出会いと再会編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……まさか、私を兄と思ってくれてるとはな」
「え、迷惑だった…か?」
「いや……何なら、兄と呼んでみるか?」
「!」
「冗だ……」
「雫兄ちゃん!」
「…………」
という事で、私は炭治郎の兄という立場になった。
「南南東南南東南南東!!次ノオ場所ハァ南南東!!」
「わかった!!わかったから、もう少し黙ってくれ。頼むよ」
「∑ギャーーッ」
……炭治郎の鎹鴉は賑やかな子だな。
「頼むよ!!頼む、頼む、頼む!!結婚してくれ!」
「………」
前から聞こえた大声に思わず私達は足を止める。
「いつ死ぬかわからないんだ俺は!!」
「~~~~~っ;;」
「だから結婚してほしいというわけで!!頼むよォーーッ」
……金髪の少年が娘に縋りついていた。
「何だ?」
「…………」
「カァアーーッ」
……どういう状況なんだ?
「チュン、チュン」
「おっと」
と、雀が炭治郎の前で止まる。
「チュン!チュン!」
何かを炭治郎に必死に伝える雀。
「そうか、わかった!何とかするから!」
「……分かったのか」
……私にはチュンチュン鳴いている様にしか聞こえなかったんだが。
「助けてくれ!!結婚してくれ!」
グン
「何してるんだ、道の真ん中でその子は嫌がっているだろう!!そして雀を困らせるな!!」
炭治郎が金髪少年の襟を掴んで引き剥がした。
「∑あっ隊服!お前は最終選別の時の…」
「知り合いか……?」
「お前みたいな奴は知人に存在しない!知らん!!」
「えーーーーーーっ!!会っただろうが会っただろうが!お前の問題だよ記憶力のさ!」
何だ、このコント……。
「さぁ、もう家に帰ってください」
「ありがとうございます」
「∑おいーーーーっ!!その子は俺と結婚するんだ俺のこと好きなんだから、な゙っ」バシィ
バシッバシッバシン
「「………」」
娘の突然の往復ビンタに、思わず私達はまた固まる。
「落ち着いて」ブンッ
「うわぁぁん」
炭治郎が娘を羽交い締めし、金髪少年が何故か私の足に縋り付いて来た。
「いつ私があなたを好きだと言いましたか!!具合が悪そうに道ばたで蹲っていたから声をかけただけでしょう!!」
「∑俺のこと好きだから心配して声かけてくれたんじゃないの!?」
「私には結婚を約束した人がいますので絶対ありえません!それだけ元気なら大丈夫ですねさようなら!!」
「待って!!待っ…」
娘は憤って帰っていく。
「なんで邪魔するんだ…何なんだよその顔!!」
思い切り引いた顔の炭治郎。
私も蟀谷に手を当てて呆れていた。
「やめろーーーっ!!何でそんな別の生き物を見るような目で俺を見てんだ!お前責任とれよ!!お前のせいで結婚出来なかったんだから!何か喋れよ!!💢」
ギャーッと騒ぐ金髪少年に心底引いた顔で黙る炭治郎。
「俺はもうすぐ死ぬ!!次の仕事でだ!!俺はな、もの凄く弱いんだぜ舐めるなよ!俺が結婚できるまでお前は俺を守れよな!」
「……堂々と言うな」
「俺の名は竈門炭治郎だ!!こっちは雫兄ちゃん!!」
「そうかい!!ごめんなさいね!俺は我妻善逸だよ!助けてくれよ炭治郎!」
「……何故今自己紹介が入った」
私の足から炭治郎へと縋り始める善逸少年。
「助けてくれって何だ、なんで善逸は剣士になったんだ!なんでそんなに恥をさらすんだ!」
「言い方ひどいだろ!」
「君も結構言うな……」
「女に騙されたんだよ!借金を肩代わりしてくれたジジイが“育手”だったの!!」
……ん?
『桑島さんから手紙……え?借金を肩代わりしたのを弟子にした……?毎日泣き回って逃げるから大変……何故、そんな子を弟子に……?』
「毎日毎日地獄の鍛練だよ!死んだ方がマシだってくらいの!最終選別で死ねると思ったのにさ!!運良く生き残るからいまだに地獄の日々だぜ!あーー怖い怖い怖い怖い!」
……この喚いてるのが、桑島さんの弟子……なのか?
「イィヤァアアーーッ!!いやぁあああ助けてェーーーッ!!」
「どうしたんだ、大丈夫か?」
「ヒィーーッ、ヒィーッ」
……何か、発狂してないか?
