最終決戦編
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「……何処だ、此処は」
本丸に居た筈だったのに、気付いたら……前世の俺は何処かの庭に居た。
「!誰だ?」
「……迷子、かな?」
「??」
其処で出会ったのは……継国巌勝という少年。
兄しか居なかった前世の俺にとって、初めての同い年の友になる。
「銀!また来たのか!」
「そうみたいだ」
「そうだ、今日は弟を紹介しよう」
「弟?巌勝も兄上様なのか?」
不定期に繋がっては、色んな話をする仲。
名前を名乗ってはいけない、と言い聞かされていたから俺は“銀”と名乗っていた。
そんなある日……巌勝の素振りを見ていた時に、隣の松の木の影を見たら、巌勝によく似た子が居た。
「兄上の夢は、この国で一番強い侍になることですか?」
その子がそう問い掛けたら、巌勝は持っていた木刀を取り落とす。
「俺も兄上のようになりたいです。俺は、この国で二番目に強い侍になります」
笑顔で言う子を……巌勝は気味が悪そうに見ていた。
それから、その子が例の弟の縁壱だと紹介される。
と言っても、基本的に前世の俺が訪れる時は、巌勝だけが居る時で、彼と会う事は暫くなかった。
「え、縁壱が指南役を叩き伸した?」
「ああ…銀。どうして…」
「巌勝?」
「私には才がないんだ」
それから直ぐに縁壱は出て行き、巌勝は暫く荒れていたが……
月日が流れた事で落ち着き、巌勝には妻子が出来る。
その頃には付喪神の血を引く俺と彼の成長速度は異なり、彼は外見だけならすっかり年上になっていた。
だが、其れを気にする事なく……俺達は親交を続けている。
「……え」
「もう決めた事だ」
ある時、巌勝は妻子を捨てて鬼殺隊に入ると言った。
思わずその手を掴んだ時……俺はそのまま彼等の世界に留まる事に。
巌勝も驚いた様子で、放置する訳にはいかないと俺を鬼殺隊に連れて行ってくれる。
鬼殺隊の人々は良い人達で、縁壱も俺の事を覚えていたらしく、迎え入れてくれた。
其処で呼吸というのを知り、俺はその呼吸に順応していく。
そんな中、巌勝を含めた何人かが痣を出し……そして、亡くなっていった。
どうやら、痣を出した者は驚異的な身体能力を発揮するのと引き換えに、寿命を削っているらしい。
それを知った巌勝は酷く悩んでいた。
縁壱に追い付ける程の鍛練をする時間が無い、と。
人より永い時を生きる俺では、彼の悩みを解決してやれない。
「ならば鬼になれば良いではないか」
そんな彼を誑かす者が。
俺は早まるなと止めた。
だが、俺は突き放され……
「「「主!!!」」」
「み……んな……」
本来の世界へと戻され、それ以降世界を渡る事はなく……あの事件で俺は命を落とす。
「……そうか、私が俺になるずっと前から知っていたのか」
そう言えば、声が聞こえる様なったのは……奴と対峙した時だったな。
長い順応の為に閉じていた目を開いた。
黒死牟の体は木の様なもので拘束されている。
「雪の呼吸 肆ノ型“淡雪”」
「「「「「!!」」」」」
その拘束を斬り掛かろうとする皆と共に斬り裂こうとする刃を打ち消した。
「……終わりにするぞ、巌勝」
「!?」
「銀の代わりに、私がお前に引導を渡してやる」
「貴様…そうか、奴の…」
身体中から出した刃で、倍増した型の刃が飛んでくる。
其を見て順応し、淡雪に混ぜて全て受け流した。
それと平行して氷で黒死牟の体を固定する。
「(何故、何一つ当たらぬ!銀ですら順応して同じ型を出すので精一杯だったのにも関わらず!)何故、銀ですら無い貴様が…」
「確かに俺は銀じゃない。私は雫。この世界で生まれ、異なる世界で成長した者。巡り合い、皆と超える者だ」
「ああ、一人ではない」
切国が私を一度見て、私が打ち消す攻撃の合間を縫って行った。
それに行冥殿、実弥殿、無一郎君が続く。
「血鬼術」
玄弥君が呟いた直後、黒死牟から先程よりも小さいが、赤い木が生えた。
すると、黒死牟から技が放たれなくなる。
「いい血鬼術だ……!」
