ツイステッドワンダーランド
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝。
俺達はジャミルに付いてカリムの部屋に向かう。
コンコン!……ガチャッ
「カリム、そろそろ起きる時間……なっ!?アズール、ジェイドそれにグリムに君まで。何故お前たちがカリムの部屋にいる!?」
カリムの部屋には既に優羽達とアズールとジェイドが居た。
「ああ、ジャミルさん!おはようございます。今日からもう少しゆっくり眠っていてくださって大丈夫ですよ。これから休みが明けるまで毎日、僕らがカリムさんのお世話をしますので」
「ハァ……!?」
「「…………」」
驚くジャミルだが、俺達は昨日優羽に聞いてたから別に驚かない。
「昨夜、あなたとお話していて気がついたんです。この寮で今、誰よりも忙しく働いているのは……ジャミルさん、あなただ!」
「僕たちはいま食客としてスカラビアにお世話になっている身ですから。なにかお手伝いできないかと考えまして」
「名付けて、『ジャミルお助け隊!』なんだゾ」
そのままな名前だよな。
元々少しなら手伝ってはいた俺達よりも率先してジャミルが何もしなくていい位手伝おうって事だそうだ。
「な、なにを馬鹿な……いや、そういうわけにはっ」
「お、おお……おおお~~~!!それ、いいな!オレもジャミルの仕事が楽になる方法はないかとずっと思ってたんだよ」
いや、ジャミルの仕事をキツくさせてんのはアジーム本人だと思うんだが。
「従者を思いやるカリムさんのお気持ち。美しいですね。アズールに爪の垢を煎じて飲んでいただきたいくらいです」
「はっはっは。本当のお前は一言余計だな、ジェイド。そんなわけで、ここは僕らに任せて。ジャミルさんはのんびりくつろいでください」
「そうさせてもらえ、ジャミル!良かったな!」
「さあさあジャミルさん。お部屋に戻って二度寝でもなさってください」
ギィ……バタン
そのまま強引にジャミルを部屋から追い出す。
まぁ、俺達も然り気無く引っ張って部屋の外に出したんだけど。
「なんなんだ一体……しかし、休んでいるわけにはいかない。せめて朝食の準備くらいは……」
そして、談話室へ向かうジャミルの後に続いた。
「あー。そこの小魚ちゃん。それまで仕上げの調味料かけてないから運ばないで」
「し、失礼しました!」
「オーブンに入れてた野菜、焼き上がりました」
「それはもう味つけてあるから適当にテーブル並べていーよ」
既に朝食はフロイドを主軸にし、出来上がっている。
「朝食の準備が済んでいる、だと……!?これは、君がやったのか、フロイド」
「ウミヘビくん、おはよ~。そ、オレとスカラビアの小魚ちゃんたちが作ったんだ。アズールがさあ、ウミヘビくんを助けてあげたい~って言うからさ」
「そんっ……、そんな、客人を働かせるわけには」
予定が崩れて、完全に動揺しているジャミル。
「別にオレら客ってわけでもなくね?合宿相手じゃん」
「でも、カリムは俺が作ったものしか食べないんだ。毒の心配があって……」
「は~?なにそれ。オレより偏食かよ。つか毒とか入れてねーし。じゃあウミヘビくん毒味しといてよ。ウミヘビくんのお墨付きがあればラッコちゃんも食うっしょ」
「それは、そうかしれないが……」
「副寮長、野菜のグリルの味見お願いします!」
「う、わかった。順番に毒味する」
スカラビア寮生が次々と料理を差し出す所為で、ジャミルはタジタジになっていた。
「そういえば、今日の朝のオアシスの行進の準備は出来てるのか?いつも朝食は行進の後なのに……」
「その件についてですが、オクタヴィネルの寮長たる僕からスカラビア寮長たるカリムさんへ改善案を提案しまして」
「わっ、なんだ急に!」
急に現れたアズールに驚き、ジャミルが俺の腕を掴む。
