ツイステッドワンダーランド
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「ノンノン、エペルくん。紅茶を飲む時、カップの取っ手に指を入れるのはエレガントじゃないよ」
「えっ……あ、はい。すみません」
「はぁ。大会当日のメイク悩むわぁ。フェリシテ・コスメティックスの新作下地が気になってるのよね」
「はっはっは!
「そんなの知ってるわよ。でも、もうワンランク上を目指すために手は抜けないでしょ」
「いいね!その意識の高さ。実にマーヴェラスだ!」
聞こえてきた会話。
…………変わってるって、濁してたけど多分変人って言われてんだろうな。
「う~~~ん。なんだか強そうなカンジが全然しねぇんだゾ。オレ様が犯人ならコイツは狙わねえな」
「……多分、彼奴それなりに強いぞ」
「え?」
「狩人タイプか」
「ああ、あの気配はな。まぁ、俺も狙わねぇな」
「そうなんだ。んじゃ、次行ってみよっか」
狩人系は人の視線や気配に敏感だしな。
もしかしたら、優羽達の事は気付いてるかもしれねえわな。
下手したら狙った途端に気付かれるリスクがある。
だから、狙われねぇし、やるとしても準備に準備を重ねるな。
其れから俺達は中庭を進んだ。
「次はオクタヴィネル寮。けーくんチェック的には2年のジェイド&フロイド・リーチ兄弟に要注意。連携攻撃が協力で、対戦相手の寮が手を焼いていたと情報アリ」
「おっ!双子みたいに、まるきり同じ顔が2人いるんだゾ」
「「彼奴等も双子なんだろ」」
中庭に居たのは、そっくりな顔に高身長な二人組。
「つか……あの2人、周りの生徒が小さく見えるくらいスゲー背がデカくない?」
「ヒョロヒョロしてるけど、ノッポで強そうなんだゾ」
「じゃあ、あの2人をマークしますか?」
「う~ん。ボクが犯人なら、彼等を狙うのは最後にするよ。あの2人……特にフロイドのほうはあまり近付きたくない」
リドルがそう言った直後……
「あ~~~~~、金魚ちゃんだ~~~!」
「うっ!見つかった!」
「金魚ちゃん、こんなとこでなにしてんの?かくれんぼ?楽しそうだね」
片方が意気揚々と駆け寄ってくる。
「フ、フロイド。ボクのことを変な渾名で呼ぶのはやめろと何度言わせるんだい?」
「だって、小さくて赤いのって、金魚でしょ?」
「なんか変なヤツなんだゾ」
「わー、しゃべる猫だ!おもしろ~い。ねえねえ、ギュッて絞めていい?」
「し、絞める!?やめるんだゾ~!」
物騒だなぁ。
「おや、ハーツラビュル寮のみなさんお揃いで。もしや、マジカルシフト大会に向けての敵情視察ですか?」
逆に歩み寄って来たもう一人。
「えーと、これにはいろいろとワケが……」
「スパイ行為を見逃すわけにはいきませんねぇ。何故僕たちを監視していたのか、理由を詳しくお聞かせ願えませんか?」
「コイツ、物腰は穏やかだけど全然目が笑ってない……」
「とにかく、お邪魔しました~っ!」
皆が駆け出し、俺とアキも其に続いた。
「うわ、追いかけてくるぞ!」
「ねーねー、待って~」
「そう言われて誰が待つんだ!総員退却!」
「……仕方ねぇ、先行ってろ」
「ルアとソルを頼む」
「え!?」
ルアとソルを預け、俺と同時にアキが踵を返す。
「「!」」
そのまま追い掛けてきた向こうの双子を飛び越えた。
「「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」」
「……あはぁ!面白そう!」
「ふふ、では遠慮なく」
其れから向こうの双子と鬼ごっこをする。
向こう微妙に追い付けない位置をキープして、時々彼等の側を飛んで遊んだ。
