上弦との戦い編
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アレから数日。
私は蟲柱殿の屋敷ではなく、適当な宿を転々としていた。
そんなある日、炭治郎君の鎹鴉がそろそろ炭治郎君達が出ると教えてくれ、私は近くで待機していた。
「あ!雫兄ちゃん!」
「ん、本当に来た」
善逸君と伊之助君もまだ一緒らしい。
彼等は私と離れていた間の事を話ながら、何処かへと向かう。
「えーーーっ!!まだ指令来てなかったかよ!!居て良かったじゃん!しのぶさんちに!!」
「いや……十分休ませて貰ったし、兄ちゃんも居ないし、一ヵ所に固まっているより」
「あんな悲しい別れをしなくて良かっただろ!」
「いや…指令が来た時動きやすいように…あと炎柱…」
「…………炎柱?」
「バカバカバカァ!!」
炭治郎君をボカボカと叩く善逸君。
待て、今……炎柱って……
「オイ!」
「今忙しい!!」
「オイ!!オイッ!!」
「何だようるさいな!💢」
「なんだあの生き物はー!!」
叫ぶ伊之助君の前にあるのは……汽車だった。
「……汽車がどうした?」
「こいつはアレだぜ。この土地の主…この土地を統べる者。この長さ、威圧感間違いねぇ。今は眠ってるようだが油断するな!!」
「いや汽車だよ、知らねぇのかよ」
「シッ!!落ち着け!!」
「「いや お前/君 が落ち着けよ」」
「まず俺が一番に攻め込む」
汽車に攻め込むな。
今にも突進しそうな伊之助君を片手で抑える。
「この土地の守り神かもしれないだろう。それから急に攻撃するのも良くない」
「いや汽車だって言ってるじゃんか。列車わかる?乗り物なの、人を運ぶ。この田舎者が」
「え?列車?じゃあ鴉が言ってたのがこれか?」
「鴉が?」
「……伊之助君、落ち着かないなら落とすぞ」
「∑!?」
視線を向けると、制服を来た人達が近付いてくるのが見えた。
「三人共、移動するぞ……注目を集め過ぎた。警官でも呼ばれれば面倒だ」
「た、確かに!行くぞ二人共!!」
私と善逸君は炭治郎君達を引っ張り、出来るだけ人気が無い所から移動する。
「政府公認の組織じゃないからな俺たち鬼殺隊。堂々と刀持って歩けないんだよホントは。鬼がどうのこうの言っても却々信じてもらえんし、混乱するだけだろ」
「一生懸命頑張ってるのに………」
「まぁ仕方ねぇよ。とりあえず刀は背中に隠そう。兄ちゃんはどうしてんの?」
「私は隠し持ってる」
「流石」
というか、私の巾着袋が特殊だからそこに入れてるんだけどな。
一方、伊之助が刀に布を巻いて自信満々に立つが……
「丸見えだよ服着ろ馬鹿」
まぁ、一発で分かってしまう。
取り敢えず応急処置で布をマントの様に着せて隠す事にした。
「“無限列車”っていうのに乗れば煉獄さんと会えるはずなんだけど。すでに煉獄さん乗り込んで……ちょっと待って、雫兄ちゃんどこ行くの?」
離れようとしたら炭治郎君に服を掴まれてしまう。
「……君達だけで行って来い」
「∑え、駄目駄目!俺だけじゃこの田舎者二人抑えられないからね!」
「折角合流出来たのに……」
「いや……本当にあの人は……」
「炭治郎、ちゃんと押さえててね!俺切符買ってくるから絶対に逃がさないでよ」
「わかった!ありがとう」
「刀隠してると歩きにくいな…」
「待て、善逸君……私のは要らないからな」
「うおおおお!!腹の中だ!!主の腹の中だ!うぉおお!!戦いの始まりだ!!」
「うるせーよ!💢」
「……………………」
結局私まで乗り込まされた。
降りたいが……腕を炭治郎君と善逸君に掴まれている。
「柱だっけ?その煉獄さん。顔とかちゃんとわかるのか?」
「うん。派手な髪の人だったし、匂いも覚えているから。それに雫兄ちゃんのお兄「違う。私には兄弟は居ない」;;」
言われる前に遮った。
……私と俺は違うんだ。
