人魚姫とまでは
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お腹一杯になった私達は午後の昼下がりが浴びさせてくる強い日差しに少し疲れてきて、バーベキューというアウトドアで汗も大分かき、涼む為にこの大きな跡部君家のプールサイドでトロピカルなジュースを飲みながら日陰で涼んでいる。
バーベキューの後片付けはせめて自分達も手伝おうとしたらいいから遠慮せずにと執事さん達が片してくれてそれに甘えさせてもらい、向日君が暑くてプールで遊びたいと提案し何度もこの家へ遊びに来てる彼は勝手知るからこそ跡部君と忍足君の腕を引っ張ってプールがある敷地へと行ってしまい、逆に勝手知らない私はその場に残される訳にもいかないし着いてくしかできず。
男子の行動力凄い。
今日は全く泳ぐつもり更々無かったんだけど...
スキニーを掃いてるからふくらはぎまでしか捲れずそこから下だけプールに入れて足首を回したり水を弾いたりしながら涼しんだ。
目の前では向日君と忍足君が食後の運動だと言い、跡部君から借りた水着に着替えてどっちが早く25メートルを泳ぎきるかを色んな種目で競いあってる。
「跡部君は泳がないの?」
「俺はいつでも泳げる。それに最近はトレーニングメニューにも組み込んでるしな」
「あ、そうだ。結構間空いちゃったけ跡部君所のジムの時あるじゃない?あの時はありがとね」
「あーん?コーチと喧嘩したってやつか」
「意見の食い違いだってば...」
そう、あの日はコーチと言い合いをした日。
後に県大会で優勝して新記録も出して結果を残したのはあの後にちゃんと元の関係に戻ったから。だって喧嘩じゃないもん。
加盟スクールでいつも通り練習を終えた私に前から視野に入れてた全国ジュニアオリンピック大会後の話でコーチと少し揉めた。
私は部活が楽しい。大好き。学校も勉強も好き。だからどれもそつなくこなしたくて、どれかを疎かにした時にどれかを言い訳にしたくなくて頑張ってきた。
だから全国大会後も引退せずにまだもう少し皆と一緒に楽しく部活動を過ごしたい。
記録会も頑張った。悪くなかった。この間の中間テストも順位が中の上で悪くなかった。
でもそろそろ本当に本腰入れていい加減に今後に控えてるオリンピックに専念しろって、賞に拘るなって、遊びは止めろって。
今までも隙間でそんな感じで叱咤はされてた。
賞を取れば努力が報われてまた取る為にトレーニングを頑張っての繰り返しも嫌いじゃなかった。
好きな事を好きな時に好きなようにしてるだけ。
だから遊びと言われて自分なりにそつなくこなしてる姿が真剣に取り組んでない様だと言われた気がしてムッとした。
ただ楽しい、それだけで済む時期は終わったんだって、大人の鋭い物言いにショックを受けてつい反感したのが例の日の前日の事だった。
『言い過ぎてしまって申し訳ない。期待してるんだ、その気持ちは分かってくれ』
『こちらこそすみませんでした。分かってます、大丈夫です...』
あの時はそうは言ったけど...あれから少し迷いを含めつつ日を過ごしてきた。
「跡部君は...全国大会が終わったら引退するの?」
「まぁな。生徒会の事もあるし卒業後の準備も色々あるから忙しくなる」
「そっか」
目の前で忍足君が向日君よりやや遅れをとって到着し、向日君が「俺の勝ちー !もう一回やろーぜ!」って喜びながら水中で何度も跳び跳ねてる。
その光景を見て素直に羨ましい、そんな気持ちが沸々と溢れてくる。
あんな風に純粋に楽しんだのはいつが最後だったっけ、と。
「藤堂はこのまま高等部に上がるのか?」
後ろで椅子に座って寛いでいた跡部君がいつの間にか後ろに立って私を見下ろしてた。
このまま高等部に上がる、それが自然な流れだと迷いなく思ってた。
それ以外にあるの?それ以外に...
