上弦との戦い編
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「運んでくれたのね、ありがとう。おいで」
「「はい」」
呼ばれたので素直に歩み寄る。
「お菓子をあげようね。ふたりでこっそり食べるのよ」
と、手に菓子を乗せられた。
「わっちも欲しい!」
「花魁花魁」
「だめよ。先刻食べたでしょう」
「……良ければ、どうぞ」
「「!」」
渡された菓子を禿の二人に差し出す。
「でも、それは…」
「私、あまり食べれないですし……それで笑顔になってくれるなら」
「シズちゃんはいい子ね」
「あの…“須磨”花魁は足抜けしたんですか?」
「!どうしてそんなことを聞くんだい?」
「ええと…」
そっと、炭子の前に出た。
「……須磨姉さんは私達にとって、姉同然の人なんです」
「姉…?」
「はい……傷のある炭ちゃんや、色の変な私にも優しくしてくれて……」
「姉さんに続いて、あなたたちも遊郭に売られてきたの?」
「はい……私達の村は貧乏で……須磨姉さんとは手紙のやり取りもしていたのですけど……そんな、足抜けする人だとは思えなくて……」
「そうだったの……」
「「……」」
俯き加減に言うと……同情した気配になる。
一先ず信じた様だ。
「確かに私も須磨ちゃんが足抜けするとは思えなかった。しっかりした子だったもの。男の人にのぼせている素振りもなかったのに。だけど日記が見つかっていて…それには足抜けするって書いてあったそうなの。捕まったという話も聞かないから、逃げきれていればいいけど…」
……須磨姉さんは既に鬼の手に落ちてるかもしれない。
死んだ気はしないから……生きてると思いたい所だ。
それから揃って部屋を出た。
「兄ちゃん、須磨さんは…」
「言葉に気を付けろ、誰が聞いてるか分からない……恐らく、鬼の手に」
「やっぱり…」
「…………?」
「?」
ふと、視線を感じて足を止める。
「…………」
そこに居たのは、瞳に三日月を宿した不思議な青年だった。
この感じ……切国と同じ……
「そこのお主」
「!」
彼は歩み寄ってきて、私の前に立つ。
「名は?」
「……シズエ、と言います」
「そうか。覚えておこう」
「!」
青年は私の髪に桜の簪を差して立ち去った。
……何だったんだ?
「シ、シズエちゃん!今の月の君よ!」
「月の君……?」
「あの通り色男なんだけど、お金だけ落として贔屓を作らないって話なんだけど…」
「…………」
……なんか、複雑。
翌日の昼。
私達は情報共有の為、屋根の上に来ている。
「だーかーら!俺んとことに鬼がいんだよ!こういう奴がいるんだってこういうのが!!」
そう言うのは荻本屋に潜入中の伊之助君こと猪子。
「いや…うん、それはあの…ちょっと待ってくれ」
「こうか!?これならわかるか!?」
「そろそろ宇髄さんと善逸と切国さん、定期連絡に来ると思うから…」
「こうなんだよ!俺にはわかってんだよ!」
「うんうん…」
と、視線を猪子から移した。
「善逸と切国は来ない」
「「∑!!」」
「…………」
「善逸たちが来ないってどういうことですか?」
「お前たちには悪いことをしたと思っている」
その言葉を聞きながら……念話を繋げる。
「俺は嫁を助けたいが為に、いくつもの判断を間違えた。善逸と切国は今、行方知れずだ。昨夜から連絡が途絶えてる。お前らはもう“
バチリと天元殿と目が合った。
「俺と雫で動く」
あ、巻き込んだな。
「いいえ宇髄さん!俺たちは…!!」
「恥じるな。生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない」
「わっ」
そう言い、天元殿は私を抱えて駆け出す。
「……その、切国のことだが」
「切国なら大丈夫だ。問題ない」
「…そうか」
《そうだろ?切国》
《ああ、問題ない》
《今、どうしてるんだ?》
《地下だ。そこに広さがあって、帯の中に何人も捕らえられている》
《君はどうしてるんだ?》
《咄嗟に顕現を解いて、善逸について居る》
《分かった。顕現が必要な時は連絡してくれ。念話経由で呼ぶ》
《ああ》
そこで念話を切り、天元殿を見た。
この念話はリムル殿達が使っているのを教えて貰ったら出来た、というので結構便利だ。
「何と無く次に狙われそうなのは目を付けてる」
「!そうかい」
「じゃあ、夜にでも」
「おう」
そして、天元殿と別れる。
それから日暮れ時になり……ある部屋の屋根裏に身を潜めていた。
恐らく、次に狙われるのは彼女……鯉夏花魁だ。
「……!」
そんな彼女の元を炭治郎君がやって来る。
会話をして炭治郎君が去り……
「何か忘れ物?」
「そうよ。忘れないように喰っておかなきゃ。アンタは今夜までしかいないから。ねぇ、鯉夏」
「雪の呼吸 漆ノ型“霰”」
「「!!」」
女鬼が現れ、間へと割り込んだ。
「……上弦に陸……君がこの街の鬼か」
「アンタ…鬼狩り?」
「元だ。今はただの雫」
「シズちゃん…」
「……男だからそろそろ“ちゃん”は……止めてくれないか?」
「「え」」
「え?」
何故二人して動きを止める?
もう遊女の格好してないぞ?
