人魚姫とまでは
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3年生になった私にはいくつかの選択肢がある。
このまま高等部に上がるか、より水泳に特化した学校を受験するか。
勿論プロの道を進みながらという前提。
お父さんが氷帝出身だった事もあり私はこの学園に籍を置いているだけ。
部活の地区予選も終えて、私自身の大会出場でタイムスコア新記録も更新し、少し気が楽になったある初夏の休日、朝の食卓に進路とかその類いの話題がフワッと漂った。あくまでもフワッと、あまり重苦しくない感じで。
でも質問の内容は水泳を続けていきたいかどうかという土直球なストレートさ。
「なにか他にやりたい事でもあったら」と。
私は水泳一択だという即答をしなかった。
だって泳ぐ事以外を知らない位ずっと泳ぎ一本で過ごしてきたし、他に...なんて事を考えた事なかったしお父さんから出てきたその言葉に一瞬考えさせられた。
取り敢えず少し間が空いちゃったけど「うん」とだけ軽く頷いて、あ母さんがいつも作り置きしておいてくれてる麦茶を一杯飲んで自分の部屋へ戻りベッドの上に勢いよく倒れこんだ。
いつもなら真っ先にプールに行く支度をしてる所なんだけど何となく今日はそんな気分になれなく、窓のレースカーテンが夏特有の午前から刺すような日の光を受け止めきれずにレースから床へと溢れ、レースの柄の影が床に写ってるのを数分ぼんやりと眺めていた。
でも頭の中ではさっきのお父さんの顔ばかり浮かぶ。
なんだろう
素行が悪い訳じゃない(水泳以外にあまり興味ないから)特に成績が悪かった訳じゃない(平均点以上好成績かと)試合の結果も悪くない(むしろ新記録だしてるし良いと思う)
多分何かが悪くてあんな風に話を切り出された訳じゃなさそう
(水泳を続けていく理由...)
(水泳じゃなきゃいけない理由...)
(水泳じゃない将来...)
...
もやもやと考えても仕方ない今この時間から抜け出したく折角の晴れだしたまには普通の休日を過ごそうと思いベッドから起き上がり、昨晩から着ていたパジャマからラフなスキニーデニムとブイ字ネックのTシャツに着替え小さめのショルダーバッグを持ってコンフォートサンダルを履いた。
同い年の子はヒールとかでおしゃれしてるけど私は履かない。スポーツマンが足を怪我するわけにはいかないからっていう自分なりの単純なこだわり。
おめかしって程でもない年相応の格好だと思う装いで私は家を後にした。
玄関が閉めきる手前にドアの向こう側でお父さんがゲリラ豪雨があるから傘は持ったのかという叫びを耳にすることなく。
泳がない私は普段から特に目的を持って行動をした事があまりなく、なんとなく駅周辺で喫茶店に入ったりスポーツ用品店に入ったり本屋で立ち読みしたりと時計を見る事なくゆるやかに日中を過ごした。
でも一人で過ごす駅近での過ごし方なんて限界もある訳で段々と退屈になってきたような気がしなくもなく、なんとなく入ったアクセサリー屋さんで普段身に付ける事の無いブレスレットや指輪の陳列を眺めながら手に取っては棚に戻しを繰り返し、ある程度見終えたそこでようやく私は今日は特に鳴りもしなかった携帯の画面を開いて今の時間を確認した。
(それでもまだお昼過ぎか...でもお腹空いてないなぁ)
こんな事なら珍しく私の方から誰かに声をかけてみるべきだったか、でももし今から声をかけるにしても急だろうなとか、普段から水泳の事しか考えてない恐ろしく受け身な自分を恨む。
お店から出て店内の冷気と屋外の気温の差に少し鳥肌を立てて腕を擦りながら家路に着こうとすると、後ろから聞き覚えのある男子の声がいくつか聞こえたから振り向いてみれば忍足君と向日君のセットが両手にビニール袋を持ってガサガサと言わせながらこっちの方に歩いてきた。
「おー、藤堂じゃん」
「何どうしたの?その買い物」
