Welcome to the Villains' world
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自分の寮室はベンというおっとりとした男の子との二人部屋だった。
ちょっぴりぽちゃっとした体型の彼は穏やかそうな子で安心したけれど、
男子校なのでしょうがないとはいえ、これは、ブレスレットはお風呂に入る時以外は外せないと心に誓いその日は眠りについたのであった。
まぁ、まだベッドにカーテンがついているだけでもましか…。
朝になり、昨晩寮長に説明された通り朝食を取るためにベンと学食へ向かう。色々と話してみたけれど、彼は珊瑚の海出身であるらしく、ベルーガの人魚だと言っていた。小さい頃から人魚姫のお話に憧れを抱いていた私は、興味を惹かれ、ベンの話に聞き入りながらメインストリートの方へと歩いていると、見知った後ろ姿を見かけた。
『あ、ユウ!おはよう!』
「あ!!名前おはよう!」
「お前!いないと思ったら!ずるいんだゾ!一人だけ入学できただなんて!」
『ん?なんだ狸じゃん。追い出されたんじゃなかったの?』
「それが…。」
ユウが言うには、オンボロ寮に案内された際に、どうやらまた学園内に潜り込んでいたらしい。なるほど…タフな狸だ…。
『で?ここで何してるの?』と周りを見回すと、メインストリートと呼ばれるこの道には7つの銅像が祀られていて、どれもが大好きな映画達の悪役達にそっくりであった…。さっきも言った通り、人魚姫の話が私は大好きなのだ…主人公はもちろん悪役のタコの姿をした魔女にも愛着が湧いている。でもなぜだろう?ここはどういう世界なのだろうか?彼女達が実在する世界なのだろうか?異世界だし、魔法の世界なのであれば、その可能性も高い。少しこの世界にいることが楽しみになってきた。と一人目を輝かせながら銅像達を眺めつつた。
ユウ曰く、昨日寮にでたゴースト達との戦闘でグリムとの思いもしれないコンビネーションを学園長に見せつけたおかげで、雑用係として学園内にいることを許可されたらしい。そして今日は正門から図書館までのメインストリートの清掃を頼まれていたそうだ。
『大変だね…。』
「うん、でも、頑張るよ…。帰れないしね…。」
「ちえっ……掃除なんてやってられねぇんだゾ。」
と文句を言っている声も聞こえるが、無視して、話についていけていないベンを二人に紹介すると、二人も名乗りでてすぐさまに打ち解けた。すると掃除の途中にグリムが像の方へと目を向ける。
「昨日はよく見てなかったけど、この石像は誰だ?7つあるけど、なんかみんなコワイ顔。このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ。」
「ハートの女王を知らねーの?」『ハートの女王だと思う!』
聞いたことのない声の持ち主と声が重なった。
オレンジ色の髪をした少年で、目元にハートマークの化粧が施されている。
「ハートの女王?偉い人なのか?」
「昔、バラの迷宮に住んでた女王だよ。規律を重んじる厳格な人柄で、トランプ兵の更新もバラの花の色も一切乱れを許さない。マッドなやつらばっかりの国なのに誰もが彼女には絶対服従。なんでかって?規律違反は即打ち首だったから!」
「こ、こえーんだゾ!」
と自分の首元を抑えながら怯えているグリムを横目に少年の話を聞き入る。やはり、不思議の国のアリスの女王の話なのであろう…。小さい時に映画を見た時に彼女のことが怖かった記憶がある。
「クールじゃん!オレは好き。だって、優しいだけの女王なんてみんな従わないだろ?」
「確かにリーダーは強いほうがいいんだゾ。っていうかお前はダレだ?」
『あ、確かに。』
急に現れ、丁寧な説明をしていた彼のこと、そういえば知らないな。
「オレはエース、今日からピカピカの1年生。どーぞヨロシク♪」
人懐っこい顔で眩しい笑顔で自己紹介をするエースと呼ばれた少年。
「オレ様はグリム!大魔法士になる予定の天才だゾ。コッチの冴えないのはユウ!オレ様の子分なんだゾ。」
「いつ子分になったよ…。」
『どっちかというとあなたの飼い主だと思うけれど…。あ、私は名前だよ。こっちは同じ寮のベン』
