ツイステッドワンダーランド
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「…………チッ……しょうがねぇな。早めにカタをつけて、さっさと帰って寝たい」
「寝るって、まだ9時だろ。お前、普段何時ごろ寝てるわけ?」
「いつも10時にはベッドに入ってる」
「マジでただの良い子か、お前は!」
「小エビちゃんとウニちゃんも店の手伝いをするってことでいーのね?んじゃ、まずはこのドリンクを3番テーブルに持ってって」
「「ちょっと待て」」
立ち上がろうとした優羽とジャックを俺達が肩を押して抑える。
「普通、客に接客やらせたらクレームもんだからな?」
「それと、優羽は此れから支配人との交渉を控えてるんだろう?二人の分も俺達がやる」
「だからお前等は座ってろよ」
言いながらドリンクを風で3番テーブルとやらに運んだ。
「「いいだろう?」」
「え、ええ。構いませんよ」
其れから俺達はテキパキと仕事をする。
手伝いを申し出たルアとソルには裏方をやって貰った。
そして……
パチパチ……
「あれだけの混雑を捌ききるとは、見事なヘルプです」
「アズール!」
粗方片付いた所で、目標の人物が現れる。
「大変お待たせ致しました。VIPルームの準備ができましたので、どうぞこちらへ。ジェイド、フロイド、お客様にお茶のご用意を」
「「かしこまりました」」
そして、俺達は奥へと案内された。
「なんだここ……本当に学校内か?でかい金庫があって……銀行みてぇだ」
「さあ、突っ立って入口を塞いでいないで、奥へどうぞ。それで?僕に相談というのは?」
ソファに座るのとほぼ同時に聞いてくる。
「下僕にしている生徒たちを自由にしてほしい」
「はっはっは、これはまた……突然横暴なことを仰いますね。僕と契約した生徒、225人の解放ですって?」
「225人!?そんなに契約してやがったのか」
寧ろ、そんだけの人数をよく仕分けられんな。
「今年はジェイドとフロイドが精力的に営業活動をしてくれましてねぇ……おかげさまで、たくさんのお客様と取引させていただきました。さて、ユウさん。あなたは生徒を自由にしてほしいと言いますが、僕は彼らに不当な労働をさせているわけではありません。彼らは契約の内容に合意し僕と『契約』を交わした。『契約』は“可哀想”だとか、そんな理由で他人が口を挟めるものじゃあないんですよ。つまり、一昨日お越しください……ということです」
「一応言っておくが、優羽っつーより学園長の提案だからな」
「クレームなら学園長にしろ」
学園長の命令じゃなきゃ、態々不毛な提案なんてさせねぇよ。
「取引すれば、どんな願いでも叶えてくれると聞きました」
「!?おい、お前なに考えてんだ!?」
「ほう、僕と取引をしたいと?面白いことを仰る」
「あはっ。小エビちゃん、度胸あるじゃん」
優羽の言葉にジャックは止めようとし、オクタヴィネル側は面白そうな顔をした。
因みに契約の事に関しては、前以て話し合ってある。
「……ふぅむ。あなたが僕と取引したいのはわかりましたが……しかし困りましたね。確かあなたは魔法の力をお持ちでない。美しい声もなく、一国の跡継ぎというわけでもない。ほんとうにごく普通の人間だ。それだけ大きなものを望むのでしたら相応の担保が必要です」
「担保、だと?」
「たとえば……あなたが管理しているオンボロ寮の使用権、とか」
「!!てめーら、最初からそれが狙いで……」
バン!!
「その話、乗ったーーーー!!!!」
「ぜ、全身泡だらけの謎の生物が!?」
「「グリムだな」」
勢い扉を開けて乱入して来たのは、泡だらけのグリムだった。
「も、もうこんな生活嫌なんだゾ!オレ様の毛は食洗機じゃねぇってんだ!」
「グリムさん。従業員が仕事をサボって立ち聞きとは感心しませんね。フロイド、つまみ出しておしまいなさい」
「はぁ~い」
「まあまあ、待ちなさい2人とも。ユウさん、唯一の寮生であるグリムさんがこう仰っていますよ。どうします?オンボロ寮を担保に僕と契約なさいますか?」
優羽が俺達を見る。
「うう、ユウ~~助けてくれぇ……」
「おい、監督生、やめとけ!どうせこっちが不利な条件での契約に決まってる」
俺達は優羽に頷き返した。
「契約の条件が聞きたい」
「その潔さ、気持ちがいいですねぇ」
「おい!お前、本気かよ」
「この契約の達成条件は──『3日後の日没までに、珊瑚の海にあるアトランティカ記念博物館からとある写真を奪ってくること』!」
アトランティカ記念博物館から写真を?
