出会いと再会編
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グイ ドゴッ
「!」「!!」
その時、風柱殿の手によって私は引っ張られ、炭治郎君は中庭に押し付けて平伏させられた。
見れば、柱達は既に平伏済である。
「お館様におかれましても、ご壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます」
「ありがとう、実弥」
お館様はご息女の手を借りて座りつつ、微笑んで風柱殿に返した。
「畏れながら、柱合会議の前にこの竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士と炯寿郎について、ご説明いただきたく存じますがよろしいでしょうか」
……炭治郎君、失礼な事を考えている気がする。
「……雫だって言ってるだろ」
呟けば、風柱殿に黙る様に視線を向けられた。
「そうだね、驚かせてしまってすまなかった。炭治郎と禰豆子、雫のことは私が容認していた。そして皆にも認めてほしいと思っている」
「「「「「「!!」」」」」」
やはり……全て知っていたんだな。
「嗚呼…たとえお館様の願いであっても、炯寿郎のこと以外私は承知しかねる…」
「雫だって……」
「俺も炯寿郎以外派手に反対する。鬼を連れた鬼殺隊員など認められない」
「だから……雫」
「私は全てお館様の望むまま従います」
「僕はどちらでも…すぐに忘れるので…」
「……」
いい加減、私の事を炯寿郎と呼ぶのは止めて欲しい……。
「信用しない信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ」
「心より尊敬するお館様であるが理解できないお考えだ!!全力で反対する!!」
「鬼を殲滅してこその鬼殺隊。竈門・冨岡の両名の処罰を願います」
「では、手紙を」
「はい」
お館様の右側に控えているご息女が手紙らしい物を取り出した。
「こちらの手紙は元柱 である鱗滝左近次様から頂いたものです。一部抜粋して読み上げます。〝───炭治郎が鬼の妹と共にあることをどうか御許しください。禰豆子は強靭な精神力で人としての理性を保っています。飢餓状態であっても人を喰わず、そのまま二年以上の歳月が経過致しました。俄には信じ難い状況ですが紛れもない事実です。もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び───…鱗滝左近次、錆兎、真菰、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します〟」
その言葉に、二人の水柱を見詰める炭治郎君。
そして、涙が溢れ落ちる。
「……切腹するから何だと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ。何の保証にもなりはしません」
「不死川の言う通りです!人を喰い殺せば取り返しがつかない!!殺された人は戻らない!」
殺された人は戻らない……ね。
「……鬼殺隊に貢献した竈門兄妹も水柱殿の命も戻らないがな」
「む、炯寿郎は黙っていろ!」
「雫だと言っている。私は失う危険の無い者よりも、目の前に居る炭治郎君達の命を優先する」
「失う危険が無い?よもや、どういう意味かわかっているのか!」
「分かっている。少なくとも君よりは……禰豆子嬢が人を襲わないのは私自身が今まで見てきてよく分かっている。人を喰う所か、彼女は自分が傷ついてでも守ろうとした。人を襲ったとしても、私が止める。炭治郎君が止める」
