出会いと再会編
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狐面を着けたまま、私と炭治郎君は運ばれる。
「…………」
私達は鬼殺隊の本部である産屋敷邸へ。
中庭に下ろされた私達の前に立つ柱。
その中に、元兄の姿を見付け……内心舌打ちした。
「起きろ、起きるんだ。起き…オイ。オイコラ、やいてめぇ、やい!!いつまで寝てんださっさと起きねぇか!!」
隠の声に炭治郎君がハッと起きる。
「柱の前だぞ!!」
……炭治郎君って柱の意味分かってるのか?
「ここは鬼殺隊の本部です。あなたたちは今から裁判を受けるのですよ。竈門炭治郎君。雫君」
蟲柱殿がそう言って来た。
「裁判の必要などないだろう!鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我らのみで対処可能!鬼もろとも斬首する!」
炎柱の煉獄杏寿郎がそう告げる。
『いつまでもフラフラせず、家にいろ!炯寿郎!』
『……煩い』
『千寿郎だって寂しがっている!お前に才能は無いのだから…』
『煩いと言っている……一々口出しするな』
『…鬼に慈悲をかけているらしいな!』
『……は?』
『鬼に慈悲など必要ない!そんな甘い覚悟でいるなら辞め…』
『煩いんだよ!……誰にどうしようが俺の勝手だ』
……相変わらずの様だ。
「ならば俺が派手に頚を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう派手派手だ」
物騒な事を言う音柱の宇髄天元。
『……大丈夫ですか?』
『…ありゃ、何だ』
『鬼です』
『鬼……』
『炯寿郎ー継子になれよー』
『俺の呼吸は違うのですから嫌です』
『なら嫁に会いに来い!なんか教えてもらいたい料理があるんだと』
『……まぁ、それなら』
……一応鬼殺隊では無い俺は一般人なんだが。
「あぁ…なんというみすぼらしい子供たちだ、可哀想に。生まれて来たこと自体が可哀想だ」
数珠を鳴らしながら言うのは岩柱の悲鳴嶼行冥。
『……そうですか、貴方は頑張ったのですね。子供たちを助ける為に』
『……そうだな。だが…』
『代わりに俺から……ありがとうございます。お疲れ様です。貴方が生きてて良かった』
『………』
『す、すみません。無礼でしたね』
『いや…』
『悲鳴嶼殿……』
『南無…どうした?』
『……猫が離れません』
『そうか……今日は泊まっていくといい』
『ええ……』
『炊き込みご飯を作ってくれないか?』
『それくらいしますが……』
恋柱の甘露寺蜜璃は躊躇っている様子で、霞柱の時透無一郎は興味無さそうだ。
『あの、私お兄様の継子の甘露寺蜜璃です!』
『ああ、貴女が噂の……宜しくお願いします』
『う、うん!よろしく!あ、あとあまり歳が変わらないって聞いたから、敬語とかなしでくれると嬉しいな!』
『……では、遠慮なく。よろしく』
『んー!これも美味しい!』
『柱に気に入って頂けたなら何より』
『もっと気軽に話して欲しいなぁ』
『貴女は柱ですからね……お代わり要ります?』
『欲しい!』
『大丈夫か!?しっかり!!』
『に…さんが…』
『!わかった!鬼は斬った!君の兄の所まで案内してくれ!』
『……ねぇ』
『はい?』
『前にどこかで僕と会わなかった?』
『……気のせいでは?一般隊士の俺と柱なんて滅多に会いませんから』
『それもそうだね……名前なんだっけ』
『今ですか。炯寿郎です……煉獄炯寿郎』
「殺してやろう」
「うむ」
「そうだな、派手にな」
彼等がそう言う中、炭治郎君は視線を巡らせた。
別の所へ運ばれた禰豆子嬢を捜しているのか?
「そんなことより、冨岡はどうするのかね」
「!?」
木の上から聞こえた声に視線を上げると、そこには蛇柱の伊黒小芭内を見付ける。
『……綺麗』
『何だ貴様。じろじろと見てきて鬱陶しい。そんなに鏑丸が…』
『鏑丸殿ですか……申し訳ありません、とても綺麗な蛇でしたので、魅入ってしまいました』
『……フン』
『…炯寿郎』
『伊黒殿……どうされました?』
『甘露寺がお前に土産を買ってやろうと言ったから届けに来た』
『……よもや』
『勘違いするなよ。甘露寺が言ったから買ったんだ。まぁ、お前の紹介した店だからな。これくらいならしてやるのも常識の範囲だろう』
『ああ、そう言えば海辺の飯屋で大食い向けの行事を近々するらしいです……帰りに海辺でも歩けば、いい雰囲気になると思いますが』
『それは何処だ。焦らさずに言え』
「拘束もしてない様に俺は頭痛がしてくるんだが。胡蝶めの話によると隊律違反は冨岡も同じだろう。どう処分する、どう責任を取らせる。どんな目にあわせてやろうか」
「義勇は理由もなく動く男ではない」
ネチネチ言う蛇柱に、水柱の冨岡殿の隣に居る鱗滝錆兎が返した。
『最終選別に行かれると聞きました』
『ああ、義勇と行ってくる』
『……嫌な予感がします……俺の刀も持っていって下さい』
『!だが…』
『絶対に生きて戻って下さい……貴方が死んだら、沢山の人が悲しみます』
『…わかった』
『おーまーえーな!』
『痛いです、鱗滝殿』