「跡部がバーベキューしたいって言うから買い出しに来たんだよ」
「今日は部活休みなんだね」
「藤堂もここに居るっちゅう事そうなんやろ、1人か?」
「うん。そろそろ帰ろうかなと思ってた所」
「って言ったよね?」
「予定ねぇならいーじゃん、人数は多い方がいいしよ!」
前に跡部君と泳いだ帰りに1度乗せてもらった黒のリムジンへと馴れた様に乗り込む二人。だけなら良かったけどグイグイと先に乗るよう忍足君に押し込まれた私は、崩れた体勢を持ち直して最後に乗り込んだ向日君が座れる様に広いシートの奥へと仕方なく座る。
...これじゃあ出られもしない。
車を寄越すから買い出しする店先だけを跡部君に伝えて買い出しをしてた二人が運転手に出発するよう伝えた後ゆるやかに車が動き出した。
「跡部からバーベキューやるぞって聞いてテンション上げて行こうとしたらシェフを呼ぶとか言い出してさ。いやそれバーベキューじゃねぇからって突っ込んだら俺らのバーベキューを見せてみろとか勝手な事言ってきてさ」
「テニス部達でやるんじゃないの?...私場違いじゃない?」
「今日集まれるメンツが俺らだけやったから声かけたんや、なんも緊張する事あらへんで」
「でも跡部君に断り位入れてからの方が」
「って言ったよね?」
「いーじゃん、藤堂って意外と頭でっかちだな!」
目の前にはビックリしてる跡部君。
大きな門を潜り抜けて屋敷だか豪邸だか...とにかく私達一般市民とはまるで違う"家"まで辿り着くには徒歩で行くにも距離がありすぎて、敷地内の道をリムジンは公道よりもゆっくりと進め玄関らしき前で止まった。
その玄関の前にパラソルの下で優雅に何か冷たそうな飲み物を飲みながら椅子に腰をかけてる跡部君がこっちを見てる。
スモークガラスだから中を覗いても見えないし、仮にしっかり見ようと目を凝らしたとしても跡部君が立ってる側は向日君だから忍足君を真ん中にして奥に座ってる私の事は見えてない筈。
だから向日君から順番にリムジンから降りていった後、太陽光で段々と車内奥まで見えてきた私に凄く、凄く凄く驚いてた姿が珍しくて来て少し得したかもと可笑しかった。
このまま高等部に上がるか、より水泳に特化した学校を受験するか。
勿論プロの道を進みながらという前提。
お父さんが氷帝出身だった事もあり私はこの学園に籍を置いているだけ。
部活の地区予選も終えて、私自身の大会出場でタイムスコア新記録も更新し、少し気が楽になったある初夏の休日、朝の食卓に進路とかその類いの話題がフワッと漂った。あくまでもフワッと、あまり重苦しくない感じで。
でも質問の内容は水泳を続けていきたいかどうかという土直球なストレートさ。
「なにか他にやりたい事でもあったら」と。
私は水泳一択だという即答をしなかった。
だって泳ぐ事以外を知らない位ずっと泳ぎ一本で過ごしてきたし、他に...なんて事を考えた事なかったしお父さんから出てきたその言葉に一瞬考えさせられた。
取り敢えず少し間が空いちゃったけど「うん」とだけ軽く頷いて、あ母さんがいつも作り置きしておいてくれてる麦茶を一杯飲んで自分の部屋へ戻りベッドの上に勢いよく倒れこんだ。
いつもなら真っ先にプールに行く支度をしてる所なんだけど何となく今日はそんな気分になれなく、窓のレースカーテンが夏特有の午前から刺すような日の光を受け止めきれずにレースから床へと溢れ、レースの柄の影が床に写ってるのを数分ぼんやりと眺めていた。
でも頭の中ではさっきのお父さんの顔ばかり浮かぶ。
なんだろう
素行が悪い訳じゃない(水泳以外にあまり興味ないから)特に成績が悪かった訳じゃない(平均点以上好成績かと)試合の結果も悪くない(むしろ新記録だしてるし良いと思う)
多分何かが悪くてあんな風に話を切り出された訳じゃなさそう
(水泳を続けていく理由...)
(水泳じゃなきゃいけない理由...)
(水泳じゃない将来...)
...