「お前には無理だ!」
「…………」
「…兄弟喧嘩はやめろォ」
「兄弟…?」
「違う、私は煉獄炯寿郎じゃない。私は雫だ。兄弟じゃない」
そう言い、炎柱から顔を背けた。
「…確かに実弥と杏寿郎の言う通りだね。人を襲わないという保証ができない。証明ができない。ただ、人を襲うということもまた証明ができない」
「!!」
「禰豆子が二年以上もの間、人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子のために五人の者の命が懸けられている。これを否定するためには、否定する側もそれ以上のものを差し出さなければならない」
「……っ!」
「……むう」
……お館様の言う事を聞くのはまだいいが……私の言葉だとあんなに食い下がるのは気に入らない。
「それに炭治郎と雫は鬼舞辻と遭遇している」
「!?」
「そんな、まさか…柱 ですら誰も接触したことが無いというのに…!!こいつ等が!?どんな姿だった!?能力は!?場所はどこだ!?」
「戦ったの?」
「鬼舞辻は何をしていた!?根城は突き止めたのか!?」
「「……」」
「おい答えろ!!」
「答える義務はありませんから」
炭治郎の髪を掴んでいる手を放させながら答える。
「義務ならあるだろ!」
「私は鬼殺隊の剣士ではないので」
「炯寿郎……」
「しつこい」
その時、お館様が静かにと指示を出し、皆がピタと静かになった。
……あ、恋柱殿が体勢崩して二人の水柱殿に支えられてる。
「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らくは禰豆子にも」
「「……」」
「鬼舞辻にとって予想外の何か が起きているのだと思う。雫なんて、生け捕りにするように命じられている様だ。わかってくれるかな?」
「……」
「……」
……此れで納得してくれるといいんだが。
「わかりませんお館様!人間ならば生かしておいてもいいが、鬼は駄目です承知できない!」
ザシュ
「「!?」」
風柱殿が自分の腕を傷付けた。
「お館様…!!証明しますよ俺が!鬼という物の醜さを!!」
「実弥…」
「オイ鬼!!飯の時間だぞ喰らいつけ!!」
「「!!」」
そして、風柱殿は自分の血を箱に落とす。
まずい……風柱殿は私と同じ特殊効果のある稀血……!
「不死川、日なたでは駄目だ。日陰に行かねば鬼は出て来ない」
「お館様。失礼、仕る」
風柱殿が箱を持って屋敷の中に。
そして、箱に向けて刀を向けた。
「禰豆子ォ!!」「禰豆子嬢!!」
「やめろーーーっ!!!」「止めっ」
ズン ガシッ
「かっ…」「放せ!!」
炭治郎君が蛇柱に抑えられ、私をよりによって炎柱が掴んでくる。
その間に、風柱殿は三度箱を貫いた。
「…っ…っ」
「…………っ」
「出て来い鬼ィィ!お前の大好きな人間の血だァ!!」
バキャ
箱の蓋が壊され……
「……」
禰豆子嬢が出てくる。
「フゥフゥフゥフゥフゥフゥフゥ」
出てきた禰豆子嬢が血が流れる腕を凝視した。
「伊黒さん、強く押さえすぎです。少し弛めてください」
「動こうとするから押さえているだけだが?」
「…竈門君、肺を圧迫されている状態で呼吸を使うと、血管が破裂しますよ」
「血管が破裂!!いいな響き派手で!!よし行け破裂しろ!」
「可哀想に…何と弱く哀れな子供。南無阿弥陀仏…」
「グ、ウ、ウゥ」
「っ……好き放題言ってくれる……自分達の大事な人が同じ状況でも君達は落ち着けるのか……!!」
「……よもや、それをお前が言うか」
禰豆子嬢……耐えてくれ……!