「長距離歩行という有酸素運動より……室内で適度な筋トレを行った方が持久力や筋力の改善に大きな効果があります。なによりスカラビアに砂漠は暑いですから熱中症も心配ですし」
「てかさー、庭にでかい噴水あるじゃん。体力つけたいなら泳いだ方がいいって。楽しいし」
「そうですね。これは実体験ですが、歩くより泳いだほうが脂肪燃焼効果も期待出来ます」
「つまり……もうあの行進をしなくてもいい……?」
「やりましたね、副寮長!」
「なにより、朝食を抜くことは疲れやすさや集中力の欠如を招きやすい。食べ過ぎは禁物ですけどね」
完全にオクタヴィネルの流れになっている中……俺はジャミルを見詰めた。
と、其処に優羽達を連れたアジームがやって来る。
「おはよう。お、もうメシの準備が出来てるのか」
「うひょー!美味そうなんだゾ!」
「今日はフロイドの調子も良いようですね。気分がノらないと味も大変な有様になってしまうのですが……」
「ラッコちゃん用はウミヘビくんの毒味も済んでまーす。どうぞ召し上がれ~」
「「「いだきまーす!」」」
「おっ、このスープ美味いな!」
「でしょー。シーフードたっぷりの珊瑚の海風スープだよ」
「………………」
そして、この合宿はオクタヴィネルの手によって、いい方に改善されていった。
勉強も実技も順調に進み、寮生達も楽しいのか笑顔が見られる様になる。
……一人を除いて。
「スカラビアのみなさんは占星術や古代呪文語が得意な方が多いのですね」
「砂漠の魔術師は『先読み』を得意としていたから、そういう魂の資質を持った生徒が集まりやすいらしい。オレはどっちも得意じゃないんだけどな。あっはっは!」
「砂漠の魔術師は、自然エネルギーが必要とされる占いを人工的な装置を用いて成功させた聞きます、占星術が他の魔術に比べて体系化が早かったのは……先進的な考えを持つ彼の功績も大きかったのではないでしょうか」
「へぇ~。やっぱグレート・セブンってすごいぜ!」
「…………」
……アジームは本当に能天気だな。
昔出会った奴の中にはアジームみたいなのもいたけど……其れとはまた違う感じだな。
「……おや、もうすぐ3時だ。もう少し勉強をしたら休憩をとりましょう」
「お茶を準備してきましょうか?」
「いえ、、僕が準備しましょう。一番課題が進んでいますので」
「俺も手伝おう」
「それは助かります。では行きましょうか、ジャミルさん」
そして、ジャミルはアズールと共に出ていった。
其れを見送り……ジェイドがスマホを出す。
其処から流される……ジャミルがアズールを洗脳しようとした事実と、ジャミルの計画。
寮生が息を飲んでいる間に優羽達がジャミルの所へ向かい、寮生達も駆けて行った。
「そんな…ジャミルが…」
「「…………」」
俺達は呆然としているアジームの背を押し出す。
そして……全ての目論見がバレてしまったジャミルの元へと来た。
アジームを洗脳し、裏切ろうとしたジャミルの元へと。
「ジャ……ミル?」
アジームはジャミルを信じられない様に見詰める。
「これは一体……どういうことだ?」
「カ、カリム…………」
「お、お前がオレを操っていたなんて……嘘だよな?最近たまに意識が遠のいて、いつのまにか時間が過ぎてたりしたことがあったけど……でも、ただの貧血か居眠りだろう?オレ、どこでも寝ちまうからさ。お前にもよく怒られてたし。なあ、そうだろ?オレ、居眠りしてただけだよな?」
「……………」
……自身でも異変には気付いた。
其れでも行動しなかった……其れの態度がジャミルを……
「お前がオレを操るなんて、オレを追い出そうとするなんて、するわけないよな?ジャミル、お前だけは……お前だけは絶対にオレを裏切ったりしないよな?だってオレたち、親友だろ!?」
「……はは。はははははははははは。あはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