「……ほら、落ち着け……ゆっくり深呼吸しろ」
顔から出るもの全部出している状態の善逸少年の顔を拭く。
「……水分摂れ……脱水状態になるぞ」
「あ、おにぎり食べるか?」
私が水を、炭治郎がおにぎりを差し出した。
それから漸く落ち着いたらしく、私達は歩き出す。
「善逸の気持ちもわかるが雀を困らせたらダメだ」
「えっ、困ってた、雀?なんでわかるんだ?」
「いや、善逸がずっとそんなふうで仕事に行きたがらないし、女の子にすぐちょっかい出す上にイビキもうるさくて困るって………言ってるぞ」
「チュン」
炭治郎の手の上で肯定する様に鳴く雀。
「言ってんの!?鳥の言葉がわかるのかよ!?」
「うん」
「∑嘘だろ!?俺を騙そうとしてるだろ!」
「善逸少年……炭治郎は基本的に嘘が吐けない」
「そうなの!?」
「……まぁ、私はチュンチュン鳴いてる様にしか聞こえないが」
「だよね!?」
「カァァ!!駆ケ足!!駆ケ足、炭治郎、善逸、雫!!共二向カエ次ノ場所まで!!」
「ギャーーーーーーッカラスが喋ってる!」
驚き尻餅をつく善逸少年に、私と炭治郎君は顔を見合わせた。
それから三人で鎹鴉の案内の下、山中のある屋敷への辿り着く。
「血の匂いがするな…でもこの匂いは「えっ?何か匂いする?」ちょっと今まで嗅いだことがな「それより何か音しないか?あとやっぱり俺たち共同で仕事するのかな」音?」
「……誰だ?」
「!!」
何故か近くの木陰にまだ幼い兄妹?が抱き合っていた。
「子供だ…」
「どうしたんだろう。こんな所で何してるんだ?」
真っ先に炭治郎君が歩み寄るが、彼等は明らかに怯えて警戒している。
炭治郎君はそんな彼等の前にしゃがみ……
「じゃじゃーーーーん。手乗り雀だ!!」
「チュン!チュン!」
善逸君の鎹雀を掌に置いて見せ、雀は足踏みをしていた。
「…………」
「チュン」
「可愛いだろ?」
やがて力が抜けたらしく、兄妹はへたへたと座り込む。
「何かあったのか?そこは二人の家?」
「ちかう…違う…ばっ…化け物の、家だ…」
化け物……それが今回の炭治郎君の倒すべき鬼か。
「兄ちゃんが連れてかれた。夜道を歩いてたら、俺たちには目もくれないで、兄ちゃんだけ…」
「…………」
「あの家の中に入ったんだな」
「うん…うん…」
「二人で後をつけたのか?えらいぞ、頑張ったな」
「………うう……兄ちゃんの血の痕を辿ったんだ。怪我してたから……」
怪我……血……他には目もくれない……この子達の兄は、もしかすると“稀血”か?
「大丈夫だ。俺たちが悪い奴を倒して、兄ちゃんを助ける」
断言する炭治郎君を見詰めた。
「ほんと?ほんとに…?」
「うん。きっと…」
「……安心するといい。彼は嘘が苦手だ。ちゃんと約束を果たす」
「…狐さんも?」
……狐さんって、私の事か。
一瞬誰の事か分からなかったな。
「炭治郎、雫兄ちゃん」
此処に来る途中で話している内に、彼も私を兄呼びし始めた善逸君。
その彼に私達は振り返る。
「なぁ、この音何なんだ?気持ち悪い音……ずっと聞こえる。皷か?これ…」
「音?音なんて……」
ポン ポン ポン
屋敷の中から鼓の音が響いた。
そして……
ポン
青年が放り出される様に出てくる。
咄嗟に私は跳び、何とか青年を受け止めた。
「……炎を怖がるな」
「………」
「え、えぇ!?燃やした!?」
「ちょっと黙っててくれ、善逸」
酷い怪我に直ぐに癒しの炎を使う。
そんな私の所に炭治郎君が駆け寄ってきた。
「あ…ぁ…」
「……もう大丈夫だ」
「良かった…」
完治させた青年を抱え直す。
「やっと…出られた…俺、助かったのか…?」
「ああ……中に居るんだな?」
「居る…多分、俺以外にも……」
「分かった……休んでいろ」
青年を木陰に下ろした時……
「グォォオオオ!」
ポン ポン ポン
鬼の声と連続して鼓の音がした。
「……少年、この青年は君の兄か?」
「ち、違う。兄ちゃんじゃない……兄ちゃんは柿色の着物きてる……」
……やはり、複数の人間が屋敷に居るのか。
此は……この青年と彼等の兄以外は絶望的だな。
「雫兄ちゃん!!善逸!!行こう!」
炭治郎君の声に日輪刀を出す一方、善逸君は震えながら首を横に振る。
「…………。」
直後、炭治郎君の般若の様な表情に硬直した。
「そうか。わかった」
炭治郎君はそのまま私の手を掴んで歩き出す。
「ヒャーーーーーッ!何だよォーーー!!なんでそんな般若みたいな顔すんだよォーーッ!行くよォーーッ!」
そんな彼の腰に鎚りつく善逸君。
「無理強いするつもりはない」
「行くよォーーッ!」
と、炭治郎君が表情を戻して、禰豆子嬢が入っている箱を兄妹の前に置いた。
「もしもの時のためにこの箱を置いていく。何かあっても二人を守ってくれるから」
そして私達は屋敷へと向かう。
「うぅうう」
呻く善逸君は私達の後ろを歩いていた。
「炭治郎、なぁ炭治郎。守ってくれるよな?俺を守ってくれるよな?兄ちゃんも、雫兄ちゃんもさ」
「……善逸君」
振り向いて、善逸君の頬に触れ……
「!」むぐっ
その口の中に飴を放り込む。
「此れで少しは静かになったか」
「…雫兄ちゃん…」
「炭治郎君も要るのか?」
「あ、うん」
「……さて、善逸君」
「ふぁい」
善逸君の頭に手を置き、狐面を少しずらす。
「君は鬼滅の剣士。最終選別を乗り越えた以上……いや、それ以前に育手の下を出れた時点で実力はある」
「そんな…俺、弱いよ」
「自分を信じろ……君を送り出した桑島さんを信じた、君を信じろ」
「!じいちゃんのこと知って「!何故来た!」え」
「!駄目だ!!」
「ギャーーーーーーッ!」
「入ってきたら駄目だ!!」
私達の視線の先には……駆け寄ってくる先程の兄妹が居た。