「竈門君!」
「ガ、ァ、ア!」
その時、炭治郎君が拘束している縄を裂いた。
直後、蛇柱殿を水柱殿(冨岡)が、炎柱殿を水柱殿(鱗滝)が抑えてくれる。
「ゲホ、ゲホッ、ゲホッ、禰豆子!!」
「!!」
縁側に駆け寄る炭治郎君の隣に立った。
禰豆子嬢は私達に一度視線を向け……
プイッ
「フン、フン」
顔ごと腕から視線を逸らす。
「どうしたのかな?」
「鬼の女の子はそっぽ向きました」
「不死川様に三度刺されていましたが、目の前に血塗れの腕を突き出されても我慢して」
「噛まなかったです」
「ではこれで、禰豆子が人を襲わないことの証明ができたね」
「!!」
「!!」
私は禰豆子嬢の元に駆け寄り、抱き寄せて頭を撫でた。
禰豆子嬢はそんな私に擦り寄って来る。
「何のつもりだ?冨岡…」
「……」
「悪いな、煉獄」
「うむ、気にしていない!」
……本当によく耐えた。
「炭治郎。それでも、まだ禰豆子のことを快く思わない者もいるだろう」
炭治郎君ははっとして元の位置に戻って平伏する。
「証明しなければならない。これから、炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として戦えること、役に立てること。十二鬼月を倒しておいで。そうしたら、皆に認められる。炭治郎の言葉の重みが変わってくる」
と、炭治郎君が顔を上げた。
「俺は…俺と禰豆子、雫兄ちゃんは鬼舞辻無惨を倒します!!俺と禰豆子と兄ちゃんが必ず!!悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!」
そう宣言する。
「今の炭治郎にはできないから、まず十二鬼月を一人倒そうね」
「はい」
が、冷静に返され、顔を真っ赤にした。
「くっ……ははは!」
「!」
「に、兄ちゃん…」
「すまんすまん……ふふ」
そのやり取りに思わず笑ってしまい、禰豆子嬢を抱き抱えたまま体の向きを変える。
「ふふ…鬼殺隊の柱たちは当然抜きん出た才能がある。血を吐くような鍛練で自らを叩き上げて、視線をくぐりわ十二鬼月をも倒している。だからこそ柱は尊敬され優遇されるんだよ。炭治郎も口の利き方には気をつけるように」
「は…はい」
「それから実弥、小芭内。あまり下の子に意地悪をしないこと」
「……御意」
「御意…」
話を聞きながら禰豆子嬢を箱に戻し、応急処置程度に箱を直した。
「炭治郎の話はこれで終わり。下がっていいよ。次は雫のことだから、雫は残ってね」
「…………」
「でしたら竈門君は私の屋敷でお預かり致しましょう」
蟲柱殿が笑顔で手を挙げる。
「えっ?」
「はい、連れて行ってください!」
「前失礼しまァす!!」
隠が炭治郎君を抱え、もう一人に禰豆子嬢の箱を渡した。
「では、続いて…「ちょっと待ってください!!その傷だらけの人に頭突きさせてもらいたいです、絶対に!」」
「黙れ!!黙っとけ!」
「禰豆子を刺した分だけ絶対に!!!」
炭治郎君が屋敷の柱にしがみ付き、隠達に殴られる。
「……炭治郎君」
「兄ちゃ…」
「我が儘言うな」
「アイテ」
炭治郎君にデコピンし、緩んだ隙に引き剥がして隠達に渡した。
「今の内に」
「「あ、ありがとうございます!」」
「炭治郎。珠世さんによろしく」
「!?」
今度こそ炭治郎君が立ち去る。
「さて、雫」
「…………」
「君は鬼舞辻無惨に狙われている。だから、柱に守ってもらおうかと思っているのだけど」
「結構です……自分の身は自分で護れます」
「!無理だ!大人しく守られて…「いい加減にしろ」!」
炎柱殿を殺気を込めて睨んだ。
「私の何を知っている。私は君の知っている煉獄炯寿郎ではない」
「む、だが…」
パキィン
「「「「「「!?」」」」」」
炎柱殿の周囲に氷を作り、尖らせた先を彼の首に向ける。
「これが君の知る俺か?」
「炯…寿郎」
「私は雫だ。俺より私は強いし力もある。いざという時には助けてくれると言ってくれた強い味方も居る……私には必要無い」
氷を消して、お館様の前に立った。
「御前をお騒がせし、申し訳ありません……一つ、お願いしたい事があります」
「うん?」
「叶えて下さるのであれば……引き続き、炭治郎君の付き添いとして鬼殺隊に力を貸しましょう」
「ありがとう、勿論だよ」
「……失礼」
お館様に近付き……癒しの炎を使う。
「な、何を…」
「これは……」
「どう……ですか?見た目は呪いが退いた様に見えますが……」
「「「「「「!!」」」」」」
「………」
お館様が目を開けた。
そして……私の顔に触れる。
「この色も似合っているよ」
「……ありがとうございます」
「今日は本当にいい青空だね」
「お館様!!」
「……呪いを消した訳では無いので、ご無理なされず」
「うん、ありがとう」
よし……成功した。
さて……と。
「では、私は此れで失礼します」
「「「「「あ…」」」」」
そのまま狐面を回収して私は立ち去る。
「……あー……くそ」
色々と思い出してしまった。
俺を捨てた筈なのに。
end.