「よろしく」
呆れた目線をグリムに向けているとエースは私とユウを交互に見つめる。
「ユウ?名前 ?珍しい響の名前だな。」
『え〜、そうでもなくない?』とユウと頷きあう。
自己紹介を済ませると、グリムが他の銅像達についてもエースに聴き始めた。目に傷のあるライオン、私の好きな蛸足の魔女、蛇の杖を持った男性、毒林檎を持つ美しい女性、頭が燃えている男、角が生えている魔女、どの銅像の説明も、全て私が見たことある映画の中の印象と一致していた。
強いて言うならば、美化されているというか…この世界ではどうやら悪役としての認識はないようだ。
「クールだよなぁ〜。…どっかの狸と違って。」
一通り説明が終わったかと思うと、急にエースの雰囲気が変わった。ニタリと口角を引き上げて悪そうな顔をしている。
「ふ゛な゛っ!?」
「ブッ……あははっ!もう堪えるの無理だ!あはははは!なぁ、お前ら昨日入学式で暴れてた奴らだろ?闇の鏡に呼ばれたのに魔法が使えないやつとお呼びじゃないのに乱入してきたモンスター。いや〜入学式では笑いこらえるの必死だったわ。」
あ、こいつ性格悪いやつだ。
「なぬっ!?しっ、失礼なヤツなんだゾ!」
「で、結局入学できずに二人して雑用係になったわけ?はは、だっせー。」「にゃにおぉぉぉう……!?」
「別に俺は入りたくてこの学園にきたわけじゃないし…」
『そこまで言う必要ないでしょう…なんなの、あんた?』
「まぁ、無魔力くんと狸に関しては”グレート・セブン”も知らないなんてどんだけ世間知らずなんだよ。」
グレート・セブンなんて呼ばれてるんだ…。どちらかというとバッド・セブンだと思うけど…と一人心の中でツッコミを入れる。
「ナイトイレブンカレッジに来る前に幼稚園からやり直すのをオススメするわ。ぷくく……」
煽り散らかされて怒りが爆発したグリムは今にも魔法を使い出しそうな雰囲気をしている。
「ちょっとからかってやろうと思って声かけたけど色々と予想を超えてたね。んじゃ、オレは君たちと違って授業あるんで!せいぜい掃除頑張ってね、おふたりさん♪」
『うわ、ムカつく…。』
例え煽りの中に自分が含まれてはいないとはいえ、弄っときたぞ…。
「コイツ〜〜!言わせておけば!もう怒ったゾ!」
「あ、ばかっ!!!!!!!」
「ふな゛〜〜〜〜っ!」
止める間もなくグリムがお得意の炎魔法をエースに炸裂させる。
「うわっ!っと、あぶねぇ!何すんだよ!」
「オレ様をバカにするからだ!その爆発頭をもっと爆発させてやるんだゾ!」
「爆発頭ぁ〜?」
グ挑発にいとも簡単に乗ってしまったエースは風を扱う魔法をグリムに向けていた。騒ぎに気づいた人たちが私たちの周りを取り囲む、冷やかしもいいところだ…。煽り出す見学者もいる始末…。
「はぁ…グリムを見張ってろって言われたばかりなのになぁ…。」
と落ち込むユウにどんまいと声をかけていると後ろから声がする。
「おや?なんの騒ぎですか?」
この声は…と上を見上げる。
『ジェイドさん、おはようございます…。』
「ふふっ、顔がやつれてますね。どうせあのバカ狸の仕業でしょう?」
『エースにからかわれて、怒っちゃったんです…そのせいでお互いに挑発しあって今にいたるというか…。』
「全く懲りない人たちですね…。僕たちはもう少し離れた所で見学と行きましょうか。」
ジェイドさんに肩を優しく抱かれ、一歩下がり周りを囲んでいた人たちの群れの中に私も入った。
「これで貸し2つですね。」
『えぇ?これもですか?』
「助けてあげたんですもの、今度じっくりお礼してくださいね?」
『うぅ…考えておきます。』
作りたくもない貸しをまた作ってしまったなと思っていると、ジェイドさんとは反対側の方から声が聞こえた。
「あっ、小エビちゃんだぁ〜!ねぇねぇ何してんの?」
私の頭を肘掛かのように使いながらフロイドさんに顔を覗き込まれる。
『おはようございます、フロイドさん、重いです…。』
「フロイド、どうやらこれから喧嘩が始まるようですよ。」
「え!?マジ?ラッキー♪見学してこ〜っと」
ルンルンと言う効果音がつきそうな声で私にかける体重を倍にするフロイドさんは多分何を言っても退いてくれなさそうだ。諦めた私は視線をグリム達に戻すのであった。と、その時エースの風魔法で侵攻方向が変えられたグリムの炎魔法がハートの女王の石像に向かってしまい、見事に黒焦げになった。