「すっげぇ!全然捕まえらんねぇ!」
「……もう少し遊びたい所ですが、そろそろラウンジの仕事の時間ですね」
「え~~」
「ん、用があんのか」
「続きはまた今度な」
「また遊んでくれるのぉ?じゃあ、バイバ~イ」
「「バイバーイ」」
向こうの双子と別れ、ルアとソルの気配を辿って進む。
途中、学園長を見付けて襲撃した為、俺達がサバナクロー寮に行くのは大分遅くなってしまった。
「ん?」
「お前、確か同じクラスの……」
「確か、ハウルだったな」
「ハルのクラスの奴か」
サバナクロー寮に入ると、俺と同じクラスの奴と出会う。
「悪ぃ、此処に俺達の寮とハーツラビュルの寮の奴等のが来なかったか?」
「ああ、ソイツ等ならさっき向こうで声をかけられた」
「ん、助かった。ありがとな」
「……俺たちの縄張りを彷徨かれるのは気に入らねぇ。案内してやる」
「「マジか、助かる」」
ハウルの案内で、サバナクロー寮内を進んだ。
「もうやめてください!」
「うるせぇ!」
「…………」
何かの運動場の様な所で、優羽が殴られそうになるのを見て、間に割り込んで殴ろうとした腕を掴む。
「な、なんだテメェ!」
「あ?」
「っ…!」
睨み付ければ、其奴が怯んだ。
「なにしてんスか、あんたら」
「誰に手を出してるんだ」
その間にハウルと威嚇モードのアキがやって来る。
「ん?縄張りに踏み込んだ奴らとちょっと遊んでやってるだけだろ」
「初心者いたぶってなにが楽しいんスか」
「なーにぃ?ジャックくん、正義のヒーローみたいでカッコいいッスねぇ。シシシッ!」
「俺はただ、みっともなくて見てられねぇって言ってるだけっす」
……獅子の耳のが此処のリーダーで、ハイエナの耳のがその右腕って所か。
つーか、彼奴等……
「……。はっ、しらけること言うぜ」
「おいジャック!てめー1年のくせに生意気だぞ!」
「……あんたらこそ、上級生のやることじゃないんじゃないすか」
「あんだとぉ!?お前もやられたいんかよ!」
観察してる間にサバナクローの先輩とハウルが衝突した。
「は、1年坊。威勢がよくて結構なことだ。まあいい、もう飽きた。お前らを相手にしたってなんの意味もない。行くぞ、ラギー」
「ウィーッス」
「てめーら、今度勝手に縄張りに入ったらただじゃおかねぇからな!」
獅子とハイエナが立ち去ると、其に続いて他の寮生も去っていく。
「ありがとうございます」
「あはは、かっこ悪いとこ見られちゃったねー」
「ジャック、だったな。助かった」
「別に。お前らを助けたわけじゃねぇ」
優羽がハウルに頭を下げ、デュースが礼を言った。
取り敢えず俺はケイトの頭を撫でる。
「はあ、めっちゃ泥だらけ。今日のところは寮に戻ろうぜ」
「オレ様も腹が減ったんだゾ」
「んじゃ、ジャックくん。オレたち帰るけど、怪我には気を付けるんだよー」
「お前らに心配される筋合いねぇっつってんだろ。さっさと帰れ」
此処で解散となり、俺達は其々の寮へと戻った。
その日の夜。
「だいぶ空気が冷たくなってきたなぁ」
「優羽、何してんだ?」
「!ハル」
「寝れねぇのか?夜風は冷えるだろうから、此でも羽織っとけ」
「ふふ、ありがとう」
外に出ていた優羽に羽織を掛けてやる。
「寝れねぇなら、向こうのベンチで話でもするか?」
「ベンチ?」
「あれ」
「わぁ……!」
この間追加した庭のブランコベンチを指差せば、優羽は目を輝かせて座った。
俺もその隣に座る。
「ハルはやっぱり優しいね」
「はぁ?俺は優しくねぇぞ」
其処で雑談をしていると……
ガサガサ
「……ん?そこにいるのは誰だ?」
茂みから青年が出てきた。
「ゆ、幽霊?」
「つーより、不法侵入だろーな」
「これは驚いた。お前、人の子か」
