ツイステッドワンダーランド
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定期テスト。
俺達や優羽みたいな異世界産には不利な授業もあったが、寮に帰っては勉強会みたいな事をして、何とか乗り切った。
そして、今日はその期末テストの結果が廊下に貼り出される日。
俺は合流したアキ達とジャックと一緒に結果を見に行く。
と、何やら廊下で騒いでる奴等が居た。
「騒がしいと思て来てみれば、お前らか。なにやってんだ?」
「あ、双子とジャック」
騒ぎの元は、何時もと変わらずエース達の様だ。
「双子、ジャック、お前も契約を……ってイソギンチャクが生えてない……だと!?」
「双子はともかく見た目のわりに超真面目クンかよ!」
「「?」」
「はあ?なに言ってんださっきから。っつーか、お前ら頭のソレ、なんなんだ?」
グリムとエース、デュースの頭からなんか生えてんだけど。
「コレは、その……ふな゛っ!?なんだぁ!?あ、頭がイソギンチャクに引っ張られる!」
「いでででっ!頭がもげる~!」
「くそっ、絶対服従ってこういうことだったのか……っ」
「「「あぁあああぁああ~~!!!」」」
イソギンチャク?に引っ張られ、二人と一匹が何処かに向かっていく。
「なんだ?アイツら……頭に生えたイソギンチャクに操られるみてぇに歩いてったな。なんて間抜けな絵面だ……」
「「確かに」」
「なにが起こってるのか確かめよう」
「は?なんで俺まで。俺には関係ないだろ」
「マジフト大会で受けた傷が痛むなぁ……」
……優羽の奴、大分図々しくなったな。
「チッ……お前、だんだんこの学園の空気に染まって来たな。俺を使おうなんざ、いい度胸だ。わかった。少しだけなら付き合ってやるよ。俺はこの変な現象の原因がなにか気になるだけだ。別にアイツらのためじゃねぇからな。くれぐれも勘違いすんなよ」
「双子は?」
「俺は予定通りお疲れ会する準備があるんでな」
「俺もハルと行く」
「そっか。じゃあ、また後で」
優羽とジャックと別れ、俺達は先に寮へと戻った。
其れから暫くして、戻ってきた優羽とジャックとお疲れ会を始める。
菓子を摘まみながら、二人がオクタヴィネル寮で見聞きした事を聞いた。
「頭にイソギンチャクをつけられた奴らはテストでいい点を取るために、アズールと契約してまんまと騙された……ってことで間違いなさそうだな。上位50位に入ることって条件だったようだがあれだけ大量の生徒と契約していれば、ほとんどの契約者は50位からあぶれることになる。最初からアズールはそれを狙ってたってことか」
「グリムが80点以上取るなんておかしいと思った」
確かにグリムは勉強会に参加せず、一夜漬けだった筈。
其れで普段から赤点なグリムが80点以上取るのは有り得ねぇな。
「ったく!他人の力で良い成績とってもなんの意味もねぇだろ。自分の力を周りに示せる機会を棒にふるなんざそれこそバカだ」
「学園の生徒全員がハウルくんのように自意識高めで面倒くさい……いえ、真面目だったら私も苦労しないんですがねぇ~」
「ウワッ!学園長!ビックリした!」
「「不法侵入だぞ」」
突然ジャックの背後から話に割り込んできた学園長。
お疲れ会って事で談話室じゃなくて庭で茶会したのは間違いだったか?
「はぁ……今年もアーシェングロットくんの“商売”を止めることができませんでした」
「商売?どういうことですか?」
「「…………」」
今年もって事は、去年もやってたのか。
「アズール・アーシェングロットくん。オクタヴィネル寮寮長を務める2年生です。ローズハートくん同様、2年生にして寮長を務める非常に優秀な生徒なのですが……少し、いえだいぶ問題がありまして」
「問題って、詐欺行為のことか?だったら学園長が命令してやめさせればいいじゃないですか」
「それが……私が教師だからこそ彼の行為を禁止できないのです」
教師だからこそ……ああ、そういう事か。
まぁ、仕方ねぇのか。
「どういうことすか?」
「アーシェングロットくんが生徒たちにばら撒いたテスト対策ノートですが……あれは、事前に出題用紙や回答を盗み見るなどの不正行為で作られたものではありません。ナイトレイブンカレッジ過去百年分のテスト出題傾向を徹底的に調べ上げ、自力で練り上げた“虎の巻”なんです」
「逆に、すごくないですか!?」
過去百年分って、どーやって調べたんだ?
