上弦との戦い編
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《まったく……無茶のし過ぎだ》
《本当です。体の中が氷っていますよ》
「……悪かった」
《許さない。俺もそっち行くからな》
「え、それはどういう……」
「…………」
目を開けると、何処かで見た天井があった。
……確か……蝶屋敷の天井だ。
どうして、ここに……
「∑!」
「…………」
兄……炎柱の煉獄杏寿郎と目が合い、思わず硬直する。
「炯寿郎…起きたのか…?」
「……雫……だけど」
「よもや…そうだったな」
普段とは真逆で、静かに言う彼は私の右手を握っていて、空いた手で頭を撫でて来た。
「…すまなかった」
「…………?」
「俺は…ずっと炯寿郎には鬼殺隊を辞めて、千寿郎と共に家で待っていて欲しかった……危険な所に居て欲しくなくて、ずっと辛いことを…」
「……やっと言ってくれた」
「!」
「分からなかった訳でなかった……でも、それならそうと言って欲しかった……俺は貴方に剣士として認めて貰いたかった。だから、一言言ってくれれば……俺は十分だったんだ」
「そうか……すまなかった。よく頑張った。お前も俺の誇りだ」
「…………」
捨て切れなかった俺が満ちていくのが分かる。
やっと、兄と笑い合えた。
ガシャン
音に視線を向けると、桶を落とした様子の……胡蝶カナエが私を凝視している。
「起きたの…?」
「?……大丈夫ですか?」
「わ、私は大丈夫よ?あ、しのぶ!しのぶを呼ばないと!」
彼女は慌てて出ていった。
「……皆、お前が目覚めるのを待っていたんだぞ?」
「……そっか」
それからは凄かった……。
蝶屋敷に居る奴が皆来たのかと思うくらい人が沢山来て、蟲柱殿の診察があって……
「……あれ」
「あらあら」
気付いたら兄が私の手を握ったまま寝てしまっている。
「煉獄さん、ろくに寝てなかったから」
「そう……なのか」
聞けば私は一週間程寝ていたらしい。
大分マシになったが、まだ拾ノ型の体内氷結の所為で満足に体が動かない。
私はまだ暫く蝶屋敷に入院となった。
「はい、これ」
「?」
「炭治郎が話したらね、鱗滝さんが作ってくれたんだよ」
見舞いに来てくれた真菰嬢に新しい狐面を渡される。
新しいのは両目の色が違って、私の目とお揃いだ。
彼女以外にも柱とかが見舞いに来てくれ、見舞い品で部屋が埋もれてしまった。
……結構きつい態度取ったと思うんだけどな。
「雫さん!」
「ん?」
「こんな物が雫さん宛に来てましたけど…」
神埼アオイが車椅子?と細長い桐の箱を持ってくる。
……絶対向こうの世界だろ。
桐の箱の中身は……一振りの刀だった。
「え?刀?」
「……ありがとう、神埼少女」
「…アオイでいいです」
「分かった……アオイ嬢」
刀を抱き締め、早速車椅子へと移る。
「あ、押しましょうか?」
「いや、アオイ嬢も忙しいだろ?」
「でも…」
「雫兄ちゃん入るよー」
「「あ」」
丁度いい所に炭治郎君がやって来た。
結果、彼に押して貰う事に。
「どこ行く?」
「外がいい……日差しが欲しい」
「わかっ…」
「頼む!胡蝶!」
「「!」」
兄の声がし、炭治郎君と視線を交わす。
少し進むと、兄と蟲柱殿が居た。
「雫を連れて帰りたい!千寿郎も父上も会いたがっているのでな!」
「駄目です。まだ雫さんは往復出来る程の体力はありません」
「俺が背負う!」
「それはそれで体力が…あら」
「む!」
「「……」」
二人が私達に気付き、歩み寄ってくる。
「雫さん、それは?」
「蟲柱殿……見舞い品らしい」
「しのぶです」
「……胡蝶殿」
「姉と被ります。しのぶですよ」
「……しのぶ嬢」
「はい、よろしい……そうですね、これに乗ってなら」
「!本当か!」
「但し、無理をさせないこと。日暮れまでには戻ること。いいですね?」
「承知した!」
あまり把握出来ず、また炭治郎君と視線を交わした。
「雫!俺たちの家に行くぞ!竈門少年も一緒に来い!」
「え?」
「炎柱殿の家に……?」
「兄上だ!」
「……煉獄殿」
「あ に う え!!」
「………………杏兄さん」
「うむ!」
「(兄ちゃんが折れた……でも、皆嬉しそうな匂いだし、いいか)」
それから押す役を炭治郎君から杏兄さんに代わり、煉獄家を目指す。
「歴代の“炎柱”が残した手記があったと思って、父上に聞いておいた。俺はまだ読んでいないからわからないが、君が言っていた“ヒノカミ神楽”について、何か記されているかもしれない」
