ツイステッドワンダーランド
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翌朝。
俺達はジャミルと一緒に見張りの寮生に声を掛けに向かう。
「おい、お前たち。そろそろ朝の特訓の時間だぞ。集合に遅れるとまたカリムに……!!!???」
「「お?」」
何故か其処には優羽達と……アズールにリーチ兄弟の姿があった。
「おや、ジャミルさん!それに双子の兄さんたち!こんにちは。ご機嫌いかがです?」
「アズール・アーシェングロット……!それに、リーチ兄弟。一体、何故ここに?」
「僕たちの故郷は、冬は規制が困難な立地でして」
「毎年ホリデーは寮で過ごしてるんだぁ~。あはっ」
「なん、だって……?」
フロイドが俺達に手を振って来たのを振り返して、困惑気味なジャミルの様子を見る。
「ところで、カリムさんはどこにいらっしゃいますか?魔法の絨毯をお届けにあがったのですが……」
「えっ、あ、ああ。届け物なら俺が預かろう」
「いえ!結構、この魔法の絨毯は国宝級の逸品です。後々傷などが発見されて『オクタヴィネルのせいだ』などとクレームをつけられたら困りますから。直接カリムさんにお渡しして、しっかりと検品して頂きたい」
「カリムはそんなことは気にしないはずだ。だから俺が預かって……」
「ご安心ください。落とし物の20%にあたる報酬金を要求したりもしませんから」
拒もうとするジャミルに対して、強く押すアズール。
「昨晩スカラビアのみなさんに働いた無礼についてもお詫び申し上げたいですし」
「手土産のシーフードピザも持って来たしぃ」
「とにかく、絶対に直接会ってお渡ししたいのです。彼はもう起きていらっしゃいますよね?」
「だから、今日は都合が悪いと……勝手に入っていくな!アズール!」
「「…………」」
制止を聞かずにアズールはスカラビア寮に入って行き、慌ててジャミルが追い掛けて行った。
「さ、監督生さんも双子の兄さんたちも参りましょう」
「遅れないで付いてきてねぇ」
「味方になれば心強い……ってやつかな?」
「オクタヴィネルのヤツら、なんつー強引さなんだゾ……」
…………つーか、双子の兄さんってのにツッコんでいいか?
「あれ、アズール?なんでウチの寮にいるんだ?」
「こんにちは。ご機嫌いかがですか、カリムさん。いやぁ~~、いつ来てもスカラビアは素晴らしい。外は雪もちらつく真冬だというのにまるで真夏の陽気じゃありませんか。リゾート開発をすれば、大量の集客が見込めそうな素敵なロケーションです」
「おう?よくわからんねーけど褒めてくれてサンキューな!」
……ありがとう、で合ってんのか……?
「今日はあなたの魔法の絨毯を捕まえたのでお届けにあがったんです」
「えぇっ?アイツまた勝手に逃げ出したのか?そいつは手間をかけたな」
「いえいえ。ところで……今年スカラビアはホリデーを寮で過ごされるとか」
「ああ。もしかしてお前たちも?」
「そうなんです!いやー、奇遇ですね。そこで、これを機にオクタヴィネルとスカラビアで親睦を深める合宿を致しませんか?」
「なっ……!?」
アズールの言葉にジャミルが戸惑った様な声を出す。
「この冬採用されたというスカラビア独自の学習スタイルも学ぶところが多そうですし……」
「そりゃいい!オクタヴィネルの寮長がウチの寮に滞在してくれるなんて、願ってない」
「……カリム、俺は反対だ」
「えぇ?なんでだよ」
低い声で反対するジャミルにアジームは不思議そうに問い返した。
「他の寮に追いつくために、わざわざ冬休みを潰して特訓しているんだぞ。それなのに他寮の寮長を招き入れるなんて、敵に手の内を明かすようなものじゃないか」
「敵なんて大げさだな。それに、オンボロ寮の2人はお前が連れてきたんじゃないか」
「それは……っ、そうだが。俺はお前たちのためにも言ってるんだぞ。アズール……!」
