ツイステッドワンダーランド
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暫くして……
「なんだ!?今の光は?」
「……ん?あっ!デュース、お前頭のイソギンチャクが消えてんぞ!」
「ハッ、本当だ!」
「オレ様のも、エースのも消えてるんだゾ!やった!レオナたちがやってくれたんだ!」
一瞬エース達の方から光が放たれたかと思うと……頭のイソギンチャクが消えていた。
其れに俺達は優羽達の所に戻る。
「……なんですって?」
「どーゆーことだよ、それ」
「オレ様たち、作戦に協力してもらうためにレオナと取引したんだゾ!」
……アレ、取引なのか?
「はあ?いつもトドみたいにダラダラ寝てばっかのアイツが、お前らに協力なんかするわけないじゃん」
「彼は同じ寮長であるアズールと揉めることは避けたかったはず。一体どんな手を使ったんです?」
「コイツがな、オンボロ寮を取り戻すのに協力してくれるなら明日部屋から大人しく出て行く。でも、協力してくれないなら、毎日部屋の前でみんなで大騒ぎしてやるって言ったんだ。んで、どんだけうるさくなるかみんなで実演してやったんだゾ。おかげさまで明け方まで大声で騒ぐことなっちまって、今日は寝不足なんだゾ」
「「うわぁ……」」
向こうのリーチ兄弟……ドン引きしてるな。
「だから今朝グリムは眠そうだったのか……」
「それ、取引っていうか脅しじゃね?」
「卑怯には卑怯を、悪党には悪党を、ってことだな」
「風の魔法も戻ってきたしこっから一気に巻き返すぜ」
「いでよ、大釜!……うん、出た!」
確かに大釜が出て来た。
「フギャー!オレ様だけ水の中だから火の魔法が戻ってるかどうかわかんねぇんだゾ!」
「ま、お前のショボい魔法なんかなくても問題ないけどな」
「戻りましょう、フロイド。彼らの頭のイソギンチャクが消えたということは……」
「うん。なんか、ヤな予感」
何か察したのか、リーチ兄弟が戻ろうとする。
「おっと、待てよ。こちとらやっと本調子なんだ」
「すぐ帰るなんてつれないこと言わないでもう少しオレたちと遊んでけよ」
「うるさい小魚だな。秒で片付けやる」
「フロイド、今は放っておきなさい!……ああ、もう!」
……彼も大変そうだな。
其れから本調子に戻ったエース達が向こうに魔法を放つ。
「あ゛~っ、もう!こいつらうざい!」
「ここは引き上げましょう、フロイド。彼らと遊んでいる場合ではなさそうです」
「チッ……わかったよ、行こう」
リーチ兄弟が苛立たしそうに去っていった。
「やった!アイツら、逃げていくんだゾ!」
「俺たちも学園へ戻るぞ。この写真をアズールに叩きつけて完全勝利だ!」
「……何か、嫌な予感がする」
ジャックの言葉に頷き、俺達も急いでオクタヴィネル寮へと戻る。
「アズール!貴方なにをしているんです!」
「うわっ、なにこれ、どーなってんの?」
「げっ、なんだこの騒ぎ!?」
「アズールが暴れてる……のか!?」
着いてみると、寮生から出た光がアズールの元へと無理矢理集められていた。
「アイツ、寮生たちの力を無理やり吸い取ってるみてぇだ」
「ヒェェ……レオナ!さてはオマエがいじめたんだゾ!?」
「俺のせいかよ。お前らが契約書を砂にしろっつったんだろ」
「ジェイド、フロイド、ああ、やっと戻ってきてくれたんですね。そこの馬鹿どものせいで、僕の契約書が全て無くなってしまったんです」
ああ、全部砂にしちゃったのか……。
オバブロに成り兼ねねぇから必要最低限にしとけって一応言っといたんだが……。
「だから、あなたたちの力も僕にください。ねえ、僕にくださいよぉ!」
「お待ちなさい、貴方のユニーク魔法は強力すぎるゆえに、契約書無しには制御できないはず。そんなことをすればどうなるか、自分が一番よくわかっているでしょう!」
