ツイステッドワンダーランド
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穏やかなやり取り。
其れを見ていると……
ぐらぁ……
「ハーヴェル!!」
目眩に襲われた。
其れによろめきそうになるのを、アキが支えてくれる。
「お兄ちゃん!?」
「……穢れが溜まってきている。無理をするからだ」
「そう……だな。酷く疲れて眠い……悪いが休ませて欲しい」
「分かっている……オンボロ寮は戻ってきたんだよな?」
「は、はい」
「じゃあ、お前の部屋に運ぶ。ルア、ソル、先行して休ませる準備を」
「「畏まりました」」
アキにお姫様抱っこされた所で……俺は眠りに就いた。
「……穢れが浄化出来てねぇな」
其れから目覚めた時には、すっかり夜になっていた。
俺は側で寝てるアキを起こさない様に外に出る。
そして、あの庭のブランコベンチに座っていると……
「ハル、ココだったんだ」
「優羽?」
「寝る前にもう一回お見舞いしようと思ったら、居なかったからさ」
優羽がやって来て、俺の隣に座った。
「ココが、異世界でのマイホームだもんね」
安堵した様に息を吐く優羽。
と、あの緑の光が現れる。
「……おや、戻ったのか。まさかアーシェングロットとの勝負に勝利するとは。ボンヤリしていそうに見えてお前もなかなかに曲者らしい」
立っていたのはやはりツノ太郎だった。
「ツノ太郎のアドバイスのおかげだよ」
「僕の?……別に助言したつもりはなかったんだがな。ふふ、なんにせよ、この庭が騒がしくならずに済んで良かった。すまし顔のアーシェングロットが悔しがる顔はさぞ見ものだっただろう。僕も見てみたかったな」
この庭を気に入ってくれて何よりだよ。
「……ん。僕はそろそろ自分の寮へ戻った方が良さそうだ。ではな、おやすみ」
ふと何かに気付いたらしいツノ太郎が姿を消す。
直後、ザクザクと誰かがやって来るのが分かった。
「……どうだ、いたか?」
「いや、こちらにはいらしていないようだ」
「西校舎の方かもしれないな」
「ああ、若様……何故、供も連れずに外出など!貴様が目を離すからだぞ、シルバー!」
「赤子じゃないんだ。大袈裟に心配しすぎだと思うが」
現れたのは緑の髪と銀髪の少年。
確か、ヴァンルージュと一緒に居た奴等だな。
「なにかがあってからでは遅い。1秒たりとて気を抜くな!!貴様、若様の護衛という大役を仰せつかっている自覚はあるのか!?人間でありながら、若様やリリア様に育ててもらったご恩を忘れたとは言わせんぞ!」
「はぁ……それとこれとは関係ないだろう……」
「おい、他人の寮の庭に勝手に入って喧嘩なんざするなよ」
座ったまま声を掛けると、二人組の少年はハッとした顔で俺達に振り返る。
「勝手に入ってすまない」
「人間!……と妖精「じゃねぇよ」……人間ども!若様をお見受けしなかったか!」
「若様ってのは知らねぇが、立派な角の青年なら自分の寮に戻るっつってたぞ」
「!そうか、感謝する」
「急いで戻るぞ!シルバー!」
「ああ」
二人組は俺達に会釈して去って行った。
「迷子でも探してたのかな?」
「そーなるとツノ太郎は迷子になるな」
でっかい迷子だな。
「……ねぇ、ハル」
「ん?」
「出来る事なら無理をしないで欲しい」
優羽が複雑そうに俺を見る。
「前にね、ハルとお世話になった人が似てるって話したよね」
「おう」
「その人は……俺を護って死んだんだ」
ドクン…
「だから、無理しないで」
「……約束は出来ねぇ。けど、俺は死なねぇさ。アキ達が居るからな」
「……うん」