追い詰められたジャミルが笑い出す。
「お、おい。どうしたんだ?」
「………………そういうところだよ」
「え……?」
「俺はな……物心ついた時から、お前のそういう能天気でお人好しで馬鹿なところが……大っっっっっ嫌いだったんだ!!!」
遂に見せた……ジャミルの本音。
「こっちの苦労も知らないでヘラヘラしやがって!!お前の笑顔を見るたび虫唾が走る。もううんざりだ!!もう取り繕っても意味がない。俺はな、お前さえいなければ毎日毎日願い続けてきた。だが、それも今日でおしまいだ!俺も、家族も……なにもかも、どうにでもなれ!!」
「ま、待て、ジャミル!」
「『瞳に映るはお前の「
「あぁつ……?」
「ううっ……頭、が………」
「!チッ……!」
ジャミルがスカラビア寮生に洗脳魔法──ユニーク魔法を使った。
「なっ……!まさか寮生全員を洗脳にかけただと!?」
「お前たち、カリムとオクタヴィネルのヤツらを外につまみ出せ!」
「「「はい、ご主人様……!」」」
「ジャミル!?」
そして、寮生達が皆に襲い掛かる。
「っ、ジャミル!」
俺はジャミルに手を伸ばした。
「……ハル……」
ガシャン ビュォオ
「信じれない。これほどの大人数を同時にしかも個別に操れるなんて!平凡なんてとんでもない。彼の魔力はスカラビアどころか学園の中でも間違いなくトップクラスだ!」
向こうでは皆が寮生達と戦っている。
ヒュン ドス
「コイツら何度締めてもまた起き上がってくんだけど、ゾンビかよっ!」
何度も立ち上がる寮生に向こうは苦戦していた。
……フロイドの声が変わってるのに凄い違和感がある。
「ジャミル、一回ユニーク魔法を解け。このままだとお前の方が危ねぇ……!」
負による痛みに顔を顰めながら、ジャミルに声を掛けた。
これ以上は、ジャミルが……
「ジャミル!もうやめろ、わかったから。お前が寮長になれ!オレは実家に戻るから……っ」
「はぁ?なに言ってんだ。俺の呪縛は、そんなことで簡単に解けはしない……カリム、お前はこの世界に存在するかぎり!」
キィイイン
アジームの言葉に、ジャミルはより強くユニーク魔法を放ってしまう。
「「ジャミル……っ!!」」
「いけません、ジャミルさん、これ以上ユニーク魔法を使い続ければ、ブロットの許容量が……!」
「うるさい!俺に命令するな。俺はもう、誰の命令も聞かない!!俺は、もう自由になるんだ────!!」
「──ぅっ!!」
インクが落ちて、染まり切る音がした。
直後……ジャミルの姿が変わる。
「なんだあれ!?ジャ、ジャミルの姿が!?」
「空模様まで変わっていく。これは、アズールの時と同じ……!」
「──オーバーブロット!援軍の見込みがない冬休みだというのに厄介なことになりましたね」
「アイツも闇堕ちバーサーカーになっちまったのか!?」
「ブロットの負のエネルギーが膨れ上がっていく……みなさん、構えてください!」
「ハル!!」「「ハル様!!」」
オーバーブロットに伴う負のエネルギー……其れを直ぐ傍で受けた所為で、俺はその場に蹲ってしまった。
アキ達が俺の方に来ようとしているのが視界の端に入る。
其れを阻止する様に、オーバーブロットの化身が割り込んできた。
「無能な王も、ペテン師も……お前らに用はない!宇宙の果てまで飛んでいけ!そして、二度と帰るな!ドッカーーーーーーーン!!!」
「「「「「「「うわあああああああああ~~~~~~~!!!!????」」」」」」
「アーキス!!!優羽!!!」「ハーヴェル!!!」
「ナイスショーーーーーット!フハハハ!あばよ、カリム!!ひゃーーーーっはっはっはっは!」
俺の目の前で彼等が吹っ飛ばされてしまう。
それを追い掛けようとした時……
「ハル……お前は俺だけのものだ」
「ジャミル……」
手を掴まれ、顔を見詰められた。
「……蛇のいざない」
直後、俺の意識は黒く染まる。