「えっ、兄ちゃんの…「うまい!」」
その時、デカイ声に善逸君の言葉が遮られる。
「うまい!うまい!うまい!」
「!?」
「…………」
「うまい!うまい!うまい!」
そこには、駅弁を爆食いしている炎柱殿が居た。
「あの人が炎柱」
「うまい!うまい!」
「うん…」
「ただの食いしん坊じゃなくて?」
「うん…」
炭治郎君が私に視線を向けてくるが、関わりたくないのでそっぽ向く。
「うまい!」
「あの…すみません」
「うまい!」
「れ、煉獄さん」
「うまい!」
「あ、もうそれは、すごくわかりました」
「…………」
相変わらず話の聞かない人だ。
私は通路を挟んで、炎柱殿とは逆の席に座った。
そんな私の正面に伊之助君と善逸君が座る。
そして、駅弁を食べ終わった所で炭治郎君が炎柱殿の隣に座った。
どうやら炭治郎君は日の呼吸というものと竈門家に伝わるヒノカミ神楽について聞きたかったらしい。
「うむ!そういうことか!だが知らん!『ヒノカミ神楽』という言葉も初耳だ!君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたいが、この話はこれで終いだな!!」
「えっ!?ちょっともう少し…」ギョギョッ
「俺の継子になるといい。面倒を見てやろう!」
「待ってください!そしてどご見てるんですか!」
「炎の呼吸は歴史が古い!」
窓の外をぼんやりと見る。
列車……久し振りだな……向こうの世界でなら馬車に乗っていたが……。
「炎と水の剣士はどの時代でも必ず柱に入っていた。炎・水・風・岩・雷が基本の呼吸だ。他の呼吸はそれらから枝分かれしてできたもの。霞は風から派生している!!雪は知らんがな!」
……一応水だ……色んな呼吸混ざってるけど。
「溝口少年、君の刀は何色だ!」
「∑!?俺は竈門ですよ!色は黒です!」
「黒刀な!それはきついな!」ワハハ
「きついんですかね」
「黒刀の剣士が柱になったのを見たことがない!さらにはどの系統を極めればいいのかもわからないと聞く!」
因みに私のは淡い水色だったが、シズ先生の剣が混じったら白になった。
ガタン
「おっ、動き出した」
「……ちゃんと座ってないと危ないぞ」
「俺の所で鍛えてあげよう、もう安心だ!」
ガタンガタン
「うおおおおお!!すげぇすげぇ速ぇええ!!」
窓から顔を出す伊之助君の腕を掴む。
「危ない馬鹿この!」
「俺外に出て走るから!!どっちが速いか競争する!!」
「馬鹿にも程があるだろ!!💢」
「今外に出たら死ぬぞ……伊之助君、菓子食べるか?」
「食う!」
顔を引っ込めた伊之助君の口に菓子を放り込み、善逸君に渡した。
「危険だぞ!いつ鬼が出てくるかわからないんだ!」
「え?」
手を伸ばして炭治郎君に菓子を分けていた善逸君が固まる。
「嘘でしょ!鬼出るんですか!この汽車!」
「出る!」キリッ
「出んのかい嫌ァーーーッ!!鬼の所に移動してるんじゃなく、ここに出るの嫌ァーーーッ!俺降りる!」
「短期間のうちにこの汽車で四十人以上の人が行方不明となっている!数名の剣士を送り込んだが、全員消息を絶った!だから柱である俺が来た!」
「はァーーッなるほどね!!降ります!!」
「……無理だな」
「兄ちゃぁあん!!」
「おっと……はいはい」
抱き付いてきた善逸君の頭を撫でた。
「……言っただろ?私が近くに居る時は護ると」
「マジで頼むからね!」
「ああ……」
「自分の身を犠牲にしなければ守れなかった者がどうやって守るというんだ!」
カチン
……駄目だ、落ち着け。
一々返すから余計に苛つくんだ。
「毎度毎度任務の度に怪我をしては胡蝶の世話になっていただろう!そんな体たらくでどうすると!」
「…雫兄ちゃんを馬鹿にしないでください!」
「「!」」
「いくらお兄さんでも許しませんよ!」
「兄弟は居ないと言った筈だぞ、炭治郎君」