「そうなんですか…それで俺も」
「ああ」
「うわ」
「雫!どうした!?」
「あ、いや……蝶が集まって驚いただけ」
「あ、本当だ」
「雫は昔から動物に好かれるからな!」
雑談しながら煉獄家に向かうと……
「あ、兄上!おかえり…なさ…」
「うむ!今戻った!」
門の前を掃除していた千寿郎と目が合った。
少しの間を置いて、千寿郎は竹箒を放り捨てて私へと駆け寄ってくる。
「小兄上…小兄上ぇええ…!」
「……千寿……」
私の膝の上に顔を乗せて泣く千寿の頭を上から抱き締めた。
「どうした、何が……炯寿郎」
「あ……」
中から父が出てくる。
何と呼ぼうか迷っている間に、その父に抱き締められた。
「すまない…すまなかった…炯寿郎!」
「…………」
「よく…戻った!」
……ああ、泣きそうだ。
それから暫くして、今の私は“雫”だと説明した後……手記を読んでいる間、私は中庭に居させて貰う。
……懐かしいな、よくこの場所で……
ザッ
「……どうした?」
「いえ…冷えないかと思って」
千寿がいそいそと私の膝に掛け物を置いた。
「寒かったから……丁度良かった」
「えへへ……あの」
「?」
「もう小兄上でないなら…雫兄上と呼んでも?」
「構わない」
「!」
パァアアと表情を明るくする千寿が可愛い。
それから千寿の話を聞く。
「そうか……君は剣士以外の道を」
「はい」
「それでいい……俺が自分の道を貫いた様に、君も貫け」
「はい!あの、雫兄上の話も聞きたいです!」
「私の?……そうだな、私が向こうの世界で出会った、最強のスライムについて話そうか」
「すらいむ?」
「抱き抱えられるくらいの大きさ、水色の生物だ」
向こうの世界の事を話したら、千寿はキラキラとした瞳で聞いてくれた。
「その、りむる殿は凄いのですね!」
「ああ……凄かった」
「………盛り上がってる所すまんが、そろそろ送らないと胡蝶に叱られる」
「「あ」」
気付いたら日暮れ近くになっている。
確かに戻らないと怒られてしまう。
「………また話してくださいね。ずっとお待ちしておりますから!」
「…………」
「…そうだな。いつでも戻って来い」
千寿に手を握られ、父に頭を撫でられた。
「……此処を……帰る場所にしていいのか……?」
「はい!」「当たり前だろう」
ポタッ
「ぅ……」
「雫兄上…」
「……おかえり」
そのまま千寿と共に泣いてしまい、炭治郎君を困らせてしまう。
それから送ってくれるらしい杏兄さんと炭治郎君と共に蝶屋敷に向かった。
門の外にまで見送りに来てくれた千寿と父さんには軽く手を振る。
「………兄ちゃん、良かったな」
「……ああ」
「うむ!」
穏やかな空気が流れる中……
「「「ん?」」」
道の先に誰か立っているのが見えた。
そこに居たのは……両手と頭に包丁を付けたひょっとこ面の男。
炭治郎君の表情からして、彼の担当の刀鍛冶らしい。
「刀を失くすとはどういう料簡だ貴様ァアアアア!!万死に値する…万死に値するゥ!!!」
……あー……炭治郎君、最後に猗窩座に投げたんだっけ。
「すみませんすみません!!」
「ア゛アアア゛ア゛アアア!!!💢」
「もうほんとにごめんなさい!!」
逃げる炭治郎君に追い掛ける刀鍛冶。
「くっ……はははは!」
「……」
「ふふ、ははははっ」
「…ハハハ!」
「わ、笑ってないで助けてください!」
「ははっ、すまない……はははは!」
「わっしょい!」
「何で今わっしょい……ははははっ」
暫く笑い、杏兄さんにみたらし団子を買って貰う事で追いかけっこは終息する。
「もっと早く助けてくれ!」
「悪い悪い……」
「まぁ、兄ちゃんの爆笑は見たかったけど…」
「俺は怒ってるんだからな!子守唄歌ってくれるまで許さないんだからな!」
「子守唄?……ああ、あの時の……仕方無いな」
「やった!」
「え、ズルい!俺も聞く!」
「俺も忘れんじゃねぇ!」
その日は私と同じ部屋で寝る事に。
皆が寝たのを確認して、あの刀を取り出した。
「……大丈夫。笑えた」
この刀は、私と同じ様に向こうの世界に迷い込み……私を主としてくれた者だ。
「本当に来てくれたんだな……また私に力を貸してくれるのか……ありがとう、山姥切国広」
そう告げて目を閉じる。
「……当たり前だ」
「ちょっ、どちら様!?」
「え?え?」
「……勝手に顕現するなよ」
「名を呼ばれたからな」
「そういうつもりで呼んでない……!」
end.