其れから数日後。
俺は暫く熱を出して寝込み、其れが落ち着いて漸く約束の日を迎えた。
そして、俺達はアトランティカ記念博物館へとやって来る。
「うわー、すげぇ。中はこんな風になってんだ」
「伝説の海の王の像か……海の魔女以外にも改定にはいろんな偉人がいたんだな」
「この王様、なかなか鍛えてるじゃねぇか」
メンバーはオクタヴィネルの三人と俺達、優羽とエーデュースとジャック。
「みなさん、ようこそアトランティカ記念博物館へ。本日は『モストロ・ラウンジ』の研修旅行……という名目で貸切営業となっていますのでゆっくり楽しんでいってください」
「ふなっ、出たなタコ足アズール……と、思ったらオマエは人間の姿のままなのか?」
「ええ、僕のようにタコ足の人魚はこの辺りではとても珍しいので……こっそり写真を戻しに来たのに変に印象に残っても嫌ですから」
……うん、建前だな。
「そんなに気にしなくても、写真に写っているまんまるおデブなに人魚が貴方だとは、だれも気付きませんよ」
「せっかく帰ってきたんだから、そんな不便な姿じゃなくて、元の姿に戻って泳ぎ回ればいいのに~」
「フン。放っておいてください。じゃあ僕は写真をそっと元にもどしてきますから……みなさんはどうぞ館内をご覧ください」
アズールの言葉にアキが俺の手を取った。
「前に潜入した時に是非ゆっくりと眺めたいと思っていた。行こう、ハル!」
「……おう。付き合うから引っ張んなや」
俺も考古学は嫌いじゃない。
神話とかお伽噺として伝わっている話と実際にあった事件とかの関係を知るのが好きだ。
で、アキは……
「海の魔女が使用してた大鍋?此れで様々な魔法薬を作っていたのか?どうやって作っていたんだ?あ、向こうにあるのはシードラゴンの骨だって」
遺跡や発掘物、美術品を見るのが好きだ。
だから、今も俺の手を引いて目を煌めかせて美術品を巡っている。
チラッと優羽とアズールの方を見れば、二人はちゃんと写真を返した様だ。
「あ、ハル!記念写真撮りたいからアキが満足したら教えてー!」
「おーう」
此方に振り返って手を振る優羽に対し、俺もヒラヒラと手を振り返した。
其れから暫く堪能し、記念写真を撮って学園へと帰る。
その後、アズール達の誘いを受けて『モストロ・ラウンド』を訪れる事にした。
「ぅえ!?なんでこんなに混んでるわけ?」
「おや、早速“例の宣伝”が功を奏してるようですね」
『モストロ・ラウンド』は大賑わいの様だ。
「例の宣伝?」
「こないだの騒ぎの後、今後はたとえ契約であっても能力を奪っちゃダメって学園長に怒られたんで……アズール、ポイントカード作ったんだよねー」
ポイントカード?
「ポイントカードって……『モストロ・ラウンジ』の?」
「ええ。600マドルのスペシャルドリンクを頼めば1ポイント。1500マドルの限定フード付きメニューで3ポイント。50ポイント貯めれば、なんと、1回無料で支配人であるこの僕がお悩み相談受け付けます」
「そ、それって、どんな悩みでもいいのか?」
「例えば……勉強の悩みでも?」
「ええ、もちろん」
恐る恐る聞くグリムとデュース。
……此奴等、懲りてねぇのか。
「さらにポイントカードを3枚貯めるとスペシャルなサービスが受けられる特典付き」
「より詳しい情報はこちらのパンフレットかお店のホームページでご確認ください」
「ふな゛っ!じゃ、じゃあオレ様もスペシャルドリンク!」
「オレも!」
「僕はフード付きのセットで……」
「早速のご注文、ありがとうございます♪」
エーデュースは兎も角、グリムは誰の金を使ってると思ってんだ?