『なにか他にやりたい事でもあったら』
今朝お父さんに言われた時を思い出した。
その時と同じで今も即答出来なかった。
跡部君は立ったままずっと黙って見下ろしてきてて、私がなんて返事をするのを待っているかの様子。
「俺は...テニスが好きだ。だが俺は俺の道があるのを理解してるから来年はイギリスに留学する事が決まってる」
「...留学?」
「そうだ。一人息子だからな、跡を継ぐのも俺だ」
「なんか、凄いね」
「凄かねぇよ」
少し会話に流れが出来てから跡部君は私の横に座って遠慮なく膝から下をプールに入れた。
「何をしたいなんて今出来てりゃ良いと思ってた。でもそうはいかねぇ事も分かってる。だから今やりたい事を俺は両親にちゃんと伝えて納得させた。藤堂がどうコーチと揉めたかは知らねぇが大体似た様な内容だろと勝手に予想してたぜ。俺達はまだガキだが選択肢が無い様でちゃんとある事を見失ったら駄目だ」
「跡部君は...今はテニスがしたいの?」
「あぁ。アイツらと全国を取るって決めてここまできた。お前もそうなんじゃねぇのかよ」
「うん...」
「今の俺達は今しかねぇ。...あんま根詰めて今の自分を見失うなよ、じゃねぇと先が霞むぜ」
同い年なのに私よりも大人っぽい考えの跡部君の言葉がストンと心に落ちてくる。
もしかしてさっき跡部君の空気が重くなったのはこの事だったのかな。
「私...お父さんに喜んでもらいたくて泳ぎを止めないで水泳部でも頑張って、このまま高校でも泳ぐのを止めずに大学に上がるのをキッカケに独り暮らしとかするのかもとか、就職とかの事を考える時期にはもしかしたら他にやりたい事が出来てるかもしれないとか......でも大人の人の前だと泳ぐ以外の選択肢をもう持てない年月が経ってる気がして...」
「フン...しっかり自分の意見が色々とあるじゃねぇか」
羨ましいぜ
そう言って私を横顔を見て話を聞いていた跡部君がやんわりと笑って前に顔を向けた時、今度は私が跡部君の横顔を見る。
奥の二人の泳ぎで波立つ波紋で水面には私と跡部君の素足がゆらゆらと揺らめいていた。
バーベキューの後片付けはせめて自分達も手伝おうとしたらいいから遠慮せずにと執事さん達が片してくれてそれに甘えさせてもらい、向日君が暑くてプールで遊びたいと提案し何度もこの家へ遊びに来てる彼は勝手知るからこそ跡部君と忍足君の腕を引っ張ってプールがある敷地へと行ってしまい、逆に勝手知らない私はその場に残される訳にもいかないし着いてくしかできず。
男子の行動力凄い。
今日は全く泳ぐつもり更々無かったんだけど...
スキニーを掃いてるからふくらはぎまでしか捲れずそこから下だけプールに入れて足首を回したり水を弾いたりしながら涼しんだ。
目の前では向日君と忍足君が食後の運動だと言い、跡部君から借りた水着に着替えてどっちが早く25メートルを泳ぎきるかを色んな種目で競いあってる。
「跡部君は泳がないの?」
「俺はいつでも泳げる。それに最近はトレーニングメニューにも組み込んでるしな」
「あ、そうだ。結構間空いちゃったけ跡部君所のジムの時あるじゃない?あの時はありがとね」
「あーん?コーチと喧嘩したってやつか」
「意見の食い違いだってば...」
そう、あの日はコーチと言い合いをした日。
後に県大会で優勝して新記録も出して結果を残したのはあの後にちゃんと元の関係に戻ったから。だって喧嘩じゃないもん。
加盟スクールでいつも通り練習を終えた私に前から視野に入れてた全国ジュニアオリンピック大会後の話でコーチと少し揉めた。
私は部活が楽しい。大好き。学校も勉強も好き。だからどれもそつなくこなしたくて、どれかを疎かにした時にどれかを言い訳にしたくなくて頑張ってきた。
だから全国大会後も引退せずにまだもう少し皆と一緒に楽しく部活動を過ごしたい。
記録会も頑張った。悪くなかった。この間の中間テストも順位が中の上で悪くなかった。
