第7話 あった方が良いもの
時々、行為の後テレサが目が覚ますと、隣にXANXUSの姿が無いときがある。テレサだけでは物足りないときは、娼婦とホテルへ行くのだった。
テレサはというと、それを知って安心した。自分なんかで済まさないで欲しいと思っていたのだ。
そして、出先のホテルで行為に至ったときのことだった。激しい夜だったので途中で気を失ってしまったようだった。テレサの意識が戻ったのは、いや戻されたのは、艶めかしい女性の声が部屋に満ちていたからだった。
目を開けると、XANXUSは2人の女性と交わっていた。XANXUSの髪に指を絡める仕草や、豊満な体がとても色っぽい女性だった。
1人の女性がXANXUSの首に手を回し、少し見つめてから唇を重ねる。テレサの方が照れてしまい、顔が赤くなった。とにかく自分は邪魔だろうと思い、怠い体を無理やり起こした。
「…起きたか」
「…!私、邪魔してしまって…ごめんなさい…すぐ、」
「いい」
「え…?」
XANXUSは腰を振っていた女性の髪を掴むと、その女の目を見据えて低く言った。
「もういい。出てけ」
「え?…は、はい」
2人の女性の顔には衝撃が走ったが、命令を聞き入れることしかできず、急いでXANXUSの上から退いた。
XANXUSはベッドから降りようとしていたテレサの腰に手を回して引き寄せると、自身の胸板に寄りかかるように後ろから抱きしめた。
「…っあ……」
部屋に鈴のようなテレサの声が響いた。
女性達はベッドから降り、命令通り帰ろうとしていたが、マナー違反だとわかっていながら、ついベッドの方を見た。先ほどまでは蹲って髪で見えなかったテレサの首元にはいくつかのキスマークが散らされ、すでに相当愛でられていたことが容易に予測できた。
XANXUSの表情は下された前髪でよく見えないが、テレサの内股を撫でながら、唇が笑っているのだけは分かった。
テレサの体が反応してつい脚を閉じると、XANXUSはクスリと笑いながら陰核に触れた。すでに濡れている中には容易に指が入り、テレサの口から声が艶やかな漏れる。
「っ、ぁ…」
テレサは手で口を覆い、顔を真っ赤にして声を我慢した。さすがに他の女の前では、恥ずかしいらしい。
XANXUSはそんなテレサの態度も悪くないと感じ、テレサの手に指を絡ませると、優しく中を擦った。
「ん、ぅ…っ…XANXUSさま、あっ、…っ」
ぎゅ、とテレサがXANXUSの手を握ると、びくっ、と体が震えて達した。
XANXUSは滴るほどの愛液の音をわざと立てるようにして指を抜いた。
くたりと脱力するテレサはXANXUSの胸板にもたれ、軽く息を荒げた。
「…は……ぁ…っ……」
一眠りして少しは体の熱が冷めたかと思っていたが、敏感なのは変わらないらしい。XANXUSは少しテレサを休ませようと、その体を両腕で抱き直すと、髪にキスを落とした。
そして唇を寄せたままゆっくり目を開くと、鋭い目付きで女達を睨んだ。「早く出ていけ」と言わんばかりに。
「っすみません…!」
下着を履く時間すら許されないように感じ、ワンピースだけを羽織りドアへと急いだ。
扉を閉める寸前に見えたのは、人形のように軽々しく体を裏返されて唇を奪われるテレサの姿だった。そして、まるで大好物を頬張るみたいに、しっかりと頭と腰を抱いて、テルサの唇を奪うXANXUSの姿だった。
ホテルの廊下を早足で歩きながら、2人とも何も言えずにただ思い出していた。行為中に、一度でもXANXUSからキスマークはおろか、キスされたことなどあっただろうか。抱きしめられたことも、あんな風に胸を貸してくれたことも、一度も無い。まして笑みなど見たこともないし、想像することさえできなかった。変な話、何度も体を重ねておきながら"XANXUSから求められている"と感じたことなど無かったのに。
「………あの人は特別なのね…」
1人の女性が小さく呟く。それを聞いた女性も、何の話かはすぐわかった。
「……美しいひとだわ」
「そうね」
2人はそれっきり、何も言えなくなった。