ツイステッドワンダーランド
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「ジャックも帰省するのか」
「おう。双子や監督生はどうすんだ?」
学園がウインターホリデーとやらで長期の休みに入るという事で、多くの生徒が帰省するらしい。
俺は同じクラスのジャックを見送る為に、ルアを抱き抱えて鏡舎まで一緒に向かっている。
「俺達はその気になれば帰れるけど、優羽はそういう訳にいかねぇからな。優羽やグリムと学園に残る予定だ」
「そうなのか」
闇の鏡の所まで来ると、沢山の生徒が居た。
その誘導をしているアロハシャツの男は見なかった事にする。
と、優羽達と大荷物を持ったラギーが話をしているのを見て歩み寄った。
まぁ、着くまでにラギーは闇の鏡を潜って行ったけど。
「ラギー先輩の地元は、貧しい暮らしをしている家庭が多いらしい。だから長期休暇のたびにたくさん食べ物を持って帰って近所の子どもに食わせてやってるんだと」
「あ、ハルにジャック……ジャックはなんで両手いっぱいに植木鉢抱えてんの?植木屋でも始める気?」
「これは趣味で育ててるサボテンだ。休暇中に水やりしなかったら枯れちまうだろうが……って、お、俺のことはいいんだよ!」
確かにジャックは両手に幾つものサボテンの植木鉢を抱えている。
俺も気にはなったが、敢えてツッコまなかった。
「ラギーのヤツ、赤の他人にメシをわけてやろうなんて意外と良いヤツなんだゾ」
「捕らえた獲物は弱者にも分け隔てなく与える。それがハイエナだ。ラギー先輩もそうやって育ってきたんだろ」
コツコツ
「フン。ガキを何人も集めて炊き出しなんて考えただけでゾッとするぜ。1人いるだけでうるさくてかなわねぇってのに」
足音と声に振り返ると、レオナとソルを抱き抱えたアキが居る。
「「お疲れー」」
緩くアキとハイタッチをやれば、ルアとソルもハイタッチしていた。
「あれ、レオナ先輩……ご実家には戻られないんですか?」
「だったら良かったんだがな。帰らないと後からゴチャゴチャうるせぇから、帰る。“あの事”についても話しておかねぇとだしな……はぁ~、めんどくせぇ」
“あの事”……俺達の島に来るって話の事か。
「でも、手ぶらッスよね?」
「あ?財布とスマホありゃいいだろ。私服は実家に置きっぱなしだし」
「コイツはコイツで極端なんだゾ」
「宿題すら持って帰らない開き直りっぷり……」
「宿題なんか休みが明けてからやりゃいいんだよ。ホリデーは休むのが仕事だろ?じゃあな、草食動物ども」
そう告げてレオナは一度アキと視線を交わし、闇の鏡を潜って行く。
「真面目にやりゃなんでもやれる実力がありながらなんでやらねぇんだあの人は……俺キッチリ終わらせてくるぜ。お前らもサボんじゃねぇぞ。じゃあな」
そして、ジャックも闇の鏡を潜って行った。
「出た、真面目クン。はいはい、また来年なー」
「キングスカラー先輩……あそこまでくると額に感心するものがあるな」
コツコツ
「こらこら1年生たち~。ああいう悪い先輩は見習っちゃダメだからね」
「宿題未提出なんて、ウチの寮ならリドルに首をはねられるぞ」
「トレイ先輩、ケイト先輩」
次にやって来たのはトレイとケイト。
「はぁ。オレも実家に帰るのちょっと憂鬱~。絶対姉ちゃんが2人とも帰ってきてるもん。ホリデー関係なくこき使われるよ。オレ、トレイくんちにホームステイに行きたいなー」
「構わないが、うちに来てもこき使うぞ。冬はケーキ屋が一番忙しい時期だからな」
「あ、そっか。トレイくんちってケーキ屋さんだっけ。逃げ場がない。トホホ」