まぁ、いいんだけど。
「お前ら~……」
「どっちも懲りないなあ~」
「さあ、ジェイド、フロイド。稼ぎ時ですよ」
「「はい/はーい」」
「あ、悪ぃ。俺達と優羽、ジャックにお前のオススメを持ってきてくれるか?」
「はい、勿論」
アズールとリーチ兄弟がホールに立つ。
「なぁなぁハル、来るまで何か話してよ」
「話?そうだな……兄妹を翻弄する運命と遺跡船を巡る物語」
水の民と遺跡船で出会った仲間。
話し終えると……
「「何か泣いてる……」」
「良かったな、セネル……!」
「幸せになれよ…!」
まぁ、最後に海に認められたもんな。
話し終え、飲み物で喉を潤した。
「あ……なぁ、双子」
「「ん?」」
「またウチの『何でもない日のパーティ』に来てくれないか?」
「あ、そうだった。リドル寮長がさ、また双子の歌聞きたいって」
「「あー……」」
「ほう、ハル兄さんとアキ兄さんの歌ですか。よろしければ、ココで一曲歌って頂けませんか?」
と、アズールがお代わりのドリンクを持ってきながら声を掛けて来る。
……おにいちゃん呼びだったのに。
「俺はあんまり人前で歌う気は……」
「まぁ、いいだろ。浄化も兼ねて」
「おい、アキ」
アキをジトリと見るが、やる気は変えねぇつもりらしい。
「はぁ……」
「ルア、ソル、伴奏」
「「畏まりました」」
歌う準備をすんなよ……。
俺は諦めて目を閉じた。
「──君が全て 話し終わり……♪」
「──つらく長い 旅の途中……♪」
歌い終わると、何故か『モストロ・ラウンジ』が静まり返っている。
「……二人とも!」
「「?」」
「是非、この『モストロ・ラウンジ』の専属歌手になって頂けませんか」
「「断る」」
アズールには申し訳ねぇが、断固拒否だ。
翌日。
俺達は三日間世話になったのと、作戦協力のお礼としてサバナクロー寮を訪れ、料理を振る舞う事になった。
やっぱり肉料理の消耗が激しい……。
俺は作るので満足し、食べずにテキトーに空いた所に座っている。
俺の隣にはアキと優羽が居た。
「はぁ、すっげぇ疲れたわ」
「あっという間に平らげてしまうから、自分の分の確保するのも一苦労だな」
「お疲れさん」
巻き込ませたという理由で、手伝わせていたエーデュースと自主的に手伝いを申し出たジャックも側に来て座る。
「っと……!レオナ?」
「寝る」
「??」
「レオナさんはアキ兄ちゃんに凄い懐いてるんスね」
其処にレオナがアキに寄り掛かる様に座り、ラギーも近くに座る。
「……やっぱり、ガジュマとは違うんだよな」
「ガジュマ?」
「それ、前にも言ってなかった?」
ジャックの耳を見ながら思わず呟いた。
「そうだな……聞くか?」
「「「勿論」」」
「じゃあ……種族を乗り越えた青年と仲間の物語」
話し終えると、ジャックが目を輝かせて仲間の一人について更に聞いてくる。
「槍……か。俺は武器は好まねぇけど、ユージーンさんは格好いいな」
「彼は見習うべき人だからな」
つーか、会った事ねぇのにさん付けなのか。
「ハーフの子、幸せになって欲しいッスね」
「確か、孤児院を開いて子供に囲われてたな」
「孤児院か……島に移ったら、俺もやってみようかな」
ラギーは同じく迫害の対象になってた彼女を気にしている様だ。
「……恋に溺れた女王か」
「大丈夫だとは思うが、レオナも気を付けろよ」
「誰に言ってんだ」
……レオナなら大丈夫だろう。
アキがそんな事させねぇと思うし。
「本当、ハルの話ってスゴいよね」
「ああ……いつか会ってみたいな」
「「…………」」
こうして、オクタヴィネルとオンボロ寮とイソギンチャクのいざこざは幕を下ろした。
end.