出会いと再会編
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俺には昔、父と兄弟が居た。
母はまだ小さい頃に亡くなり、覚えてはいるが沢山の思い出は無い。
俺が生まれた家は鬼を狩る剣士……それも地位が高く、剣士として強い一族だった。
俺達兄弟が剣士を目指すのはある意味当然で、幼い頃の父は厳しくも、笑顔で稽古をつけてくれていた。
だが、母が亡くなった事で、そんな日々が変わる。
最愛の妻を亡くした父は酒に逃げ、俺達に背を向けた。
兄は母との約束を胸に立ち直り、誰からも尊敬される剣士になった。
弟は気弱だが、それでも礼儀正しい子になった。
俺は……あの家の独自の呼吸法が合わず、父がああなる前から沢山の人に教えを乞い……あまり家に居なかった。
それで兄とは……まぁ、それは置いといて、俺も認められる剣士に成りたかった。
皆は俺に剣士を辞めろと言ってきたが、強くなれば認めて貰える。
そうやって気持ちを保っていたが……それにも限界が来てしまった。
直後、俺は……
「普段男は喰わないんだけどね。君は特別だよ」
兄と同じ立場の人を庇い……死んだと思った。
《──確認しました》
俺は結局死ななかった。
異世界だという所に迷い込んだか召喚されたらしい。
シズエと名乗る……シズ先生に教えて貰った。
そこで、俺が願った結果らしいが……髪と左目の色を引き換えに、氷と癒しの炎を操る能力を得て、痛みも疲れも感じなくなった。
それに少し無茶な鍛練をしていたら……
「どうしてそこまで強くなりたいの?」
そう問われ、俺は何も答えられなかった。
此処には人を喰う鬼も認めて欲しかった人も居ない。
それ以降、何にも興味を示さなくなった俺を……シズ先生は最期の旅に連れていってくれた。
そして……
「じゃあ、雫な!」
彼と出会った。
それから俺は炯寿郎ではなく、私は雫と成った。
「さて、出来たぞ」
「……ああ」
恩人になったリムル殿の助力で、私は生まれ故郷に戻る事にした。
元鬼狩りとして、鬼舞辻無惨の末路を知りたい。
倒されたなら、誰が倒したのか……まだ生きてるなら、今度こそ倒す為に。
「俺的にはずっと居てもらってもいいんだけどな。雫強いし、料理上手いし」
「…ありがとう。だが、向こうに残して来たものがあるから」
「そっか……あ、これ」
「?」
リムル殿から水晶玉を渡された。
「何時でも連絡しろよ?」
「……ああ。君が好きそうな菓子でも見付けたら連絡しよう」
「頼むわ。あと、危ない時とか助けに行くからな。それと、その残して来たもん終わらせてこっちに戻りたくなったら、直ぐに迎えに行くからな」
「……本当に私は出会いに恵まれた。また会おう、リムル殿」
「おう」
そして、私は故郷の世界に戻る。
敢えて私は実家とは違う場所に出して貰った。
私はこの世界では死んだ事になっているだろう。
下手に父や弟に見付かるのは避けたい。
「…………」
町を歩いていると、奥方達の噂話を耳にする。
夜になると、少し目を離した間に16歳の若い娘が拐われるというものだった。
……鬼の中には、変に拘りを持つもの居る。
恐らく、此処の鬼は16歳の娘に拘って喰っている……そして、目撃者が居ないという点を考えると、異能持ちの可能性が高い。
何より、鬼が居るという事は、鬼舞辻無惨はまだ居ると考えるべきだろう。
「元、とはいえ……鬼狩りとして、見過ごす訳にもいかないな」
狐面をしっかりと着けて、私は夜まで待つ事にした。
「やはり鬼の気配がする」
タンッ
魔力感知ならぬ気配感知で鬼の元へと屋根伝いに向かう。
「…………」
目下の出来事に思わず動きを止めた。
鬼が鬼と戦っている?
……男鬼の方は何人も食べてそうだな。
女鬼からは血の気配を感じない……まさか、人を喰わない鬼?
近くに居るのは人間の男女……と、地中に一人と男鬼と同じ気配が二つ。
「…………」
以前の私なら、鬼は全て斬っただろう。
だが……彼方の鬼人は武人だった。
それを知った今なら……
「女鬼」
「「!?」」
「後ろに跳べ」
女鬼が私の言う通り、大きく後ろに跳ぶのと同時に屋根から跳び降りる。
「雪の呼吸 漆ノ型“霰”」
私の日輪刀を出しながら、鬼を斬った。
霰は上からの連撃。
それを諸に喰らった鬼は倒れ込む。
私の型による攻撃では、雪の結晶が舞い……それに触れたものは凍りつく。
凍った事で男鬼は再生出来ず、苦しんでいる様だ。
「……君、やはり人を喰った事が無いな?珍しい……初めてだ」
日輪刀を持っていない方の手で、女鬼の頬を撫でる。
女鬼は無邪気にも手に擦り寄って来た。
……私はこの頸を簡単に獲れるというのに。
「禰豆子!!」
その時、地中から少年が飛び出して来る。
少年は私を警戒し……そして、狐面を見て警戒を解いた。
……この狐面を知っている?
鱗滝さんの弟子か?
「あ、鬼は!?」
日輪刀で倒れたままの男鬼を指せば、少年は男鬼に駆け寄る。
正直、何れ位喰ったかとか喰った理由とか興味が無いから、少年に背を向けて日輪刀をしまおうとした時……
「鬼舞辻無惨について知っていることを話してもらう」
そんな言葉が聞こえて振り返った。
「…………」
「……」
「言えない」
案の定、男鬼は体をガタガタと震わせて拒絶する。
「言えない、言えない、言えない言えない、言えない、言えないんだよオオオ!!!」
パキン
私は恐怖で震える男鬼の頸を斬った。
「……無駄だ、少年。鬼舞辻無惨は自分の情報を鬼が漏らさない様に……名前を出しただけで、血に残る細胞に殺される」
「そんな…」
「……君は鬼殺隊か?」
「え、はい」
「鬼舞辻無惨の呪いを知らない上に、その呼吸……新人か」
「(呼吸も?)はい。竈門炭治郎といいます。それと、妹の禰豆子です」
禰豆子と呼ばれた少女は人間の男女を撫でている。
「鬼が妹……禰豆子少女は人間を喰った事が無さそうだな」
「はい!(鬼の事も知ってるし、日輪刀に鱗滝さんの狐面…)貴方も鬼殺隊の?」
「……日輪刀と狐面は死んだ隊士から継いだものだ」
「!!すみません」
「気にするな……珍しい話ではない」
この世界に生まれた“煉獄炯寿郎”は死んだ。
私は……
「……私の事は雫と呼んでくれ。個人的に鬼舞辻無惨や鬼を滅したい者だ……君の妹に興味がある。話を聞いてもいいか」
「…はい」
此れが私と彼の長い付き合いとなる出会いだった。
end.