休みの間も働くなんて、トレイも大変だなぁ。
まぁ、姉が居る時はパシられるケイトも大変そうだな。
何と無く二人の頭を撫でる。
コツコツ
「…………」
「あ、ローズハート寮長!道を塞いですんません!」
「…………ん?ああ。お前たちか。まだ長話するつもりなら、壁際によけるのだね」
デュースに声を掛けれて俺達に気付いたリドルは、何時もの調子は無く何処か沈んでいた。
「あれ?なんかアイツ、元気がねぇんだゾ」
「あー、そっか。寮長は実家でエグめの教育ママが待ち構えてるんだっけ。一時帰宅が憂鬱にもなるか」
グリムとエースの会話にアキと視線を交わす。
おう、手は打ってあるみてぇだな。
「……リドル。俺はお前の家に立ち入り禁止だからケーキを届けたりはしてやれないけど……いつでも店に遊びに来いよ。チェーニャも遊びに来るだろうし」
「そう、だね。ボクもお母様と少し……話をしてみようと思う……聞いてもらえるかはわからないけど……」
「……そうか。頑張れ」
「なぁにぃ、金魚ちゃん。おうちに帰りたくないの?だったら帰らなきゃいいのに。オレたちも帰らないしさぁ、一緒にガッコーに残ろうよ。あはっ」
しんみりした所にフロイドがリドルへと絡んできた。
「!!……突然なんだい、フロイド。なにも知らないくせに、口を挟まないでくれないか。不愉快だ」
「そうですよ。ご家庭の事情にむやみに首を突っ込むものではありません」
ジェイドの方もやって来て、片割れに注意をする。
「えー?だってさあ、ジェイド。いつも同じメンツで年越しすんの、つまんないじゃん。アズールも、金魚ちゃんなら小さいから飼っていいって言うと思うし~」
「今、なんとお言いだい?……ハーツラビュルの長らるボクによくもそんな口がきけたものだね。今すぐ首をはねてやる!!」
「リ、リドルくん!ここで喧嘩はヤバいって!」
「落ち着け、リドル。またあいつのペースにハマってるぞ」
「うぎぃい……!!」
フロイドの言葉に顔を真っ赤にさせて怒るリドルをケイトとトレイが慌てて止めた。
チラッとトレイが俺に助けを求める様に視線を寄越す。
「リドル……落ち着け。一々気にしてたら切りがねぇぞ」
「ぅ……ハーヴェル兄様」
リドルの頭を撫でて落ち着かせた。
「フロイド。お前も、もうちょい発言に気を付けろ。お前が何気無く言った言葉で傷付く奴だって居るんだからな」
「は~い」
「よし、いい子だ」
序でに手を伸ばしてフロイドの頭も撫でる。
一瞬キョトンとして、フロイドはにっこりと笑った。
「えへへ、トビウオちゃんに撫でられんの嬉しいかも~。ねーねー、俺もトビウオ兄ちゃんって呼んでもいーい?」
「僕のハーヴェル兄様なんだが?」
「リドルのだけじゃねぇけどな。呼ぶんなら学校以外で呼べ」
「わかったぁ」
よく分からねぇが、フロイドは俺に懐いてるらしい。
「えぇーっと、フロイドくんたちの実家って確か珊瑚の海だよね?なんで帰らないの?」
「アズールと僕たち兄弟の故郷は珊瑚の海の中でも北のほうでして。この時期は海面が流氷で覆われるんです」
「そーそー。流氷があると帰んのが大変なんだよねぇ。あと、帰ってもつまんないし。だから、オレたち3人は氷が溶けた春休みに帰ることにしてんだ」
「へぇ。海の下に実家があるっていうのもいろいろ大変なんだな」
海の下、か。
生きてはいけるが、住むとなると話は別になるな。
「フン!
そう言い、リドルも闇の鏡を潜って行く。
「……やれやれ、少しいつもの調子に戻ったか?お前たち、休暇中に羽目を外しすぎるなよ。それじゃあ」
其れに苦笑し、トレイも闇の鏡を潜った。
「さて、オレも帰りますかぁ~。あ、帰る前に記念に1枚」
カシャッ!