『錆兎でいいと言っている!それよりも、また他を庇って怪我したらしいな。その癖いい加減直せ』
『……鱗滝殿には言われたく言葉ですね』
「まぁ、いいじゃないですか。大人しくついて来てくれましたし。処罰は後で考えましょう。それよりも私は坊やたちの方から話を聞きたいですよ」
その言葉に炭治郎君は顔を上げた。
「……俺の妹は鬼になりました。だけど人を喰ったことはないんです。今までも、これからも。人を傷つけることは絶対にしません。雫兄ちゃんは俺に手を貸してくれてるだけです」
「くだらない妄言を吐き散らすな。そもそも身内なら庇って当たり前。言うこと全て信用できない。俺は信用しない」
「あああ…鬼に取り憑かれているのだ。早くこの哀れな子供を殺して解き放ってあげよう」
……聞く耳なし、か。
「聞いてください!!俺は禰豆子を治すために剣士になったんです!禰豆子が鬼になったのは二年以上前のことで、その間禰豆子は人を喰ったりしてない!」
「話が地味にぐるぐる回ってるぞアホが。人を喰ってないこと、これからも喰わないこと。口先だけでなくド派手に証明してみせろ」
証明、か……。
突然連れてこられた立場の炭治郎君に証明出来る筈がない。
「あのぉ、でも疑問があるんですけど…
「……」
「いらっしゃるまで、とりあえず待った方が…」
「……」
「……」
「……」
そう言ってくれる恋柱殿だが、注目を集めて最後の方は勢いが小さくなっている。
「妹は俺と一緒に戦えます!鬼殺隊として人を守るために戦えるんです!だから!」
流石に私も炭治郎君の援護をしようと思った時……
「オイオイ、何だか面白いことになってるなァ」
そんな声が聞こえて来た。
「困ります不死川様!どうか箱を手放してくださいませ!」
「鬼を連れてた馬鹿隊員はそいつかィ。一体全体どういうつもりだァ?」
そこには、箱を片手で持って歩み寄って来る風柱の不死川実弥が。
『お二方の邪魔にならない程度に助太刀します!』
『てめェ…名前は!?』
『炯寿郎です!……そいつの頸は貴方達が斬って下さい!』
『…おはぎ作んの上手いな』
『……生前、母から一通り教わってますから』
『そうかィ…うめぇ』
『それは良かった……お茶飲みます?』
『飲む』
『では煎れて参ります』
『おう。早くしろよ』
『短気は損気ですよ』
「胡蝶様、申し訳ありません…」
「不死川さん、勝手なことをしないでください」
微笑みを消した蟲柱殿が風柱殿を咎める様に言う。
「鬼が何だって?坊主ゥ。鬼殺隊として人を守るために戦えるゥ?そんなことはなァ」
「!」
「ありえねぇんだよ馬鹿がァ!」
私は直ぐに動いた。
「阿呆」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
縄脱けし、箱を貫く筈だった刀を私の右手と肩で止める。
「雫兄ちゃん!!」
「なんだ、テメェ」
「短気は損気……そう、何度も言われなかったか?」
「!?」
「今の言葉は…」
「ふざけんな!!」
カラン…
日輪刀が抜かれ、もう片方の手で殴られた事で狐面が飛んだ。
途端に、全員の視線が集まるのを感じる。
「え」
「………炯寿郎?」
「…………私は雫だ」
彼等が驚いた様に私を見ている間に箱を回収し、血が流れている右手を見た。
痛みは無いし、この程度なら直ぐに……
「あっ…!」
「?」
「俺の家族を傷つける奴は、柱だろうが何だろうが許さない!!」
「ハハハハ!!そうかいよかったなァ!」
「!」
炭治郎君が跳んで来て、風柱殿に押し退けられる。
「やめろ!!もうすぐお館様がいらっしゃるぞ!」
「!!」
水柱殿(冨岡様)の声に反応し、一瞬動作が遅れた風柱殿が刀を横に振るい、それを避けた炭治郎君は……
ガッ ドォ
風柱殿に頭突きをした。
「「……」」
「ブフッ」
呆然としていると、吹き出す音が恋柱殿から聞こえる。
「すみません」
先程以上の視線を集め、恋柱殿が謝った。
グイ
「!」
後ろ手に炭治郎君が私の羽織と箱の紐を握る。
「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ!!」
「てめェェ…ぶっ殺してやる!!」
「……その前に、今度は私が君を落とす」
炭治郎君の手を放させ、彼の前に出て風柱殿と対峙した。
「退け炯寿郎!!」
「雫だと言っている……」
「そもそもてめェは!」
「炯寿郎は死んだ。私は雫だ」
私の言葉に彼等が一瞬苦しそうな顔をした時……
「お館様のお成りです」
少女の声が響いた。
「よく来たね。私の可愛い
「!?」
そして……お館様の産屋敷耀哉様が現れる。
『炯寿郎は沢山努力したんだね』
『…………』
『それは誰にも出来る事じゃない。炯寿郎は凄いよ』
『ありがとう……ございます』
『それでね、炯寿郎に柱にならない?』
『そんな、俺などまだまだ……』
『炯寿郎なら成れるよ。立派な柱に…』
『……少し考えさせて下さい』
『勿論だよ』
「お早う皆、今日はとてもいい天気だね。空は青いのかな?顔ぶれが変わらずに半年に一度の“柱合会議”を迎えられたこと、嬉しく思うよ」
二人のご息女の手を借りて歩くお館様の顔には呪いに因る病が侵攻が。
……最後に見た時よりも、進んでしまっているな。