出会いと再会編
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「お待たせしました!」
「いや……」
妹を箱に入れて背負った少年……竈門炭治郎が駆け寄って来る。
彼が助けた男女に別れを告げている間に、ゆっくり歩いていた。
「……歩きながらいいなら、聞かせてくれないか?鬼は斬るべきだが……君が斬らない理由を聞きたい」
「(この人は俺よりずっと強い…それでも、聞いてくれるんだ)……禰豆子は人を喰べません」
「……そうだろうな。だから、それが確信になった経緯を聞きたい」
「あ、はい!」
それから妹が鬼になった経緯から、共に戦うまでに至るまでの話を聞く。
『人と鬼も仲良くしたらいいのに…炯寿郎君もそう思わない?』
『……君は目の前にご馳走があって、食べずにいつまで耐えられる?』
『え?』
『それは、人にも鬼にも色んなものを強いると思うが……』
……意外と現実に出来るのかもしれないな。
「……もし、君さえ良ければ同行させて貰えないか?」
「え?」
「君の願いが叶う瞬間を見てみたい……それに、腹を切る時に介錯が居るだろう」
「え!?」
「後のは表向きの理由だ……ちゃんと協力する」
「…はい、お願いします」
「……私に敬語は要らないからな、炭治郎君」
「は、じゃなくて、分かった。雫さん」
こうして、私は炭治郎君と行く事にした。
「はあ、はあ、はあ」
「……大丈夫か?」
そして……今、私達は東京府浅草に居る。
炭治郎君の鴉が此処に行く様に通達したからだ。
炭治郎君は田舎の生まれなのか、都会の賑やかさにやられている様子だ。
「……少し休もうか……ああ、彼処のうどんの店は旨いから彼処で休もう」
「そ、そうする…」
という事で、屋台のうどん屋さんで休む事にした。
「すまない、注文を……炭治郎君、何を食べる?」
「や、山かけうどん…」
「を一つ」
「あいよ」
げっそりしている炭治郎君に引きつつ、店主はうどんを用意してくれる。
その間に炭治郎君と眠そうな禰豆子嬢を長椅子に座らせた。
「ごめん、雫さんは平気なの?」
「ああ……」
ガタッ
その時、炭治郎君が突然立ち上がる。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「炭治郎君?て、おい!」
そのまま炭治郎は走り出してしまった。
「店主!」
「お、おう?」
「直ぐに戻るから嬢を頼む!直ぐに戻って食べさせるから、少し待っていてくれ!」
「あ、あいよ!」
私は炭治郎君を追い掛ける。
炭治郎君は少し行った先で、夫婦と娘と対峙している様だった。
「お知り合い?」
「いいや、困ったことに少しも──知らない子ですね。人違いでは、ないでしょうか」
「失礼」
「「!」」
炭治郎君を引き寄せて、視界を塞ぐ。
その際に炭治郎君が被っていた布が取れ、私は狐面を一応外した。
「弟がご無礼を。探し人によく似て……っ!」
「…貴方は…」
炭治郎君が肩を掴んだ相手の顔に見覚えがある。
まだ、私が“炯寿郎”と呼ばれていた頃に、出会って最悪の記憶を作った青年だった。
「何処かで、お会いした事は?」
「……気のせいでしょう。家族団欒の邪魔をして申し訳ない」
「……」
「炭治郎君……竈門炭治郎、今はその時ではない。今の君でやれると?他の人間を巻き込まないと?」
「!」
「あの?」
「先に禰豆子嬢の元に戻れ……早く」
俯く炭治郎君を押し出す。
炭治郎君は大人しく戻り……
「鬼舞辻無惨!!俺はお前を逃がさない!どこへ行こうと!地獄の果てまで追いかけて、必ずお前の頸に刃を振るう!絶対にお前を許さない!!」
そう宣言して駆けて行った。
……そうか、コイツが鬼舞辻無惨なのか。
炭治郎君に視線を向けている隙に私も人混みに紛れる。
「……顔も気配も覚えた……君を倒せば、残した家族が傷付かなくて済む」