『あっ…』
「ヒャハハハハッ!さいっこう!!!これはやっちゃったねぇ…!」
「おやおや、これは学園長がどういうことやら…」
私の上で悪そうな顔で双子が笑っているけれど、私にとっては全然笑いごとではない…ユウの事を考えると本当に気の毒でしょうがない。隣のベンもあわあわしている。
「小エビちゃん顔色わる〜い!!」
とほっぺをプニプニされているが、私の頭の中はプチパニック状態だ。
「こらー!!!何の騒ぎです!」
今一番聴きたくない声がメインストリート中に響いた。次の瞬間、見事にエースとグリムは学園長の愛の鞭でしばかれている…のが目に映った。
「先ほど”騒ぎを起こすな”と言ったばかりのはずですが?」
あぁ、学園長……。
たじたじとするユウを見ながら私の頭上でケタケタとフロイド先輩が笑っているのに少し苛立ち、頭に置いてあった手を勢いよく振りほどく。
「しかもグレート・セブンの石像を黒焦げにするなんて!よほど退学にさせられたいと見えます。」
「ちょっ!それは勘弁!」
「ユウくんも、これではグリムくんを監督しているとは言えませんよ。」
「はい、すみません…。一応、止めたんですが…。」
「まったく…………。君?学園と名前は?」
「エース・トラッポラ。……1年デス。」
「ではトラッポラくん。グリムくん。そしてユウくん。3人には罰として窓拭き掃除100枚の形を命じます!」
あ…退学じゃないんだ…。とはいえユウくんは退学どころの話ではないのだけれど…。学園長に対してまだ文句を言う元気が残っていたグリムとエースはきつくお叱りを受け、放課後、大食堂に集合になったようだ。
「大変ですねぇ…まぁ、僕達には関係ない事です。ほら、初めての授業に遅れてしまいますよ?」
「早速サボっちゃう〜?」
「こら、フロイド」
「ちぇっつまんねーの。じゃぁねぇ〜ん」
私の頭をぽんぽんとジェイドさんがぐしゃぐしゃに撫で、双子を横目に、ベンと二人でユウの心配をするのであった…。あーあ、グリムが騒ぎごとを起こさなければなぁ…。時間があったら手伝いにいってあげよう…。
ちょっぴりぽちゃっとした体型の彼は穏やかそうな子で安心したけれど、
男子校なのでしょうがないとはいえ、これは、ブレスレットはお風呂に入る時以外は外せないと心に誓いその日は眠りについたのであった。
まぁ、まだベッドにカーテンがついているだけでもましか…。
朝になり、昨晩寮長に説明された通り朝食を取るためにベンと学食へ向かう。色々と話してみたけれど、彼は珊瑚の海出身であるらしく、ベルーガの人魚だと言っていた。小さい頃から人魚姫のお話に憧れを抱いていた私は、興味を惹かれ、ベンの話に聞き入りながらメインストリートの方へと歩いていると、見知った後ろ姿を見かけた。
『あ、ユウ!おはよう!』
「あ!!名前おはよう!」
「お前!いないと思ったら!ずるいんだゾ!一人だけ入学できただなんて!」
『ん?なんだ狸じゃん。追い出されたんじゃなかったの?』
「それが…。」
ユウが言うには、オンボロ寮に案内された際に、どうやらまた学園内に潜り込んでいたらしい。なるほど…タフな狸だ…。
『で?ここで何してるの?』と周りを見回すと、メインストリートと呼ばれるこの道には7つの銅像が祀られていて、どれもが大好きな映画達の悪役達にそっくりであった…。さっきも言った通り、人魚姫の話が私は大好きなのだ…主人公はもちろん悪役のタコの姿をした魔女にも愛着が湧いている。でもなぜだろう?ここはどういう世界なのだろうか?彼女達が実在する世界なのだろうか?異世界だし、魔法の世界なのであれば、その可能性も高い。少しこの世界にいることが楽しみになってきた。と一人目を輝かせながら銅像達を眺めつつた。
ユウ曰く、昨日寮にでたゴースト達との戦闘でグリムとの思いもしれないコンビネーションを学園長に見せつけたおかげで、雑用係として学園内にいることを許可されたらしい。そして今日は正門から図書館までのメインストリートの清掃を頼まれていたそうだ。
『大変だね…。』
「うん、でも、頑張るよ…。帰れないしね…。」
