スライムとの旅路
「いたっ」
「「あ」」
「主!!」
その余波が私達に飛んできた。
咄嗟にレイルを庇ったら、頭に当たってしまう。
「大丈夫、大した事ないし直ぐに治癒術で……」
「お前らいい加減にしろ!!ダメージなくてもウザいし、レオに当てやがって!!」
キレたのか、リムルが威圧の為に吠えた。
……結果、被害多数。
「……やり過ぎだよ」
「…ごめん…」
「こらー!そこのお前ー!!」
警備隊が来るのが見え、リムルがスライムに戻る。
「は?スライム?」
「えーと…てへぺろ!」
「…………可愛いけど、誤魔化せてないと思う」
それから私達は大人しく拘束された。
「スライムの身体じゃあ、牢の格子なんて簡単に通り抜けられるだろ?」
「ちょっ…」
私とレイル、ゴブタは縛られ、リムルは樽に押し込まれて、牢に入れられる。
それから私達は牢の中で何があったのか説明した。
イヤリングに記録されてはいるだろうが……まだその情報を見るヤツ作ってないしな……
「…というのが事のあらましです。ね?俺たち悪くないでしょ?」
「うーん…まぁ、見ていた者の証言と概ね一致するが…」
「隊長、大変だ。鉱山でデカイ事故が起きた!」
と、部下らしい男が駆け込んで来る。
「なんでもアーマーサウルスが出たとかで…」
「なんだと!?町に出てくる前に仕留めんと…っ」
「いや、そっちは大丈夫。すでに巡回のヤツらが討伐に向かってます。ただ…魔鉱石の採取のため、奥まで潜っていた鉱山夫がひどい怪我を負ったようで…」
「なにっ!?ガルム達が!?」
「俺たち空気な」
「っすね」
「失礼」
「!」
縄を切っていたらしいレイルが私の縄を解いた。
それに体を動かしていると、レイルが私の頭……魔法が当たった所を見る。
「もう治癒はしたから」
「戦争の準備だかで回復薬の類は品薄だ。このままじゃ…」
「馬鹿言うな!あいつらは俺の兄弟みたいなもんなんだ。そう簡単にくたばってたまるか!とにかく今あるだけの回復薬で…」
「「……」」
私とリムルは視線を交わした。
そして、直ぐに準備をする。
「旦那、旦那」
「ん?∑あっ、おい何勝手に出てんだお前!」
「まぁまぁ、それどころじゃないんでしょ?」
牢から出てリムルは隊長に声を掛け、私達はリムルが入っていた樽を運んだ。
「これ、必要なんじゃないですかね」
樽の中には、リムルが出した回復薬が並々と入っている。
「これは…」
「回復薬ですよ。飲んで良し!かけて良し!の優れもの!」
隊長は樽一杯の回復薬を見詰めた。
「旦那の兄弟分、このままじゃヤバイんでしょ?他に打つ手がないんじゃ、とりあえず試してみちゃどうです?」
「……お前らここから出るなよ!」
「うい」
「おい行くぞ」
「∑」
ドカドカドカ
「隊長マジすか、アレ魔物でしょ!?」
「うるせぇ!さっさと案内しやがれ!!」
彼等を見送り、私達はそれぞれ暇潰しをする。
リムルは糸を操る練習。
ゴブタは昼寝。
私は情報転写の為のペンダント作り。
レイルはそんな私に寄り添っていた。
……暇じゃないのかな。
ドカドカドカ
ふと、足音がしてゴブタ以外が視線を向ける。
「助かった!ありがとう!!」
先程の隊長と三人の男が頭を下げた。
「あんたがくれた薬じゃなきゃ死んでた!ありがとうよ!」
「今でも信じられんが、千切れかけてた腕が治ったんだよ」
「」こくこく
……最後のだけ頷くだけだったね。
「いやホント、あんなすごい薬は初めて見たぜ。俺に出来ることなら何でも言ってくれ」
「いやなに」
そんな事があった翌日。
私達は隊長基カイドウの紹介で鍛冶屋に行く事に。
「ほーー……すごいな」
「っすね…」
「「…………」」
洞窟の中だから、カラグリアみたいのを予想していたが……全然違うな。
と、リムルが足を止めて、飾られている剣を見詰める。
「あ、それそれ。それ打ったヤツだよ」
「え?」
「これから会う鍛冶師」
そして、カイドウに連れられて一軒の鍛冶屋に入った。
「兄貴、いるかい?」
カイドウの声に、奥で鉄を打っていた男が振り返る。
「なんだカイドウか。悪いが今忙しいんだ。急ぎでないなら日を改めてくれ」
彼が……ドワーフの鍛冶職人。
格好いいな……。
「ん?昨日の3人じゃないか。ここで働いていたのか」
「「ああ、どうもリムルの旦那にレオンハルトの兄さん」」
私は兄さん呼びなのか。
何もしてないけど。
因みに昨日名乗った時に性別を間違われそうになったので訂正しておいた。
だから、今は間違えなかったのだと思う。
「カイジンさん、この方ですよ。昨日俺たちを助けてくれたスライムは」
「そうだったのか、礼を言う。すまんが今ちょっと手が放せなくてな」
「いや、いいよ。邪魔して悪いな」
今も鉄を打っていたし、仕事の真っ最中だったんだろう。
其れを中断させてしまっているのだから、此方も悪い。
「親父さん、相談してみちゃどうです?」
「む?いやいや、相談しても無駄だろ」
「でも、あんな不思議な薬を持っていた方ですぜ」
「そうですよ、親父さん」
「………」コクコク
リムル、何だか凄く期待されてるな……。
「……話すだけならタダだし、話してみたらどうかな?実際話す事で整理も出来るし、別の視点がある事で新しい発見があるかもしれないよ。何より、意外な所に答えがあったりするし」