必ず落としてやる、その頸……。
「前に血を飲まれた借りも……返してやらないとな」
『本当にこの本、私が買っても宜しいのですか?』
『……はい。私には少々値が……』
『お名前は何です?良ければ、お貸ししましょう』
『それは……有り難いが、私も同じ所には……』
『成る程、お前は稀血か』
『っ……私が……稀血?』
『それも…』
『チッ!!』
『!……逃がすな』
ふと、前から気配を感じて視線を上げた。
「……少年、鬼か。大分薄いが」
「!」
「あ、雫さん!」
少年の後ろから炭治郎君が顔を出す。
「良かった、合流出来て。珠世さんの所に行く事になったんだ」
「珠世……?」
「珠世“様”だ!…お前の連れか」
「そうです。えっと」
「……私と別れて、その少年や珠世という者と出会って招待された、という所か……私は雫。炭治郎君と行動する者だ」
「流石!あと、禰豆子は醜女じゃないよな!?」
「?……可愛らしい顔立ちだと思うが?」
「…さっさと行くぞ」
そして、私達は診療所を兼ねている屋敷へと案内された。
「そちらの方は初めてですね。私は“珠世”と申します。その子は“愈史郎”。仲良くしてやってくださいね」
「…………」
「……雫と呼んでくれ」
恐ろしい表情で俯いている愈史郎少年とは仲良くなれそうにないな。
「……君も鬼だな」
「鬼ですが、医者でもあります」
「……近い所に在りながら、血肉を欲しない……という事は、君は何らかしらの術を自分に?」
「ええ。私は、私の体を弄っていますから。鬼舞辻の呪いも外しています」
「その通りの様だな……」
あっさり鬼舞辻無惨の名前を出した……それは、呪いが無いと言う事。
「かっ、体を弄った?」
「人を喰らうことなく暮らしていけるようにしました。人の血を少量飲むだけで事足りる」
座敷に上げて貰いながら、話を聞く。
「血を?それは………」
「不快に思われるかもしれませんが、金銭に余裕の無い方から輸血と称して血を貰っています。勿論、彼らの体に支障が出ない量です」
……私の稀血なら、何れ程保つだろうか?
いや、向こうに渡った際にそれも変わった可能性もあるしな……。
「愈史郎はもっと少量の血で足ります。この子は私が鬼にしました」
「∑えっ、あなたがですか!?でも…えっ?」
「そうですね。鬼舞辻以外は鬼を増やすことができないとされている。それは概ね正しいです。二百年以上かかって、鬼にできたのは愈史郎ただ一人ですから」
「二百年以上かかって鬼にできたのは愈史郎ただ一人ですから!?珠世さんは何歳ですか!?」
「気にする所そこか……それと、女性に……」
「女性に歳を聞くな無礼者!!」
私が注意する前に愈史郎少年が炭治郎君を殴った。
「愈史郎!次にその子を殴ったら許しませんよ」
「はい!!(怒った顔も美しい……)」
「…………」
「一つ…誤解しないでほしいのですが、私は鬼を増やそうとはしていません。不治の病や怪我なぉを負って余命幾許もない、そんな人にしかその処置はしません。その時は必ず本人に、鬼となっても生き永らえたいか訪ねてから、します」
……嘘を言っている気配はない。
「珠世さん。鬼になってしまった人を、人に戻す方法はありますか?」
意を決した様に炭治郎君が尋ねる。
「鬼を人に戻す方法は、あります」
詰め寄りそうな炭治郎君の襟を掴んで止めた。
いい加減学習しろ。
「どんな傷にも病にも、必ず薬や治療法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことはできない」
「「…………」」
「ですが、私たちは必ずその治療法を思っています。治療薬を作るためには、たくさんの鬼の血を調べる必要がある。あなたたちにお願いしたいことは二つ。一つ、妹さんの血を調べさせて欲しい。二つ、できる限り鬼舞辻の血が濃い鬼からも血液を採取して来て欲しい」
……ん?私にも言われているのか?
