出会いと再会編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「!?」「…………」
ゴッ
毬は突かれて尚、炭治郎君を攻撃する。
やはり、矢印をどうにかしないと駄目か……そう言えば、あの目を閉じた坊の姿がないな。
まぁ、矢印を辿れば居場所も分かるが。
「珠世様!!俺は言いましたよね?鬼狩りに関わるのはやめましょうと、最初から!俺の“目隠し”の術も完璧ではないんだ!貴女にもそれはわかっていますよね!」
奥から愈史郎少年の声がした。
「建物や人の気配や匂いを隠せるが、存在自体を消せるわけではない!人数が増える程、痕跡が残り鬼舞辻に見つかる確率も上がる!」
「………」
……成る程、彼の血鬼術か。
応用の利くいい能力だ。
「貴女と二人で過ごす時を邪魔する者が俺は嫌いだ、大嫌いだ、許せない!!」
……愛は重いが、もう少し応えてやればいいのに。
「キャハハッ、何か言うておる!面白いのう楽しいのう!十二鬼月である私に殺されることを光栄に思うがいい!」
お嬢の言葉に内心首を傾げる。
……ああ、鬼舞辻無惨に騙されてるのか。
「十二鬼月?」
「鬼舞辻直属の配下です!」
「遊び続けよう!朝になるまで、命尽きるまで!」
腕が八本になったな。
蜘蛛か。
ゴウ ガガガガ
矢印の見える私は最低限で避け、炭治郎君は見えていないらしく型を使って防ごうとしていた。
「おい間抜けな鬼狩り!!狐みたいに
「誰が狐だ……人には矢印が見えないのだろう」
「チッ、見えれば毬女の頸くらい斬れるだろう!
そう言うと愈史郎少年は炭治郎君に向けて何か投げる。
「!?」
それは目の様な模様が描かれた紙で、炭治郎君の額に張り付いた。
「愈史郎さんありがとう!俺にも矢印見えました!禰豆子木だ!!木の上だ!!」
禰豆子嬢が跳んで行く。
「……援護しよう」
「!」
氷の矢を作り出し、坊の方へ放った。
仕組みが分かった炭治郎君は水の呼吸で避けつつ毬を斬り、お嬢を斬りつける。
「珠世さん!この二人の鬼は鬼舞辻に近いですか!?」
「恐らく」
「では必ずこの二人から血をとってみせます!」
炭治郎君がやるなら、私もやらないといけないよな。
坊の方は分からないが、お嬢の方からは可哀そうな気配が混ざっているし。
「気をつけろ!!少しも油断するなよ!もし本当にそいつらが十二鬼月なら、まず間違いなくお前たちが今まで倒した奴らより手強いぞ!!」
「はい、わかりました!気をつけつつ、少しも油断せず、まず倒し…今まで………はい!!頑張ります!!」
「……本当に大丈夫か?」
……まぁ、此奴等は十二鬼月ではないだろう。
一応渡る前に私は十二鬼月の下弦を倒した事があるし、最後に相手にしていたのは上弦。
加えて渡ってからも否応無しに面倒な奴等と対峙していたからな。
この程度なら早めに終わらせれる……が、それでは炭治郎君の成長に繋がらない、か。
と、禰豆子嬢が飛んできて、炭治郎君が斬ったお嬢の腕が再生した。
「!!」
炭治郎君が飛んできた禰豆子嬢を受け止める。
「さぁ死ね!!」
お嬢が殺人毬を投げて来たので、炭治郎君と禰豆子嬢を抱えて跳んだ。
「鬼狩り!!お前はまず矢印の男をやれ!!毬の女は俺たちと妹、狐で引き受ける!」
「……!わかりました!!禰豆子……絶対に無茶をするなよ。雫さん、禰豆子を頼む」
「……ああ」
そして、私と禰豆子嬢は炭治郎君とは背中合わせに跳ぶ。
「雪の呼吸 肆ノ型“淡雪”」
「!!」
お嬢の殺人毬を型で受け流した。
「珠世殿、愈史郎少年の血鬼術は理解した……貴女のは、戦い向きか?」
「…いえ」
「そうか……戦う気は?」
「あります」
「なら、後方支援を……そうすれば、私は禰豆子嬢のフォローに集中出来る」