記録が残ってたっつーのも意外だな。
「自分の力だけでそんなモン作るなんてやるじゃねぇか、アイツ。ん?待てよ。つまり、不正じゃないことが逆に厄介……ってことか?」
「ハウル君、良い着眼点です。教師の立場として、いち生徒が“合法的な努力”でテストの対策ノートを作ることは禁止できません。そして、“親切で”友人に勉強を教えることもね」
「禁止したら、『勉強するな』『ダチと協力すんな』って言ってるようなもんだな。グルル……厄介だ」
「その通り」
俺達だって、自分なりに作った対策ノートを見せ合って勉強会してたしな。
「そういえば学園長、さっき『今年“も”商売を止めることができなかった』って言ってたっスよね。まさか、去年もこんなことが?」
「ええ。去年はまだ彼の対策ノートの評判があまり広まってなかった分、これほど大きな騒ぎにならなかったんですが……今年は、『テストで良い点が取りたいなら、モストロ・ラウンジへ』という噂が学園中に流れていたようで」
あー、そーいや聞いた様な気もすんな。
興味なくて、テキトーにスルーしてたわ。
「でも、契約違反をすればどんなひどい目にあうかは強固な守秘義務があって広まらなかった?」
「そのようです。結果、今年はアーシェングロットくんと取引する生徒が続出。全学年・全教科の平均点が90点を超える事態になってしまった……というわけです。全教科の平均点が赤点になるよりマシですが!しかし……」
「つまり、ほとんどの生徒がズルをしたっていう……」
「ズルっつーか、アーシェングロットの作戦勝ちだな」
「ああ。別に不正行為でないなら、ズルとは言えない」
そんなに人を集めてどうすんだ?
……従業員確保以外でも何かありそうだな。
「じゃあ、去年アイツとの勝負に負けたヤツは、いまだにずっと能力を取り上げられたままってことか」
「それが……彼は去年、生徒たちから取り上げた能力を元に戻すことを条件に学園内で『モストロ・ラウンジ』の経営を許可するよう私に交渉してきたのです」
「はあ!?」
「「は?」」
『ナイトレイブンカレッジは優秀な魔法士を輩出する歴史ある名門校。それなのに、ささやかな魔法しか使えない生徒ばかりになってしまっては困りますよね、学園長。そこで、私から1つ提案が。なに、あなたにとって損な話ではありません』
「……といった具合に」
「な、なんつー野郎だ……学園長を脅して取引なんて。あのレオナ先輩が近付きたがらないのもわかるぜ」
「しかも売り上げの10%を学園に上納するというWin-Winの関係まで提案してきてもう……」
「って、あんたもうまい目にあってるじゃないスか」
此奴、去年は自分に損所か得だったから大した対策考えなかったんだろうな。
「ああ、今年は一体なにを要求されるか。バカな……いえ、可哀想な生徒のためなら私はまた要求をのんでしまうでしょう。私、優しいので。アーシェングロットくんは真面目に勉強し、その知識を慈悲深くも多くの生徒に教えている“だけ”……教師としてはやめるよう強く言えません。なんでこの学園にはちょっと問題がある生徒ばっかり入学してくるんでしょう!?お~~いおいおい!!」
「いやな予感……」
「くだらねぇ」
「「「!」」」
飲んでいた茶を持って立ち上がる。
「さっきから聞いてりゃ、お前の失態みてぇなもんじゃねぇか。くだらねぇし、興味もねぇから俺は此れで降りる。夕飯の支度もあるしな」
「ハルが降りるなら、俺も降りる。菓子は好きにするといい」
そのまま室内に入れば、アキもついて来た。
「……あの子の努力を否定するんじゃねぇよ」