でもそろそろ本当に本腰入れていい加減に今後に控えてるオリンピックに専念しろって、賞に拘るなって、遊びは止めろって。
今までも隙間でそんな感じで叱咤はされてた。
賞を取れば努力が報われてまた取る為にトレーニングを頑張っての繰り返しも嫌いじゃなかった。
好きな事を好きな時に好きなようにしてるだけ。
だから遊びと言われて自分なりにそつなくこなしてる姿が真剣に取り組んでない様だと言われた気がしてムッとした。
ただ楽しい、それだけで済む時期は終わったんだって、大人の鋭い物言いにショックを受けてつい反感したのが例の日の前日の事だった。
『言い過ぎてしまって申し訳ない。期待してるんだ、その気持ちは分かってくれ』
『こちらこそすみませんでした。分かってます、大丈夫です...』
あの時はそうは言ったけど...あれから少し迷いを含めつつ日を過ごしてきた。
「跡部君は...全国大会が終わったら引退するの?」
「まぁな。生徒会の事もあるし卒業後の準備も色々あるから忙しくなる」
「そっか」
目の前で忍足君が向日君よりやや遅れをとって到着し、向日君が「俺の勝ちー !もう一回やろーぜ!」って喜びながら水中で何度も跳び跳ねてる。
その光景を見て素直に羨ましい、そんな気持ちが沸々と溢れてくる。
あんな風に純粋に楽しんだのはいつが最後だったっけ、と。
「藤堂はこのまま高等部に上がるのか?」
後ろで椅子に座って寛いでいた跡部君がいつの間にか後ろに立って私を見下ろしてた。
このまま高等部に上がる、それが自然な流れだと迷いなく思ってた。
それ以外にあるの?それ以外に...
『なにか他にやりたい事でもあったら』
今朝お父さんに言われた時を思い出した。
その時と同じで今も即答出来なかった。
跡部君は立ったままずっと黙って見下ろしてきてて、私がなんて返事をするのを待っているかの様子。
「俺は...テニスが好きだ。だが俺は俺の道があるのを理解してるから来年はイギリスに留学する事が決まってる」
「...留学?」
「そうだ。一人息子だからな、跡を継ぐのも俺だ」
「なんか、凄いね」
「凄かねぇよ」
少し会話に流れが出来てから跡部君は私の横に座って遠慮なく膝から下をプールに入れた。
「何をしたいなんて今出来てりゃ良いと思ってた。でもそうはいかねぇ事も分かってる。だから今やりたい事を俺は両親にちゃんと伝えて納得させた。藤堂がどうコーチと揉めたかは知らねぇが大体似た様な内容だろと勝手に予想してたぜ。俺達はまだガキだが選択肢が無い様でちゃんとある事を見失ったら駄目だ」
「跡部君は...今はテニスがしたいの?」
「あぁ。アイツらと全国を取るって決めてここまできた。お前もそうなんじゃねぇのかよ」
「うん...」
「今の俺達は今しかねぇ。...あんま根詰めて今の自分を見失うなよ、じゃねぇと先が霞むぜ」
同い年なのに私よりも大人っぽい考えの跡部君の言葉がストンと心に落ちてくる。
もしかしてさっき跡部君の空気が重くなったのはこの事だったのかな。
「私...お父さんに喜んでもらいたくて泳ぎを止めないで水泳部でも頑張って、このまま高校でも泳ぐのを止めずに大学に上がるのをキッカケに独り暮らしとかするのかもとか、就職とかの事を考える時期にはもしかしたら他にやりたい事が出来てるかもしれないとか......でも大人の人の前だと泳ぐ以外の選択肢をもう持てない年月が経ってる気がして...」
「フン...しっかり自分の意見が色々とあるじゃねぇか」
羨ましいぜ
そう言って私を横顔を見て話を聞いていた跡部君がやんわりと笑って前に顔を向けた時、今度は私が跡部君の横顔を見る。
奥の二人の泳ぎで波立つ波紋で水面には私と跡部君の素足がゆらゆらと揺らめいていた。
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