第1章
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私が隣国マーロンから遥々、この聖地ハイラルに来た理由。
3ヶ月も前のことだ。マーロン城に国民全員が一人ずつ呼び出され見せられたものがある。
それは古代ハイラル文字が書かれた石板。
内容は「神託」。
それを簡単に読んでしまったことがきっかけで使者に選ばれた、っていうのが始まり。
元々、市場に流れてきた本の中に書いてあるハイラル文字を苦なく読めてしまったことがあった。だからハイラル文字を読めるってことは自分自身でも知っていて、石版の話を聞いたときももしかしたら、なんて思っていた。だけれども、まさか古代ハイラル文字まで読めるなんて誰が予想しただろう。
結局あれよあれよという間に使者としての教育が始まったのだ。
そして一緒に来てくれた姐さんと旦那さんは宝飾品を扱う商人、ってわけではない。
知らない人と知らない国に行きたくないという私の我儘に応えたマーロン王の配慮で、実際は私の働いている酒場「ノンデーネ」の店主とその奥様だ。
二人とも最初は店を開けることを悩んでいたのだけど、使者としての報酬は1ヶ月分の給料よりも高く、さらには人の金で行く旅行なんて最高じゃないか!と常連さん達に背中を押されて、ここにいる。
だけど、私の我儘はここまで。
姐さんと旦那さんは2、3日滞在後、マーロンへと引き返す。
そして、私だけがハイラルに残り、古代ハイラル文字で書かれた神託の意味を知るべく旅に出ることが決まっていた。結局知らない人と知らない場所をウロウロすることに不安がないわけじゃない。だけど、ハイラルで有名な調査団の面々とともに行くことは決まっている。
何度も神殿や湖の底など、危険を潜り抜けてきた人たちに護られて行くのだ。怖いことなどあるわけがない
…と、思っていた 。
「え?」
明朝に部屋を訪ねてきた兵士は八の字に眉を下げていた。
兵士に連れられて城の中庭へと向かう。
彼が部屋で説明してくれた内容は半々だった好奇心と不安の天秤を大きく傾けた。昨夜、森の神殿へ先に行っていた調査団の全員が負傷して帰ってきたこと。調査団全員が重症ですぐに旅に行くことができないこと。城の兵士や騎士はみな任務があり離れられないこと。ゼルダ姫は調査の延期を案として出したが「神託の内容」のせいで賢者達が縦に頷かなかったこと。
「それで、森の奥に住む狩人を呼んだんです」
「その人、アテになるの…?」
「勿論!あのゼルダ姫が唯一友人と呼ぶお方でありながら、時折、兵士たちに稽古をつけてくれる強者です。彼なら充分任せられます。そもそも、森に行くには彼の先導が必要で…」
ペラペラとその狩人に対して語る兵士を怪訝な目で見た。信用はできなかったけれど、行かないという選択肢を選べるわけではない。
一緒に話を聞いて怒ってくれていた姐さんも一緒に連れて帰るほどの権力は持っていないし、不安があろうとなかろうと拒否する勇気はない。
マーロンを代表してきたも同然。
ここで拒否をしてマーロンの政治に何かあってはいけないのだ。
(私一人の我儘で、行きたくないとは言えないよね…)
通り過ぎるステンドグラスの窓から差し込む優しい太陽の光、それが廊下に鮮やかな色を照らし出す。
城内にある教会から鳴り響くパイプオルガンの音が嫌なほど響き渡り心臓を撫でた。
(パイプオルガンの音を聞くだけで憂鬱になるなんて…)
私と姐さんの不満を受け、黙ってしまった兵士の後を追い、右に左に。そして、何度も曲がった廊下の先で遂に兵士は立ち止まった。
豪奢な白に似合わぬ木でできた扉。
「この先に先ほど話した方が待っています。私が案内できるのはここまでです」