「(この人、頭に角がある……)」
「もう一人は……人の子……なのか?」
「半分はな」
俺は厳密にはハーフだし。
「お前たち、ここに住んでいるのか?この館はもう長いこと廃墟だったはず。独りで静かに過ごせる僕だけの場所として気に入っていたのだがな」
「見た目はあんま変えてねぇけど、もう廃墟じゃねぇぞ」
一応改装しても、外観はそんなに弄っていない。
庭を整理した程度だ。
「あなた、誰ですか?」
「優羽」
「あっ、そっか」
「誰って……僕のこと知らないのか?本当に?……ふぅん。そうか。それはそれは……珍しいな。お前、名前はなんという?」
優羽に例の礼儀の話をしようとしたら、向こうが先に驚いた様に言ってくる。
「優羽です。こっちはハル。そちらも名乗るのが礼儀では?」
「僕に名を名乗れ、と?ふっ……聞かないほうがお前のためだ。知ってしまえば、肌に霜が降りる心地がするだろう。世間知らずに免じて、好きな名前で呼ぶことを許す。いずれそれが後悔に変わるかもしれないが……」
「(この学園、変人ばっかりだ)」
肌に霜って、独特な言い方だなぁ……。
「ふう……それにしても……人が住み着いてしまったということはもうこの廃墟は廃墟ではない。残念だ。また次の夜の散歩用の廃墟を探さなくては。では、僕はこれで」
そう言うと、侵入者は消えた。
「廃墟マニアなのかな?」
「…………そうなのか?」
まぁ、遺跡マニアとか居るしな。
廃墟マニアが居ても可笑しくねぇな。
翌日。
俺とアキはいつも通り先に学園内に入る。
「悪いな、俺の方に付き合わせて」
「気にすんな」
割りと時間に余裕がある為、アキが今日の授業で使う道具を一緒に取りに行っていた。
「「待て~~!!」」
「「?」」
そんな俺達の横を、ハイエナの奴が駆け抜けていく。
そして、其を追い掛ける優羽達。
「あ、双子!その人多分犯人だから追いかけるの手伝って!」
優羽に言われて、俺達は視線を交わした。
「ルア」「ソル」
「「畏まりました」」
荷物をルア達に預け、俺達は駆け出す。
「え」
ハイエナは障害物をひょいひょいと乗り越えていくのを見て、俺達も同様に乗り越えて追い掛けた。
「マ、マジッスか……全然撒けないなんて……」
「慣れてんのはお前だけじゃねぇし、俺達はこーいうのを足場にして戦闘するのが得意なんでな」
「ああ、一応追い掛けたが、お前が其を返すならこれ以上の事はしない」
「へ?」
アキが指したのは、ハイエナが持っている深紅の魔法石が付いたマジカルペン。
エースとデュースは持っていたから、リドルとケイト辺りの物だろう。
「……俺を捕まえなくていいんスか?」
「件の傷害事件については、お前がやったっつー証拠はねぇ」
「証拠がない以上、俺達がお前を捕まえるとしたら、マジカルペンの窃盗くらいなものだ」
「……その辺、ちゃーんと分かってるんスねぇ」
「「無駄に歳食ってないからな」」
「正直有り難いッスわ……アンタたちとはあんま敵対したくないんでね」
「「…………」」
……何だ、気付いてたのか。
彼は俺達にマジカルペンを差し出す。
其れを受け取った辺りで、優羽達が追い付いてきた。
肩で息をする優羽達を彼は嘲笑って挑発し、俺達に背を向ける。
「……また遊んでくださいね」
「「ああ、じゃーな」」
「バイバーイ」
そして、彼は立ち去った。
「くっそ~!腹立つ~!」
「ローズハート寮長に首をはねられる……」
「まだなにかするつもりなのかな」
エースは挑発に悔しがり、デュースは落ち込み、優羽は考える様に目を閉じる。
……優羽は思案する時に目を閉じる癖があるなぁ。
それは兎も角、そーいや挑発の時になんか企んでそうな事を言ってたな。