そして、遂に行冥殿の鉄球が黒死牟の頚を捉えた。
ジュワァァ
「ぐぅアアア!ぬァアアアア!!!」
下から向けられた斧は止められる。
私達は視線を交わし……
「オォラァアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「ハァアアアァ!!!」
「行っけぇええええ!!!」
鉄球に刃を重ねた。
鉄同士がぶつかり合い、赤く染まり……
「「「ぐああああ!」」」
黒死牟の頚を落とす。
此れで、終わ……
ギュル
「チッ!まだだ、畳み掛けろ!!」
頚が落ちた事で流れていた血が止まった。
それに直ぐに気付いた切国が黒死牟の体を貫く。
「上等だゴラ゛ア゛ア゛ア゛!!消えてなくなるまで刻んでやら゛ア゛ア゛ア゛!!」
終わらせてやる……私の中に消えた銀の為にも。
「風の呼吸 捌ノ型“初烈風斬り”」
「岩の呼吸 伍ノ型“瓦輪刑部”」
「霞の呼吸 伍ノ型“霞雲の海”」
「雪の呼吸 参ノ型“牡丹雪”」
猛攻を仕掛けるが……
「「「「「!!」」」」」
「ハアーーッ」
一瞬の隙を突かれ、黒死牟の頚が再生してしまう。
より、異形の姿に。
「頭を再生しやがった!あの野郎!糞が!!畜生がアア!!」
「攻撃し続けろ!!頚を落とされた直後で体が脆いはずだ!!無惨ほどの速さではない!!頚を狙え!!何度でも!!」
「……ッ、その姿が!!銀の友人だったお前の!!成りたかった姿か!!」
そう叫ぶ様に言った時、黒死牟が氷の破片に写った姿を見た。
そして、硬直し……
ボロ…
切国が貫いている所から崩れ始める。
技を放つ事なく、何度も頚を落とされる黒死牟。
「終わりにしよう……雪の呼吸 拾ノ型“一陽来復”」
最後に私が放った型で……黒死牟は再生する事なく崩れ落ちた。
其処に残されていたのは……残った服と二つに斬られた笛。
『有り難う』
「……さよならだ、巌勝」
其を見届けた私から出る涙は……きっと、銀のものだろう。
「主」
私を抱き寄せる切国に寄りかかり……目を閉じた。
何れまた……巡り合うかもしれないな。
「雫兄ちゃん!」
「ん」
玄弥君の声に目を少しだけ開ける。
正直、体を動かすのが凄く億劫だ。
「……血を流しすぎたのと、急激な順応によるオーバーヒートだな。暫くは動けないかもしれない」
「それって大丈夫なの?」
「……大丈夫……だから、早く行け」
「「「「!」」」」
「まだ、終わりじゃない……鬼舞辻無惨が残ってる……私の事はいいから、早く」
「だが、お前を置いて…」
「さっさと行け!!此れ以上奴の好き勝手にさせるな!!奴の頚を……っ」
「主!」
怒鳴り付けた事で元々入りづらい力が抜けて、強い目眩に襲われた。
「……行くぞ。雫の言う通りだ。無惨を倒すまで終わりではない」
行冥殿の言葉に、皆が私を一度見て駆け出す。
「切国も行ってくれ」
「!弱っている主を置いていけない」
「もう、鬼舞辻無惨以外の鬼は残ってない……皆を、助けてやってくれ」
「……主……」
「大丈夫、回復したら追い掛けるから……頼む、切国」
切国は躊躇い……そして、近くの柱に寄り掛からせる様に私を寝かせた。
「……待っているからな、主」
そして……切国も駆け出して行く。
「…………ああ、寒い」
早く回復して……皆を追い掛けないと……
そんな事を考えながら、目を閉じた。
「──……全く、また無茶をして」
優しい声と共に、温かい手が頭に触れる。
誰だ……?
「例え、生きる世界が違っても……幸せならいいと思っていたのに」
もう、目を開ける気力もなく……成すがままだ。
「……今のお前が望むなら、誰も死なせないさ。だから、お前は奴だけ見てろ」
頭に置かれた手を伝って、何か温かいものが流れ込んできた。
「俺の力を別けてやる。大丈夫、直ぐに順応する……生き延びろ。そして、笑顔でこの戦いを終わらせるんだ。俺の最愛の弟──」
「…………」
目を開けた時、そこに誰も居なかった。
立ち上がり、日輪刀を握る。
あれ程疲労していたのが嘘のように体が軽い。
「……笑顔で終わらせる」
皆と一緒に。
そして……私は駆け出した。
end.