間もなく、コナンの頸に誰かの手が回った。
冷たい戦慄がコナンの全身に走る。
運転席で気絶していたはずの、若い男だ。
若い男が、震えながら松田に銃口を向けている。
冷や汗でびっしょりとした男の指が、コナンの首を押さえている。
松田が冷酷な目で男を見た。
「撃ってみろよ。撃てんのかよ、お前」
若い男が生唾を飲み込む。
松田に気圧されたのか、若い男が銃口をコナンのこめかみに向き直す。
「動くなよ。少しでも動けば、工藤新一の頭を吹き飛ばす」
松田が、わずかに顔を顰める。
「馬鹿な真似はやめろ。そいつは工藤新一じゃ」
若い男が吠えた。
「知ってるんだ、俺は! 書いてたからな、歴史の本に! 江戸川コナンは工藤新一、令和でこの事実を知った奴はみんな死ぬって! だから、もうアンタも終わりなんだよ!!」
若い男がコナンを突き飛ばし、逃げようとした。
低い呻き声を漏らし、若い男が崩れ落ちる。
若い男の背後から、メガネをかけた糸目の男が微笑みながら顔を出す。
「無事かな、坊や。松田刑事も大丈夫そうですね」
「沖矢さん、どうして!?」
コナンは驚きながら、沖矢に質問した。
気絶した若い男を車から降ろしながら、沖矢が答えた。
「買い物に行こうとしたところ、茶髪の少女に呼び止められてね。詳しい事情はわからないが、阿笠博士も困っておられる様子だし、私も同乗したんだ」
若い男を拘束し、沖矢がコンテナの影に置く。
沖矢が顎で示した方向をコナンが見る。
少し離れた場所に阿笠のビートルが止まっていた。
ビートルの運転席には、心配そうな顔をした阿笠がハンドルを握っている。
いつ車から降りたのか、追跡メガネをかけた灰原哀が立っていた。
危険を感じ取っているのか、灰原の顔が青白い。
瞠目して、灰原が松田を凝視している。
灰原の足元では、先ほどまで号泣していた女が眠っていた。
おそらく、灰原が時計型麻酔銃で眠らせたのだろう。
「状況は?」
沖矢が後部座席の男を降ろしながら、松田に質問する。
「俺のチョーカーと坊主の手錠が爆弾だ。坊主の手錠は、シートベルトを外したら爆発する」
「なるほど。手錠を車から外せるか?」
「それくらいならな。だが、ここで手錠の解体は無理だ。道具もねえし」
「安心しろ。工具は一式、持って来た。坊や、動くなよ」
沖矢が自分のズボンのポケットからナイフを出す。
コナンはとっさに、沖矢を止めた。
「沖矢さん、待って! ベルトが戻る内部にも仕掛けがあるのかも。ガムテープとかある? シートベルトが中に戻らないように、止めた方がいいと思う」
「わかった。ガムテープなら車に」
沖矢が運転席から降りようとした時、カーナビが不気味に赤く光った。
キリル文字が表示され、数字のカウントダウンが始まった。
残り時間はおよそ、三十秒。
合成音声が流れ始める。
『残念だよ、松田。命惜しさに仲間に助けを求めるとはな。せめてもの手向けだ。仲良く仲間共々、吹き飛ばしてやろう』
沖矢が迅速に、コナンのシートベルトをナイフで斬り裂く。
銃声が二発響き、松田がコナンの手錠が通る室内部品を破壊した。
松田が車のドアを大きく開く。
沖矢がコナンを抱えて、車外へ飛び出す。
「いかん!」と阿笠の警告が飛んだ。
「松田刑事!」と灰原の悲鳴が響く。
大きく車が爆発し、轟音が轟く。
病院と同じ、蛍光ピンクの爆炎が盛大に上がった。
爆風が沖矢の身体を煽る。
コナンを抱えながら、沖矢が受け身を取った。
沖矢がすぐに体勢を立て直し、片目を開けた。
特徴的な沖矢の目が、コナンの顔を覗き込む。
「坊や、怪我は?」
「ボクはなんともないよ! 沖矢さんや、松田刑事は!?」
爆発した車を見て、コナンは一瞬、言葉を失った。
さっきまで乗っていた車が、炎の中でひしゃげている。
ガソリンにも引火したのか、天まで黒煙が伸びていた。
「私は無事だ。少々、スーツの裾が焦げてしまったがね。松田刑事は……」
沖矢の目線が、コナンの背後に動く。
コナンは急いで振り返った。
少しワイシャツやズボンを焦がした松田が立っていた。
煙を吸ったのか、松田が軽く咳き込む。
「俺も無事だぜ。吹き飛ぶするのはわかっていたし、ドアを開けてすぐ離れたからな。だから嬢ちゃんも、いつまでも怖い顔すんな」
松田がしゃがみ、灰原に目線を合わせる。
大丈夫だと灰原に印象付けたいのか、松田が微笑んでいる。
「でも、あなた、服の血……大丈夫なの? ただでさえ、あなたは悪魔の声に耳を傾けやすいのに……」
灰原が青ざめたまま、松田の血まみれのシャツを示す。
「これは俺の血じゃねえから。いい加減、着替えねーとダメだな。怖がらせて悪かったな、嬢ちゃん」
松田が灰原から離れる。
コナンは松田に不安と焦燥を感じた。
このまま、ふっと霧みたいに、どこかへ松田が消えてしまいそうだ。
「待って、松田刑事、どこ行くの!?」
松田が振り向いた。
「坊主も、もうわかってんだろ。車の爆発は、俺のチョーカーの盗撮機能のせいだ。でも、坊主の手錠は爆発してねぇ。爆発の影響か、別のアクシデントか。今だったら、犯人はこっちの状況を見ていない。車の爆発で、坊主が死んだと思っている。坊主が離脱するなら、今しかねぇぜ。阿笠博士、道具と時間さえありゃ、坊主の手錠は解体できるな?」
阿笠が戸惑いながら頷く。
「ま、まあ……最悪の場合でも、自宅に帰れば解体できそうじゃが……」
「なら、悪いが坊主の手錠は頼んだぜ」
松田が駆け出そうとする。とっさにコナンは呼び止めた。
立ち止まり、松田が少し振り返った。
「俺と坊主は、別行動になった方がいい。坊主だって、何かの拍子に俺の首が吹っ飛ぶのを見たくねーだろ」
驚愕のあまり、コナンは一瞬沈黙した。
(松田刑事は、チョーカーの爆弾は解体できないと判断しているのか。わざわざ言わないのは、俺や周りの人を不安にさせたくないから。どうして解体できないんだ? 自分の首についているから? 未来の技術の爆弾だから? 理由なんか、どうでもいい。とにかく今は、松田刑事を絶対一人にしちゃだめだ!)