「ジャミルさんのご意見はごもっとも。他の寮は常に成績を競い合うライバルですから。残念ですが、僕らはこれでお暇しましょう。カリムさん、ジャミルさん、特訓頑張ってくださいね」
そう言うとアズールはリーチ兄弟と共に背を向ける。
「はぁ……極寒の中、今年も3人ぼっちのホリデーですか……ま、仕方ないですけど……」
「頑張って魔法の絨毯を捕まえたんですがねぇ……」
「モストロ・ラウンジもめちゃくちゃになったのになぁ……」
「「「はぁ~~~~~~……ションボリ」」」
「な、なんてあからさまな“引き止めてほしい”って態度なんだゾ!」
「くっ……」
あからさま過ぎる演技に笑いそうになるのを咄嗟に堪えた。
なんつー……態とらしい……
「──ちょっと待った!」
「………………はぁ~~」
アジームが三人を制止すると、ジャミルが溜め息を吐く。
滲み出る苦労に俺がジャミルの頭、アキが背中を撫でた。
「アズールはこの学校でもトップレベルの魔法士だ。スカラビアの成長のためにも滞在してもらったほうがいい!それに、せっかく訪ねてきたヤツを無下に追い返すなんて、アジーム家の名折れだ」
「あぁ……カリムさん!なんて懐が深くてお優しい方なんでしょう!もちろんですとも。僕で教えられることであればなんなりと!」
「料理や掃除のお手伝いなら、僕たち双子にお任せください」
「そーそー。いつも店でやってるから、得意だしぃ」
「そいつは助かる!ジャミルの負担も減るだろう」
「俺のことはいいから……!ああもう!全然聞いてないな」
……本当に、無自覚な横暴さだな。
「よし、早速だアズールの胸を借りて特訓だ!荷物を置いたら庭に来てくれ」
「了解しました。スカラビアのみなさんどうぞお手柔らかに。フフフ……」
「はぁ……カリムのヤツ、また勝手に決めちまいやがって。俺がどれだけ苦労してると……クソッ。今日はもうカリムは寝たしなにも問題は起こらないだろう」
「「お疲れさん」」
トントン
遅い時間。
ジャミルを労っていると、部屋がノックされる。
「誰だ?こんな時間に……」
ガチャ
「こんばんは、ジャミルさん」
「こんばんはぁ~~」
「邪魔するんだゾ!」
「夜分にすみません」
「!!……なんの用だ?」
其処に居たのは優羽達とオクタヴィネルの三人だった。
「さきほどカリムさんにご案内いただいた宝物庫で見たことのないボードゲームを見つけまして。カリムさんにルールを説明していただいたのですがどうも要領を得ない」
「この穴のあいた木の板と宝石で遊ぶゲームどうやって遊ぶの?」
「ああ、『マンカラ』か……熱砂の国ではポピュラーなゲームだよ」
マンカラ……?
「ボードゲーム部の僕としては、ぜひ遊んでみたくて一局手合せ願えませんか?」
「オレもオレも~。ウミヘビくんと遊びたーい。あはっ」
「勝負とあっちゃ、グリム様も参加しねぇわけにいかねぇんだゾ!」
「……カリムも寝たし、まあいいか。わかったよ。この人数じゃ俺の部屋は狭い。談話室に行こう」
という事で、俺達は談話室へと移動する。
「「……!」」
最後尾を歩いていると、優羽がソッと耳打ちしてきた。
「やった~~~今回はオレの勝ち!これで3勝!」
「集中力が高い時のフロイドは、やっぱり勝負強いな」
「ふぎゃー!また負けた!アズール、容赦ねぇんだゾ!」
どうやらマンカラの方は盛り上がってるらしい。
「これで僕は5勝0敗。まあボードゲーム部として当然の結果です。ジャミルさんは2勝3敗、ですか」
「ん?……ああ、久しぶりだから腕が鈍ったかな。昔はよくカリムに『勝つまでやる』って毎日何時間も付き合われてたっけ……こういうの弱いくせにな」
懐かしそうに言うジャミル。
「なるほどふむ、それでですか」
「なにが『なるほど』なんだ?変なヤツだな」
「いえ、こちらの話です。カリムさんとは幼い頃から一緒に育ったのですね」
「それこそ物心つく前からだな……そういえば、君たちオクタヴィネルの3人も幼なじみだったか?」
「そうらしいね~」
らしい?