もやもやと考えても仕方ない今この時間から抜け出したく折角の晴れだしたまには普通の休日を過ごそうと思いベッドから起き上がり、昨晩から着ていたパジャマからラフなスキニーデニムとブイ字ネックのTシャツに着替え小さめのショルダーバッグを持ってコンフォートサンダルを履いた。
同い年の子はヒールとかでおしゃれしてるけど私は履かない。スポーツマンが足を怪我するわけにはいかないからっていう自分なりの単純なこだわり。
おめかしって程でもない年相応の格好だと思う装いで私は家を後にした。
玄関が閉めきる手前にドアの向こう側でお父さんがゲリラ豪雨があるから傘は持ったのかという叫びを耳にすることなく。
泳がない私は普段から特に目的を持って行動をした事があまりなく、なんとなく駅周辺で喫茶店に入ったりスポーツ用品店に入ったり本屋で立ち読みしたりと時計を見る事なくゆるやかに日中を過ごした。
でも一人で過ごす駅近での過ごし方なんて限界もある訳で段々と退屈になってきたような気がしなくもなく、なんとなく入ったアクセサリー屋さんで普段身に付ける事の無いブレスレットや指輪の陳列を眺めながら手に取っては棚に戻しを繰り返し、ある程度見終えたそこでようやく私は今日は特に鳴りもしなかった携帯の画面を開いて今の時間を確認した。
(それでもまだお昼過ぎか...でもお腹空いてないなぁ)
こんな事なら珍しく私の方から誰かに声をかけてみるべきだったか、でももし今から声をかけるにしても急だろうなとか、普段から水泳の事しか考えてない恐ろしく受け身な自分を恨む。
お店から出て店内の冷気と屋外の気温の差に少し鳥肌を立てて腕を擦りながら家路に着こうとすると、後ろから聞き覚えのある男子の声がいくつか聞こえたから振り向いてみれば忍足君と向日君のセットが両手にビニール袋を持ってガサガサと言わせながらこっちの方に歩いてきた。
「おー、藤堂じゃん」
「何どうしたの?その買い物」
「跡部がバーベキューしたいって言うから買い出しに来たんだよ」
「今日は部活休みなんだね」
「藤堂もここに居るっちゅう事そうなんやろ、1人か?」
「うん。そろそろ帰ろうかなと思ってた所」
「って言ったよね?」
「予定ねぇならいーじゃん、人数は多い方がいいしよ!」
前に跡部君と泳いだ帰りに1度乗せてもらった黒のリムジンへと馴れた様に乗り込む二人。だけなら良かったけどグイグイと先に乗るよう忍足君に押し込まれた私は、崩れた体勢を持ち直して最後に乗り込んだ向日君が座れる様に広いシートの奥へと仕方なく座る。
...これじゃあ出られもしない。
車を寄越すから買い出しする店先だけを跡部君に伝えて買い出しをしてた二人が運転手に出発するよう伝えた後ゆるやかに車が動き出した。
「跡部からバーベキューやるぞって聞いてテンション上げて行こうとしたらシェフを呼ぶとか言い出してさ。いやそれバーベキューじゃねぇからって突っ込んだら俺らのバーベキューを見せてみろとか勝手な事言ってきてさ」
「テニス部達でやるんじゃないの?...私場違いじゃない?」
「今日集まれるメンツが俺らだけやったから声かけたんや、なんも緊張する事あらへんで」
「でも跡部君に断り位入れてからの方が」
「って言ったよね?」
「いーじゃん、藤堂って意外と頭でっかちだな!」
目の前にはビックリしてる跡部君。
大きな門を潜り抜けて屋敷だか豪邸だか...とにかく私達一般市民とはまるで違う"家"まで辿り着くには徒歩で行くにも距離がありすぎて、敷地内の道をリムジンは公道よりもゆっくりと進め玄関らしき前で止まった。
その玄関の前にパラソルの下で優雅に何か冷たそうな飲み物を飲みながら椅子に腰をかけてる跡部君がこっちを見てる。
スモークガラスだから中を覗いても見えないし、仮にしっかり見ようと目を凝らしたとしても跡部君が立ってる側は向日君だから忍足君を真ん中にして奥に座ってる私の事は見えてない筈。
だから向日君から順番にリムジンから降りていった後、太陽光で段々と車内奥まで見えてきた私に凄く、凄く凄く驚いてた姿が珍しくて来て少し得したかもと可笑しかった。