「!」「!!」
その時、風柱殿の手によって私は引っ張られ、炭治郎君は中庭に押し付けて平伏させられた。
見れば、柱達は既に平伏済である。
「お館様におかれましても、ご壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます」
「ありがとう、実弥」
お館様はご息女の手を借りて座りつつ、微笑んで風柱殿に返した。
「畏れながら、柱合会議の前にこの竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士と炯寿郎について、ご説明いただきたく存じますがよろしいでしょうか」
……炭治郎君、失礼な事を考えている気がする。
「……雫だって言ってるだろ」
呟けば、風柱殿に黙る様に視線を向けられた。
「そうだね、驚かせてしまってすまなかった。炭治郎と禰豆子、雫のことは私が容認していた。そして皆にも認めてほしいと思っている」
「「「「「「!!」」」」」」
やはり……全て知っていたんだな。
「嗚呼…たとえお館様の願いであっても、炯寿郎のこと以外私は承知しかねる…」
「雫だって……」
「俺も炯寿郎以外派手に反対する。鬼を連れた鬼殺隊員など認められない」
「だから……雫」
「私は全てお館様の望むまま従います」
「僕はどちらでも…すぐに忘れるので…」
「……」
いい加減、私の事を炯寿郎と呼ぶのは止めて欲しい……。
「信用しない信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ」
「心より尊敬するお館様であるが理解できないお考えだ!!全力で反対する!!」
「鬼を殲滅してこその鬼殺隊。竈門・冨岡の両名の処罰を願います」
「では、手紙を」
「はい」
お館様の右側に控えているご息女が手紙らしい物を取り出した。
「こちらの手紙は
その言葉に、二人の水柱を見詰める炭治郎君。
そして、涙が溢れ落ちる。
「……切腹するから何だと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ。何の保証にもなりはしません」
「不死川の言う通りです!人を喰い殺せば取り返しがつかない!!殺された人は戻らない!」
殺された人は戻らない……ね。
「……鬼殺隊に貢献した竈門兄妹も水柱殿の命も戻らないがな」
「む、炯寿郎は黙っていろ!」
「雫だと言っている。私は失う危険の無い者よりも、目の前に居る炭治郎君達の命を優先する」
「失う危険が無い?よもや、どういう意味かわかっているのか!」
「分かっている。少なくとも君よりは……禰豆子嬢が人を襲わないのは私自身が今まで見てきてよく分かっている。人を喰う所か、彼女は自分が傷ついてでも守ろうとした。人を襲ったとしても、私が止める。炭治郎君が止める」
「お前には無理だ!」
「…………」
「…兄弟喧嘩はやめろォ」
「兄弟…?」
「違う、私は煉獄炯寿郎じゃない。私は雫だ。兄弟じゃない」
そう言い、炎柱から顔を背けた。
「…確かに実弥と杏寿郎の言う通りだね。人を襲わないという保証ができない。証明ができない。ただ、人を襲うということもまた証明ができない」
「!!」
「禰豆子が二年以上もの間、人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子のために五人の者の命が懸けられている。これを否定するためには、否定する側もそれ以上のものを差し出さなければならない」
「……っ!」
「……むう」
……お館様の言う事を聞くのはまだいいが……私の言葉だとあんなに食い下がるのは気に入らない。
「それに炭治郎と雫は鬼舞辻と遭遇している」
「!?」
「そんな、まさか…
「戦ったの?」
「鬼舞辻は何をしていた!?根城は突き止めたのか!?」
「「……」」
「おい答えろ!!」
「答える義務はありませんから」
炭治郎の髪を掴んでいる手を放させながら答える。
「義務ならあるだろ!」
「私は鬼殺隊の剣士ではないので」
「炯寿郎……」
「しつこい」
その時、お館様が静かにと指示を出し、皆がピタと静かになった。
……あ、恋柱殿が体勢崩して二人の水柱殿に支えられてる。
「鬼舞辻はね、炭治郎に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らくは禰豆子にも」
「「……」」
「鬼舞辻にとって
「……」
「……」
……此れで納得してくれるといいんだが。
「わかりませんお館様!人間ならば生かしておいてもいいが、鬼は駄目です承知できない!」
ザシュ
「「!?」」
風柱殿が自分の腕を傷付けた。
「お館様…!!証明しますよ俺が!鬼という物の醜さを!!」
「実弥…」
「オイ鬼!!飯の時間だぞ喰らいつけ!!」
「「!!」」
そして、風柱殿は自分の血を箱に落とす。
まずい……風柱殿は私と同じ特殊効果のある稀血……!