兵士が扉から一歩引いてこちらを見る。目を合わせてみたがビシッと敬礼をして動かない。本当にここから先の案内はしないらしい。
「案内ありがとうございました」
「いえ、お気をつけて」
ちょっとだけ口元に笑みを描いて笑った兵士に微笑み返し、私は意を決して目の前にある扉へ手をかけた。
扉を開けた先は小さな庭園。城壁と城壁に挟まれた狭い空間に聳え立つ生垣はまるで迷路のように入り組んでいた。
狩人が待つその場所まではまだ少し歩くらしい。
マーロンでは感じたことのない冷たい風が私の首筋を撫で、私はブルリと震えた。もっと暖かい格好をしてくればよかったと後悔してももう遅い。
迷路のような生垣が行く先を隠し、空間自体は広くないはずなのに迷ってしまいそうだ。だが、不思議と迷うことはなかった。
進んでいくに連れて高鳴っていく鼓動が何かを予知するように、見たことがないはず の景色を脳内に描く。私はドクンと大きく心臓が鳴るのを感じた。
妖精を連れた緑の少年と幼いゼルダ姫。
絵画のように描いたその光景は脳内に浮かんですぐに消えた。
だけど、その景色が完全に消えてしまう前に、生垣は開け、同じ光景を私の目に映し出した。脳内の映像と背景がピタリと重なり合うのを感じる。
脳内で姫が立っていた場所に佇む青年。
金の髪を風に揺らし、何かを祈るように目蓋を閉じている美しいひと。
(……なんて綺麗なの……)
見惚れている間に彼はその目蓋を開いて蒼の瞳をこちらに向けた。
その刹那、私は体の自由がきかなくなった。足先から指先まで石のように動かず、まるで石像になった気分だ。
こんなに緊張したことはない。全身が心臓になったかのように、心拍音がやたらと大きく聞こえる。
すごく綺麗な人。初めましての人。だけど…。
(私、ずっと、この人のこと……)
最後は言葉にできなかった。言葉にする気持ちの余裕がなかったとも言える。どうしてそう思ったのかはわからなかったけれど、私は彼のことを随分、昔から知っていたような気がした。
「…はじめまして 。うろこさん」
その言葉に違和感を感じたのは気のせいなのだと言い聞かせ。
「は、じめ、まして…」
絞り出した声は震えていて、もっと可愛い声を出せただろうになんてちょっと後悔をした。
ハイラルの冷たい風が似合う透明感のある人。まるで物語に出てくる妖精の王子様だ。なんて、メルヘンチックなことを考えて誤魔化して。
「ゼルダ……姫から、話は聞いてる。森の神殿に行くんだろう?」
金の睫毛が陽に照らされキラリと光る。
その光を受けた蒼い瞳も鮮やかに輝き海のように深い青を魅せる。
いや、彼の青を海に例えるのは少し違う。それはまさに…
「俺の名はスカイ。森に住む狩人だ」
そう、空。澄み渡るほど晴れている空の青さ。雲ひとつない青空を駆け抜ける爽やかな風の中にいる人。
「う、ろこです。よろ、しく」
お人形さんのように作られた彼の顔が、上擦っている私の声に少し目を見開くと口を抑えてくつくつと笑った。
「くくっ……そんなに緊張しなくても」
陶器でできたお人形のように整っている顔をくしゃりと曲げ笑う。一見、クールそうに見える彼も笑うと無邪気な少年のようだ。
神様はこの人のことを愛しすぎているんじゃないかと疑うほど、どんな表情をしても美しく見えるように感じた。
「いや、あの、緊張、っていうか、あの」
「マーロンからハイラルに来たのは初めて?」
「え、あ、はい」
「随分、昔にマーロン国へ行ったことがあるよ。広い海と活気のある街が賑やかな美しい場所だった」
深い蒼の瞳を細めて笑う彼に胸が苦しくなる。
こういった感情を持ったことはない。愛や恋と縁がなかったわけじゃないが、ここまで苦しくなるのは人生が初めてだ。
一目惚れ?…そんな馬鹿な。
どんなイケメンであろうとも会ったばかりの人にそう想うのは……。
「…だから、これを持って欲しい」
