出会いと再会編
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それから一応猪頭を回収し、犠牲者の埋葬をする。
猪頭の顔は美少年だった。
「勝負勝負ゥ!!」
「うわっ起きたァ!!」
暫くして目覚めた猪少年は私に迫って来たが、片手で抑える。
「……そもそも鬼殺隊の隊員同士の私闘は禁じられている。私は鬼殺隊ではないから、手を出しても問題ないが……善逸君に手を出したのは隊律違反だ」
「ならお前が戦え狐!!」
「片手で抑えれる様な奴の相手をする程暇ではない」
「ムキィイ!俺は山の主だぞ!」
「山の主とやらは弱いんだな」
「俺は弱くねぇ!強い!!」
「片手で抑えられているのにか」
「煩い!」
「煩いのは君だ」
「!」
口の中に菓子を放り込んで黙らせた。
「少し休憩したら山を下りるぞ……君達も食べるか?」
「「「「はーい」」」」
「おい狐!名前なんだ!?」
「雫」
「俺は嘴平伊之助だ!」
「そうか。もう一つやるから黙れ」
「むぐ」
もう一つ放り込み、埋葬した彼等に手を合わせる。
……鬼が居なければ、彼等が犠牲になる事もなかったのに。
「「……」」
「そろそろ下りれるか?」
「あ、うん」
「じゃあ、行くぞ」
そして、私達は山を下りる事に。
「正一君は強いんだ!!正一君に俺を守ってもらうんだ!」
少年達と別れるという時に、善逸君が駄々を捏ねた。
「善逸君、彼等は漸く再会出来た……それなのに、もうバラバラにするのか?」
「うぅ…だってぇ」
「……私が近くに居る時は護ってやる」
「本当?約束だよ?本当に守ってね」
「はいはい」
何とか宥めて、彼等に向き直る。
「本当にありがとうございました。家までは自分たちで帰れます」
「ああ……渡した香り袋は常に持ち歩く様に。それと、匂いが消える前に藤の花の家紋を掲げた家から新しいのを貰え」
「はい!」
「すまないが、送ってやってくれ」
「はい、任せてください」
彼等を助けた青年に任せ、そのまま別れた。
「鎹鴉……急ぎの任務が無ければ藤の家に案内してくれ」
「ワカッタ!」
「(何で兄ちゃんには素直なんだ)」
「サァ、ツイテ来イコノ私二!!カァァ」
私の腕に留まっていた鎹鴉が飛び出す。
「そうか伊之助も山育ちなんだな」
「お前と一緒にすんなよ。俺には親も兄弟もいねぇぞ。他の生き物との力比べだけが、俺の唯一の楽しみだ!!」
「そうか…そうか…」
伊之助君の話に因ると、彼は鬼殺隊の剣士と力比べし、刀を奪った上で最終選別や鬼の事を聞き出したらしい。
……誰だ、奪われるような隊員は。
というか、育手なしで呼吸を習得したのか。
……俺とは違って、才能があるんだな。
「……?」
やがて、藤の家へと辿り着いた。
此処は……ひさ殿の家か?
「カァアーーーーッ!休息!!休息!!休息セヨ!!」
「えっ?休んでいいのか?今まで休む間もなく移動してたけど…」
「ケケケッ」
「ケケケッて…」
その時、門が開く。
「はい…」
「あっ、夜分に申し訳ありません!」
「お化けっ…お化けだ!」
「こらっ!!」
やはり、ひさ殿だった。
「鬼狩り様でございますね。どうぞ…」
「じゃあ、ゆっくり休めよ」
「「えっ」」
「?」
踵を返したら、炭治郎君と善逸君に羽織を掴まれる。
「待って、雫兄ちゃんどこに行くの?」
「藤の家は鬼殺隊に無償で尽くしてくれる所……私は鬼殺隊ではないからな」
「えぇえぇぇええ!兄ちゃんも泊まろうよォ!」
「だが、一般人はただの……」
「お連れ様も良ければどうぞ」
「…………出来れば別室で頼む」
「畏まりました…」
別室を貸して貰い、私も藤の家に泊まる事になった。
食事は一緒に食べたいという事で、同じ部屋で取る事に。
伊之助君は何でも手で食べ、私のにも手を出してくる。
まぁ、私は……
「丁度いい。私はもう食べれないから、君が食べろ」
「ムキーーーッ」
少食だから都合が良かった。
「雫兄ちゃんは少食だよな…」
「直ぐに腹一杯になるんでな」
「だから細いんだよ」
「気にしてる事を言うな」
「ごめんなさい」
食事を終えて一息吐いた頃。
「……炭治郎、誰も聞かないから俺が聞くけどさ。鬼を連れているのはどういうことなんだ」
「!!善逸……わかっててかばってくれたんだな………」
善逸君が炭治郎君に尋ねる。
「善逸は本当にいい奴だな。ありがとう」
「おまっ!そんな褒めても仕方ねぇぞ!!うふふっ」
「「∑」」
照れたのか、善逸君は勢い良く畳に倒れ込んだ。
「俺は鼻が効くんだ。最初からわかってたよ。善逸が優しいのも、強いのも」
「いや、強くはねぇよ。ふざけんなよ。雫兄ちゃんか居なければ瞬殺だぞ」
「…………;;」
「…………」
炭治郎君が困った様に私を見てくる。
それに視線を逸らした時……
カタカタ
