刀さに

「チケットよし、うちわよし、ペンラもある…あとは」

ちら、と視線を送った先には散らばる洋服の山。
明日のライブに響かないようにそろそろ休まなくてはいけないのに、一向にコーディネートが決まらない。

「主、遅い時間にすまないね。確認してほしいことがあるのだが、入っても構わないかい」

「朝尊?ごめん、今部屋散らかってて」

「構わないよ。明日の準備かい?邪魔をして悪いね。すぐに済むから」

「わかった。入っていいよ」

扉を開けて入ってきた朝尊は書類を手にしていた。審神者の署名が抜けていた為、提出出来なかった報告書だ。浮き足立って業務に集中出来ていなかったことに申し訳なさを感じた。

「本当にごめんね、迷惑かけちゃった」

「構わないよ、僕も気付いていなかったからね。ところで、明日は早いんだろう?早く休んだほうがいいのではないかね」

「そうなんだけど、服が決まらなくて」

「ふむ…」

散らばる洋服の山を一瞥した朝尊は迷いなくいくつかの服を手に取った。シンプルなワンピースに茶色の革ベルト、黒のボレロとベルトの色に合わせたショルダーバッグを手渡される。

「選んでくれたの?」

「女性の装いには詳しくないが、参考程度にはなると思ってね」

「ありがとう、とても素敵。これ着て行くね」

「そうかい、嬉しいね。おやすみ、主。明日は楽しんでくるんだよ」

「おやすみなさい、朝尊」


翌日、ライブ会場で仲良くなった審神者さんに朝尊推しなんですね、とにこやかに言われ顔を真っ赤に染めることになるとは思ってもみなかった。






「なあ先生、あれはわざとか?」

「何のことだい肥前君。僕は主に似合う装いを選んだまでだよ。ほんの少し、僕の戦装束を参考にしたがね。でも、主にとてもよく似合っていただろう」


笑みを深くする朝尊を見て、肥前は頭を抱えた。
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