「ちえっ……掃除なんてやってられねぇんだゾ。」
と文句を言っている声も聞こえるが、無視して、話についていけていないベンを二人に紹介すると、二人も名乗りでてすぐさまに打ち解けた。すると掃除の途中にグリムが像の方へと目を向ける。
「昨日はよく見てなかったけど、この石像は誰だ?7つあるけど、なんかみんなコワイ顔。このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ。」
「ハートの女王を知らねーの?」『ハートの女王だと思う!』
聞いたことのない声の持ち主と声が重なった。
オレンジ色の髪をした少年で、目元にハートマークの化粧が施されている。
「ハートの女王?偉い人なのか?」
「昔、バラの迷宮に住んでた女王だよ。規律を重んじる厳格な人柄で、トランプ兵の更新もバラの花の色も一切乱れを許さない。マッドなやつらばっかりの国なのに誰もが彼女には絶対服従。なんでかって?規律違反は即打ち首だったから!」
「こ、こえーんだゾ!」
と自分の首元を抑えながら怯えているグリムを横目に少年の話を聞き入る。やはり、不思議の国のアリスの女王の話なのであろう…。小さい時に映画を見た時に彼女のことが怖かった記憶がある。
「クールじゃん!オレは好き。だって、優しいだけの女王なんてみんな従わないだろ?」
「確かにリーダーは強いほうがいいんだゾ。っていうかお前はダレだ?」
『あ、確かに。』
急に現れ、丁寧な説明をしていた彼のこと、そういえば知らないな。
「オレはエース、今日からピカピカの1年生。どーぞヨロシク♪」
人懐っこい顔で眩しい笑顔で自己紹介をするエースと呼ばれた少年。
「オレ様はグリム!大魔法士になる予定の天才だゾ。コッチの冴えないのはユウ!オレ様の子分なんだゾ。」
「いつ子分になったよ…。」
『どっちかというとあなたの飼い主だと思うけれど…。あ、私は名前だよ。こっちは同じ寮のベン』
「よろしく」
呆れた目線をグリムに向けているとエースは私とユウを交互に見つめる。
「ユウ?名前 ?珍しい響の名前だな。」
『え〜、そうでもなくない?』とユウと頷きあう。
自己紹介を済ませると、グリムが他の銅像達についてもエースに聴き始めた。目に傷のあるライオン、私の好きな蛸足の魔女、蛇の杖を持った男性、毒林檎を持つ美しい女性、頭が燃えている男、角が生えている魔女、どの銅像の説明も、全て私が見たことある映画の中の印象と一致していた。
強いて言うならば、美化されているというか…この世界ではどうやら悪役としての認識はないようだ。
「クールだよなぁ〜。…どっかの狸と違って。」
一通り説明が終わったかと思うと、急にエースの雰囲気が変わった。ニタリと口角を引き上げて悪そうな顔をしている。
「ふ゛な゛っ!?」
「ブッ……あははっ!もう堪えるの無理だ!あはははは!なぁ、お前ら昨日入学式で暴れてた奴らだろ?闇の鏡に呼ばれたのに魔法が使えないやつとお呼びじゃないのに乱入してきたモンスター。いや〜入学式では笑いこらえるの必死だったわ。」
あ、こいつ性格悪いやつだ。
「なぬっ!?しっ、失礼なヤツなんだゾ!」
「で、結局入学できずに二人して雑用係になったわけ?はは、だっせー。」「にゃにおぉぉぉう……!?」
「別に俺は入りたくてこの学園にきたわけじゃないし…」
『そこまで言う必要ないでしょう…なんなの、あんた?』
「まぁ、無魔力くんと狸に関しては”グレート・セブン”も知らないなんてどんだけ世間知らずなんだよ。」
グレート・セブンなんて呼ばれてるんだ…。どちらかというとバッド・セブンだと思うけど…と一人心の中でツッコミを入れる。
「ナイトイレブンカレッジに来る前に幼稚園からやり直すのをオススメするわ。ぷくく……」
煽り散らかされて怒りが爆発したグリムは今にも魔法を使い出しそうな雰囲気をしている。
「ちょっとからかってやろうと思って声かけたけど色々と予想を超えてたね。んじゃ、オレは君たちと違って授業あるんで!せいぜい掃除頑張ってね、おふたりさん♪」
『うわ、ムカつく…。』
例え煽りの中に自分が含まれてはいないとはいえ、弄っときたぞ…。
「コイツ〜〜!言わせておけば!もう怒ったゾ!」