「「「…………」」」
其れから優羽は学園長の命でアーシェングロットを説得する事になったらしい。
一日授業をサボって、アーシェングロットを観察するそうだ。
で、その日の晩。
夜の9時にモストロ・ラウンジに呼び出されたとの事で、俺達も念の為同行する。
「ちょっとオトナな雰囲気だね」
「こっからはマジで敵の縄張りだ。気を抜くんじゃねえぞ」
「あー、小エビちゃ~ん。いらっしゃい~。それにウニちゃんも来たんだ」
「だからウニじゃねぇっつってんだろ!」
「あ!この間の二人もいるー!遊びに来たの~?」
「「そんな所だ」」
モストロ・ラウンジでは、前に鬼ごっこをした双子が居た。
「おや……これはこれは。早速のご来店ありがとうございます。ようこそ『モストロ・ラウンジ』へ。当店のご利用は初めてでいらっしゃいますね?」
「昼から思ってたが……あんた、わかってて質問するのが趣味なのか?」
「ジャック、一々気にすんな」
「ふふ、念の為ですよ。では、僭越ながら当店をご利用していただくための諸注意を説明させていただきます。『モストロ・ラウンジ』は紳士の社交場。他寮との揉め事は御法度です。ここでは、どの寮の生徒もオクタヴィネルのルールに従って頂きます。ルールを守って楽しくラウンジをご利用くださいね。さて……お客さま、本日のご用件は?」
「支配人と話がしたい」
双子の敬語の方の少年の言葉に優羽が真っ直ぐ見上げながら答える。
「ふふふ……かしこまりました。今、支配人は別のお客様のご相談を受けておりまして。しばらく店内でお待ちいただけますか?ああ、そうそう。当店はワンドリンク制です。必ずなにか1杯ご注文くださいね。イソギンチャクさん。おちらオーダーお願いします」
彼が言うイソギンチャクはエースとデュースの事の様だ。
「悪いが、ドリンクを運ぶのが先だ」
「混んでるんだし、注文くらいアンタが取れっての!なんでもかんでもオレらにやらせてのんびりしやがって」
「イソギンチャクの分際で、口答えとは良い度胸ですね」
ギュインギュイン……
「いでででで!!」
「イソギンチャクを引っ張るのはやめろ!」
反抗的な態度を取る二人に、敬語の少年がイソギンチャクを掴んで引っ張った。
「僕はアズールに新人指導を言いつけられていますから。口答えする生意気な新人には躾をしなくては」
ギュインギュイン……
「あだだだだだっ!わかった、わかったから!」
「ちょっと待ってください!」
優羽が慌てた様に其れを止める。
「おや……困りますねぇ、お客様。先ほども申し上げた通り、ラウンジでは僕たちのルールに従って頂きませんと」
「言う事聞かない困ったちゃんは、オレたちが絞めていいことになってるんだよねぇ~」
「チッ……新人いびりを見せられて気分が悪いって言ってんだよ」
「まぁ、接客業するなら控えるべきではあるな」
「仮にも客には見せねぇ方がいいぞ」
此処は学校だからいいが、普通の店だったらクレームものだろうし。
「じゃあ、お前らがコイツらの代わりに店を手伝ってくれんの?」
「「「「は?」」」」
「あっ、それいい。それでいこう!今から監督生と双子とジャックが臨時で手伝いをするってことで」
「「エース?」」
エースの奴、何巻き込んでやがる。
「てめ、なに勝手に決めてんだ!」
「真面目に働いてくれるなら、僕らは誰でも構いませんが……」
「お前たちだって、店から追い出されたら困るだろう?」
「マジでしんどいんだって。裏でグリムも体中泡だらけになって洗い物してるんだぜ?頼むよー」
俺とアキは視線を交わした。