箱から音がした。
「うわっうわっ、えっ?出てこようとしてる!!出てこようとしてる!!」
「大丈夫だ」
「何が大丈夫なの!?ねぇ!?」
「しーーーーっ。夜中なんだぞ、善逸……!」
騒いでいる間にも、箱の扉が開く。
「キャーーーーーーッ!鍵かかってないんかい!!」
「しーーーっ;;」
「まままま守って!!俺を守って!!」
「うわ」
善逸君が私に抱き付いて来た。
そして……
ぺた ひょこ
彼女が出て来る。
「へ?」
「禰豆子」
禰豆子嬢は箱から出ると、本来の大きさになった。
「禰豆子は俺の………」
「炭治郎」
善逸君が攻撃的な声を出す。
「お前……いいご身分だな………!!!」
「「えっ?」」
「こんな可愛い女の子連れてたのか…こんな可愛い女の子や兄ちゃんを連れて毎日、うきうきうきうき旅してたんだな…俺の流した血を返せよ!!!」
叫ぶ善逸君に思わず引いた。
「俺は!!俺はな!!お前が毎日アハハのウフフで女の子とイチャつくために頑張ったわけじゃない!!そんなことのために俺は変な猪に殴られ蹴られたのか!?」
「善逸、落ち着け。どうしたんだ、急に…」
「鬼殺隊はなぁ!!お遊び気分で入る所じゃねぇ!!お前のような奴は粛清だよ即粛清!!鬼殺隊を!!!舐めるんじゃねぇぇぇ!」
叫びながら炭治郎君に日輪刀を向ける善逸君。
取り敢えず、善逸君を後ろから抱えて止める。
「離して!!」
「落ち着け、善逸君……禰豆子嬢は炭治郎君の妹だ」
「………妹?」
「妹。彼女は竈門禰豆子」
そう説明すると、善逸君の体から力が抜けた。
「そっか、妹なのかぁ」
それから善逸君は炭治郎君にへこへこし、禰豆子嬢にはデレデレする。
……分かりやすいな。
「ほら、君達。もう寝ろ」
「「はーい」」
「むー」
布団に入ったのを確認し、炭治郎君と善逸君の頭を撫でた。
伊之助君は既に寝ている。
「♪──目を閉じて 思い出す……」
静かに歌い出せば、彼等も眠りに就いた。
それにもう一度頭を撫で、別に用意して貰った部屋に移る。
「…………」
「む!」
「禰豆子嬢?」
その部屋で持ってきた小説を読んでいたら、禰豆子嬢がやって来てポンポンと敷かれた布団を叩いた。
「……寝ろと?」
「むぅ!」
「分かった分かった」
引っ張られ、布団の中に入る。
すると、彼女まで潜り込んできた。
「……全く」
翌朝。
陽に当たらない様に注意しつつ、彼女を抱えて炭治郎君達の部屋に行く。
「入るぞ」
「うん……やっぱり、雫兄ちゃんの部屋に行ってたんだ」
「……ああ……と、こら」
「むぅ!」
禰豆子嬢が私の狐面を取ってしまう。
「悪戯っ子め……」
「……え?兄ちゃん…」
「ん?」
「兄ちゃんは姉ちゃんだった?」
「何言ってるんだ?善逸」
「兄ちゃんは兄ちゃんだ」
「そ、そうなんだ」
「なんだ、狐。女みたいな顔してんじゃねぇか」
「君に言われたくない」
「「確かに」」
「なんだと!?」
そんな風に短い間とはいえ、平穏に過ごしていた。
暫くして、緊急の指令が入る。
一刻も早く那田蜘蛛山へ向かえとの事だ。
「では行きます!お世話になりました」
外まで見送りに来てくれたひさ殿に炭治郎君が勢い良く、私と善逸君は普通に会釈した。
「では切り火を…」
カッカッ
「ありがとうございます!」
「何すんだババア!!」
突然暴れ出した伊之助君をまた片手で抑える。
ひさ殿は炭治郎君と善逸君が庇っていた。
「馬鹿じゃないの!?“切り火”だよ!お清めしてくれてんの!!危険な仕事だから!!」
「伊之助君……いい加減にしろ」
「「「∑」」」
本気の殺気で威圧すれば、伊之助は静かになる。
「どのような時でも誇り高く生きて下さいませ。ご武運を…」
そう言って頭を下げるひさ殿に見送られ、私達は駆け出した。
私、炭治郎君、善逸君、伊之助君の順で那田蜘蛛山を目指す。
「誇り高く?ご武運?どういう意味だ?」
途中、伊之助君がそんな事を問い掛けてきた。
「そうだな、改めて聞かれると難しいな…誇り高く………自分の立場をきちんと理解して、その立場であることが恥ずかしくないように正しく振る舞うこと、かな。それからお婆さんは俺たちの無事を祈ってくれてるんだよ」
伊之助君の問い掛けに律儀に答える炭治郎君。
「その立場って何だ?恥ずかしくないってどういうことだ?」
「それは…「正しい振る舞いって具体的にどうするんだ?なんでババアが俺たちの無事祈るんだよ。なにも関係ないババアなのに何でだよ」……「ババアは立場を理解してねぇだろ」」
……野暮だなぁ。
「∑」
「ん?」
「∑あっ加速した!」
嫌になったのか……炭治郎君が加速し、私の隣を抜いていく。
それに負けじと伊之助君が加速した為、話は有耶無耶となった。
この後……山での戦いの後に、私は望んでいない再会をする事になるとは、予想していなかった。
end.