上弦との戦い編
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「雪の呼吸 陸ノ型“斑雪”!!」
「斬る!」
「雪の呼吸 伍ノ型“水雪”!!」
「血鎌…」
「させんぞ」
私と切国で斬りかかり、月近が血鬼術を発動させる前に抑える。
「迫る刃は俺が払おう」
「頼んだぞ!」
溜めの構えに入れば、切国が猛攻を仕掛けた。
「雪の呼吸 玖ノ型“銀世界”!!」
「はああ!!」
「チィッ!」
行ける……彼等となら。
先程よりも速い連擊と猛攻、そして初めてとは思えない程の連携。
お互いの動きが、手に取る様に分かる。
「雫ー!!やれぇ!!!」
天元殿の声が聞こえた。
「俺は偽物なんかじゃない!」
「これでどうだ?」
「雪の呼吸 拾ノ型“一陽来復”!!」
最後の一撃。
それが……妓夫太郎の頸を斬る。
斬られた頸は花魁鬼の頸の方に飛んで行った。
向こうも……やったんだな……。
「はぁ……はぁ……寒い」
体から力が抜け、倒れ掛ける。
「「主!!」」
倒れる前に左右から抱かれ、失った体温が戻っていった。
ゾクリ…
「逃げろーーーーーッ!!!」
目の前の……妓夫太郎の体から幾つもの回転血鎌が放たれる。
「……くそ!!」
「「待て主!!!」」
「……ぁああああ!!」
二人の間から飛び出し、放てる最大の氷を出した。
『全く……俺も難儀だな。いや、私か』
『もう少しで揃う』
『その時は……俺に“順応”して、継承してくれよ?』
『そうすれば、私はもっと強くなるんだからな』
「主!主!!」
「…主…!」
「切国……月近……」
「「主!!」」
目を開けると、切国の腕の中に居る。
月近も直ぐ側に居た。
……あの声は……誰だ?
「炭治郎君……達は……」
「無事だ、怪我はしているが生きている」
「治癒……」
「先ずは自分の事を心配せんか…」
「……ん……」
頬に触れる手が温かく、目を細めて享受する。
「……主よ」
「…………?」
「契約してくれ、主……俺も主の刀にしてくれ」
真剣な表情で言う月近。
「……三日月宗近」
「!三日月宗近。打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。よろしくたのむ」
「よろしく……私の刀……」
「う、む……よろしく頼む……俺の主っ」
「…………」
彼は、今にも泣きそうな顔をする。
一方で、切国が安心した様に、またペンダントに触れて傷を治してきた。
「兄ちゃん!」
「……炭治郎君。禰豆子嬢」
そこに、禰豆子嬢に負われた炭治郎君が来る。
「良かった、居た!……あれ、毒は」
「傷も毒も消えてる筈だ」
……相変わらずリムル殿は渡すものまでチートだな。
「天元殿達は……」
「宇髄さん達の毒は禰豆子が消してくれたんだ」
「………………此処にも居たか」
「「「?」」」
「…………」
禰豆子嬢……どうやって消したんだ?
「……血は送ったか?」
「!あ、そうだった!禰豆子!あっちへ頼む!」
指示された禰豆子嬢が駆け出した。
そう言えば……禰豆子嬢、なんか咥えてたな。
「……よいしょ」
「「!」」
フラつきながら立てば、直ぐに切国と月近が支えてくる。
「何処に行く気だ?」
「炭治郎君達……追おうと思って」
「無理はするな」
「でも……」
「……月近」
「うむ」
「!」
月近が私を所謂お姫様抱っこして来た。
……えぇ。
抵抗する体力もないので、渋々それで運ばれる。
炭治郎君の元へと行くと、足を止めて何かを見ていた。
「…アンタみたいに醜い奴がアタシの兄妹なわけないわ!!」
どうやら崩れ始める頚だけの兄妹鬼の喧嘩を見ているらしい。
妓夫太郎の方が目を瞠っている。
「アンタなんかとはきっと血も繋がってないわよ!だって全然似てないもの!!この役立たず!!強いことしかいい所が無いのに!何も無いのに!負けたらもう何の価値もないわ!出来損ないの醜い奴よ!!」
「ふざけてんじゃねぇぞ!!お前一人だったらとっくに死んでる!どれだけ俺に助けられたんだ!出来損ないはお前だろうが。弱くて何の取り柄も無い。お前みたいな奴を今まで庇ってきたことが心底悔やまれるぜ。お前さえいなけりゃ俺の人生はもっと違ってた!お前さえいなけりゃなあ!!」
今度は花魁鬼の方が目を瞠り、涙を溢した。
「何で俺がお前の尻拭いばっかりしなきゃならねえんだ!!お前なんか生まれてこなけりゃ、良かっ…」
「嘘だよ。本当はそんなこと思ってないよ。全部嘘だよ」
妓夫太郎の口を塞ぐ炭治郎君。
花魁鬼の方には禰豆子嬢が行っている。
