第XX話 微かに笑った。
XANXUSは、それが起きた時、すぐにテレサの寿命が近いのだと直感した。
その夜、いつものように二人でソファに座り、XANXUSが酒を飲んでいた。
テレサも両手を膝の上にちょんと乗せて、何を言うでもなく座っていた。
しかしその瞬間、テレサは、ハッキリと自分の体に何かが起こるのがわかった。
––––ドクンッ
心臓が一定の短い間隔で動いているように感じる。痛いほどの不快感を以て、心臓が強く早く脈打っていた。
「っ……」
「テレサ…?」
XANXUSは、俯いて苦しそうに顔を歪め、胸を抑えるテレサに、咄嗟に背中に手を置いた。
「…!」
薄い体は、心臓の異常な鼓動をXANXUSの手に運んだ。
XANXUSは動悸がするのかと当てをつけると、テレサの細い手首を掴んで親指で脈を取り始めた。
平常時より少し早い鼓動に確信し、落ち着いた声で言った。
「息をするな」
「っ、……………っは、はぁ…」
息を止めて少しすると、動悸は収まった。空気を吸うと、一気に呼吸がなだれ込んできて、テレサは苦しげに息を荒げた。
急激に血圧が下がったためにふらつく体を胸に押さえつけて支えながら、テレサの体を横たえ、頭を膝に置いた。
真っ青な顔は、死人のそれのようだった。
その後の医者の話によると、心臓が弱っているとのことだった。
つまり、寿命が近いのだと。
老衰のように、テレサの心臓が役目を終えようとしているのだ。
XANXUSと出会ってから、わずか6年足らずの出来事だった。
余命は一ヶ月。
医者からは心臓移植や人工心臓なんかも提案されたが、テレサはその道は選ばなかった。なぜか、どう足掻いても自分が長く生きられないと悟っていた。ただ、テレサは少しも動揺した様子なく、XANXUSに薄く微笑むだけだった。