「だって、なくなっちゃったんですよ、全部……アハハ……アハハハッ!このままじゃ昔の僕に戻ってしまう!」
「あのさー、今のアズールって、昔のアズールよりずっとダサいんだけど」
「「馬鹿」」
今、それ言っちゃ駄目だろ。
「あ~~~~~~、そうですか。どうせ僕は1人じゃなにも出来ないグズでノロマなタコ野郎ですよ。だから、もっとマシな僕になるためにみんなの力を奪ってやるんです。美しい歌声も、強力な魔法も、全部僕のものだ!寄越しなさい、全てを!」
ブワァ
その時、アズールの足元から黒い何かが吹き出す。
咄嗟にルアとソルが防御壁を出してくれたが……此は俺が触れちゃ駄目なヤツだな。
「「「「「わあああ……!!!」」」」」」
「なんだよアレ?アズールの体から黒いドロドロが出てきてる。墨……じゃねーよな?」
「ユニーク魔法の使い過ぎです。ブロットが蓄積許容量を超えている!このままでは……オーバーブロットしてしまう」
「あーっはっは!あーーーっはっはっは!」
ポタポタ……
黒い何かに包まれ……次の瞬間にはアズールの姿が変わっていた。
ぐらぁ…
「…………っ」
「!ハル、大丈夫か?」
「……おう。けど、早めに終わらせるべきか」
愛刀を出し……
「……本気出すか」
「オーバーリミッツか……当たらないとは思うが、全員下がれ!」
アキの言葉に戦闘態勢だった彼等がリーチ兄弟を引っ張って下がる。
其れとは逆に俺は前に出た。
「煌めけ鮮烈なる刃……仇なす者に幾つとなく刻み付ける 漸毅狼影陣!」
俺の秘奥義は真っ直ぐ化身に当たり……
『ハル!』
『……ああ、何時ものか』
モノクロな世界。
駆け寄って来た優羽と合流すると、例の景色が始まる。
蛸足故に早く泳げず、内気な性格故に直ぐに泣いて墨を吐いてしまう事から、周りから虐められていた。
其れを努力で跳ね返す。
その過程でリーチ兄弟とも親しくなった。
其れ等が終わると……ぐずぐずと泣く小さな蛸の人魚が丸まっている。
『やっぱりあんただったんだな、アズール』
『ひっく、ひっく』
『また沢山泣いて……よしよし』
そんな彼を抱き上げた。
『おにいちゃん……?』
『ああ。懐かしいな』
『おにいちゃん、おにいちゃん、ぼく、ぼく』
『ああ、よく頑張ったな。見直した……此処からは現実で言わせてくれ』
「……ハッ……」
「あ、目ぇ覚ました」
「アズール、この指は何本に見えますか?」
「8……本?」
「うん。まだ気が動転しているようですね。でも、よかった。なんとかブロットの暴走は治まったようです」
目を開けると現実世界で、アズールが丁度目覚めた所らしい。
俺も秘奥義を放つと同時に気絶でもしたのか、アキに支えられている。
優羽は俺とアズールを交互に見ていた。
「……ったく、手こずらせやがって」
「いやいや、レオナさんはそれ言っちゃだめっしょ」
「僕は……一体、なにを?」
「魔法の使い過ぎでオーバーブロットしてしまったんです。覚えていませんか?」
「僕に力をくださいよぉ~~って泣きながらみんなの魔法吸い上げてさぁ。ちょ~ダサかった、ちょっとゲンメツ」
「そ、そんな……僕が暴走するなんて……信じられない……」
アキから離れ、まだ呆然としているアズールに近寄る。
「ま、コツコツ集めてきたモンを台無しにされたらそりゃ怒るッスよね。オレだって、ずっと貯めてる貯金箱を他人に割られたら絶対許せないと思うし」
「でも、やっぱ悪徳商法はダメなんだゾ。反省しろ」
「その前に、お前らは他人の作った対策ノートで楽しようとしたことを反省しろ!」
「「全くだ」」
「「暫くツナ缶無しですね」」
「ふな゛っ!?」
……まぁ、今回は自業自得な上に俺達に尻拭いをさせた感じだしな。
「あの対策ノートは、他の誰にも作れない」
「……え?」
「確かに、だってアンタの作ったテスト対策ノート見て一夜漬けしただけで、90点以上取れちゃったもん」