「へ?」
突然投げ渡された其れを反射的に受け取る。落としそうになったが、なんとか左手が握り締めた。見惚れていて話を聞いていなかったらしい。やらかした。
「え、これ…」
「短剣。俺一人で護ろうとしても限界がある。何かあったときにせめて自分の身くらい衛れる物がないと」
「あ、なるほど」
どうやら彼はこれから行く場所が危険だという話をしていたらしい。すっかり彼の顔に見惚れていて聞いていなかった。
「スカイ、さんは森の神殿に、何度か……?」
「……俺については何も聞いていないのか」
「えっと、あの、実は突然ここに連れてこられたも同然で…」
どうやらあの兵士、怒り狂った姐さんに縮こまり、肝心な話は私に伝えていないままらしい。
「あいつら…とりあえず城門に向かおう。その間に俺の《仕事》について説明するよ」
クイッと首で行く先を示し、私の横を通り過ぎてそのまま進んでいった。私は遅れないように慌ててついていく。
その長い足はいつも通りに歩いているようだが、私には早過ぎた。置いてかれぬよう小走りで彼を追うと彼が立ち止まってこちらを見た。
「今から君が行くべき場所はわかってる?」
「迷いの森の奥にある…森の神殿…だったような…」
「そう。その森の神殿へ行くには迷いの森という危険な場所を通らなきゃいけない」
また彼が歩みを進める。
「危険?」
「その森で迷ったハイラル人は2度と帰ってこれない」
「え」
「その迷いの森へ行くにも、コキリ族が住む集落を通っていかなきゃいけないし…本来はコキリの森を護る森の長によって出入りする人間が決められるわけなんだけど…」
それじゃあ、異国の私なんて出入りすらできないじゃない!?
「えと、じゃあ、どうやってそこに…」
「俺の仕事はコキリ族とハイラル人を繋ぐ こと」
「繋ぐ……」
単純に出てきた単語を反芻した。なんだか、大事な言葉のように感じて…。
「森の長がまだ幼い今、森の神殿に行くのが必要な人は案内し、悪意のある者は追い払う人物が必要なんだ。そして、それが俺の仕事」
3ヶ月も前のことだ。マーロン城に国民全員が一人ずつ呼び出され見せられたものがある。
それは古代ハイラル文字が書かれた石板。
内容は「神託」。
それを簡単に読んでしまったことがきっかけで使者に選ばれた、っていうのが始まり。
元々、市場に流れてきた本の中に書いてあるハイラル文字を苦なく読めてしまったことがあった。だからハイラル文字を読めるってことは自分自身でも知っていて、石版の話を聞いたときももしかしたら、なんて思っていた。だけれども、まさか古代ハイラル文字まで読めるなんて誰が予想しただろう。
結局あれよあれよという間に使者としての教育が始まったのだ。
そして一緒に来てくれた姐さんと旦那さんは宝飾品を扱う商人、ってわけではない。
知らない人と知らない国に行きたくないという私の我儘に応えたマーロン王の配慮で、実際は私の働いている酒場「ノンデーネ」の店主とその奥様だ。
二人とも最初は店を開けることを悩んでいたのだけど、使者としての報酬は1ヶ月分の給料よりも高く、さらには人の金で行く旅行なんて最高じゃないか!と常連さん達に背中を押されて、ここにいる。
だけど、私の我儘はここまで。
姐さんと旦那さんは2、3日滞在後、マーロンへと引き返す。
そして、私だけがハイラルに残り、古代ハイラル文字で書かれた神託の意味を知るべく旅に出ることが決まっていた。結局知らない人と知らない場所をウロウロすることに不安がないわけじゃない。だけど、ハイラルで有名な調査団の面々とともに行くことは決まっている。
何度も神殿や湖の底など、危険を潜り抜けてきた人たちに護られて行くのだ。怖いことなどあるわけがない
…と、思って
「え?」