「仲良くしよう。この世でたった二人の兄妹なんだから。君たちのしたことは誰も許してくれない。殺してきた、たくさんの人に恨まれ憎まれて、罵倒される。味方してくれる人なんていない。だからせめて二人だけは、お互いを罵り合ったら駄目だ」
炭治郎君は目を閉じて、そう告げた。
「うわああああん!うるさいんだよォ!!アタシたちに説教するんじゃないわよ!糞ガキが向こう行けぇ!どっか行けぇ!悔しいよう悔しいよう!何とかしてよォお兄ちゃあん!!死にたくないよォ!お兄っ…」
花魁鬼が完全に崩れる。
「梅!!」
妹の名を最後に呼んで……妓夫太郎も崩れた。
妓夫太郎を禰豆子嬢と寄り添って抱えていた炭治郎君の手から……その灰が飛ぶ。
「仲直りできたかな?」
炭治郎君の言葉に禰豆子嬢が頷いた。
私は月近に下ろして貰い、二人の頭を抱き寄せる。
「……仲直りしたさ。元は兄妹想いだったみたいだしな」
「………うん」
……妓夫太郎は取り立てに拘っていた。
もしかすると……人だった時、あの兄妹も奪われてきたのかもしれない。
私がもっと強くて……力があれば、彼等も助けれただろうか。
「終わったな……疲れた…」
「……全くだな」
本当に疲れた……けど、今の私なら……頚を斬れるんだな。
「「兄ちゃん!!」」
それから、善逸君と伊之助君とも合流する。
「うわあああよかったよオオオ」
「うんうん」
「…。」
「生きてるよオオオオオンンン」
そのまま抱き合い……気絶するように眠った。
「…………」
「主?」
「目が覚めたか?」
起きると、切国と月近に顔を覗き込まれている。
「……蝶屋敷か?」
「ああ」
「ニ週間程眠っていたぞ」
「……マジか」
「「マジだ」」
また随分と眠り込んでいたらしい。
二人が眠っている間の事を話してくれた。
炭治郎君達は私よりも先に起きて、善逸君と伊之助君は既に任務へ向かったらしい。
炭治郎君は機能回復訓練をしており、天元殿は自力で帰って自邸で休んでいるそうだ。
「そうか……私は遅れてしまったか」
「……雫さん?」
声に視線を向けると、入口の所に隠の後藤殿が居る。
「起きてんならもっと騒げや!!!」
……なんか、怒られた。
それから蝶屋敷中の人に後藤殿が腹式呼吸で知らせ、人が押し寄せる。
前にもあったな……。
切国と月近は軽く怒られていたが、あまりの賑やかさに私達は笑った。
それから暫くして……
「……………………」
「雫、俺が何を言いたいかわかっているな?」
今、私は煉獄の家で父子三人の前に居る。
明らかに怒ってますという気配に、思わず目を逸らした。
「お前はまた無理をして…!!」
怒り半分、呆れ半分の気配で仁王立ちしている父さん。
「そうです!雫兄上は無理し過ぎです!蝶屋敷に運び込まれたと聞いて…僕は…」
泣きそうな気配で心に攻めてくる千寿。
「…お前は放っておくと無茶するのがわかった。だが、俺だけでは押さえられんだろう」
杏兄さんが私の後ろに居る切国と月近を見る。
「お前には刀鍛冶の里に暫く行ってて貰うぞ」
「……刀鍛冶の里に……?」
「そうだ。丁度お前を呼んで欲しいという知らせもある。ついでに大人しく療養しているか監視する様に頼んでおいた」
……つまり、隔離と。
「わかったな?」
「………………はい」
三人の強い威圧に、私は頷くしか出来なかった。
『ははは、そりゃ大変だったな』
「他人事だと思って笑わないでくれ……」
出発の日に、ペンダントの礼も兼ねてリムル殿に連絡する。
『まぁ、元気そうで良かったよ』
「……どうも……それにしても、いいタイミングでペンダントをくれたな」
『んー、まぁな(渡すように頼まれたのが偶々ベストタイミングだったみたいだな)』
「そちらは変わりないか?」
『おー、皆元気だぜ?今さ、テンペストをもっと人が来やすく盛り上げようと計画してるし』
「へぇ……」
『終わらせたら遊びに来いよ?』
終わらせたら、か……。
リムル殿は私が此方に向こうの世界の皆さんを呼ぶ気がないの分かってるな。
確かに、向こうの世界の皆さんが居たら、鬼舞辻も瞬殺出来そうだが……それでは意味がないから。
『…雫、いい顔する様になったな』
「……何だか、家族と和解したら余裕が出てきた」
『そりゃ良かったな。シズさんもきっと喜ぶぞ』
「…………うん」
『!!今の…めっちゃいい笑顔だったぞ!』
「めっちゃ……?」
「主、そろそろ時間だそうだぞ」
「我等も顕現を解くぞ」
「はーい……じゃあ、リムル殿」
『おう。今度はその鬼とやらとの戦いの事なんて忘れて、しっかり休めよ』
「分かった」
此れがフラグになるのとは知らない。
知っていたとしても、どうしようもない。
そして、私達は刀鍛冶の里へ。
end.