「ふぉろー…?」
「……ああ、補佐的な意味だ」
……向こうの言葉が出てしまった。
気を付けねば。
「朱紗丸よ。そちらにいるのは“逃れ者”の珠世ではないか。これはいい手土産じゃ。それに、その狐面のが件の両目が違う者じゃ」
「チッ……」
「そうかえ!」
四つの毬が飛んできて、三つは淡雪で受け流す。
と、一つが禰豆子嬢の前で跳ね、それを禰豆子嬢が蹴ろうとした。
「蹴っては駄目よ!!」
珠世殿の制止が遅かったらしく、禰豆子嬢が蹴ろうとして殺人毬に当たると、足が捥げてしまう。
それにより、お嬢の目の前で倒れそうになる禰豆子嬢を抱え、外に出ていた珠世殿と愈史郎少年の元まで跳んだ。
その際に氷の壁を作り、時間稼ぎにする。
「楽しいのう、楽しいのう、蹴鞠も良い。矢琶羽、頸を五つ持ち帰れば良いのかの」
「違う、二つじゃ。鬼狩りと逃れ者。狐面は生け捕り。残りの二人はいらぬ」
「……君は要らないそうだぞ、愈史郎少年」
「そういうお前は生け捕りか」
「多分、稀血狙いだろうな……禰豆子嬢、怖がらないでくれよ」
「お前、稀血なのか…?」
「何を…?」
「”癒しの炎”」
禰豆子嬢の足を癒しの炎で修復した。
私の此れは沢山練習して、リムル殿並みの回復能力まで至っている。
バリィン
直後、氷の壁が割られた。
「……今度はいけるか?」
私の問い掛けに禰豆子嬢は頷く。
「よし……捥げたらまた治してやるからな」
「む!」
バァン
そして、禰豆子嬢は殺人毬を蹴り返した。
暫く禰豆子嬢とお嬢の蹴り合いとなる。
メキメキ ボン ゴッ
お嬢が蹴りでは無く、投げて来たがそれも蹴り返し、お嬢の背後の塀を破壊した。
「…雫さん、あの炎は…」
「一応言っておくが、アレは完全まで回復させるだけ……強化させる力は無い。彼女が急速な成長をしているだけだ」
「人の血肉も喰らわずに…」
「……彼女は強い……?」
その時、珠世殿が私の前に出る。
僅かに香る何かに、咄嗟に口と鼻を面の上から押さえた。
「十二鬼月のお嬢さん。貴女は鬼舞辻の正体をご存じですか」
「…………!!」
お嬢がビクッとし、その意図を私も覚る。
「何を言う貴様!!逃れ者めが!!」
「あの男はただの臆病者です。いつも何かに怯えている」
「やめろ!!貴様、やめろ!!」
「鬼が群れることができない理由を知っていますか?鬼が共食いする理由。鬼たちが束になって自分を襲ってくるのを防ぐためです。そのように操作されて…「待て」!」
「なっ、失礼だぞ!」
珠世殿の前に立って止めた。
「君、あのお嬢に……鬼舞辻無惨の名前を言わせようとしているだろう」
「「!?」」
「それが、どんなに残酷か……逃れ者なら知っているのではないか?」
「…わかっています!でも…っ…」
「鬼は哀れな者が多い……だから、頸を落としてやる方がいい」
「…キャハハ!お前に私の頸が落とせるものか!」
飛んでくる毬を今度は両断する。
「十二鬼月はもっと強い……あの世から出直せ」
「なっ」
そのままお嬢の懐に入り……
「雪の呼吸 壱ノ型“細雪”」
彼女の頸を刎ねた。
「ぁ…あ…」
「ああ……寒い」
雪の結晶がお嬢の毬を凍らせる。
「ま…り…毬…」
「……ん」
唯一凍っていない毬を彼女の手に乗せた。
やがて、ハッとなった珠世殿が彼女の腕から血を採る。
「あそ…ぼ」
「……今度は鬼とは関係無い、ただのお嬢としておいで……沢山相手してやろう」
そう言って頭を撫でていると、彼女は灰になった。
「……此れ、貰っていくぞ?」
完全に凍り付いて灰にならなかった一つの毬を巾着袋に入れる。
「……優しいのですね」
「……私は心だろうと体だろうと鬼に成りたくない」
「………」
ふと視線を向けると、炭治郎君が地面を這っていた。
「大丈夫……か?」
「え」
「炎を……怖がるな」