明朝に部屋を訪ねてきた兵士は八の字に眉を下げていた。
兵士に連れられて城の中庭へと向かう。
彼が部屋で説明してくれた内容は半々だった好奇心と不安の天秤を大きく傾けた。昨夜、森の神殿へ先に行っていた調査団の全員が負傷して帰ってきたこと。調査団全員が重症ですぐに旅に行くことができないこと。城の兵士や騎士はみな任務があり離れられないこと。ゼルダ姫は調査の延期を案として出したが「神託の内容」のせいで賢者達が縦に頷かなかったこと。
「それで、森の奥に住む狩人を呼んだんです」
「その人、アテになるの…?」
「勿論!あのゼルダ姫が唯一友人と呼ぶお方でありながら、時折、兵士たちに稽古をつけてくれる強者です。彼なら充分任せられます。そもそも、森に行くには彼の先導が必要で…」
ペラペラとその狩人に対して語る兵士を怪訝な目で見た。信用はできなかったけれど、行かないという選択肢を選べるわけではない。
一緒に話を聞いて怒ってくれていた姐さんも一緒に連れて帰るほどの権力は持っていないし、不安があろうとなかろうと拒否する勇気はない。
マーロンを代表してきたも同然。
ここで拒否をしてマーロンの政治に何かあってはいけないのだ。
(私一人の我儘で、行きたくないとは言えないよね…)
通り過ぎるステンドグラスの窓から差し込む優しい太陽の光、それが廊下に鮮やかな色を照らし出す。
城内にある教会から鳴り響くパイプオルガンの音が嫌なほど響き渡り心臓を撫でた。
(パイプオルガンの音を聞くだけで憂鬱になるなんて…)
私と姐さんの不満を受け、黙ってしまった兵士の後を追い、右に左に。そして、何度も曲がった廊下の先で遂に兵士は立ち止まった。
豪奢な白に似合わぬ木でできた扉。
「この先に先ほど話した方が待っています。私が案内できるのはここまでです」
兵士が扉から一歩引いてこちらを見る。目を合わせてみたがビシッと敬礼をして動かない。本当にここから先の案内はしないらしい。
「案内ありがとうございました」
「いえ、お気をつけて」
ちょっとだけ口元に笑みを描いて笑った兵士に微笑み返し、私は意を決して目の前にある扉へ手をかけた。
扉を開けた先は小さな庭園。城壁と城壁に挟まれた狭い空間に聳え立つ生垣はまるで迷路のように入り組んでいた。
狩人が待つその場所まではまだ少し歩くらしい。
マーロンでは感じたことのない冷たい風が私の首筋を撫で、私はブルリと震えた。もっと暖かい格好をしてくればよかったと後悔してももう遅い。
迷路のような生垣が行く先を隠し、空間自体は広くないはずなのに迷ってしまいそうだ。だが、不思議と迷うことはなかった。
進んでいくに連れて高鳴っていく鼓動が何かを予知するように、見たことがない
妖精を連れた緑の少年と幼いゼルダ姫。
絵画のように描いたその光景は脳内に浮かんですぐに消えた。
だけど、その景色が完全に消えてしまう前に、生垣は開け、同じ光景を私の目に映し出した。脳内の映像と背景がピタリと重なり合うのを感じる。
脳内で姫が立っていた場所に佇む青年。
金の髪を風に揺らし、何かを祈るように目蓋を閉じている美しいひと。
(……なんて綺麗なの……)
見惚れている間に彼はその目蓋を開いて蒼の瞳をこちらに向けた。
その刹那、私は体の自由がきかなくなった。足先から指先まで石のように動かず、まるで石像になった気分だ。
こんなに緊張したことはない。全身が心臓になったかのように、心拍音がやたらと大きく聞こえる。
すごく綺麗な人。初めましての人。だけど…。
(私、ずっと、この人のこと……)
最後は言葉にできなかった。言葉にする気持ちの余裕がなかったとも言える。どうしてそう思ったのかはわからなかったけれど、私は彼のことを随分、昔から知っていたような気がした。
「…
その言葉に違和感を感じたのは気のせいなのだと言い聞かせ。