「あ、ばかっ!!!!!!!」
「ふな゛〜〜〜〜っ!」
止める間もなくグリムがお得意の炎魔法をエースに炸裂させる。
「うわっ!っと、あぶねぇ!何すんだよ!」
「オレ様をバカにするからだ!その爆発頭をもっと爆発させてやるんだゾ!」
「爆発頭ぁ〜?」
グ挑発にいとも簡単に乗ってしまったエースは風を扱う魔法をグリムに向けていた。騒ぎに気づいた人たちが私たちの周りを取り囲む、冷やかしもいいところだ…。煽り出す見学者もいる始末…。
「はぁ…グリムを見張ってろって言われたばかりなのになぁ…。」
と落ち込むユウにどんまいと声をかけていると後ろから声がする。
「おや?なんの騒ぎですか?」
この声は…と上を見上げる。
『ジェイドさん、おはようございます…。』
「ふふっ、顔がやつれてますね。どうせあのバカ狸の仕業でしょう?」
『エースにからかわれて、怒っちゃったんです…そのせいでお互いに挑発しあって今にいたるというか…。』
「全く懲りない人たちですね…。僕たちはもう少し離れた所で見学と行きましょうか。」
ジェイドさんに肩を優しく抱かれ、一歩下がり周りを囲んでいた人たちの群れの中に私も入った。
「これで貸し2つですね。」
『えぇ?これもですか?』
「助けてあげたんですもの、今度じっくりお礼してくださいね?」
『うぅ…考えておきます。』
作りたくもない貸しをまた作ってしまったなと思っていると、ジェイドさんとは反対側の方から声が聞こえた。
「あっ、小エビちゃんだぁ〜!ねぇねぇ何してんの?」
私の頭を肘掛かのように使いながらフロイドさんに顔を覗き込まれる。
『おはようございます、フロイドさん、重いです…。』
「フロイド、どうやらこれから喧嘩が始まるようですよ。」
「え!?マジ?ラッキー♪見学してこ〜っと」
ルンルンと言う効果音がつきそうな声で私にかける体重を倍にするフロイドさんは多分何を言っても退いてくれなさそうだ。諦めた私は視線をグリム達に戻すのであった。と、その時エースの風魔法で侵攻方向が変えられたグリムの炎魔法がハートの女王の石像に向かってしまい、見事に黒焦げになった。
『あっ…』
「ヒャハハハハッ!さいっこう!!!これはやっちゃったねぇ…!」
「おやおや、これは学園長がどういうことやら…」
私の上で悪そうな顔で双子が笑っているけれど、私にとっては全然笑いごとではない…ユウの事を考えると本当に気の毒でしょうがない。隣のベンもあわあわしている。
「小エビちゃん顔色わる〜い!!」
とほっぺをプニプニされているが、私の頭の中はプチパニック状態だ。
「こらー!!!何の騒ぎです!」
今一番聴きたくない声がメインストリート中に響いた。次の瞬間、見事にエースとグリムは学園長の愛の鞭でしばかれている…のが目に映った。
「先ほど”騒ぎを起こすな”と言ったばかりのはずですが?」
あぁ、学園長……。
たじたじとするユウを見ながら私の頭上でケタケタとフロイド先輩が笑っているのに少し苛立ち、頭に置いてあった手を勢いよく振りほどく。
「しかもグレート・セブンの石像を黒焦げにするなんて!よほど退学にさせられたいと見えます。」
「ちょっ!それは勘弁!」
「ユウくんも、これではグリムくんを監督しているとは言えませんよ。」
「はい、すみません…。一応、止めたんですが…。」
「まったく…………。君?学園と名前は?」
「エース・トラッポラ。……1年デス。」
「ではトラッポラくん。グリムくん。そしてユウくん。3人には罰として窓拭き掃除100枚の形を命じます!」
あ…退学じゃないんだ…。とはいえユウくんは退学どころの話ではないのだけれど…。学園長に対してまだ文句を言う元気が残っていたグリムとエースはきつくお叱りを受け、放課後、大食堂に集合になったようだ。
「大変ですねぇ…まぁ、僕達には関係ない事です。ほら、初めての授業に遅れてしまいますよ?」
「早速サボっちゃう〜?」
「こら、フロイド」
「ちぇっつまんねーの。じゃぁねぇ〜ん」
私の頭をぽんぽんとジェイドさんがぐしゃぐしゃに撫で、双子を横目に、ベンと二人でユウの心配をするのであった…。あーあ、グリムが騒ぎごとを起こさなければなぁ…。時間があったら手伝いにいってあげよう…。