出会いと再会編
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「彼を放せ……雪の呼吸 漆ノ型“霰”」
「ギャウ」
「!!」
伊之助君を掴む腕を斬り落とし、彼を回収した。
そして、木に寄り掛からせる様に下ろす。
「……アレは君では無理だ」
「狐…兄ちゃ…」
「見ていろ、伊之助君」
癒しの炎を彼に使い、鬼に向き直った。
鬼は私へと迫ってくる。
「雪の呼吸 参ノ型“牡丹雪”」
その頸を斬り落とした。
「つ、強いじゃねぇか狐兄ちゃん!」
「狐兄ちゃん……?」
「あの十二鬼月にお前は勝った!そのお前に俺が勝「アレは十二鬼月じゃないぞ?」し、知ってたわ!!十二鬼月とか言ってたのは炭治郎だからな!!」
「というか落ち着け……癒しの炎は傷だけで体力までは回復しな……誰だ」
「!?」
振り返りながら尋ねると……木々の間から、一人の青年が出て来る。
『炯寿郎と申します。本日より宜しくお願いします』
『あ、うん…俺は冨岡義勇。よろしくね、炯寿郎。あのさ』
『?』
『炯寿郎って男の子なの?』
『お と こです!正真正銘の!』
『……炯』
『……冨岡殿、貴方もそう呼んでいましたっけ?』
『そう呼びたい……俺は義勇でいい』
『呼べる訳ないでしょう』
水柱の片割れ……冨岡義勇。
彼は驚いた様に私を見ていた。
「(炯?いや、髪の色が違う。だが、アレは確かに炯の)……お前は誰だ」
「……一般人です」
「狐兄ちゃん無視するな!!俺と戦え!!」
「……だから、今の君では無理だし、時間も無い」
ぽん
「?」
水柱殿は私の肩を叩いたかと思うと……
「「!?」」
気付いたら伊之助君が縛られて吊られている。
……驚いたな。
「!炭治郎君……!」
「あ、おい!」
「…………」
私は伊之助君を放置する事にし、炭治郎君の元に向かう為に駆け出した。
「炭治郎君……!禰豆子嬢!」
私が駆け付けた時、あの坊の頸が飛んでいて、禰豆子嬢が宙吊りに、そして炭治郎君が倒れていく所だった。
「っと」
落ちてくる禰豆子嬢を受け止め、炭治郎君の側に下ろす。
彼女は眠っているらしい。
「禰豆子、良かっ…」
「…………」
頸がない状態で立つ坊に、私は構えた。
「僕に勝ったと思ったの?可哀想に、哀れな妄想して幸せだった?僕は自分の糸で頸を切ったんだよ。お前に頸を斬られるより先に」
「……随分小賢しいな」
「黙れ。もういい。お前も妹もそいつも殺してやる。こんなに腹が立ったのは久しぶりだよ」
坊は頸を着ける。
……その方が私も斬りやすい。
「不快だ、本当に不快だ。前に同じくらい腹が立ったけど、ずっと昔だよ。覚えてないほど。そもそも何でお前は燃えてないのかな。僕と僕の糸だけ燃えたよね。妹の力なのか知らないが苛々させてくれてありがとう」
燃えた……?
禰豆子嬢が血鬼術に目覚めたのか?
「何の未練もなくお前たちを刻めるよ」
「……刻まれるのはどちらだろうな」
炭治郎君はもう戦えない。
だから……私が殺る。
「血鬼術 殺目篭」「雪の呼吸 漆ノ型“淡雪”」
糸が迫るが、それを全て受け流しつつ斬った事で消した。
「チッ…邪魔をするな!」
「……!」
更に構えようとした時……
「俺が来るまでよく堪えた。後は任せろ」
水柱殿が私の前に現れる。
一瞬硬直するものの、彼に任せる事にして炭治郎君達の治癒に回った。
「血鬼術 刻糸輪転」
糸が迫ってくる。
「全集中・水の呼吸 拾壱ノ型“凪”」
……初めて見る型だった。
水の呼吸は拾ノ型まで……恐らく、水柱殿が独自で作った型。
「…………チッ」
「……?」
そのまま水柱殿は坊の頸を斬る。
それを見て禰豆子嬢を抱えている炭治郎君を抱き寄せた。
「…………?」
ふと、視線を上げると……崩れ始めた体が、此方に手を伸ばした状態で近付いてくる。
その体は、私達の前で倒れた。
……酷く悲しい気配がする。
「…………」
炭治郎君を放し、思わず抱き締めれば……炭治郎君もその背に優しく触れた。
「でも…山ほど人を殺した僕は…地獄に行くよね……父さんと母さんと…同じところへは…行けないよね…」
「……きっと待っている。きっと同じ所へ行ってくれる」
そのまま崩れて消える。
「!」
私の手から坊の服が抜かれたかと思えば、水柱殿の足の下に行っていた。
「人を喰った鬼に情けをかけるな。子供の姿をしていても関係ない。何十年何百年生きている醜い化け物だ」
……そんなの分かっている。
それでも……
「殺された人たちの無念を晴らすため、これ以上被害者を出さないため…勿論俺は容赦なく鬼の頸に刃を振るいます。だけど、鬼であることに苦しみ、自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない。鬼は人間だったんだから。俺と同じ人間だったんだから。足をどけてください。醜い化け物なんかじゃない。鬼は虚しい生き物だ。悲しい生き物だ」
炭治郎君が言ってくれた。
それで私も十分だ。
「お前は……」
と、炭治郎君と禰豆子嬢の顔を見た水柱殿の目が見開かれる。
知り合いか……
「!炭治郎君!禰豆子嬢!」
「!?」
近付く気配と殺気に二人を抱き締めた。
ガキュイン
直後、迫った刃を水柱殿が弾く。
「あら?どうして邪魔するんです、冨岡さん」
「……」
『……俺は体がどうしても細いから、炎の呼吸の型が弱くなる』
『それでも頸は斬れるのでしょう?』
『確かに斬れるが、確実じゃない……だから、新しい呼吸を作った。君もそうすればいい』
『え?』
『やり方なんて人其々……なんなら毒でも作ればいい。要は、鬼を倒せればいいのだから』
『いい加減無茶するの止めて下さい。こんな怪我して…』
『…………』
『……知っていますよ。これは他の隊士を庇ったものだって。それで貴方が傷ついたら意味ないでしょう?』
蟲柱……胡蝶しのぶ。
「鬼とは仲良くできないって言ってたくせに何なんでしょうか。そんなだからみんなに嫌われるんですよ」
よりによって……今、此処で会うとは。
「さぁ冨岡さん、どいてくださいね」
「俺は嫌われてない」
……そこか?