「不死川、日なたでは駄目だ。日陰に行かねば鬼は出て来ない」
「お館様。失礼、仕る」
風柱殿が箱を持って屋敷の中に。
そして、箱に向けて刀を向けた。
「禰豆子ォ!!」「禰豆子嬢!!」
「やめろーーーっ!!!」「止めっ」
ズン ガシッ
「かっ…」「放せ!!」
炭治郎君が蛇柱に抑えられ、私をよりによって炎柱が掴んでくる。
その間に、風柱殿は三度箱を貫いた。
「…っ…っ」
「…………っ」
「出て来い鬼ィィ!お前の大好きな人間の血だァ!!」
バキャ
箱の蓋が壊され……
「……」
禰豆子嬢が出てくる。
「フゥフゥフゥフゥフゥフゥフゥ」
出てきた禰豆子嬢が血が流れる腕を凝視した。
「伊黒さん、強く押さえすぎです。少し弛めてください」
「動こうとするから押さえているだけだが?」
「…竈門君、肺を圧迫されている状態で呼吸を使うと、血管が破裂しますよ」
「血管が破裂!!いいな響き派手で!!よし行け破裂しろ!」
「可哀想に…何と弱く哀れな子供。南無阿弥陀仏…」
「グ、ウ、ウゥ」
「っ……好き放題言ってくれる……自分達の大事な人が同じ状況でも君達は落ち着けるのか……!!」
「……よもや、それをお前が言うか」
禰豆子嬢……耐えてくれ……!
「竈門君!」
「ガ、ァ、ア!」
その時、炭治郎君が拘束している縄を裂いた。
直後、蛇柱殿を水柱殿(冨岡)が、炎柱殿を水柱殿(鱗滝)が抑えてくれる。
「ゲホ、ゲホッ、ゲホッ、禰豆子!!」
「!!」
縁側に駆け寄る炭治郎君の隣に立った。
禰豆子嬢は私達に一度視線を向け……
プイッ
「フン、フン」
顔ごと腕から視線を逸らす。
「どうしたのかな?」
「鬼の女の子はそっぽ向きました」
「不死川様に三度刺されていましたが、目の前に血塗れの腕を突き出されても我慢して」
「噛まなかったです」
「ではこれで、禰豆子が人を襲わないことの証明ができたね」
「!!」
「!!」
私は禰豆子嬢の元に駆け寄り、抱き寄せて頭を撫でた。
禰豆子嬢はそんな私に擦り寄って来る。
「何のつもりだ?冨岡…」
「……」
「悪いな、煉獄」
「うむ、気にしていない!」
……本当によく耐えた。
「炭治郎。それでも、まだ禰豆子のことを快く思わない者もいるだろう」
炭治郎君ははっとして元の位置に戻って平伏する。
「証明しなければならない。これから、炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として戦えること、役に立てること。十二鬼月を倒しておいで。そうしたら、皆に認められる。炭治郎の言葉の重みが変わってくる」
と、炭治郎君が顔を上げた。
「俺は…俺と禰豆子、雫兄ちゃんは鬼舞辻無惨を倒します!!俺と禰豆子と兄ちゃんが必ず!!悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!」
そう宣言する。
「今の炭治郎にはできないから、まず十二鬼月を一人倒そうね」
「はい」
が、冷静に返され、顔を真っ赤にした。
「くっ……ははは!」
「!」
「に、兄ちゃん…」
「すまんすまん……ふふ」
