上弦との戦い編
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「はっ……」
夢から目覚めた。
視線を巡らせると、縄で繋がれた少年達と炭治郎君を起こそうとする禰豆子嬢を見付ける。
他には寝ている善逸君と伊之助君、そして何故か少女の首を掴んでいる炎柱殿。
と、禰豆子嬢は泣きながら炭治郎君を燃やした。
……燃やした?
慌てて炭治郎君に駆け寄れば、彼は無傷の状態である。
……これが禰豆子嬢の血鬼術か?
「ムー!」
「……よしよし、いい子だ」
直後……
「あああああ!!!」
「炭治郎君!」
彼が目覚めた。
「ハア、ハァ」
「大丈夫……君の首は繋がっている」
「はー…兄ちゃんは先に起きてたんだな」
「……助けられて、な」
「あ、禰豆子!!大丈夫か…!?」
炭治郎君が自分の手首に巻き付いている縄を見る。
それは私の手首にもあり、それぞれ焼けた様に千切れていた。
「…………」
炭治郎君が切符の匂いを嗅いでいる間に、私はそれぞれを繋げている縄を見る。
「禰豆子嬢……あの縄、燃やせるか?」
「ム!」
直ぐに禰豆子嬢が縄を燃やし、炭治郎君が善逸君に駆け寄った。
「善逸!!伊之助!!起きろ!!起きるんだ!」
「ムーーッ」
「よしよし、ごめんなありがとう。だめだ二人共起きない…!!どうしよう、兄ちゃ…!?」
「……どういうつもりだ」
炭治郎君に向けられた錐を、少女の腕を掴んで止める。
「放して!邪魔しないでよ!あんたたちが来たせいで!夢を見せてもらえないじゃない!!」
「!!」
「…………」
夢を……そうか、都合のいい夢を見せると言って利用しているのか。
周りを見ると、私と炭治郎君と繋がっていた少年と少女以外が錐を手に、私達を囲んでいた。
「何してんのよあんたたちも!起きたなら加勢しなさいよ!結核だか死んだ妹だとか何だか知らないけど!ちゃんと働かないなら、
「!!」
……怒鳴られている二人からは敵意を感じない。
私達と戦う気はないのか……?
「ごめん。俺たちは戦いに行かなきゃならないから」
一先ず敵意を感じる者達に手刀を落として気絶させる。
「幸せな夢の中にいたいよね、わかるよ。俺も夢の中にいたかった…」
「……炭治郎君」
彼は……どんな夢を見ていたんだろうな。
「「……」」
「大丈夫ですか?」
「……ありがとう、気をつけて」
「はい!禰豆子!!兄ちゃん!!」
炭治郎君が駆け出した。
「あの!」
「……?」
「あの人が…無茶しないで欲しいって。それと、無理して捨てなくてもいいって」
……そうか、彼女にも会ってたんだな。
「……ありがとう」
そして、炭治郎君の後を追う。
「ぐっ」
「……前から鬼の気配がする……下弦だな」
「!兄ちゃん!」
炭治郎君が上を指差した為、彼に手を貸して屋根の上に上げた。
「車両からも嫌な感じかするから、私は残って乗客を護る」
「わかった!禰豆子はみんな起こしてくれ!」
彼の言葉に頷き、禰豆子嬢の背を押す。
何だ……汽車全体から鬼の気配がしている……まさか……
「汽車と鬼が同化しているのか……!!」
呟いた直後……壁が肉の様に変わり、乗客を取り込もうとし始めた。
「雪の呼吸 捌ノ型“風花”!!」
全く……当たって欲しくない事程当たるのは勘弁して欲しい……!
「……雪の呼吸 玖ノ型“銀世界”!!」
一撃で少しでも多く肉の壁を斬る。
「くっ……雪の呼吸 参ノ型“牡丹雪”!!」
もっと……もっと斬って、少しでも再生を……
ドン ガコン グイッ
「……??」
「竈門少年!」
「煉獄さん!兄ちゃん!」
気が付いたら何故か炎柱殿に脇に抱えられた状態で炭治郎君の前に居た。
「ここに来るまでにかなり細かく斬擊を入れて来たので、鬼側も再生に時間がかかると思うが!余裕は無い!!手短に話す!」
「ちょ……放せ……!!」
「この汽車は八両編成だ、俺と炯寿郎で後方五両を守る!」
「雫だ!」
「残りの三両は黄色い少年と竈門妹が守る!君と猪頭少年はその三両の状態に注意しつつ、鬼の頚を探せ!」
「いい加減放せ!」
「頚!?でも今鬼は」
「どのような形になろうとも鬼である限り急所はたる!!俺も急所を探りながら戦う!君も気合いを入れろ!」
ドン
脇に抱えられたまま、後方車両に移動させられる。
「……っこの!いい加減にしろ!」
「む!」
何とか彼から離れ、そのまま軽く自分の腕を傷付けた。
ピクピク
「さぁ……来い。雪の呼吸 壱ノ型“細雪”」
肉壁が私を集中狙いして来る。
私の稀血は今も健在らしいな。
「炎の呼吸 壱ノ型“不知火”!!」
「……雪の呼吸 捌ノ型“風花”!」
炎の呼吸の合間に雪の呼吸の型を入れた。
雪の呼吸には障害物など関係無い。
それすら足場にする……だから、どんな状態からでも彼のフォローが出来る。
「……皮肉だな」
「何か言ったか!」
「……別に」
「あまり俺の側を離れるな!肉壁はお前を集中狙いしている様だからな!」
「…………」
まさか……こんな風に共闘出来る日が来るとは。
「「よもやよもや」」
「ギャアアアア!!!」
「「!?」」
突然響いた断末魔と揺れ……まずい、横転する……!