「俺たちに美術品を盗んでこいっていうのか!?」
「!」
敬語の少年が何かに反応したのを、俺達は見逃さない。
「いいえ、美術品ではありません。奪ってきてほしいのは──10年前撮影されたリエーレ王子の来館記念写真です」
「王子の、記念写真?」
「博物館の入り口近くに飾ってあるので、歴史的価値など一切ないただの写真パネルです。拝借したところで、大事になったりしません」
……世間的には大事にならねぇが、アーシェングロットにとっては大事な何かがあるって感じか。
「じゃあ、なんでそんなコトさせるんだゾ?」
「フッ、それなりに難題でないと勝負にならないでしょう?あまり簡単な条件では、僕が損をするばかりですからね。こちとら、慈善事業じゃないんですよ」
……そりゃそうだ。
「……アトランティカ記念博物館は、珊瑚の海の国宝である“銀の髪すき”や……重要文化財“人魚姫のコルクオーブナー”などが20個も収蔵されていることで有名な観光名所です。海底で1粒の砂金を探すような話ではありません」
「そーいえば、オレたちもエレメンタリースクールの遠足で行ったっけ」
「ちょっと待てよ。『珊瑚の海』って国は国自体が海の底にあるはずだろ。エラもヒレもない俺たちには滞在することすら厳しい。こっちの条件が厳しすぎるんじゃねぇのか」
「そうだそうだ。オレ様、水の中じゃ息ができねぇんだゾ!」
まぁ、俺達には関係ねぇけど。
「その難問を自分で乗り越えてこそでしょう……と言いたいところですが、ご安心してください。君たちには水の中で呼吸が可能になるこちらの魔法薬を差し上げます。海の魔女も、人間に恋した哀れな人魚姫に陸を歩ける足をつけてあげたそうですから。大切なのは慈悲の心──ですよ。フフフ。さあ、どうします?僕と取引し、契約書にサインしますか?僕もヒマではないんです。早く決めてください。さあ……さあ!」
「契約します!」
「いいでしょう!ではこの契約書にサインを」
優羽は契約書にサインをする。
「ふふふ……確かに頂戴しました。これで契約は完了です。3日後の日没までに、アトランティカ記念博物館から写真を奪い僕の元へ戻ってくることが出来れば、僕の下僕である225名のイソギンチャクの自由を約束しましょう。でも、もし奪ってこられなければ……オンボロ寮は僕のもの。そしてあなたと双子もまとめて僕の下僕になってもらいます!」
「絶対に負けられない!」
「ジェイド、フロイド。お客様のお見送りを。3日後を楽しみにしていますよ」
そして、俺達は向こうの双子と共に寮へと戻った。
「ほう、ここがオンボロ寮。中には初めて入りましたがなかなか趣のある造りですね。学校からも近いですし、『モストロ・ラウンジ』の2号店にぴったりの立地です」
「ここ、ゴーストが住んでるんでしょ?面白そうでいいなー」
大分俺が改装しちまったけどな。
「で、オメーらはなんでココまで付いてきてるんだゾ……」
「だってこの寮を担保にアズールと契約したじゃん」
「ふな゛っ!?」
「あなたは他のみなさんと違い、契約時に能力を預けて頂く事ができませんでしたから。代わりに、この寮を没収させて頂きます」
「にゃに~~!?」
グリムは驚いているが、俺達からしたら予測内の事。
向こうが優羽から奪うならオンボロ寮だろうからと予想し、もし狙って来て契約しても大丈夫だと前以て決定している。
「お約束を果たしていただくまで、この寮は一時的にアズールのもの。従って、皆さんには直ちに退去して頂かなくてはなりません」
「身支度を整えるくらいの時間はあげるからさぁ」
「正式にここがアズールのものになった際は私物は全て破棄させていただきます。そのつもりで身支度なさってくださいね」
「ふふふ、大丈夫だって。3日後の日没までに写真を持ってこられたら全部返してあげるからさぁ」
「「フフフフ…………」」
向こうの双子の話を聞いたグリムが駆け出した。
「ふな゛ぁ~~!!ツナ缶は全部持っていかないと!」
「大変なことになってしまった……」
「「そうか?」」
「?みなさんはよろしいのですか?」
「予測内だからな。もう纏めてあるんだよ」
言いながらアキが輝石をちらつかせる。
荷物は全部アキが輝石化させたからな。
其れから少しして、ツナ缶を抱えたグリムが戻って来た。
見てて大変そうな為、同じ様に輝石化させる。
「みなさん、準備はよろしいですか?」
「じゃぁねえ、小エビちゃんとアザラシちゃん。あと、トビウオちゃんとトウザヨリちゃん、達者でー」
「ああ、もし宿にお困りでしたらご相談ください。オクタヴィネル寮のゲストルームは、1泊1万マドルからリザーブ可能ですので」
ギィ……バタン!!