炭治郎君に癒しの炎を使う。
「あれ、痛くない」
「体は治せるが、心は治せない……強くなれ」
「…はい!」
炭治郎君に手を差し出せば、彼は強く頷きながら立ち上がった。
「炭治郎さん、雫さん。この方は十二鬼月ではありません」
「∑……!?」
「だろうな……十二鬼月は下弦は片目、上弦は両目に数字が刻まれる」
「その通りです。もう一方も恐らく十二鬼月ではないでしょう。弱すぎる」
「とは言え……独特な血の気配がする……恐らく、襲撃前にある程度の血は貰っていると見ていいだろう」
「確かに…所で、貴方は稀血なのですか?」
「……前は確実だった。私の血は、鬼からすれば年単位で喰わなくてももいい程と……今は変わったかもしれない」
「そう…ですか」
「……直、朝日が昇る。君達、隠れた方がいいのでは?」
「地下室へ行きましょう」
という事で、私達は朝日が出る前に地下室へと移動する。
「?」
地下室に降りると、禰豆子嬢が私と炭治郎君に抱き着いてきた。
それを炭治郎君と抱き締め返すと、今度は珠世殿の方に駆け寄って抱き着く。
「………」
途端に恐ろしい表情をする愈史郎少年の頭を禰豆子嬢が撫でた。
「禰豆子さんはどうされたんでしょうか?」
「大丈夫です。多分二人のことを、家族の誰かだと思っているんです」
戸惑う珠世殿に炭治郎君が答える。
確か、禰豆子嬢には人間が家族と思う暗示が掛けられているのだったか。
「?しかし、禰豆子さんのかかっている暗示は、人間が家族に見えるものでは?私たちは鬼ですが…」
「私も、か?……私自身、異能を使うから人間とは言えない気がするんだが……」
「でも禰豆子は人間だと判断してます。だから、守ろうとした。雫さんに関しては、俺も兄さんみたいだと思ってるし」
……よもや、嬉しい事言ってくれる。
「俺…禰豆子に暗示かかってるの嫌だったけど、本人の意思がちゃんとあるみたいで良かっ…」
珠世殿の目から涙が流れ、炭治郎君の言葉が止まった。
「すみません!!禰豆子禰豆子、はなっ、離れるんだ失礼だから!!」
炭治郎君が慌てるが、珠世殿は禰豆子嬢を抱き締め返す。
「ありがとう、禰豆子さん。ありがとう…」
……彼女も鬼になって家族を失ったのかもしれないな。
少しして落ち着き、禰豆子嬢も離れて炭治郎君の横に並んだ。
「私たちはこの土地を去ります。鬼舞辻に近づきすぎました。早く身を隠さなければ、危険な状況です。それに、うまく隠しているつもりでも、医者として人と関わりを持てば、鬼だと気づかれる時がある。特に子供や年配の方は鋭いです」
あー……子供は独特の感性があるし、老人は豊富な経験とかあるからな。
「炭治郎さん」
「はい」
「禰豆子さんは私たちがお預かりしましょうか」
「え」
珠世殿の言葉に炭治郎君が言葉を失う。
「絶対に安全とは言いきれませんが、戦いの場につれて行くよりは危険が少ないかと」
……愈史郎少年は凄く嫌そうなんだが。
「…………」
炭治郎君は悩む様に視線を落とす。
私はそんな彼の様子を見ていた。
ぎゅっ
「!!」
そんな彼の手を、禰豆子嬢が握る。
それに視線を上げると、禰豆子嬢は真っ直ぐに炭治郎君を見詰めた。
そして、禰豆子嬢の手を握り返して微笑む。
「…ありがとうございます。でも、俺たちは一緒に行きます。離れ離れにはなりません。もう二度と」
……もう二度と、か。
私は……自分で捨てた様なものだよな……。
「………わかりました。では、武運長久を祈ります」
「じゃあな。俺たちは痕跡を消してから行く。お前らも、もう行け」
「あっ、はい。じゃあ…日が差してるし、箱を」
私達は珠世殿達に背を向けた。
「炭治郎。お前の妹は美人だよ」
その言葉に炭治郎は満面の笑みを向ける。
そして、私達は彼女達と別れた。
end.