魔法使いの物語


“魔法使い”。

その名の通り、魔法を扱える存在。

魔力を持ち、体の何処かに魔法印を持つ者。

魔力の扱いを知り、魔法を学ぶ事で簡単な魔法を扱う。

火を出したり、水を生んだり、風を呼んだり、地を育んだり……

やがて、魔法使いとして成長すると固有魔法を扱う様になる。

固有魔法はその名の通り、その者だけが扱う特別な魔法。

その者の魔力の素質で使える魔法は異なる。


そんな魔法使いは今や数を減らし、その存在は噂から都市伝説の様なものとなった。

だが、確かに魔法使いは存在し、社会に紛れている。

此れは、天才と称された魔法使いの少年の物語。






「はぁ!?月華と彼岸を学校に通わせる!?あまり冗談を言うな、葉蘭!」
「冗談じゃないさ、伏倉。あの子達は今までろくに学校に通わせる事も出来なかった。人並みの青春を知らないんだ。今からでも間に合うと思わない?」
「阿呆。あの子達は今まで社会に出なかったんだ。いきなり出して適合出来る訳ないだろ」
「其れは彼等が頑張ればいいだろ」
「……例の事件でお前が怒るのは分かる。だが、月華を追い出す様な真似……」
「私は君が不思議さ。例の事件に関しては君だって憎む方だと思ったんだけど」
「…………」

とある建物の廊下。

其処で話す二人の青年。

「……お前が月華と彼岸を追い出すなら、俺も彼等と行く」
「!…………君も私とは来てくれないのか」
「……あの子達は俺の大事な弟だ」
「……そう。じゃあ、君をあの二人の専任に任命するよ。精々社会にバレない様に支えな」
「そのつもりだ」

そして、青年は其々背を向けて反対方向へ。

「月華、彼岸」
「……伏倉」「あ、伏倉兄」
「俺も一緒だ。行こう」
「……本当にいいの?」
「伏倉兄なら幹部になれるでしょ?」
「俺はお前達の兄だからな」

その日、一人の青年と三人の少年が魔法協会の本部から出て行った。




end.
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