「は、じめ、まして…」
絞り出した声は震えていて、もっと可愛い声を出せただろうになんてちょっと後悔をした。
ハイラルの冷たい風が似合う透明感のある人。まるで物語に出てくる妖精の王子様だ。なんて、メルヘンチックなことを考えて誤魔化して。
「ゼルダ……姫から、話は聞いてる。森の神殿に行くんだろう?」
金の睫毛が陽に照らされキラリと光る。
その光を受けた蒼い瞳も鮮やかに輝き海のように深い青を魅せる。
いや、彼の青を海に例えるのは少し違う。それはまさに…
「俺の名はスカイ。森に住む狩人だ」
そう、空。澄み渡るほど晴れている空の青さ。雲ひとつない青空を駆け抜ける爽やかな風の中にいる人。
「う、ろこです。よろ、しく」
お人形さんのように作られた彼の顔が、上擦っている私の声に少し目を見開くと口を抑えてくつくつと笑った。
「くくっ……そんなに緊張しなくても」
陶器でできたお人形のように整っている顔をくしゃりと曲げ笑う。一見、クールそうに見える彼も笑うと無邪気な少年のようだ。
神様はこの人のことを愛しすぎているんじゃないかと疑うほど、どんな表情をしても美しく見えるように感じた。
「いや、あの、緊張、っていうか、あの」
「マーロンからハイラルに来たのは初めて?」
「え、あ、はい」
「随分、昔にマーロン国へ行ったことがあるよ。広い海と活気のある街が賑やかな美しい場所だった」
深い蒼の瞳を細めて笑う彼に胸が苦しくなる。
こういった感情を持ったことはない。愛や恋と縁がなかったわけじゃないが、ここまで苦しくなるのは人生が初めてだ。
一目惚れ?…そんな馬鹿な。
どんなイケメンであろうとも会ったばかりの人にそう想うのは……。
「…だから、これを持って欲しい」
「へ?」
突然投げ渡された其れを反射的に受け取る。落としそうになったが、なんとか左手が握り締めた。見惚れていて話を聞いていなかったらしい。やらかした。
「え、これ…」
「短剣。俺一人で護ろうとしても限界がある。何かあったときにせめて自分の身くらい衛れる物がないと」
「あ、なるほど」
どうやら彼はこれから行く場所が危険だという話をしていたらしい。すっかり彼の顔に見惚れていて聞いていなかった。
「スカイ、さんは森の神殿に、何度か……?」
「……俺については何も聞いていないのか」
「えっと、あの、実は突然ここに連れてこられたも同然で…」
どうやらあの兵士、怒り狂った姐さんに縮こまり、肝心な話は私に伝えていないままらしい。
「あいつら…とりあえず城門に向かおう。その間に俺の《仕事》について説明するよ」
クイッと首で行く先を示し、私の横を通り過ぎてそのまま進んでいった。私は遅れないように慌ててついていく。
その長い足はいつも通りに歩いているようだが、私には早過ぎた。置いてかれぬよう小走りで彼を追うと彼が立ち止まってこちらを見た。
「今から君が行くべき場所はわかってる?」
「迷いの森の奥にある…森の神殿…だったような…」
「そう。その森の神殿へ行くには迷いの森という危険な場所を通らなきゃいけない」
また彼が歩みを進める。
「危険?」
「その森で迷ったハイラル人は2度と帰ってこれない」
「え」
「その迷いの森へ行くにも、コキリ族が住む集落を通っていかなきゃいけないし…本来はコキリの森を護る森の長によって出入りする人間が決められるわけなんだけど…」
それじゃあ、異国の私なんて出入りすらできないじゃない!?
「えと、じゃあ、どうやってそこに…」
「俺の仕事はコキリ族とハイラル人を
「繋ぐ……」
単純に出てきた単語を反芻した。なんだか、大事な言葉のように感じて…。
「森の長がまだ幼い今、森の神殿に行くのが必要な人は案内し、悪意のある者は追い払う人物が必要なんだ。そして、それが俺の仕事」