「主もこう仰っている」
「そうそう。話してみてくれ」
「実はな…」
それから一旦仕事を止め、カイジンから話を聞く事に。
「──成る程ね。今週末までに
「国が各職人に割り当てた仕事だ。引き受けた以上、出来ないじゃ済まされねぇ」
頭を抱えるカイジン。
腕があっても、材料がないのは……ね。
「これは違うのか?」
「ああ、それはただの鋼の剣だよ」
リムルが指したのは乱雑に置かれた剣の山。
「今回の依頼は『魔鋼』を使った長剣だ」
「普通の剣とどう違うんだ?」
「ウチにあった在庫で出来たのはこの1本だけだ。見てみるか?」
カイジンが差し出した剣を見詰めた。
「……この剣、特殊じゃないか?」
「ん?」
「触っても?」
「おう」
長剣を持つと、何となくイメージが沸いてくる。
「此れは……使用者と共に成長する……謂わば、使用者次第で特性が変わる特別な剣」
「よく分かったな。その通り、使用者のイメージに添って成長する剣なのさ」
「こういう特別な物を持つと、イメージが沸く事があるんだ……だからこそ、一本作るのにも大変だろう。其れを20本も……」
「そうだぜ、まず引き受けなきゃ良かったのに」
「俺だって最初は断ったさ」
まぁ、確かにカイジン程の職人が出来ない仕事を受けるとは思わない。
「したら、あのクソ大臣こベスターの野郎が…」
『名高いカイジンともあろうお人が、コノ程度の仕事も出来ないのですかな(笑)』
「とか、こともあろうに国王の前で言いやがって…!」
「落ち着け兄貴」
「…………」
……(笑)は本当にそのベスターとかいう奴の台詞なのかな?
「
「やれることはやったさ。でも絶望的だ。くそっ、期日までもう5日もないってのに…」
会話的に魔鋼というのは貴重なのだろう。
一度目にしたいな。
「…とまぁ、こんな状況よ」
「なぁ、親父さん」
「ん?」
「俺たちの村に技術指導として来る気はないか?」
リムルが体を伸ばして来た為、持っていた長剣を彼に渡した。
「は?いや、俺は…」
「いやー親父さんの打つ剣、気に入っちゃって」
そう言っている間にリムルは長剣を飲み込む。
「あっ、コラそれは1本しかない完成品だぞ!?なに食ってんだ!」
「まぁまぁ……リムルは何も考えずに飲み込む様な能無しじゃないから」
「は?あ、おいコラ!」
続いて鋼の剣を飲み込むリムル。
そして……
ぶぁお
「うおっ!?」
「無理強いはしないさ。でも、検討してみてくれ。魔鋼の長剣20本。完成だ」
リムルの前に並べられた20本の長剣。
「……うん、どれもカイジンのと同じくいい出来だね」
「だろ?」
呆然としている彼等に代わり、私が判断した。
……素人目で申し訳ないけど。
「納品しなくていいのかな?」
「あ、そうだった!お前ら!」
「「はい!」」「……!」コクコク
「「打ち上げぇ?」」
そんな提案がされる。
カイジンはリムルの前にしゃがんだ。
「ああ、リムルの旦那のおかげで納品できたんだ。ご馳走させてくれや」
「いいよ、そんなの。味覚ないし」
「…………」
「綺麗なお姉ちゃんもいっぱいいるから!」
「そそっ、若い娘から熟女まで!」
「………!」コクコク
「!」ぴくっ
……リムル、耳の形が出来てる。
器用だ。
「……リムル、行って来たらどう?」
「レオも行こーぜー」
「私、13だよ」
……何か、空気がピシッと固まった。
「その、13ってのは?」
「年齢」
「「「「ウソぉ!?」」」」
「本当。父上が凄い体躯のいい人だから、少しだけ私も成長が他より早い」
「だよね!?」
「そういう大人?のお店?は駄目って言われたけど」
「うぅーん」
「あ、でもジュース出して貰えばいいんじゃ」
「ジュースは好き、かな」
「お、おお」
「じゃあ、行くか」
という事で、私達はカイジンに連れられ……エルフの店に入る。
「「「「「いらっしゃいませーー!!」」」」」
わぁ、綺麗なお姉さんばっかりだ。
彼が喜びそう。
「うわぁ可愛い!」
と、リムルが次から次へと抱き上げられた。
「……伸びてる」
「えーと…楽しんでくれてるみたいでなによりだ」
体がでれーんと伸びてるリムルに言えば、彼はハッとなった。
「あ、そうだ。こいつ、まだ子供らしいからジュースで頼むよ」
「あら、そうなの?」
「…………」
「…ちょっと借りてもいいかしら」
「?」
エルフのお姉さんに連れられ、奥に行く。
「この服、着てみない?」
「これ、女物だよ。私、男」
「絶対に似合うわ」
「……分かった」
言われて、出された服に着替えた。
「レイル」
「あ、主!?」
「似合う?」
「と、とても、可愛らしいです!」
「そう」
お姉さん達が着てる様な女物のドレスに着替えてから戻ると、レイルにびっくりした様な顔をする。
「どう?」
「「「「(か、可愛…!)」」」」
リムル達からはコメント貰えなかった。
残念。
それから、ジュースを貰って飲む。
リムルはお姉さんの胸と膝に挟まれて満足そうだ。
「いや本当、旦那には感謝してるんだお陰でドワーフ王への面目が立つ。しかし恐れ入ったよ。俺の渾身の一振りがまさか数秒で量産されちまうとはね」
「
「…………」
「あんたは最高の職人だよ、カイジン」
「……」
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