俺達が外に出れば、扉はしっかりと閉められた。
「オイ、ちょっと待て!アザラシって?今のアザラシってオレ様のことか~~~~~~!?」
「トビウオとトウザヨリは所謂飛ぶ魚ですね」
「「俺達の事だろうな」」
ヒュウ~~……
「……ウウ、今日からこの寒空の下野宿かぁ……辛いんだゾ」
「「「誰のせいだと思ってるんだ……」」」
寄って来たグリムを優羽が抱き上げる。
俺達は其処まで寒さ感じねぇし、元々湯タンポ抱えてるから問題ねぇ。
と、数人の足音がした。
「おーい、監督生、グリム、双子!」
駆け付けたのはエース、デュース、ジャックの三人。
「ふなっ!オマエたち、もしかして助けにきてくれたんだゾ!?」
「んー、グリムはともかく、監督生が宿無しになるのは、まあ、オレたちにも原因あるし?野宿して風邪でもひかれると寝覚めが悪いっつーか」
「オメー、ホント素直じゃねぇなあ」
「つーか、お前等の所為だからな」
「履き違えるな」
誰の所為で俺達が巻き込まれたと思ってんだよ。
「ローズハート寮長に、話はつけてある。僕たち1年生の4人部屋なら雨風しのげる場所は提供できるぞ」
「お前ら、4人部屋にさらに3人と1匹を押し込めるつもりか?ハーツラビュルに空き部屋はねぇのかよ」
「いや、一人と一匹でいい」
「俺達は野宿慣れてるし、寝なくても大丈夫だしな」
まぁ、其れでもキツいだろうな。
俺も他人の敷地を広げるつもりねぇし。
「ウチの寮は退学者も留年者もいないから常に満員状態なんだ」
「……なら、サバナクロー寮に来るか?」
「「「エッ!!!!??」」」
皆が驚いた様にジャックを見る。
「アズールとの交渉に付いていってやると偉そうに言っておいて、結局何もできなかったからな。マジフト大会の時の借りもあるし、レオナ先輩たちも断りゃしないだろう」
「ほぉ~~~」
「へぇ~~~。ジャックくんって実は優しいんだぁ~~~」
「意外な一面なんだゾ~~~~」
「「揶揄うな」」
「か、勘違いするなよ!!次のテストのために、監督生にはアズールとの勝負に勝ってもらわないと困るだけだ!」
……揶揄うデュース達もアレだが、ジャックも素直じゃねぇな。
「はいはい、そういうことにしときましょ」
「ジャックの提案のほうが、監督生たちもしっかり休めそうだしな」
「ウチの寮だと、床に寝るか、オレかデュースのベッドで一緒に寝るかになっちゃうしねー……あ、もしかしてそっちの方がいい?」
「じゃあ、サバナクロー寮にお世話になります」
優羽の奴、華麗にスルーしたな。
「じゃあ、さっさと寮に戻るぞ。もう12時近いじゃねぇか……ふぁあ……」
「んじゃ、また明日な」
「おやすみ」