「…確かに兄弟の役目を果たせていなかったからな」
「そもそも君は誰の事を言っている?……私は雫だ」
ふと、涙目の善逸君と目が合う。
……駄目だな、私は。
年下を怖がらせてしまうなんて……。
「切符…拝見…致します…」
気付くと、車掌さんが立っていた。
「??何ですか?」
「車掌さんが切符を確認して、切り込みを入れてくれるんだ!」
素直に切符を渡した時……嫌な予感がした。
パチン
「拝見しました……」
「炯寿郎?大丈夫か?」
目の前に父の顔が現れ、思わず固まる。
「やはり、炯寿郎には炎の呼吸は合わんか…炯寿郎、お前が剣士を目指すなら、幾つかの育手に相談してみるが?」
「……はい、お願いします。父上」
「父上!次は俺の番です!」
「もう回復したのか、杏寿郎」
私は……そうだ、俺は兄上と一緒に父上に稽古をつけて貰っていたんだ。
兄上が稽古の間は、俺が千寿郎の相手をしないと……。
「小兄上!」
「よしよし、千寿」
千寿はまだ幼く、俺の名前を上手く言えない。
だから、小兄上と呼んでいる。
俺と兄上は昔から競い合っていた。
父上の生き写しの様な兄上と、母上似の俺とでは、才能に差がある。
それでも、俺は……
「炯寿郎」
「!母上、どうされました?」
「すみませんが、手伝って貰えませんか?」
母上の頼みを快諾し、父上に一声掛けてから母上について行った。
「炯寿郎が家を護ってくれれば、俺も安心して剣士になれるぞ!」
……この頃からそんな事を言う兄上が……少し恨めしかった。
それから俺は父上の紹介で、他の育手の元を渡る。
暫くして、母上は病に伏したと聞き、慌てて戻った。
父上が沢山の医者に掛け合ったらしいが、一向によくならない。
ある日、母上が兄上に「強い者は弱い者を護る義務がある」と話したらしい。
「……母上は、俺には強い者の話をしないのですね」
「…炯寿郎、貴方にはあの人や兄弟たちを支えて欲しいのです」
「……父上だけです。俺を剣士にしようとしてくれるのは」
幾許しかない母上に言う言葉ではないのは、分かっていた。
「……母上。母上が兄上に言った言葉は、これから先…兄上の心を支えるでしょう。ですが、兄上を誰にも頼らせない束縛の言葉にもなりましょう」
「…その時は、貴方が支えてあげなさい」
「兄上と俺の関係を知っているでしょう?あの兄上が俺を頼る事など無いでしょうね」
そんな会話をして直ぐ、母上は逝く。
それを切欠に父上は酒に逃げ、俺を剣士として認めてくれる人は居なくなった。
とはいえ、常に悲しみの気配を纏う父上を責めれず、母上の面影を強く残す俺に縋る父上を見捨てられずにいる。
それから俺はまた色んな育手を巡った。
“雪の呼吸”を完成させた事は父上や千寿には報告していない。
兄上は……
「父上ばかりでなく、千寿郎の相手もしてやってくれ。弟にばかり苦労を掛けるな」
会う度に俺に苦言を言ってくる。
誰も俺を認めない。
きっと、俺は……誰かを、出来れば兄上や千寿、若しくは上の階級の人を庇って死なないと、認めて貰えないんだ。
『それは違うよ』
「……え?」
『忘れたの?私たちが君を否定した?』
振り返った先には、不思議な服の女性が居た。
『此処は、君の本当の居場所じゃないよ』
「俺、は……」
『ごめんね。私が「どうして強くなりたいの?」なんて聞いたから、君は心を閉ざしてしまった』
その言葉を聞いて、全て思い出した。
「それは違う……貴女は私の事を案じて言ってくれた……私が弱かっただけの話だ」
女性は少し困った様に微笑む。
『もう大丈夫だね?』
「ああ……さて、どうやって脱出するか」
そう呟くと、女性は自分の首にトントンと手刀を軽く叩いた。
それに自分の手を見ると、いつの間にか日輪刀が握られている。
成る程……悪趣味な。
「……さよなら、もう一度話せて良かった……シズ先生」
『うん』
ザシュ