「炯寿郎!?」
衝撃を和らげないと……!
「雪の呼吸 玖ノ型“銀世界”!!」
少しでも、和らげて……
ガゴッ
「ぐっ……!!」
「炯寿郎!!!」
頭に強い衝撃を受け……私は気絶してしまった。
《起きろ……》
《早く起きるんだ》
《手遅れになるぞ!》
《起きろ!!主!!》
「!!」
ハッとして目覚める。
直ぐ側に炭治郎君と伊之助君の背中があり……その向こうで、鬼と戦う兄の姿があった。
「兄……」
「破壊殺・乱式!!!」「炎の呼吸 伍ノ型“炎虎”!!!」
凄まじい技のぶつかり合い。
私が気絶している間に何が……
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
「杏寿郎、死ぬな」
土煙が晴れた時……そこには満身創痍な兄が。
「生身を削る思いで戦ったとしても、全て無駄なんだよ杏寿郎。お前が俺に喰らわせた素晴らしい斬擊も、既に完治してしまった。だが、お前はどうだ。潰れた左目。砕けた肋骨。傷ついた内臓。もう取り返しがつかない。鬼であれば瞬きする間に治る。そんなもの、鬼ならばかすり傷だ。どう足掻いても人間では鬼に勝てない」
……あの人が……死ぬ?
そんなの……駄目だ。
ゴオ
「俺は俺の責務を全うする!!ここにいる者は誰も死なせない!!」
それで貴方が死んだら意味がない……!!
俺が戻ってきた意味が!!
「素晴らしい闘気だ…それ程の傷を負いながら、その気迫、その精神力、一部の隙もない構え!やはりお前は鬼になれ杏寿郎!俺と永遠に戦い続けよう!」
そんな事はさせない!!
パキ… バキィイン!
「「「「!?」」」」
割り込む様に巨大な氷柱を出した。
「癒しの炎・蛍火」
「……え」
癒しの炎が緑の小さな光となって降り注ぐ。
そして、触れた人を癒した。
グンッ
「!」
「邪魔な…!」
バキィン
「雪の呼吸 玖ノ型“銀世界”」
「!!」
兄を引っ張って場所を入れ替え、予想通り壊した氷柱の間から十分に溜めた一撃を放つ。
「…ほう…」
「炯…「名前、覚えて……私は雫。貴方の前に立っているのは雫だ」……雫」
やっと、私を見てくれた。
そして、鬼へと構え直す。
「…雫というのか」
「阿呆……人に尋ねるなら、先ず己が名乗れ」
「それは失礼した。俺は猗窩座……一体どんな奴が邪魔したのかと思ったが…お前も強いな」
確かに私の一撃は頸を斬れずとも、両手と胸辺りを傷付けた。
それも再生を始めてるが……思い通りにはさせない。
「強者なら大歓迎だ!雫!お前も鬼になれ!」
「鬼になるくらいなら、スライムになる……それよりも、自分の体をよく見ておけ」
「?…!!」
私が傷を付けた所には、雪の結晶が触れていた……つまり、氷っている。
「これは…」
「易々と再生出来ると思うな……私の一撃一撃が、貴様を氷らせる」
「……面白い!どれだけやれるか見てやろう!」
……チッ、氷った部分を自分で壊して再生しやがった。
「破壊殺・空式!」「漆ノ型“霰”!!」
速い……けど、私ならまだついて行ける。
「破壊殺・乱式!!」「伍ノ型“水雪”!!」
「いいぞ!雫!」「うるさい!」
もっと……もっと早く動け。
「…もう少し楽しみたい所だが、時間もない」
「…………!」
そうか、もうすぐ夜明けだ。
それまで耐えれれば十分。
「術式展開」 「雪の呼吸 拾ノ型」
「破壊殺・滅式」 「一陽来復」
カラン…
狐面が割れて落ちた。
「!両目が違う……そうか、お前が!!」
「!!ぐっ…」
「予定変更だ。雫、お前はこのまま連れ帰る」
首を掴まれ、足が地面を離れる。
くそ……体が冷え切って上手く動かせ……
「弟を放して貰おう!」
「「!」」
猗窩座の腕が斬り落とされ、誰かに受け止められた。
何とか残った力で日輪刀を振るう。
「次は貰っていくぞ」
が、それは避けられ……猗窩座が背を向けて駆け出した。
ゴウ ボッ
そんな彼に炭治郎君が日輪刀を投げ、猗窩座の胸を貫く。
「逃げるな卑怯者!!逃げるなァ!!!いつだって鬼殺隊はお前らに有利な夜の闇の中で戦ってるんだ!!生身の人間がだ!!傷だって簡単には塞がらない!!失った手足が治ることもない!!逃げるな馬鹿野郎!!馬鹿野郎!!卑怯者!!お前なんかより!兄ちゃんや煉獄さんの方がずっと凄いんだ!!強いんだ!!兄ちゃんと煉獄さんは負けてない!!誰も死なせなかった!!戦い抜いた!!守り抜いた!!お前の負けだ!!兄ちゃんと煉獄さんの、勝ちだ!!」
もう殆んど力の入らない体で、炭治郎君の言葉を聞いた。
「はは……そうか……私達の勝ちか」
「!炯…雫」
「やった……勝った」
「雫!雫!!」
瞼が重い……酷く眠い……
「ああ……寒い」
「雫!!しっかりしろ!!」
「雫兄ちゃん!!」
「狐兄ちゃんしっかりしろ!!」
「大丈夫……少し……寝るだけ……」
「「雫兄ちゃん!!」」「炯寿郎!!」
そのまま……私は深い眠りに就いた。
end.