コナンは必死に松田を観察し、気付いた。
「でも、松田刑事のチョーカー、また色が変わっているよ! 今は結晶体が青になってる! チョーカーにあったラインも全部消えてるよ! それでも危険なの!?」
驚く松田に、灰原が手鏡を渡す。
「江戸川君の指摘は本当よ……首のチョーカー、見たことないタイプの爆弾ね。少なくとも、既存の技術じゃない。でも、まさか解体できないのかしら? あなたでも?」
灰原の挑発を、松田が鼻で笑う。
「約束は出来ねえな」
「ならなおさら、一人になるのはやめた方がいいわ。今の貴方は手負いの獣。姿の見えない爆弾魔に、一人で立ち向かうには分が悪すぎる。今日はハロウィンだけど、血濡れの服も人目を引くわ。いくら狼と言えども、群れから逸れた弱った獣は狩られるのが
松田が肩を竦めた。
「相変わらず、小難しい理屈を並べやがる。坊主といい、嬢ちゃんといい、最近の小学生はとんでもねえな」
風に乗って、遠方からサイレンが聞こえ始めた。
「警察と消防が来ます。犯人グループも全員拘束しましたし、あとは日本の警察に任せて、我々は立ち去りましょう。よろしいですね?」
沖矢が確認を取るために、松田を見る。
松田も沖矢に頷き返す。
コナンは黒いスマホを思い出し、ズボンのポケットを探った。ない。
ハッとして、コナンは急いで車を振り返る。
炎上し続ける車の残骸は、熱のせいで真っ赤になっていた。
「しまった! スマホが……」
「もしかして、これをお探しかな?」
沖矢が黒いスマホをコナンに見せる。
コナンは安堵のあまり、胸を撫で下ろした。
「よかった……すごく大事なことが分かったんだ。安室さんにも教えないと」
松田と灰原の後を追い、コナンも阿笠のビートルへ乗り込む。
警察のNシステムに見つからないよう、ビートルの運転席には松田が座った。
阿笠は後部座席に移動し、灰原の隣にいる。
沖矢がビートルの助手席に座り、ドアを閉める。
「沖矢さんよ、万が一の時はハンドルを頼むぜ。もうほとんどチョーカーの機能は死んでいるが、まだ
不穏な松田のささやきに、コナンと灰原は瞠目する。
物騒な発言に、阿笠も硬直していた。
沖矢が冷静に松田へ尋ねる。
「爆発の規模はどのくらいだ?」
「安心しろ。首のチョーカーには、必要最低限の爆薬しか入ってねえ。経費削減か、なんだか理由は知らねえが……助手席にいるアンタは、火傷もしねえだろうよ」
「……わかった。その時は、俺が引き継ごう」
松田が沖矢に頷き返し、車を出発させる。
コナンは唇をぎゅっと結びながら、フロントシートのやり取りを聞いていた。
匿名掲示板で見た「観覧車で一名、警察官死亡」や「死期逸脱者」の文字がコナンの頭の中に浮かんでくる。
コナンの眼線に沖矢が気付く。
先ほどまでの不穏な会話とは裏腹に、沖矢がにこやかにコナンたちを振り返った。
「では、安全な場所までドライブも兼ねて、情報共有をしようか」
コナンが沖矢に今までの経緯を話そうとした時、阿笠のスマホが鳴った。
「すまん、電話じゃ」と阿笠がコール音を切ろうとして、瞠目する。
「杉下警部からじゃぞ!」
「なんだって!? 博士、貸してくれ!」
コナンは慌てて阿笠からスマホを受け取った。
スピーカーモードにして通話をオンにする。
「杉下警部!?」
『その声は、コナンくんですね。うまく阿笠博士と合流できた様子で、何よりです。松田くんも一緒にいますか?』
コナンは運転席の松田を、ちらりと見た。
「松田刑事も一緒にいるよ。今、運転中なんだ。博士たちに連絡してくれたのは、杉下警部だったんだね」
『コナンくん達には、手助けが必要だと思いましたから。君が拉致されてから何があったのか、そちらの状況を教えてください』