ケイトが優羽やエーデュースと写メる。
因みに俺達は映らない様に移動した。
「#秋学期最終日#1年生と#良いお年を#気が早いw。んじゃ、みんなハッピーホリデー~☆」
マジカメとやらに投稿し終えたらしく、ケイトも俺達に手を振って闇の鏡を潜る。
「小エビちゃんとアザラシちゃんに双子のお兄ちゃんたちは、学園に残るの?だったらオクタヴィネルに遊びに来なよ。遊んであげるからさぁ」
「それはいいアイデアだ。楽しいホリデーになろそうですね。いつでもお待ちしていますよ。では……」
「「フフフ……」」
不敵な笑顔を浮かべ、リーチ兄弟はオクタヴィネルの方へと去って行った。
「ううっ……アイツらの顔を見ると、モストロ・ラウンジでの過酷な労働が思い出されるんだゾ」
「確かにあれは辛かったな」
「思い出させんなよ」
「「自業自得だ」」
「「「うっ……」」」
因みにあのオクタヴィネルの事件の後、グリムにはアキからの説教が入ってる。
まぁ、俺達や優羽に尻拭いさせたからな。
其れで前よりかはグリムは真面目になっていた。
「……さて。だいぶ生徒が少なくなってきたな。僕たちもそろそろ帰るとするか」
「そーね。そうだ、監督生。それに双子め。マジカメのID交換しとこーよ。連絡取れたらいろいろと便利だし」
「そうだな。僕とも交換しよう」
エーデュースの言葉に優羽は俺をチラッと見る。
そーいや、優羽が使ってんの俺がやったのだっけ。
「別に好きにしていーんだぞ?」
「ありがとう」
という事で、俺達と優羽、エーデュースは連絡先を交換した。
「よし、登録登録……っと。冬休み中、寂しくなったら連絡してきてもいいぜ~」
「ありがとう。そうするよ」
「出た。監督生のマジレス。冗談だっつーの」
「こいつのくだらない冗談はさておき、なにかあったら遠慮なく連絡してこいよ。じゃあ、母さんが待ってるだろうから僕ももう行く。監督生、グリム、良いホリデーを」
「んじゃ、オレも行きますか。監督生、グリム、また来年な~」
そして、エーデュースも各々の家に帰る為に闇の鏡を潜って行く。
「いつも騒がしすぎてウゼーと思ってたけどいざいなくなってみると……アイツら本当に毎日ウルセーってことがよくわかるんだゾ」
……其処は寂しがる所じゃねぇのか。
翌日。
優羽はグリムを連れて学園の大食堂に行っていた。
何でも冬休み中の食料やホリデーのご馳走の提供の代わりに学園長に火の妖精に薪をやる仕事を任せられたらしい。
因みに俺達は冬休み中は購買もやらない事を予めサムに確認しておいたから知ってたし、俺達自身の持ってる食料で十分賄えると判断していた。
だから、敢えて頼りにならねぇ学園長は最初から期待してなかったが……俺達の予想、やっぱり合ってたか。
「…………遅いな」
「あー、確かにな。ルア、優羽達に連絡しといてくれるか?」
「畏まりました」
一向に帰って来る様子の無い優羽とグリム。
ルアに連絡をして貰うと、スカラビア寮に招待されて滞在しているとの事。
その頃には夕方近くになっていたのもあり、俺達は優羽達を迎えに行くと連絡し、スカラビア寮に向かう事になる。
念の為、火の妖精の件はゴーストに頼んでおいた。
そして……スカラビア寮。
其処は砂漠に囲まれた熱い場所だった。
「待っていたよ。オンボロ寮の双子」
「「ん?」」
スカラビア寮に着くと同時に出迎えたのは、髪の長い青年。
確か……
「監督生たちは物置部屋に居るんだ。案内する」
「……おう、頼むな」
「兄さんたちの為なら喜んでやるさ」
青年……ジャミル・バイパーは笑顔で俺達を案内してくれる。
……ジャミルは最初から俺達を覚えてたタイプか。
けど、レオナ達みたいに隠す事もしてねぇな。
そう考えながらジャミルの後をついて行ってると……
「うっひょ~~~!」
「「「…………」」」
空飛ぶ絨毯と其れに乗る優羽とグリム、其と少年が飛んで行くのが見えた。
「カリムのヤツ、また勝手に……」
「……アレがお前の主、か」
「ああ。すまないが、戻るまで待っててくれないか?」
「「構わない」」
「良かった。そうだ、久々に話でも聞かせてくれ」
「おう」
「いいぞ」
察してはいるだろうが、ジャミルも嘗て迷い込んできた子の一人だ。
俺達は優羽達が戻るまで、その頃の様に談笑する。