随分他人事だな。
「らしい、って。なんで他人ごとみたいに言うんだゾ?」
「オレたちエレメタリースクール入ってからずっと一緒のクラスだったらしいけど。オレ、アズールを認識したのミドルスクール入る直前だしー。だからあんま幼なじみっぽい思い出とかないっていうか」
「興味にムラがありすぎでは……」
「僕、それはそれは大人しいタイプだったので。目立たない生徒だったんですよ」
「別の意味で目立ってそうだったけどな。主に横幅が……むがんごご!」
「グリムさん、それは内密にと何度も言いましたよね……!!」
余計な一言を言いそうだったグリムの口をアズールが塞ぐ。
「それなのに、今は君が寮長?随分と不思議な関係だな」
「そお?今はアズールの言うこと聞いてるのが面白いからそうしてるだけ」
「ジェイドもフロイドも、僕に服従している気はないんでしょう。彼等にとって、そういう“ごっこ遊び”なんですよ」
「主従ごっこ、ということか?ますますよくわからない関係だ」
まぁ、独特な関係だよなぁ。
「僕がリーダーとして間違った……あるいは、つまらない選択をした時は……2人はあっさりと僕から離れ、寮長の座を奪うはずです。まあ、挑まれても負ける気はしませんが」
「オレらも挑む予定はないけどねー、今んとこは。あはっ」
「…………あくまで君たちは対等な関係、なんだな」
複雑そうなジャミル。
その関係は……アジームとバイパーでは難しい関係なんだろうな。
「今は面白いから一緒にいるし、つまらなくなったら一緒にいなくなるってだけ。つーか、副寮長は寮長の家来じゃないし。フツーじゃん」
「………普通、ね。生まれた時からアジーム家の従者の俺には、やっぱりよくわからない。主人主人、従者は従者だ。おそらく、一生な」
「………」
「「…………」」
と、近付く気配に視線を向けた。
コツコツ
「おっ、なんだお前ら。まだ遊んでるのか?」
「えっ!?」
やって来たのは寝かし付けられた筈のアジーム。
ジャミルは本当に驚いた様に彼を見る。
「ん?『マンカラ』か。懐かしいな。昔ジャミルと何時間も勝負したっけ」
「お前、もう寝てたはずじゃ?どうして……1人でフラフラ出歩くなといつも言ってるだろ。もしまた誘拐されでもしたら……」
「心配性だなジャミルは。大丈夫だよ。ジェイドも一緒だったし」
「──?ジェイド?」
「はい。ずっとカリムさんのそばにいましたよ」
「…………!!」
アジームの後ろから現れたジェイドにジャミルが驚き、警戒した。
「カリムさんは本当に親切な方ですね。色々と丁寧に教えてくださって……」
「……お前、カリムになにをした?」
「なに……とは?僕たちはただ楽しくお話していただけですよ。ね、カリムさん」
「うん。物置を案内してただけだぜ?」
「──っ……!!」
……お話、ね。
まぁ、大体の予想はつく。
「あ、そうだ、ジャミル。ウチから持って来た銀と青の絨毯があっただろ?あれ、どこにあるか知ってるか?オレじゃ見つけらんなくてさ」
「戻ろう、カリム」
「え?なんだよ、急に」
「いいから、部屋に戻るぞ!」
「おっと」
「うわっ!?わかった、わかったから引っ張るなって!悪いジェイド。絨毯はまた今度な!」
「はい……またいずれ。フフフ」
ジャミルが俺とアジームを引っ張った。
其れにアキが優羽達と視線を交わした後について来る。
ポタポタ…
……インクの音……不味いな。
出来れば……追い詰めてやらんで欲しいんだが。