「あぁそれ…すみません、嫌われている自覚が無かったんですね。余計なことを言ってしまって申し訳ないです」
蟲柱殿も煽ってくれるな。
「坊やたち」
「∑はいっ!」
「……何か」
「……」
そして水柱殿は放置か。
「坊やたちが庇っているのは鬼ですよ。危ないですから離れてください」
蟲柱殿はヒソヒソとそう言ってくる。
「ちっ…違います!いや違わないけど…あの!妹なんです!俺の妹で、それで!」
「まぁそうなのですか、可哀想に。では──…」
「っ!?兄ちゃん…?」
続く言葉を察し、炭治郎君と禰豆子嬢を担ぎ上げた。
「苦しまないよう、優しい毒で殺してあげましょうね」
「……断る」
「「!」」
氷を足元に発生させ、その勢いで木の上へ。
驚きに固まる彼等を一瞥し、そのまま逃亡する。
「に、兄ちゃ」
「今は逃げる……あの
「っ…辞めることに…なるのかな」
「……断言は出来ない……!!」
同じく木の上を移動して迫る気配に、一度下に降りた。
そんな俺を追い掛けて来たのは、蟲柱と同じ蝶の髪飾りを付けた少女
『……これでどうだ?』
『まぁ、素敵』
『この子は横に結うのが可愛いと思ったんだが……』
『ええ、可愛いです。ありがとうございます、炯寿郎さん』
『どう致しまして……可愛いぞ、カナヲ。折角だから、微笑んでいろ。その方が素敵だ』
『……』コクン
『ああ、いい表情だ』
……栗花落カナヲ。
……彼女も鬼殺隊に入っていたのか。
「……炭治郎君。悪いが揺れるぞ」
「え」
それから彼女との鬼ごっこが始まる。
「うわぁ!」
「え!?」
隠の前に出た時……
「伝令!!伝令!!カァァァ!」
「「!」」
聞こえてきた鎹鴉の声に動きを止めた。
「炭治郎・禰豆子・雫、三名ヲ拘束!本部ヘ連レ帰ルベシ!!」
私達を拘束……?
「炭治郎・雫及ビ鬼ノ禰豆子!拘束シ本部ヘ連レ帰レ!!炭治郎額ニ傷アリ!雫狐ノ面ヲ着ケテイル!竹ヲ噛ンダ鬼禰豆子!!」
私は彼女の動向を警戒したまま、二人を下ろす。
炭治郎君は気絶しており、禰豆子嬢が目覚めていた。
「……禰豆子嬢?」
禰豆子嬢が何処かに向かっていく為、それについて行くと……転がっている箱がある。
禰豆子嬢は小さくなって箱の中に入った。
それを見届け、炭治郎君に癒しの炎を使う。
「今の何?」
「……癒しの炎」
「そう」
「えっと、拘束させて貰います?」
カナヲ嬢に続いて隠が私達に近付いてくる。
それに私は手を背中にやった。
「?」
「……拘束しないのか?」
「あ、はい。失礼……」
「あ、ちょっと待って!」
「「!」」
そこに善逸君が駆け込んでくる。
「これ!これ!」
「私の羽織り……」
「そう!これが防いでくれたから、刺さらなかったって!」
「…………」
……そう言えば、この羽織り……向こうの世界で一度預けたんだっけ。
その時に何かしたのか?
「ありがとうな」
「!」
善逸君の頭を撫で、羽織りを着た。
「じゃあ」
「ああ」
そして、今度こそ拘束される。
……本当は逃げようかとも思ったが、これ以上炭治郎君の立場を悪くする訳にはいかないからな。
それから……私達は鬼殺隊本部へと運ばれた。
『……お疲れ様です』
『!ああ、炯寿郎さん』
『炯寿郎さんもお疲れ様です』
『ありがとうございます……あの、良かったらどうぞ』
『わぁ、お菓子ですか?』
『はい。最近出来た店のを真似て……みました』
『いいんですか?』
『はい……俺たちは皆さんのお陰で、戦えるんですから』
『『炯寿郎さん…!』』
『沢山迷惑掛けていますから……その詫びも兼ねて』
……また隠に迷惑を掛けてしまったな。
それに……何か疲れた。
end.