私が彼女に協力する必要性を感じないのだが。
「禰豆子さんは今、極めて稀で特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが、恐らくはその際体が変化している。通常それ程長い間、人の血肉や獣の肉を口にできなければ、まず間違いなく凶暴化します」
「(珠世様は今日も美しい。きっと明日も美しいぞ)」
「しかし、驚くべきことに禰豆子さんにはその症状がない。この奇跡は今後の鍵となるでしょう」
炭治郎君が寝転がっている禰豆子嬢に手を伸ばせば、彼女は両手でその手を取る。
「もう一つの願いは苛酷なものになる…鬼舞辻の血が濃い鬼とは即ち、鬼舞辻に……より近い強さを持つ鬼ということです。そのような鬼から血を奪るのは容易ではありません。それでも貴方たちはこの願いを聞いてくださいますか?」
「……それ以外に道が無ければ俺はやります。珠世さんがたくさんの鬼の血を調べて薬を作ってくれるなら、禰豆子だけじゃなく、もっとたくさんの人が助かりますよね?」
「………そうね」
炭治郎君の優しい言葉に彼女は微笑んだ。
「……話を折って悪いが……私はその願いに頷けない」
「「「!」」」
そう返し、禰豆子嬢の髪を撫でる。
そうすると、禰豆子嬢は私の膝の上に頭を乗せてきた。
「君の願いは、危険なのに対して私に利点が無い……だから、私は血を採るつもりはない。私がするのは……」
そして、炭治郎君の頭に手を置く。
「この兄妹を守り、見届ける事のみ」
「雫さん…」
炭治郎君が私の手に触れると同時に、愈史郎少年を見た。
「愈史郎少年」
「なんだ」
「君と珠世殿は守る対象外……だから、警告しよう……来る。警戒しろ」
「!?まずい!ふせろ!!」
炭治郎君と禰豆子嬢の頭を抱えた直後、屋敷の中を何かが飛び回って破壊する。
てん チリン
何かは……鈴の音のする毬だった。
二人を放し、破壊された壁から外を見れば……男女の童子が。
お嬢の方の鬼が両手で持つ毬で破壊したのだろう。
「キャハハ、見つけた見つけた」
……無邪気そうだな。
もう片方の目を閉じた坊の方は神経質そうだ。
ギャン ボッ ボボボ
投げられた毬が破壊力を持って飛び回る。
……矢印?
それに従って飛んでいるのか?
グン
「ボーッとするな……」
「なっ…」
愈史郎少年に当たりそうだったので、彼の襟を引いて避けさせた。
……下弦にも及ばぬ程度の鬼だな。
と、一瞬止んだ間に炭治郎が日輪刀を構える。
それに私も一応日輪刀を抜いた。
「耳に飾りの鬼狩りは、お前じゃのう。両の目が違う稀血は何処じゃ?」
「……!」
狙いは私と炭治郎、か?
やはり、完全に私の事がバレてるな……まだ狐面のお陰でお嬢は私の事に気付いてなさそうだが。
「珠世さん!身を隠せる場所まで下がってください」
「炭治郎さん。私たちのことは気にせずに戦ってください。守っていただかなくて大丈夫です。鬼ですから」
「阿呆」
「あ、貴様!!」
珠世殿の頬を軽く叩く。
「さっきの発言で炭治郎君が優し過ぎる性格なのは分かっている筈……君達が鬼だろうが、炭治郎君は君達が傷付けば戦いに集中出来なくなる……足手纏いは下がれ……禰豆子嬢、この阿呆を下がらせて守ってやれ」
禰豆子嬢は少し私の顔を見て、珠世殿と愈史郎を奥へと引っ張った。
直後、追撃が飛んでくる。
「全集中・水の呼吸 漆ノ型“雫波紋突き・曲”」
斜めからの曲線で突く事で毬の威力を和らげた突き……だが