「ああ、まさに虎の巻、だったな」
「100年分のテスト出題傾向をてめーの力で分析して作ったもんだと、学園長から聞いた。あんたの汚いやり口は認められねぇが……その根性だけは認めてやってもいいぜ」
優羽の言葉を切欠に皆が件のノートを誉めた。
「………………フン。そんな慰め、嬉しくもなんともありませんよ」
「あれ~?アズール、ちょっと涙目になってね?」
「おやおや、泣き虫な墨吐き坊やに戻ってしまったんですかね」
「2人とも!その件については秘密保持契約を結んだはずですよ!」
……そーいや、俺達の所に来た時も墨吐きながら泣いてたな。
「おっと、失礼しました」
「あ、そういえば。コレ、あんたが取ってこいって言ってたリエーレ王子の写真、ちゃんと持ってきたぜ。まだ太陽は沈んでない。これで完璧に俺たちの勝ちだ」
「なんだ、この写真?……人魚の稚魚どもがわらわら写ってるだけじゃねぇか」
「エレメンタリースクールの集合写真……スかね?なんでこんなのが欲しかったんスか?」
あ、この写真……まん丸アズールが写ってる。
「あっは、懐かしい。これ、オレたちが遠足の時に撮った写真だよね。ココに、オレとジェイドも写ってる。そんで……一番隅っこに写ってるのが、昔のアズール!」
「「「えっ!?」」」
「うわああああああ!やめろ!!!見るな!見ないでください!」
皆が驚いて固まる中、アズールが慌て出した。
「おやおやアズール、急に元気ですね。もう少し寝ていては?ここまできたら、諦めた方が気が楽ですよ」
「どれどれ?」
「隅って……」
「もしかして、控えめに見ても他の人魚の2倍くらい横幅がありそうなこのタコ足の子ども……」
「アズール、オメー昔はこんなに丸々と太ってたのか!」
「まんまるでかわいいね」
「ああぁあああぁあああぁあ……ッ!!!」
俺達の目の前で崩れ落ちるアズール。
「そ、その気持ち、僕にはよくわかるぞ。誰にだって消したい過去はある!僕はなにも見なかった!みんなも忘れてやれ!」
「お前、やけに真に迫ってるな」
「くそぉ……っ!『モストロ・ラウンジ』の店舗拡大と、黒歴史抹消を同時に叶える……完璧な計画だと思ったのに~~~っ!」
「二兎を追う者は一兎をも得ずってやつッスね」
「同級生の卒業アルバムから写真屋のフィルムまで……昔の写真は全て取引で巻き上げ抹消したんですが……博物館に飾られたこの1枚だけがどうしても合法的に処理できずにいたんです……」
「だからって、他人の手を汚させようとするんじゃねーんだゾ!」
グリムの言いたい事も分かるっちゃ分かるんだけど……仕方ねぇよな。
「別にいーじゃん。オレ、この頃のアズール好きだけどな。今より食べでがありそうだし」
「そういう問題ではないんですよ!」
「すごく頑張ったんですね」
「……ううっ、もういやだ。今すぐタコ壺に引きこもりたい」
蛸壺か……。
「!」
俺はアズールに此の学園に来る前に来ていた外套を被せる。
「今は此れで勘弁してくれ」
「うぅ……お兄ちゃん……!」
「よしよし」
被ったまま俺に抱き付いてくるアズールの頭を外套越しに撫でた。
「とにかく、写真を持ってくるって約束は果たしたぜ。お前が出した条件を完璧にクリアした」
「ま、その前に契約書も砂にしちまったんだけどな」
「だが、俺はやっぱり盗みはしたくねぇ。アズール。あんただって、非合法なことはしない主義なんだろ。責任とって、元の場所に戻してこいよ」
「一緒に返しに行きましょう」
「……アズール」
俺が声を掛けると、アズールは顔を上げる。
「……わかりました。でも、どうか画像ソフトで僕を消した写真にこっそり差し替えさせてください……」
「は、往生際悪いぜ」
「そうですよ。記録は大切なものですから」
「ねーねー、いつ行く?みんなで行くんでしょ。エレメンタリースクールの遠足以来のアトランティカ記念博物館、楽しみだなー」