「違う色の両目……そう、あんたは綺麗だから喰べたい所だけど、仕方無いから捕まえるわ」
「……やれるものならやってみろ」
バンッ
その時、窓が開かれる。
「……炭治郎君」
一度居なくなった筈の炭治郎君がそこに居た。
「アンタは鬼狩りの子?今度こそ来たのね、そう。何人いるの?一人は黄色い頭の醜いガキでしょう。綺麗な方はどっかに行ったけど。柱は来てる?もうすぐ来る?アンタは柱じゃないわね弱そうだもの。コイツや柱じゃない奴とは要らないのよ、わかる?私は汚い年寄りと不細工を喰べないし」
「…兄ちゃん!」
鯉夏花魁を抱え、炭治郎君の横に移動する。
「その人を安全な所へ!」
「……分かった、無理はするなよ」
そして、外へと出た。
……さて、安全な場所って何処だ?
「!シズエ……?」
「!」
路地に降りたら、あの……月の君?とやらが居た。
「…………」
「どうした?その者は確か鯉夏花魁ではないか?」
「……少し預かってくれ」
「「!」」
何と無く、彼は大丈夫な気がする。
という事で、彼に鯉夏花魁を渡した。
「その人と共に……朝まで安全そうな所に居てくれ」
「……ほう」
「それと……私は男だから、シズエは偽名だ」
「…………」
そう告げ、私は炭治郎君の元へ戻る。
「……知っているさ」
「!貴方は…」
「さて、折角の命だ。お主を護らんとな」
《主!!顕現を!!》
《目覚めろ!山姥切国広!!》
念話が来た為……彼等の会話は聞いていなかった。
「!」
私が戻ると、丁度吹っ飛ばされた炭治郎君。
彼を受け止める。
「大丈……炭治郎君?」
「ハッハッハッ」
呼吸が荒いし、鼓動も早い。
それに合わせて体温も高い。
「雪の呼吸 弐ノ型“灰雪”」
迫る花魁鬼の帯を、炭治郎君を抱えたまま避ける。
「……?」
この花魁鬼……おかしい。
こんなに……
ゴオオ
「…………え」
「ふふっ、不細工は頑張っても不細工なのよ」
まるで……炭治郎君の呼吸が火を帯びている様に見えた。
ギュルギュル ドッ ギュルギュル
「……!?」
その時、飛んできた帯が花魁鬼の中に入る。
一方で、炭治郎君が斬ろうと踏み出すが……花魁鬼は屋根の上に移動していた。
「やっぱり“柱”が来てたのね、良かったわ。あの方に喜んで戴けるわ…」
……髪が黒から白になる。
アレが本来の姿か。
「おい、何をしてるんだお前たち!!」
「「!!」」
……騒ぎ過ぎたか。
出てきた男以外にも、何人かが顔を出していた。
「人の店の前で揉め事起こすんじゃねぇぞ!!」
「…うるさいわね」
「チッ……」
「だめだ下がってください!!建物から出るな!!!」
パキィン
帯の攻撃が放たれる。
咄嗟に氷の壁を作って、氷を斬らせて帯を防いだ。
「……寒い……使い過ぎか」
「!」
ギュル
「!」
「兄ちゃん!」
後ろの男を気にした事もあり、反応が少し遅れる。
それにより、腕が取られ……体が引っ張られた。
「やっぱり綺麗ね」
「…………」
吊り上げられた状態で花魁鬼を見詰める。
「……君、本当に上弦か?」
「はぁ?」
ザシュ
左肩が斬られた。
「調子に乗らないでよ。アンタはあの方が生け捕りにしろと言ったから生かしてるだけなんだからね」
「……やはり、君は上弦じゃないな」
「この……!!」
「止めろ!!」
「何?まだ何か言ってるの?もういいわよ不細工。醜い人間に構ってる暇なんて無いんだから、仲良くみんなで死に腐れろ」
そう告げ……花魁鬼が私を連れて行こうとした時。
ぐん
花魁鬼の足が引かれ、見ると炭治郎君が足を掴んでいる。
その状態で刀が振るわれ、帯で防いでいる間に私も抜け出した。
「炭治郎君……?」
私の前に立つ炭治郎君の目が……赤くなり、血の涙を流している。
「失われた命は回帰しない。二度と戻らない。生身の者は、鬼のようにはいかない。なぜ奪う?なぜ命を踏みつけにする?どうしてわからない?人間だったろうお前も、かつては、痛みや苦しみに踠いて涙を流したはずだ」
ドゴッ
花魁鬼が屋根に拳を落とした。
「ごちゃごちゃごちゃごちゃ五月蝿いわね。昔のことなんか覚えちゃいないわ。アタシは今鬼なんだから。関係ないわよ。鬼は老いない。食うために金も必要ない。病気にならない、死なない。何も失わない。そして美しく強い鬼は、何をしてもいいのよ…!!」
「わかった。もういい」
炭治郎君が駆け出す。
「血鬼術 “八重帯斬り”」
八つの帯が炭治郎君へと迫った。
何時もなら、その帯を全て斬り落とすが……私は炭治郎君の動きを見ている。
「ヒノカミ神楽“灼骨炎陽”」
炎の呼吸とは違う火が見えた様な気がした。
此れが……ヒノカミ神楽。
帯を全て斬り、花魁鬼の頚へと迫る。
「アンタなんかにアタシの頚が、斬れるわけないでしょ…!!」
頚が帯の様になっていて、恐らく柔軟過ぎて斬れないのだろう。
何本もの帯の攻撃が来た為、炭治郎君が一度下がってきた。
「…………!」
その際、ある事に気付く。
それを言おうにも、次の帯攻撃が来て炭治郎君が応戦した。
「斬らせないから今度は!!さっきアタシの頚に触れたのは偶然よ!!」
「炭治郎君、待……」
幾つもの帯を受け流し、一ヶ所に纏めて屋根に刺して留める。
「炭治郎君!」
その後も果敢に攻める炭治郎君を追った。
彼を止めないと……これ以上は駄目だ。
炭治郎君は……独自の呼吸を使ってるんじゃない。
呼吸そのものを止めているんだ。