そのやり取りに思わず笑ってしまい、禰豆子嬢を抱き抱えたまま体の向きを変える。
「ふふ…鬼殺隊の柱たちは当然抜きん出た才能がある。血を吐くような鍛練で自らを叩き上げて、視線をくぐりわ十二鬼月をも倒している。だからこそ柱は尊敬され優遇されるんだよ。炭治郎も口の利き方には気をつけるように」
「は…はい」
「それから実弥、小芭内。あまり下の子に意地悪をしないこと」
「……御意」
「御意…」
話を聞きながら禰豆子嬢を箱に戻し、応急処置程度に箱を直した。
「炭治郎の話はこれで終わり。下がっていいよ。次は雫のことだから、雫は残ってね」
「…………」
「でしたら竈門君は私の屋敷でお預かり致しましょう」
蟲柱殿が笑顔で手を挙げる。
「えっ?」
「はい、連れて行ってください!」
「前失礼しまァす!!」
隠が炭治郎君を抱え、もう一人に禰豆子嬢の箱を渡した。
「では、続いて…「ちょっと待ってください!!その傷だらけの人に頭突きさせてもらいたいです、絶対に!」」
「黙れ!!黙っとけ!」
「禰豆子を刺した分だけ絶対に!!!」
炭治郎君が屋敷の柱にしがみ付き、隠達に殴られる。
「……炭治郎君」
「兄ちゃ…」
「我が儘言うな」
「アイテ」
炭治郎君にデコピンし、緩んだ隙に引き剥がして隠達に渡した。
「今の内に」
「「あ、ありがとうございます!」」
「炭治郎。珠世さんによろしく」
「!?」
今度こそ炭治郎君が立ち去る。
「さて、雫」
「…………」
「君は鬼舞辻無惨に狙われている。だから、柱に守ってもらおうかと思っているのだけど」
「結構です……自分の身は自分で護れます」
「!無理だ!大人しく守られて…「いい加減にしろ」!」
炎柱殿を殺気を込めて睨んだ。
「私の何を知っている。私は君の知っている煉獄炯寿郎ではない」
「む、だが…」
パキィン
「「「「「「!?」」」」」」
炎柱殿の周囲に氷を作り、尖らせた先を彼の首に向ける。
「これが君の知る俺か?」
「炯…寿郎」
「私は雫だ。俺より私は強いし力もある。いざという時には助けてくれると言ってくれた強い味方も居る……私には必要無い」
氷を消して、お館様の前に立った。
「御前をお騒がせし、申し訳ありません……一つ、お願いしたい事があります」
「うん?」
「叶えて下さるのであれば……引き続き、炭治郎君の付き添いとして鬼殺隊に力を貸しましょう」
「ありがとう、勿論だよ」
「……失礼」
お館様に近付き……癒しの炎を使う。
「な、何を…」
「これは……」
「どう……ですか?見た目は呪いが退いた様に見えますが……」
「「「「「「!!」」」」」」
「………」
お館様が目を開けた。
そして……私の顔に触れる。
「この色も似合っているよ」
「……ありがとうございます」
「今日は本当にいい青空だね」
「お館様!!」
「……呪いを消した訳では無いので、ご無理なされず」
「うん、ありがとう」
よし……成功した。
さて……と。
「では、私は此れで失礼します」
「「「「「あ…」」」」」
そのまま狐面を回収して私は立ち去る。
「……あー……くそ」
色々と思い出してしまった。
俺を捨てた筈なのに。
end.